ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル クリスタル・ベアラー

【ふぁいなるだんたじー・くりすたるくろにくる くりすたる・べあらー】

ジャンル アトラクションアドベンチャー
対応機種 Wii
発売・開発元 スクウェア・エニックス
発売日 2009年11月12日
定価 7,340円(税込)
判定 賛否両論
ポイント クリスタルクロニクルの中でも特に異色の作品
FFとしてもアクションゲームとしても癖がある
従来シリーズの未来設定だが、世界観は独自性強し
FFらしからぬ(?)王道ストーリーとキャラクター
独特の要素が多いのに説明が尽く不親切
FFCCシリーズの中でも特に賛否が分かれる
ファイナルファンタジーシリーズ
クリスタルクロニクルシリーズ FFCC / RoF / LK / EoT / LD / TCB



プレイ・ヒーロー



概要

Wiiで展開されたクリスタルクロニクルシリーズの最終作品。
アクションRPG、国作り、タワーディフェンスと来て、最後はまさかのアクションゲーム(RPG要素も薄い)として発売となった。
主人公は引力を操る能力を持つという設定で、Wiiリモコンを使った引力操作によるアクションがメインのゲーム。
主な略称は『FFCC TCB』(FINAL FANTASY CRYSTAL CHRONICLES: THE CRYSTAL BEARERS)。

キャッチコピーの通り、未熟な主人公の成長物語ではなく、最初から強いヒーローである主人公の活躍を描く、思い切りの良い展開・ゲーム内容が特徴である。
これまでのシリーズの世界観や設定は今作でも健在だが、一番遠い未来という設定のため、機械文明の発達を始め毛色がかなり異なるものとなっている。
なお、制作指揮はサガシリーズで有名な河津秋敏が関わっており、氏の趣向がゲームの其処彼処にちりばめられている。

特徴

  • マップはオープンワールドゲームのように開けたものとなっている。
    • 基本的に世界は1つのマップとなっている。昨今のゲームでよく評価要素として挙げられる、シームレスの類である。イベントシーンへの切り替わりも画面を暗転させる事無く即座に行われる。
    • オンラインRPGに近いが、プレイヤーは基本的には1人(協力プレイも一応可能)。システムの都合上RPG的な要素が意図的に薄められており、ファイナルファンタジー=RPGと見ていると驚かされることになる。
    • 勲章という実績システムがあり、マップを巡ってこれを集めていくのがゲームの重要な要素となっている。
  • 主人公は身体の一部がクリスタル化した「クリスタルベアラー」の一人で、彼の独自能力として引力を操る事が可能。
    • 引力を操ることで、物、敵、など、大半のものを動かし、持ち上げ、投げられる。
    • 主人公は最初からある程度の力を持っているという設定の為、アクションは既に最初から習得済。能力強化は可能だが新しいスキル習得などはない。
    • 目の前にあるものはデフォルトの状態でほぼ全て投げたり動かしたりできるため、自由度はかなり高い。
  • これまでのクリスタルクロニクルシリーズと異なり、キャラクターの頭身が3~5頭身のデフォルメ体型から8頭身以上のリアル体型となった。
    • これにより、リルティ族の違和感が尋常でないことになっている。
    • ある意味、ナンバリングにおける『VI』以前と『VII』以降の違いを表していると見れない事もない。

