このページでは、PS2で発売された『ZONE OF THE ENDERS』について解説する。
PS3/360のHD移植については『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION』を参照。


ZONE OF THE ENDERS

【ぞーん おぶ えんだーず】※THEは発音しない

ジャンル ロボットアニメ・シミュレータ(アクション)

対応機種 プレイステーション2
メディア DVD-ROM 1枚
発売元 コナミ
開発元 コナミコンピュータエンタテインメントジャパン(EAST)
発売日 2001年3月1日
定価 通常版:6,040円(税込)
プレミアムパッケージ:13,800円(税抜)
廉価版 PlayStation2 the Best:2003年2月13日/2,940円
プレイ人数 1~2人
判定 なし
備考 通常版のみ『メタルギアソリッド2 初体験版』が同梱
ZONE OF THE ENDERSシリーズ
ZONE OF THE ENDERS / Z.O.E 2173 TESTAMENT / ANUBIS ZONE OF THE ENDERS
ZONE OF THE ENDERS HD EDITION / ANUBIS ZONE OF THE ENDERS:M∀RS


概要

2001年のPS2初期ソフトとしては群を抜いたグラフィックと、軽快なアクション性を持って登場した作品。
「オービタルフレーム」と呼ばれる人間搭乗型の巨大な高機動人型ロボットを操って戦うアクションゲームである。
メタルギア』シリーズで知られる小島秀夫監督/小島プロダクションによってプロデュースされ、同シリーズでアートディレクターを務める新川洋司氏がメカニックデザインが手掛けた。
主に1990年代『ガンダム』シリーズで知られる西村誠芳氏*1をキャラクターデザインに据えるなど、ジャンル名の通り日本のロボットアニメ(リアルロボットもの)を強く意識した作風となっている。
楽曲には暗い神秘的な曲調のものが多く、どこか繊細な雰囲気を作品に与えている。

略称の「Z.O.E」は「ズィーオーイー」或いは「ゾーイ」とも呼ばれる。


ストーリー

22世紀、テラフォーミングされた火星のバシリア州は、宇宙移民をエンダー(辺境者)*2として下層階級扱いする地球からの独立を掲げ、武装結社「バフラム」を結成。地球の連合宇宙軍UNSFへの抵抗を強めていく。

バフラム軍は民間企業NUT社と共同で、木星の衛星カリストから採掘されるエネルギー資源「メタトロン」を用いた機動兵器「オービタルフレーム(OF)」を開発する。
だが、その試作機「イドロ」のフレームランナー(OF操縦者)がUNSF火星駐留軍を襲撃し、火星の衛星ダイモスを基にした宇宙港ダイモス・ステーションを巻き込む大惨事「ダイモス事件」を引き起こす。
これにより火星と地球の緊張は高まり、OFの存在も公になってしまう。

NUT社はOF開発の場を木星の衛星エウロパの軌道上にある、中立の資源採掘支援用コロニー「アンティリア」に移し、特別な2機のOFを開発した。
この動きを察知したUNSFはアンティリアを武装占拠してOFを奪取するが、バフラムもまた奪回のためアンティリアを襲撃する。

アンティリアに住む民間人の少年「レオ・ステンバック」は、バフラムによる襲撃の混乱の中で、偶然にも2機の片割れ「ジェフティ」に乗り込んでしまう。


評価点

「簡単・高速・かっこいい」アクション

  • 主人公機・ジェフティは、頭・胸・肩・そして足、あらゆる部分がシャープで格好良いシルエットをしている。
    • 人型OF全機に共通して、足がつま先に向かって窄まり尖っていく、そのままでは自立不可能な形状が際だって特徴*3
    • そして常時浮遊状態&高機動であり、簡単操作で高速且つスタイリッシュな戦いが出来る。
  • 近接攻撃ではブレードを振り回し、遠距離ではショットやレーザーで攻撃する。
    • 接近戦における鍔競り合い、効果音、カメラワーク等の演出により、通常攻撃でありながらスピード感と迫力は相当なもの。
  • ダメージを受けても随所にあるメタトロンを取得することで簡単に修復が行える。

多彩な大型オービタルフレーム(ボス戦)

  • ボス戦の多くは巨大な機動兵器との対決になり、毎回攻略方法が異なるため、多彩なボス戦が楽しめる。
    • 次回作ではこちらと同サイズのボスがメインとなった事で大型ボス戦はかなり少なくなっており*4、本作のボス戦を楽しんだプレイヤーからは残念がる声も上がったほど。

