ディズニー エピックミッキー ~ミッキーマウスと魔法の筆~

【でぃずにー えぴっくみっきー みっきーまうすとまほうのふで】

ジャンル アクションアドベンチャー
対応機種 Wii
メディア Wii専用12cm光ディスク 1枚
発売元 任天堂
開発元 ジャンクションポイント
発売日 2011年8月4日
定価 5,800円(税込)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:A(全年齢対象)
周辺機器 Wiiリモコン、ヌンチャク対応
判定 なし
ポイント しあわせウサギのオズワルド復帰作
強いて言うなら3D版ミッキーマニア
正義にも悪にもなれるミッキー
フルコンプは結構難しい
出来は並だがキャラゲーとしては良好
ディズニーシリーズリンク


概要

ミッキーマウスを主人公として制作された3Dアドベンチャーゲーム。 タイトルの通り、ミッキーマウスの使う武器は魔法の筆であり、創造と消去の絵の具を使い分けることでステージの謎を解いていく。

オールド時代のディズニーアニメーションを基調とした世界観と、悲劇のディズニーキャラクターとして知られる『しあわせウサギのオズワルド』とスーパースター『ミッキー』の初めての共演作として話題を呼んだ。


ストーリー

魔法使いイェン・シッドの館に迷い込んだミッキーは、イェン・シッドが人々に忘れ去られたディズニーキャラクターたちの暮らす世界
『ウェイストランド』を作り出しているところを目撃する。

しかし、ミッキーは彼が立ち去った後、彼が使っていた魔法の絵筆を不用意に手に取ったために
ウェイストランドをめちゃくちゃにしてしまい、さらにインクの魔物「シャドー・ブロー」を生みだしてしまう。
シャドー・ブローに襲われたミッキーは辛くもその場を逃げ出した。

月日は流れ、大スターとなったミッキーの下に突如、シャドー・ブローが現れ、彼を鏡の中に引きずり込んでしまう。
その先でミッキーが見たものは、見る影もなく荒れ果てたウェイストランドであった。
異変の真相を解くため、ミッキーは魔法の絵筆を手に、ウェイストランドへ冒険に旅立つ。


特徴

  • ミッキーマウスは、基本操作となるジャンプとスピンの他に、イェン・シッドの館から持ち出した魔法の筆を使い、オブジェを創造する『ペイント』、削除する『イレーサー』の絵の具を使い攻略していく。
    • 道中においては住人の願い(いわゆるミッション)を聞き入れたりしながら進める。達成するとアイテムをもらうことが可能。
    • ステージのモチーフは本作の世界観の基板となるウェイストランドの他に、クラシックミッキーのステージやオズワルド作品のステージなど、過去の短編アニメーションがメイン。
      • イェン・シッドの存在などは『魔法使いの弟子』をモチーフとしているが、ミッキーマウスが鏡に入ってイェン・シッドの屋敷に忍び込むところは『ミッキーの夢物語』をモチーフにしているなど、過去作品の小ネタが随所に散りばめられている。
  • 80年振り*1にディズニー作品への出演を果たした、ミッキーマウスの先祖的キャラクター『しあわせウサギのオズワルド』。
    • 本作の最大の肝と言える登場キャラクター。ミッキーマウスより先に生み出された存在で、作中で語られているようにかつては絶大な人気を誇ったキャラクターである。
      • 知っている人は知っているが、オズワルドは当時ディズニー作品を配給していたユニバーサルスタジオや仲介者の策謀によってキャラクター版権を奪われたという経緯がある。ディズニーが著作権というものを重視し、「ディズニーは著作権に対して非常に厳しい」と言われるようになるきっかけとなった出来事でもある*2
      • 流石にその事情は本作ではぼかされているが、この騒動によってディズニーはオズワルドから手を引くことになりミッキーシリーズを制作。一方ユニバーサルのものとなったオズワルドシリーズは制作スタッフが幾度となく変わった事によってファン離れが進み、現実においてもその人気はみるみるうちに失墜した*3。結局はオズワルド自体の版権だけが宙ぶらりんの状態で残ることになってしまった。
    • オズワルドが再出演出来るようになったのは、本作発売の数年前にディズニーが交渉によって版権を取り返したためである。ユニバーサル側もオズワルドの版権を持ち続けるメリットがなかったため、すんなりディズニーは版権奪還に成功。
    • そして本作に至るわけだが、本作の出演によりオズワルドの人気と知名度を得て、様々なグッズが作られるようになるなど、ディズニーにおける地位も大きく向上した。