評価点

  • 自由度がとにかく高い。
    • 主人公が成長する物語ではなく、ある程度成熟した青年であるが故に、意図して悪事を働くプレイもできてしまう。
      • 一番有名であろうことは、通行人を能力で捕縛し、身体を揺らして強制的に有り金を全部出させることが可能な点。
        やりすぎると本当に捕まる
    • ジャンル名「アトラクションアドベンチャー」に偽りは無く、フィールドの全てがアトラクションと表されるほどにマップ上の殆どのオブジェクトに干渉が可能である。そのアトラクションのテーマもフィールドに応じて異なる。
    • その自由度と開放感を引き立てるようなシームレスで地続きなフィールド、後述するようにイベントでも途切れないゲーム体験は当時のFFでは革新的であり、後年のハイスペック機で出た作品にも劣らない。
    • 本筋のストーリーはあるものの、実は本作においてはやや添え物的な要素が強く、小ネタやサブ要素が非常に豊富となっている。
      • かといって内容がお粗末なわけではない。キャラクターの魅力自体はよく描けている。ただ本当にあっさりしており、その為中弛みは一切無い。この辺りもサガシリーズに通じるものがある。
      • FFシリーズで揶揄されがちな「ムービーゲー感」は同シリーズ作品と比較すれば薄めで、ゲームそのものに集中出来るという意見も。
  • 「Wiiリモコンを活かしたゲームを」という観点で作られており、コントローラーとの親和性が高い。
    • 冒頭でのシューティング面からしてWiiリモコンのポインティングで行う。
    • 引力を操るという設定なので、Wiiリモコンで標的をポインティングして物をロック・掴みながらあれこれ出来るという点は、Wiiというハードをよく理解して作られている。
    • 操作はリモコン(プラス含)&ヌンチャクのみ。クラシックコントローラ、ゲームキューブコントローラ、Wiiリモコン単体などでは操作不可。
    • 戦闘も基本はこれに準ずる。障害物を持ち上げて敵にぶつけたり、敵そのものを掴んで敵同士にぶつけるという荒業も可能で、戦闘シーンでできることはかなり多い。
      • 反面、剣や銃といった従来のアクションゲームでポピュラーな要素は通常戦闘においては基本使えない。
    • 後年のゲームに先駆けたように、リモコンの2ボタンでいつでも写真撮影が可能。しかも操作時のみならずイベントやムービー中でも自由に撮影できる徹底ぶり。
  • 基本システムに囚われないプレイアブルイベントが随所に存在する。
    • 冒頭のシューティング面や飛空艇操作などを始め、サブイベントにおいても波乱の展開がとても多く、プレイヤーを飽きさせない。
    • こういった本筋から外れた要素は「同じシステムのゲームに集中したい」ユーザーからは好まれないことも多いが、本作においてこれらイベントの多くはゲームオーバーの概念が無い為比較的ストレスが少なく、ミニゲーム感覚で楽しめる。
      • 全てを好奇心の対象と捉える主人公の態度もあり、これらはストーリー的には「解決しなければならない問題」であってもプレイヤーにとっては「楽しむアトラクション」としての性質が強い。こう言った作りも本作を「アトラクションアドベンチャー」たらしめている。
    • プレイアブルイベントはクリア後自由に再プレイが可能。本編のシーンに思いを馳せるもよし、ひたすらにやりこんで高記録を狙うもよし。
  • 開放的なゲーム性を反映してか、シナリオとキャラクターもそれに沿った陽性のものであり概ね好評。
    • 主人公・レイルは「俺に任せろ」が口癖であるほどの自信家且つ、その言葉に違わない実力の持ち主であり、アトラクションを楽しむように困難を突破していく。そんな彼の立場で物語を追う訳なので、ストーリーは徹底して前向きで思い切りの良いものとなっている。
    • 他にもそのツンデレぶりで作中一の萌えキャラ(?)とも評されるライバル・アミダテリオン、ふてぶてしいトラブルメーカーのヒロイン(?)・ベル、良からぬ事を企んでいそうで本当に悪党だった敵役・ジュグランなど、ある意味FFらしからぬ(?)清々しいまでにベタなキャラクター配置と王道冒険ストーリーは新鮮に捉えられた。特に近年のFF(とりわけナンバリング作品)でありがちで鼻についた、ウジウジしたキャラクターや鬱展開が殆ど無い点はポイントが高い。
    • ムービーと操作画面の切り替えもシームレスであり、波乱且つ小気味好い展開と相まって、まるでアクション映画のような軽快な感覚でストーリーを楽しむ事が出来る。
    • 本作のシナリオは『サガ フロンティア2』以来、久しぶりに河津氏自身が手掛けたものである。
      • 軽快であっさり目、主人公はヒーローなので悩まず徹底して前向きで鬱展開も無い。しかし繰り返しになるが内容がお粗末などという事は無く、終盤には重い展開もあり、主人公も最後まで軽いノリという訳ではない。特にラスボスとの対峙シーンでの主人公の台詞は『サガ』を彷彿させるもので、河津氏の作風が活きている。
      • それでいて、ラストバトル〜エンディングに至るまで思い切りの良さはブレることは無く、最後まで「ヒーロー」をプレイする事が出来る。
  • 音楽面も高評価。
    • 岩崎秀則・山崎良によるBGMは各種ロック・ワールドミュージック・オーケストラとジャンルがとにかく多彩かつ高クオリティで、場面演出とのマッチングも秀逸。

賛否両論点

  • 案の定、独特のシステムには賛否が分かれている。
    • FFCCシリーズとして異色というよりもむしろFFとして異端の存在であり、引力を使ったアクションゲームという事で正道からも外れている。
      • 敵を持ち上げて利用するなど独特のプレイングが可能な一方で普通の攻撃手段がなく、投げるものが無くなって敵自体をひたすら投げるしかなくなるケースも多い。
      • ボス戦も数が少ないうえ単調。攻撃力を強化していないとラスボス戦は苦行としか言い表せないものになってしまう。
    • 一部のフィールドは敵の出る"瘴気ストリーム状態"と、住民のいる普段の状態を一定時間ごとに繰り返す。
      • 瘴気ストリーム状態ですべての雑魚を倒し、"平定"することによって最大HPアップのアイテムを得られる。しかし一定時間ごとに繰り返す仕様が仇となり、戦闘中時間切れで勝手に戦闘が終わってしまうという問題が発生している。
      • 時間を調整するアイテムがある為、最悪でもアイテムに物を言わせたゴリ押しを敢行すればどうにかなるが、果たしてこれを救いと呼んでいいものか。
    • シナリオ上の強制戦闘もほとんど無い為、サブイベントをスルーしてしまえば戦闘をほぼ行わずにクリアする事ができてしまう。
    • こうした独特のシステムに合わせて、問題点で取り上げるユーザーの遊びやすさを考慮していない不親切さが、本作の評価を下げてしまっているという印象は否めない。
  • クリア自体はそんなに難しいものではなく、やりこみ要素を捨てればすぐに終わってしまう点。
    • ただその自由度の高さの分、世界観を楽しむという意味でのやりこみ要素はとても多いので、このゲームの性質に噛み合ったプレイヤーであればそう簡単に終わることはないだろう。