事実上のヒロイン 人工知能 ADA(エイダ)の機微

  • ジェフティに搭載された人工知能「ADA」(CV:芳野美樹)は、操作説明から始まり、本編に出ずっぱりである。
    • ADAは、無機質な女性の声で話し実際に考え方もドライだったが、主人公の行動に触れていくうちに主人公の(非論理的な)考えに一定の理解を示し、最終的には主人公の身を案ずるまでになる。
    • 当初は「敵にとどめをささないなんて非論理的だ。私には敵を殺すべき17の理由を提示できる」「ミッション遂行が第一。人を助けるなんて非論理的だ。それにあなたの技量ではミッションに深刻な問題を引き起こす」のような内容を話す。
    • だが、後半にもなると敵にとどめをささないことに口出しをしなくなったり、おとなしく生存者の位置を表示するようになり「人の命を尊重するというあなたの考え方はわかりました。非論理的ですが」のように話すようになる。
    • 特に終盤、敵に捕らわれて絶体絶命の中で主人公がADAも助けようとするシーンや、ラストミッション前の主人公とADAのやり取りは必見。そしてADAの変化が主人公にも影響を及ぼし、次回作へと繋がっていく。
  • また、ADAがウイルスに感染した時のこれまでのセリフを使った支離滅裂なセリフの演出も良い。
    • ウイルスに感染しリカバーする段階で、ADAに変化が生じたとも考えられる。
  • ちなみに、おまけの声優コメントによると芳野氏のADAのイメージは「プログラムと言うよりは、頭はいいけど世間知らずな女の子」らしい。
  • 作中には、主人公と同年代の少女も出てきて一緒にジェフティに搭乗するが、見せ場はさほどではない。やはりADAが実質的なヒロインと言える。
    • ただ、その少女も終盤にはストーリーに大きな影響を与えたり、被害を出しまくると容赦の無い罵声を浴びせたりと、存在感が無い訳ではない。

主題歌

  • オープニングテーマ『KISS ME SUNLIGHTS』とエンディングテーマ『flowing destiny』は名曲と名高い。
    • また、周回プレイでエンディングテーマが『A Light with a name of HOPE』に変化し、これらエンディング2曲のアレンジBGMも効果的な場面で使われている。
      • 奇数周は『flowing destiny』へ、偶数周は『A Light with a name of HOPE』へと交互に変化するが、実はエンディング時に特定のボタンを入力し続けることで選曲が可能。

その他

  • エンディング後には2プレイ可能な対戦モードが追加される。
    • 2周目クリアかコナミコマンド系の裏技で使用可能機体とステージが増える。
    • 使用可能機体は主要機体は僅かで後は雑魚OFばかりだが、そもそもストーリーに登場する機体の種類が少ないので仕方ないのだろう。

賛否両論点

主人公の性格

  • 主人公のレオはロボット物としてはある種定番の内向的な少年で、「なりゆきで搭乗してしまいロボット兵器の操縦を嫌がる」「しかし他の人たちとは比べ物にならないほど操縦がうまい」というプロットもありふれたもの*5
    • それは良いのだが、特に前半はジェフティの操縦を頑なに拒否したり、他者を心配する少女に「こんな時に他人なんかどうでもいいだろ」と言い放つなど、後ろ向き且つヘタレな言動が目立ち、境遇的に仕方ないとしてもプレイヤーを苛立たせがち。「ヘタレオ」などと呼ばれる事も。
    • 無論、その分消極的ながらも奮戦する姿や大きく成長する様子が描けており、特に終盤には見違えるほどの成長を見せ、次回作では最早別人のように逞しくなっている。また、ヘタレなだけではなく人命を優先する姿勢は論理的思考しか出来ないADAにも変化を与えており、次回作を含めストーリー上でも重要な役割を担っている。
    • しかしそれ故に、うじうじと泣き言を言うイベントは長めに作られており、序盤を乗り切ったと思ったら後半でまたそういうシーンが出てくる。スタイリッシュなアクションを楽しんでいる最中に水を差されるようで、好みが分かれる作風になっている。

リアルな被害状況

  • 戦闘で破壊された街はステージを切り替えても復活せず、被害が広がる度にADAから「戦闘による周辺への被害増大」と告げられる。リアルではあるが、これも爽快なバトルの最中に水を差される要素である。
  • 基本的にサブイベントの民間人救出ミッション以外では実害は無いのだが、あるイベントまでに街を破壊し過ぎるとバッドエンドになってしまう*6

