TM NETWORK LIVE IN POWERBOWL

【てぃーえむねっとわーく らいぶ いん ぱわーぼうる】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 CBS・ソニーグループ
開発元 ジェンクリエイティブハウス
ジーアーティスツ
発売日 1989年12月22日
定価 6,200円(税別)
判定 クソゲー
ポイント 薄いゲーム内容
理不尽難易度
グラフィック、サウンドは良好
バカゲー要素あり



地球の未来は いま 少年の手に 委ねられた…



概要

  • 1999年12月24日の13時42分、人工衛星「コロセウム」が突如暴走し、世界の各都市を攻撃。世界中の核が爆発し、「COME ON EVERYBODY」に合わせて地球は壊滅した。そんな中、たった一人、主人公だけは10年前にタイムスリップという形で生存。主人公は日本の実在バンド「TM NETWORK」(以下TMN*1)と共に10年後の地球滅亡の危機を回避するというSF風アドベンチャー。
  • 開発元の片割れは、後に『ポポロクロイス物語シリーズ』を手掛けることになるジーアーティスツ(後のepics)。

システム

よくあるコマンド選択式アドベンチャーだが、独特の要素もいくつかある。

  • この手のゲームによくある「会話」コマンドは存在しない。登場人物とはストーリーの流れで2択~3択の中から会話対象や選択肢を選ぶ形式になっている。会話の最中はその場を調べることはできない。
  • セーブはパスワード方式で、一定のシーンまでゲームを進める毎に表示される。

MUE

このゲーム最大の特徴であるコマンド。愛用のパソコン「MUE」を使用して電子機器類へアクセスし、操作したり情報を得たりする。
リスト選択で電話を掛けたり、電子ロックの解除にもこのコマンドを使う。
通常の「しらべる」コマンドでは大した情報を得られないものも、このコマンドで調べれば反応が異なるため、使い分けが重要となる。

  • 犯罪行為的な使い方が多いため、使用するデータを間違えたりするとすぐさまゲームオーバーになりがち。
    • なおこのPCは当時(どころか主人公のいた1999年)から見ればかなりのオーバーテクノロジーであり、ラジカセに侵入して音声を加工したり、電話から相手の住所を逆探知する事まで出来る。またクライマックスでも(結構トンデモじみた)大活躍をする。
      • 電話をかける時もわざわざ番号をMUEにメモリーして公衆電話などをハッキングする。普通にかけろ。
  • 電子機器以外のものをこのコマンドで調べても通常は何も起こらないが、電子機器以外のものをこのコマンドで調べなければならない場面もある。逆もまた然りで、電子機器類でも通常のしらべるコマンドが必要となることも。

ミニゲーム

ストーリー終盤では2つのミニゲームがあり、どちらもクリアしなければ先へ進めない。

  • 3D迷路
    • がんばれゴエモンシリーズなどでおなじみ。画面右下のミニマップを参考に、巡回する敵を避けながら最奥に監禁されている少年マークを救出する。マーク・パンサーではない。
  • カーチェイス
    • 障害物や対向車などを避けながら、敵の追跡をかわすアクションゲーム。信号のある分岐点でどちらに行くかを選択し、一定距離を走り切ればクリア。
    • カーチェイスと銘打っているものの、敵のものと思わしき車は登場しない。5回クラッシュして車が壊れた時のみ敵につかまりゲームオーバーとなる。