評価点

  • ディズニーのクラシック作品の雰囲気を良く出せている点。
    • 今でこそ優等生的な性格付けをされているミッキーだが、モノクロ時代のミッキーマウスは必ずしも聖人君子ではなく、短気で怒りっぽく乱暴な性格やや俗っぽい一面も持ち合わせていた*4。アニメの作風自体もブラックユーモア的な要素を多々含んでおり、本作ではそれらの内容にも踏み込んで、今の時代に一般的となったミッキー像とまた異なったキャラクター性を再構築している。
    • 本作のミッキーのデザインは、いわゆる黒目ミッキーであり、肌も白であるなどファンにとってはかなり懐かしい姿をしている。
  • オズワルドをはじめ、懐かしのキャラクターを出来る限り網羅している。
    • オズワルドもそうだが、ミッキーに付いて回るグレムリン・ガスはオズワルド以上にマニアックな絵本のキャラである。
    • ホーレス・ホースカラーやクララベルなどいったクラシックミッキーの常連も出演している*5
  • 魔法の筆とWiiリモコンの親和性が高い点。
    • ポイントしながら塗ったり消したりするのだが、これが非常に楽しく、よりウェイストランドの世界観に没入出来る。
  • 秀逸なストーリー。
    • 過去に意図せず罪を犯したミッキーマウスと、それによって被害を被ったオズワルドの対立がメインとなっている。ヒーロー然とした昨今のミッキーからするとなかなか冒険した内容である。
    • 一本道のシナリオであるが道中の分岐点は多い。ミッキーとは思えない外道な行動(アイテムを手に入れる為特に罪もないキャラクターの入った檻が遠くへ吹っ飛ばされる装置を起動する、ドアを開けてわざわざ訪問せず民家をイレイザーで消してアイテムを手に入れる等)でもストーリーは進むし、その方が楽だったりする。一方で平和的な行動・人助けは時間がかかりやすく、周回して様々なルートを楽しむことが出来る。
      • 基本的には「イレーサー」を使用する選択を取るとあまり良くない展開になる。とはいえ後述の収集要素のためには必須な選択である。
  • 夢と希望あふれる明るいディズニーキャラクターの作品とは思えないようなダークな世界観。
    • 災いに襲われたためウェイストランドは常時薄暗く、悲劇的かつ暗い雰囲気に覆われている。
    • ドナルドやグーフィーと言ったミッキー作品の古株は、全てオズワルドに作られたロボットという設定で登場するものの、ボディを奪われて生首状態になっているなど、ブラックな描写もある。
  • 実際の短編アニメを見ることが出来る。
    • 探索要素の一つで、クラシックミッキー作品からオズワルド作品まで鑑賞することが可能。
  • 日本版は任天堂がローカライズしたことで、カメラワークなど一部ゲームの問題点が改善されている。
  • やりこみ要素が豊富。
    • いわゆるお使いゲーであるため好みは分かれるが、「お馴染みのあのキャラにお願いをされている」といったニュアンスが出ている場面は多いため、お気に入りのキャラがいればそれなりにモチベーションもUPするだろう。かなりマニアックなところまで突っ込んでいるので、さすがに全てがそうとは言い切れない部分もあるにはあるが。
    • 収集要素の「バッジ」は普通にストーリーを進めるだけでは驚くほど集まらない。マップを隅々まで探索するのが好きなプレイヤーにはたまらないだろう。一方でクリアだけを目指した場合はプレイ時間はそこそこ短いものとなる。
    • 択一式の分岐ルートが多いため、収集要素のコンプリートには最低でも2周目を行う必要がある。いわゆる外道なルートも全て回収しなくてはならないが、1周目とは違った展開が楽しめるだろう。