問題点

短いプレイ時間、お使いの連続と物語のぶつ切り

  • ストーリークリアまでは5~6時間程度。ストーリーの流れも「コロニー襲撃の中ジェフティに乗り込んでしまったレオが、ジェフティ回収を図る連合宇宙軍の元へジェフティを届けるべく民間輸送船・アトランティス号を目指す」という以上のものがない。
  • アトランティス号までの道のりには幾多の困難があり、それらを乗り越えて行く形で進行するが、いずれも「○○へ進むために××が必要」というお使いイベントの繰り返しであり、あっちこっちへとお使いに飛び回る。
    • コロニー・アンティリアをあちこち飛び回るのはテンポが悪く、ストーリーもあまり進まない。終始敵襲中の暗いスペースコロニーが舞台という事で、本作特有の神秘的且つ繊細な雰囲気が出ているとも言えるが、悪く言えば地味。
      • マップ数は少なくスケール的にも小規模で、ロケーションも豊富とは言い難い。一応、市街地ばかりではなく山中や宇宙港などもあるが、基本はあまり代わり映えしないマップが大半である。
      • 本作の売りの巨大OFも数は3体と多い訳ではなく、あくまで次回作よりは多かったという話。ボス戦自体も少なめである。
    • 続編『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS』に「PREVIOUS STORY」という本作のダイジェストムービーが収録されているが、ボス戦などのプレイ映像が入っていても10分で終わる内容。
+ 以下ネタバレあり、格納
  • やっとコロニーを出ると、ジェフティの兄弟機であるOF「アヌビス」が現れるのだが……「今は勝てない」と言われ、無敵状態のアヌビスから一定時間逃げ回るだけ、しかもこれがラストバトル。
    • ジェフティ/ADAには「(バフラムの拠点がある)火星で果たす任務がある」という設定がかなり序盤から開示されているが、このアヌビス戦の直後に「敵本拠地での自爆」という衝撃的な内容が明かされる上に、コロニー/木星圏を脱出した時点でゲームは終わってしまう
      • 本作がオマージュしたと思われる『機動戦士ガンダム』(いわゆるファーストガンダム)に例えるなら、「アムロがガンダムに乗ってからホワイトベースに到着するまで」に「アッザムのような大型機も登場する派手な戦闘シーン」があるものの、ストーリーそのものは「大気圏突入で打ち切り」とでもいうぐらい進んでいない。
    • 監督・脚本の岡村憲明氏も「思いっきり中途半端」「大ブーイングだった」と認めている。
      • アヌビスとの決着、ジェフティとADAの行く末は続編に持ち越されることとなる。

その他システム

  • 掴みの操作感がイマイチ。サブウェポンも全体的に使い難すぎる。
    • ほとんどの敵はブレードとショットでどうにかなるので、サブウェポンの種類の割には取れる戦術の幅が狭い。実質的なラスボスも追尾弾の「コメット」一つで十分。
  • 戦闘エリアが狭く敵から離れようとするとほぼ毎回「この先は戦闘エリア外です」とアナウンスが入り、ぶつからないと見えない壁に阻まれる。

総評

まだ改善の余地はあるが、アクション・グラフィックという基本的な設計は本作にてほぼ確立されており、作風と似合った主題歌・BGMも含め、美術面での評価は高い。
しかし、プレイ時間的には短時間でやりこみ要素も少なく、ストーリー的には冗長で話が進まない上に打ち切りエンド……と、ゲームとしての評価は芳しくない。
一部からは「Z.O.E 有料体験版」「MGS2体験版のおまけ」とも揶揄されるほどである。
続編ANUBIS ZONE OF THE ENDERSでは反省を活かしつつ、長所は本作以上に洗練され、一転して高い評価を受けている。

『ANUBIS』から逆戻りしてきたプレイヤーや、『HD EDITION』でカップリング移植されたこともあって、本作も評価を見直される流れが生まれた。
「近接戦時のチャンバラ」「多彩な大型オービタルフレーム」「プリレンダムービーのストーリーパート」等、続編では受け継がれなかった本作のみの要素も多い。
こういった作風や、似て非なる戦闘のスピード感を『ANUBIS』以上に評価するファンもいる。
興味を持った人はぜひ『ANUBIS』とセットでプレイし、レオとADAの戦いの軌跡を追ってみてほしい。