問題点

  • ボリューム
    • ADVとしてはかなり短く、スタジオ、マンション、研究室など数か所を何度か調べり、ミニゲームをクリアすれば終わり。
  • 難易度の高さ
    • 前述のストーリーの短さを補うためなのか、難易度はかなり高くとにかくストーリーを進めづらい。
    • 最も難易度を高めている要因が、探索パートでのヒントの少なさ。ほとんどの場合ノーヒント。
      • スタジオ、マンション、研究室など、1か所をしっかりと調べきって情報やロックデータ等を入手することで次の場面へ進むという流れを繰り返すのだが、各場面で何をすれば次へ進めるのか提示されることがほとんどない*2*3
    • 一見何もないテーブルの一部分を調べて鍵を見つけたり、駐車場の看板を調べて移動先を増やしたりするなど、ただ調べるだけですら理不尽度が高い。
    • また、選択肢のミス等で即ゲームオーバーになる、いわゆる即死系トラップも多い。
      • しかし即死選択肢はロック解除のデータを間違えたり、常識的に考えればありえない選択*4が大半を占めるため、当時のADVにありがちな即死面での理不尽度は低い。
    • 終盤のミニゲーム2種も難易度が高い。
      • 特に3D迷路は、捕まると即ゲームオーバーの敵が巡回している中で道を探さねばならない。
        マッピング等で道順さえ覚えれば比較的楽になるが、そこに至るまでの苦労は並大抵ではなく理不尽度を高めている。
      • 救出対象を発見して脱出する際は敵の巡回パターンが変わってさらに苦労が増えるが、道順を覚えて慎重に移動すればそれほど難易度は変わらない。ただし鳴り響く警報音が非常にうるさく、焦りと不快感を生む。
  • TMNの扱い
    • ゲームのメインとなる探索パートでは、TMNのメンバーが関与することはほぼ皆無。探索パートを終えた節目節目での会話やクライマックスのライブシーンくらいしか出番がない*5
    • メンバーと初対面した後には連絡先を教えてもらえるが、シナリオ進行に関与するタイミング以外では取り次いでもらえなかったり話し中だったりで会話はできない。
      全編を通してたった2回しか電話に出てもらえず、そのうちの1回はマネージャーである。
    • 終盤は彼らの活躍のシーンやTMNならではの演出も用意されているのだが、ファンがそれらを堪能するには、前述の高難易度が壁になってしまう。

変な点

  • 上記のMUEのオーバーテクノロジーぶり、それを見せつけられたとはいえ主人公の話を割とあっさり信じるTMNのメンバー、など冷静に考えると笑えるツッコミ所も多い。
  • 特に、敵に捕らわれていた少年を救出し、脱出した主人公をTMNが迎えにくる場面。主人公達を車に乗せ、そのままカーチェイスに移るという盛り上がるシーンなのだが、よりによってTMNが乗ってきた車はでかでかと「TM NETWORK」と書かれたトレーラー。目立ち過ぎである。
  • そもそも、OPの地球滅亡シーンのBGMが「COME ON EVERYBODY」というのは実に謎の選曲である。まさか冒頭の「壊れる 壊されてゆく」のフレーズと掛けているのか。しかも衛星がリズムに合わせて地球を攻撃しているのが何とも…*6

評価点

  • 演出、サウンド
    • FCのサウンドとしてはクオリティが高い。コンピューターをテーマとした本作との一体感も高い。
    • BGMとして「COME ON EVERYBODY」や「Self Control」などTMNの曲のアレンジ版も採用されている。これらもFCの音源としてはクオリティが高い。
    • ライブシーン、タイトル画面、登場人物の顔グラフィックなどは(FCクオリティではあるが)かなりレベルが高い。
  • 詰み防止
    • フラグ回収忘れなどによるハマリなどは発生しない。選択肢を間違えると少し進めてからゲームオーバーになり進行不可となるケースが1か所だけあるものの、その場合は本来提示されるはずのパスワードが提示されないという対策済みである。
  • ストーリー
    • 破綻もなく、伏線や意外な黒幕、クライマックスに向けてのどんでん返しなど、丁寧に作りこまれており、読み進める分には十分楽しめる出来となっている。
    • 過去にタイムスリップしてTMNの協力を得るというトンデモな設定ではあるが、背景自体は「戦争による利潤を狙う死の商人が起こしたテロ行為」「予期せぬコンピューターの暴走」「核による人類滅亡」といううすら寒く説得力のあるものであり、決してふざけてはいない。タイムスリップの下りは「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」と掛けたのだろうか。
    • 脇道に関してもなかなか作りこまれている。バッドエンドに至るまでの種類は豊富で、バッドエンドでのみ登場するモブキャラも多い。
    • TMNの存在意義が問われがちだが、シナリオにはうまく組み込まれている。特に最後のイベントに関しては、彼らの様な大物アーティストでなければ成し得ない大仕掛けが登場する(ついでにTMNの曲も流れる)。
      • なお、このイベントで操作を失敗すると10年が経ち、無情にも地球は滅亡する。