問題点

  • 全体的にユーザーに対して不親切。
    • 軽快なのは良いのだが、するべき説明まで省いていたりして、プレイヤーを乗せて遊ぶ以前に振り落としてしまうレベルの不親切さが散見される。
    • まず初っ端からシューティングステージが始まるのだが、ストーリーの流れでいきなり導入し、ボタン操作だけが前触れ無く表示される。この時点で付いていけない人を多数出してしまった。
    • そうでなくても非常に独特の操作を要求される本作だが、チュートリアルは一切無い。
    • 操作すべきボタンなどは必要に応じて表示されるのだが、操作の独自性故に「本当にこれでいいのかわからない」という事態が多く発生する。
    • 「FFCCシリーズの過去作品をプレイしている事」がプレイヤーの前提条件として想定されているとしか思えない位、FFCCシリーズの世界設定に関する説明が無い。知らないプレイヤーは世界観についての基礎知識などが特に無いまま、よく分からないうちに物語を進めなくてはならない。
    • 特に、ボス戦など一部のイベントに時間制限がある点は不満点としてよく挙げられる。無論この時間制限についても、事前の説明は一切無し。
    • 何故かムービーがスキップ不可。初期の『キングダム ハーツ』の頃まで逆行したような問題を抱えている。
      • いくら軽快な流れとは言え、強制的にムービーを観せられるのは初見はともかく周回プレイではきつい仕様。しかも2周目以降のみ視聴可能なムービーが存在するので、それを観るための再プレイのネックになってしまっている。
  • 住民達と基本的に会話できない。
    • 非常にアクション豊かな住民達などが町で多く見られるのだが、登場するキャラの殆どとは会話不可能。RPGとは違うということの表現かもしれないが、勿体無くも感じる。
    • ざわざわ声やちょっとした声は聞こえるが、意味のある会話はほとんど無い。置物…とまでは言わないものの、オブジェクト的な扱いになっている。
      • 町民が多くリアクションもバリエーション豊かではあるのだが、ぶつかると(こちらにその気が無かった場合でも)町民達は酷く嫌そうな顔をする。人によっては不快に感じる。
  • 最早河津作品恒例の、未完成と思しき部分の存在。
    • 具体的には先述した会話のオミットや全体マップの非実装など。特にマップの不備は街など入り組んだマップで迷いやすくなる一因となっている。
    • これらは発売日の前倒し*1や開発スタッフが一部『ファイナルファンタジーXIII』の制作へ流れたことなどにより開発スケジュールが逼迫した結果とされ、特に後者は影響が大きかったと攻略本でスタッフが述懐している。

総評

クリスタルクロニクルシリーズとしても、そしてファイナルファンタジーシリーズとしても、あげくアクションゲームとしてすら正道から外れたゲーム。

とはいえ客観的に見てもゲームとして欠陥があるわけではなく、キングダム ハーツシリーズ寄りのバリエーション豊かな遊びが提供されている。
シナリオ・キャラクターの面はヒロイックな主人公を始め全体的に好評で、説明不足とはいえ魅力的な世界観と相まって感情移入はしやすい。

しかし、その特異なゲーム性に対する認識がスタッフ側において甘く、説明不足などユーザビリティを度外視した点が目立つのは否めない。
その為か本作の評価については賛否が完全に割れてしまっており、特に否定意見に関してはFFという鋭い声のユーザーが多いシリーズなだけに、ことさら大きく響いてしまった様だ。

あらゆる点が異端、そして良くも悪くも河津作品の特徴が強く現れており、プレイヤーの感性が問われるゲームと言える。
よってFF・FFCCファンにもアクション好きにも安易に勧められる作品ではないが、このゲーム性に上手くマッチング出来たプレイヤーなら長く深く楽しむ事が出来るだろう。


余談

  • 宣伝として、要潤が発売前の本作をプレイした動画番組が公開されていた。

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最終更新:2023年07月05日 16:46

*1 当初は11月26日発売であった。