余談

  • エンディングのクリア後評価で高ランクを取ると声優のフリートークを聞くことができる。
    • 声優はプレイした難易度によって異なる。全4種類。
    • 条件は、コンティニュー回数4回以下、人助け評価が5つ全てB以上&内1つ以上はA。
      • 人助けは意識してプレイしないとCCCCCになることもわりと普通。B4つA1つでも結構難しい。
    • なお高ランクを取らなくても、エンディングのリザルト画面でコナミコマンド系の裏技を使えばランク評価にもプレイ難易度にも関係なく任意のフリートークを聞くことも可能。
  • 2001年9月には本作と『ANUBIS』の間を描く『Z.O.E 2173 TESTAMENT』がゲームボーイアドバンスで発売された*7
    • 開発は『スーパーロボット大戦』シリーズを手掛けていたウィンキーソフトであり、作風もジャンルもそちら寄りになっている。
  • 音楽ゲーム『beatmaniaシリーズ』と相互に楽曲が登場している。
    • 本作には『beatmania IIDX substream』より「THE EARTH LIGHT」がcityのBGMとして使用されている。この曲は後にPS版『beatmania APPEND 5thMIX』や、『Dance Dance Revolution 2ndMIX CLUB VERSION』にも収録された。
    • PS版『beatmania APPEND GOTTAMIX2 ~Going Global~』には、本作のBGM「Anubis(impossible)」のセルフリミックス曲「Z.O.E (gamelan minimal mix)」が収録されている。リミックス名通り、ガムラン要素を強く押し出した民族音楽風のアレンジになっている。
  • 岡村氏は本作の後で小島組を離れ、続編『ANUBIS』には関わっていない。それについてはブログで語られていた(アーカイブ)。
    • 『ANUBIS』はストーリーも本作から直接繋がってはいるが、主人公の交代が行われ、作風も大きく変化している。しかし当初の予定ではレオが主人公に続投した『Z.O.E 2』が考案されており、岡村氏のブログで大凡のプロットが公開されていた(アーカイブ)。本作の路線を引き継いでいる為か、ヒロイックな展開でラストも大団円だった『ANUBIS』に比べてかなり重い話且つ切ない結末だったようだ。
      • ただ、氏が語る通りこれは没ネタであって、「本来のストーリー」ではない点に注意。
      • 後に続編の(PS2版)公式サイトにて、正式な本作の後日談・続編までの間を描いたショートシナリオ「Story Between」が公開されている。
    • なお、岡村氏はコナミには引き続き在籍しており、『スーパーボンバーマン R』『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』といった往年の定番タイトルの復活作を手がけている他、『ANUBIS』もPS4版ではプロデューサーを務めている。
  • 主人公機・ジェフティは、エジプト神話のトート(トト神)に由来している。
    • ただし「ジェフティ」という名前は、完全には未解明である古代エジプト語表記の「一説」に過ぎず、正式なものではない。
    • この元ネタのマイナーさと、続編『ANUBIS』で知名度を上げたこともあって、「ジェフティ」をネット検索した場合の結果は、9割が本機のことである。

よりシリーズを知るために:OVA『Z.O.E 2167 IDOLO(イドロ)』

ゲーム本編と同時発売、プレミアムパッケージ版では追加シーンを加えてゲーム本編と同梱されたOVAがZ.O.E 2167 IDOLOである。
2001年にテレビ東京系で放映されたテレビアニメ『Z.O.E Dolores,i』は、この『IDOLO』の直接の続編。

この『IDOLO』は『Z.O.E』の前日譚であり、試作OF「イドロ」のテストパイロット・ラダム*8と彼の恋人・ドロレス、そしてラダムを慕う女性士官・ヴァイオラ*9を中心として、バフラムが地球に対抗すべくOF開発を進める中で起こった異変、そして連合宇宙軍とバフラムの開戦のきっかけとなった「ダイモス事件」の悲劇が描かれている。
パッケージ版は55分の構成となっていて、ゲームでは描ききれなかった『Z.O.E』の世界観が掘り下げられ、随所にゲームとの関連性を匂わせる描写がちりばめられており、ファンアイテムとしては実に申し分のないものとなっている。
本作の視聴タイミングは『Z.O.E』のクリア直後を推奨。アニメのエンディングと『Z.O.E』本編のオープニングがリンクする演出は、言葉にならない感動と余韻を与えてくれるだろう。
また、単体のアニメ作品としても、質の高いストーリー・作画・演出が光る良作である。『Z.O.E』シリーズをプレイする際にはこの作品の視聴も併せてお勧めしたい。

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最終更新:2023年11月14日 16:57

*1 『新機動戦記ガンダムW』の作画監督、『機動新世紀ガンダムX』のキャラクターデザイン及び作画監督をほぼ全話務めたことで有名。『MGS1』の頃にはコナミに在籍していた模様。

*2 タイトルの『ZONE OF THE ENDERS』には「辺境者たちの領域の物語」といった意味合いになる。

*3 着地時にはランディングギアが開く。「動かして楽しい要素のデザイン」とのこと。

*4 大型OFは実質1体。OFに限らなければ列車や戦艦との戦いと言ったシーンはある。

*5 『機動戦士ガンダム』と『新世紀エヴァンゲリオン』を足して二で割ったようなものとも評される。

*6 相当破壊しなければ発生しない。内容もかなりシュール。

*7 タイトルの通り2173年の出来事である(本作は2172年、『ANUBIS』は2174年)。

*8 ゲーム本編の終盤でも名前のみ言及されている。

*9 ゲーム本編では敵として登場、実質的なラスボスも担当。