サマーカーニバル'92 烈火

【さまーかーにばるきゅうじゅうに れっか】

ジャンル シューティング
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 ナグザット
開発元 キッド
発売日 1992年7月17日
定価 4,980円
配信 バーチャルコンソール
【3DS】2012年12月12日 / 500円
判定 なし
ポイント 矢川シューティング黎明期
初心者お断り
ボムとバリア命
ファミコンの限界に挑みすぎてチラツキまくり
入手もクリアも至難の業
超プレミア
サマーカーニバルシリーズ
精霊戦士スプリガン/ 烈火 /アルザディック/ネクスザールSP
ナグザットSTGシリーズ


概要

  • ナグザットが行った全国規模のSTG大会「サマーカーニバル」92年度正式タイトルとして開発された縦STG。開発担当はキッド(KID)。
    • 後世ギャルゲーの一雄として名を知られるキッドの過去作という所で驚かされるが、当時のキッドは下請けでSTGやアクションを開発する事も多かった。
  • ひたすらに展開が早く、ゲームスピードも速く、そして敵が異常に多い超高速物量っぷりが特徴。ゲームデザインとプログラムを手掛けたのは、後に『バトルガレッガ』でその名を全国のシューティングゲーム愛好家に知られる事となる矢川忍氏。

ストーリー

  • 西暦2302年。人類は銀河系を統一し、銀河連邦政府はアンドロメダ系共和国と同盟を結びつつあったが、トロン星雲からと思われる数万隻の宇宙艦隊からの奇襲を受ける。多大な犠牲を出しながら抵抗するも空しく、敵艦隊は地球へ迫りつつあった。人類の運命は、最新鋭巡航戦闘機RECCAに託された