問題点

  • アクションゲームとしての完成度は並程度。
    • リモコンのレスポンスが悪い。特にスピンの操作性は目立って遅く、アクションゲームとしては地味に気になる点である。
    • 敵との戦闘も基本的には単調、イレイサーの絵の具をかけては避け、かけては避け…と、作業的になりがち。
    • 世界観的にリモコンは合っているものの、やはり敵をポイントしづらいため、人によってはうんざりな要素と評価されがちである。
  • 世界観上、仕方ないが、画面が全体的に暗く見え辛いことが多い。
    • 謎解きゲームにおいてこれは致命的とまでは言えないし、作品の世界観上の演出とはいえ、やはり不便ではある。
  • 後戻り出来ないマップが多い。
    • お使いクエストでは特定のマップでアイテムを発見したり何か行動をしたりする必要があるのだが、該当マップを通りすぎてしまうと即クエスト失敗となってしまう。多くのマップはクリア後再度訪れる事ができないので、クエストをしっかりこなしたい場合は時間をかけて探索する必要がある。
  • ピートに偏ったキャラクター構成。
    • 未登場のクラシックキャラがいる一方で、原作の各作品に登場したピート達が兄弟という設定で大量に登場する。
  • ストーリーボイスのほとんど全てがパートボイス*6
    • 字幕は表示されるものの、間を置かずに進んでしまうためセリフを追いづらい。
  • 中途半端なローカライズ。
    • OPムービーは日本語で話すのにもかかわらず、ゲーム本編は海外版のものをそのまま使用しており、日本語版キャストでの吹き替えがなされていない。
    • 続編では台詞も全て日本版としてローカライズされたのだが…。
  • 改善されたとはいえ、カメラワークはやはり良いとはいえない。
    • もっともこの点が批判点としてあげられた海外版よりは、明らかにマシにはなっている。この点はさすが任天堂というべきか。
  • 白黒フィルム時代から作品を追うほどで濃いマニアでもなければ通じない小ネタが非常に多い。
    • 過去作を知らないファンにとってはネタが通じなくてつまらないとなりやすい。一応原作アニメも収録されているので過去作を知るきっかけにはなるが。
  • ラスボス戦が盛り上がりにかける。
    • ゲーム終盤では触手のような敵に支配されたエリアを巡りこれらを退治する展開がある。該当箇所にペイントやイレーサーを順番に当てる事で撃破することが出来るのだが…
      + ... なんと最後の戦いまでこの触手潰しで終わってしまう。触手自体は攻撃すらしないため周囲に居るザコ敵(これらも序盤から登場している)が実質最後の敵となってしまうのは残念。

総評

クラシックミッキーファンにはたまらない内容。一部のステージは懐かしの短編アニメを3Dで再現しているため、自分がミッキーとなってアニメの中を冒険している感覚が味わえる。
何より本作の功績は、著作権だけ取り返して宙に浮いた扱いになっていたオズワルドの物語を新たに描き出し、一躍人気キャラとして登りつめさせたことだろう。
ゲームとしては平凡な出来ではあるが、キャラクターを大切にした作りはさすがディズニーゲームといえる。

オズワルド自体の人気も衰えを知らず、2014年には海外に先駆けて日本の東京ディズニーシーで着ぐるみがデビューするなど、キャラの人気の火付け役になり、数十年もの積年を経て最愛のキャラクターを奪われたディズニーの無念を晴らしオズワルドというキャラクターを見事な形で再び花開かせた記念すべき作品となった。


余談

  • 今作の人気の高さから、間をおかずに続編『ディズニー エピックミッキー2: 二つの力』の制作が発表された。要望があったことからPS3やXbox 360、PC、Wii Uといったプラットフォームにも対応し、HDハードを基調とした作りとなった。
  • 本作のムービーは、一部海外版のものからカットされているものがある。
    • オリジナル版ではミッキーが物騒な武器で追い立てられるシーンがあるため、 CERO:A を保つための措置だとされている。
  • デベロッパーであるJunction Point Studiosは『System Shock』や『Deus Ex*7のゲームデザイナーとして知られる、ウォーレン・スペクターが2005年に設立したスタジオ。
  • その後、2013年に制作された久々のミッキー短編アニメシリーズ作品「ミッキーのミニー救出大作戦」(『アナと雪の女王』の同時上映作)にて、数秒間のカメオ出演だがオズワルドが出演し、アニメ上での共演を果たしている。
  • 2024年2月21日の「Nintendo Direct:ソフトメーカーラインナップ」にて、なんと本作のリメイク「Disney Epic Mickey: Rebrushed」が発表。2024年中に、PCとPS5、PS4、Xbox Series X|S、Xbox One、Switch向けに開発・発売される模様だ。
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最終更新:2024年02月24日 01:07

*1 ユニバーサルスタジオに版権があった頃の作品は換算されていない。

*2 実際のディスニーはそこまで著作権に厳しくなく、むしろパロディや二次創作には寛大だという説もある。2012年にミッキーマウスを模したキャラクターを使用したソフトを制作した同人サークルにディズニーが損害賠償を請求した事があるが、後にその請求をディズニーは行っておらず詐欺行為だったと判明した。

*3 この時のオズワルドに取って代わる形で同社の看板キャラクターとなったのが、かのウッディー・ウッドペッカーである。

*4 この性格を受け継いだのがドナルド・ダックである。

*5 ただし30年代初期にデビューし、ホーレスやクララベルと共に名脇役として活躍していた女性のめんどりキャラクター「クララ・クラック」は未登場。

*6 フルボイスの逆で、一部パートのみ音声入りのこと。

*7 続編の『Deux Ex: Invisible War』まで担当。