総評

演出などはFCにしては頑張っており、ストーリーも良い。
しかし謎解きは理不尽、タレントゲーにありがちな出来である。
これで難易度調整が真っ当な普通のADVであったならもっと良い評価がされていただろうが…。


余談

  • 本作のヒロイン的存在として「ミツコ」と言うキャラが登場するが、TMNに歌詞を提供していた小室みつ子とは関係無く、モデルを務めた人物も別人である。名前の由来ぐらいにはなっていたかもしれないが。
  • 本作が発売された前年の1988年の紅白歌合戦にTMNが初出場した際に演奏した曲が本作のオープニングで使用された「COME ON EVERYBODY」であった。
  • クソゲーオブザイヤー2009のオープニング動画は、本作のパロディである。
  • TMNはその後1994年に一度解散した(正式には解散ではなく「プロジェクト終了」という形で活動に幕を引いた。)が、本作の未来である1999年に偶然か否か再び再結成している。更にいえばある楽曲でも「1999」が歌詞にも存在する。
    • 同時に1999年は皮肉にも小室ファミリーブームが沈静・衰退化していった年でもある*7。以後ヒット曲が出なくなっていき、小室哲哉の身の回りに起こる離婚・トラブルも含め後に自身がある事件を起こすきっかけに繋がっていった。田代まさしのプリンセスがいっぱいといいソニーが出すタレントのゲームソフトは何か暗示的なものを思わせる。
  • 本作の7年後に小室氏がプロデュースしたプレイステーション用ソフト『Gaball Screen』*8が発売された。こちらは各ステージに散りばめられた音を集めることで一つの曲になっていくという探索型ゲーム。このゲームにもTM NETWORKのメンバーが登場している。

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最終更新:2023年06月30日 06:48

*1 TM NETWORKの略称。ただし1990年から1994年までは正式なグループ名としてTMNを名乗っていた。

*2 例1:部屋の留守番電話、PC、写真などをすべて調べた後、特定の人物に電話を掛けるまで部屋から出られず、次に進めない。誰に電話を掛けるかはノーヒント。

*3 例2:ある人物から託されたフロッピーディスクの中身を見るために必要なパスワードは完全ノーヒント。一応、作中で頻出する単語が正解であるものの、事実上勘に頼らざるを得ない。

*4 例えば、「僕は未来からタイムスリップしてきた」を選択すると、警察を呼ばれて精神鑑定までやらされるバッドエンドがある。この場面ではアポなしで自宅に押し掛けインターホン越しに話しており、後述のTMNのようにMUEの性能を見せられたわけでもなく、そんな状況でこんなことをされたら当然の対処である。

*5 これらの要素自体はテキスト量は多く、メンバー(特に木根尚登)のキャラも立っている。

*6 しかも地球の絵が一切動かないため、日本とその周辺ばかりが攻撃されているように見えてしまう。

*7 1994~1997年に渡って10組以上のアーティストをプロデュースしていたが、1999年時点ではTMNを除くと4組まで減少しており、多くのアーティストが小室プロデュースから離れている。これは、最初から契約期間が決まっているためであり、いずれは小室ファミリーから「卒業」させるという意味合いが込められていたのだが、新たなブーム、ムーブメントの台頭に押されて後が続かなかったのである。それと同時に当時の稼ぎ頭だったエイベックス側の関係者との拗れも起きてしまい、ソニー側をも巻き込んだことを始めとして後述のトラブルが起きてしまう。

*8 「ガボール スクリーン」と読む。ちなみに本作と同時期にメディアミックス展開した『CAROL』に架空のバンドとして登場する。