システム

  • ゲームモードはタイトル画面に表示されている3種類+隠し1種類。
    • ノーマルゲーム : 全4面を通して攻略するモード。通称「表烈火」。
      このモードクリア後にある事をすると、全7面に及ぶ高難易度バージョン…通称「裏烈火」に変化する。
    • スコアアタック : 2分間でどれだけスコアを稼げるかを競うモード。
    • タイムアタック : 100万点を達成するまでのタイムを競うモード。
    • 残機アタック : 隠しモード。ゲーム開始時点で大量に所持している残機(50機)をどれだけ減らさずにクリア出来るかを競う。構成はノーマルゲームと変わらないが、全ての敵から撃ち返し弾が発生する様になっており、難易度が飛躍的に上昇している。
      • 尚、本作は全てのモードに制限時間があり、プレイ開始から一時間が経過すると強制的にゲームオーバーになる。スタートボタンでゲームを中断している最中も時間が経過している為、長期中断すると勝手にゲーム終了となってしまうので注意。
  • 操作・攻撃方法は以下の通り。
    • 十字キーで移動。セレクトボタンを押すと、自機スピードを0~4速の5段階から任意で切り替える事ができる。
    • Bボタンでショット。ショットはボタンを押したままにすると高速で連射するフルオート式。
      • ショットボタンを押さないでいると自機前方にプラズマエネルギーが溜まる。このエネルギーは敵通常弾を消す能力があり、エネルギーチャージ中はスコアが上昇する。防御範囲は見た目以上に広い。
        そして、エネルギーが一定以上溜まった状態でショットボタンを押すと、前方にプラズマボンバー(所謂ボム)を発射。爆発での広範囲攻撃が可能。この爆発は攻撃範囲が限られており全画面に効果は及ぼさないが、全種の敵弾をかき消すため自機は無敵に近い状態になる。
      • 固い敵やボスとの衝突、ボスのパーツの一部による打撃など破壊不可能の攻撃、BG(背景)で描画された攻撃はさすがに防げない。
    • アイテムを入手する事で自機両脇にオプションがつく。オプションはAボタンを押すとサブショットを発射する。こちらもフルオート連射。
      • オプションは敵通常弾をかき消す効果があるが、攻撃判定は無い。
  • 一定数の敵を倒すと4種類のアイテムが一定の法則に基づいて出現する。
    • バーディ : スコアが上昇する。連続で入手すれば上昇するスコアも増えるが、一つでも取り逃すと初期値に戻ってしまう。
    • ブルーユニット : 自機のショット性能が、アイテムに書かれた英字に対応したものに変わる。英字は一定時間経過するごとに変化する。
      現在装備しているショットの種類と同じアイテムを入手すればショットが強化される(最高三段階)が、異なる種類のアイテムを入手すると性能が変化するだけで強化はされない。
      + 各ショット性能
    • V (バルカン)
      • 初期装備でパワーアップしやすい特徴がある。連射力に優れ、パワーアップにより攻撃範囲が広くなるので、やたら大量に敵が出てくるこのゲームでは非常に頼りになる基本装備。他のSTGと比較しても相当な性能だが、パワーアップすると「自機ショットの画面表示数限界」が悩みの種に。
    • L (レーザー)
      • 耐久力の無い敵に対し貫通能力を持ち、パワーアップすると敵に向かって一度誘導されるようになる。誘導性能は高くないが、動かなくても大量の敵を倒せるという利点は魅力。他のショットと比較すると、自機の鼻先と側面が手薄なのが難点。
    • B (ブラスター)
      • 本作の全装備で最速の連射力を誇り、前方に向かって飛んでいく強力なショット。横方向に弱くなるが、オプションのサブショットを併用すればある程度カバーは可能。だが最大パワーアップすると4連射になり、自機前方に数ドット分の隙間ができる為、防御は完璧ではない。
    • F (フライヤー)
      • 連射力も攻撃力も高くないが、パワーアップすればショットが後方にも発射されるようになる広範囲攻撃装備。正面からのラッシュに少々弱いが敵が四方八方から出現する本作では、その恩恵を受ける場面は多い。
    • H (ホーミング)
      • 優れた誘導性能を持つが、パワーアップしても連射性能と同時発射数が初期状態から一切強化されないという大きな欠点を持つ極端な装備。敵の多い後半戦では使いにくいが、パワーアップにより単発威力と誘導性能が強化されるため固い敵や少数の敵に大しては非常に強く、ラスボス戦の切り札になる可能性を秘める。
        スコアアタックとタイムアタックには登場しない。
    • レッドユニット : 自機の横にオプションを一つ装備する(二つまで装備可能)。ブルーユニット同様、アイテムに書かれた英字によって性能が異なり、英字は一定時間経過するごとに変化する。
      + 各オプション性能
    • F
      • 斜め前向きのオプションを自機の横に固定。癖のある性能が多いオプションの中ではオーソドックスで、後述のSを除けば一番扱いやすい。
    • B
      • 斜め後ろ向きのオプションを自機の後方に固定。攻撃用としては使い所が限られるものの、後方への防御用と考えればそれなりに優秀。
    • C
      • 自機の移動方向の逆向きに配置されるオプションを装備。全方位をカバー出来るのは魅力だが、使いこなすには慣れが必要。
    • R
      • 自機の周囲を回転するオプションを装備。攻撃にしろ防御にしろ散漫になりがちで使いにくい。
    • S
      • 敵がいる方向に自動で向くオプションを装備。死角の無い攻撃性能が非常に優秀で、基本的にこれだけ使っていれば問題無い。
        ホーミング同様、スコアアタックとタイムアタックには登場しない。
    • 1UP : 文字通り残機が一つ増える(最大8機まで)。出現周期は画面内に出現したアイテムの個数に準じるため、プレイヤー次第だが任意での入手が可能。

難易度について

  • 「激ムズ」「最も難しいシューティング」と評される事もあるが、無制限ボムをはじめとするシステムを理解し、このゲーム特有の解法を見つければ十分にクリアを狙える難易度である。
    • 「動かずボム連打」を基本として要所で移動・バリア・ショットを織り交ぜる、という常識と全く逆の行動が強力。オプションのS垂れ流しで画面中央でボム連打すれば動かなくてもほぼ問題なく、バリアは防御判定が非常に広いため敵弾は簡単に防げる。
      表烈火であればほぼボム連打だけでクリア可能と言っても過言ではなく、これを覚えるだけで体感難易度はグッと下がる。
  • しかし、裏烈火に限れば話は別で、50分近くになる長丁場をほぼ休みなしで乗り越えなければならないため、精神的疲労も相当なもの。特に終盤のステージは敵の数や攻撃も激しさを増しており、表とは次元が違う難易度となっている。
    • ただし裏烈火は高難度ながら「表面とは桁違いの物量で敵が出現する」事と「アイテム出現周期が敵破壊数に依存している」事が理由で全ステージを通して1UPが数十個出現する可能性があるため、表面と違うベクトルでゲームバランスがとられているとも考えられる。
      • 普通にプレイするだけで余裕でスコアがカンストする程の敵・アイテムのインフレっぷりは必見。

評価点

  • 現在の目で見ても古臭さを感じさせない優れたゲームデザイン。
    • 圧倒的な数の敵を倒し、大量のアイテムを獲得していく爽快感は抜群である。
    • ボスの数も全11種類と、FCシューティングの中でもトップクラスの多さ。
      それぞれが個性的な攻撃を仕掛けてくるが、中でもラスボスは凄まじく、ハイテンションなBGMに乗せて異様なスピードで画面中を動き回りつつ攻撃を乱射しまくる、というハチャメチャっぷり。耐久力は低いが「ラスボスに対し非常に強いホーミング抜きでノーミスで倒すのはほぼ不可能」と言える程の瞬間火力で、プレイヤーに強烈なインパクトを残した。
      • この「異様なテンションのラスボス戦」は、後に矢川が手掛けた『バトルガレッガ』でも踏襲されている。
  • ハイクオリティなグラフィック。毎フレーム全BG書き換えによる豪快なボムの表現、なめらかな多関節を披露するボス、二重ラスタースクロールや超高速スクロールなど「一見何が起こっているのか良く分からないが大迫力」な演出で、FCでは最高峰の表現を多数実現している。
  • 塩田信之氏によるBGMは当時のFCソフトとしては異例のハードなテクノサウンドで、殆どの曲が1ループ4分近い長さの大作揃い。FCのノイジーな音源が絶妙にマッチしており、唯一無二のサウンドとして高い評価を得ている。

賛否両論点

  • 難易度が非常に高い
    • FCとは思えない敵の物量・スピードがこれでもかと猛威を振るうため表ステージの時点で常人ではとても太刀打ちできるようなものではなく、当時は価値が全く理解されずワゴンセール扱いにまでなっていた。
    • 残機が無制限になる裏技が用意されているのが救いか。

問題点

  • スタッフロールで「スーパーハードシューティング」を自称するだけの事はあり、普通のSTGの感覚でプレイするとパワーアップすらままならず、圧倒的物量で押しつぶされてしまう。システム理解なくして先に進むことは決して出来ない作りである。
    • 92年のサマーカーニバルで完走者0という記録が、その異常性と熾烈な出来を物語っている。
    • 前述通り、「ボムを主軸とした立ち回り」や「アイテム出現周期」を理解すれば難易度は劇的に変化するものの、それを差し引いても目まぐるしい展開の速さやパターン重視なゲーム性もあって、やはり取っ付き難さは否めない。
    • また、本作のアイテムは左右に大きく揺れながら移動する為、大量に画面上を漂っていると避け難く、これも難易度を上げる一因となっている。うっかりショット(オプション)アイテムを取っていらない装備取得→弱体化で物量に潰されたり、不要なアイテムを避ける→うっかり敵に当たってしまったり、といった事態が起こりやすいのである。つまるところ、「自分以外は全て敵」。
  • FCの表示能力の限界を超える物量の代償として、とにかく画面のチラツキが激しい。特に裏烈火は相当なもので、視認性が著しく低下してしまう。
  • 殆どのボス戦でスコア表示部分が見えなくなってしまう為、スピードゲージやボムゲージが確認出来ない。

総評

他と一線を画すゲーム性、チラツキまくる画面、アシッドなBGM…という、癖の塊の様な作品。多様なシステムのSTGが存在する現代の目で見てもかなり特異な部類であり、人を選ぶ内容である事は間違いない。
とは言え、グラフィックやサウンド、プログラミングといった技術面では間違いなくFCトップクラスの品質を誇っており、現在はハードの限界に挑戦した意欲作として再評価する声が多い。
また、「ゲームシステムや仕様の理解が大前提」という姿勢は後のアーケードSTGに通ずるものがあり、ある意味では時代を大きく先取りした作品とも言えるだろう。
現在は後述する様にプレミア化しているので、プレイ自体は非常に困難となっている。


余談

  • 発売当初は評価が低く、またFC末期の時期で殆ど注目されていなかった事もあり、未開封100円がワゴンで叩き売られる姿も珍しくなかった。しかし現在は一転、FC有数のプレミアソフトとして知られる。
    • ソフトだけの裸状態ですら1~2万円以上の値段が付けられており、箱説明書付であれば4万を超える程。
  • 発売当時のファミ通レビューでは「4・4・6・5」と、相当厳しめの点数を付けられている。一方で当時から本作を高評価する意見も存在しており、ゲーム雑誌「HIPPON SUPER!」の読者レビューに、外山雄一氏*1が絶賛のレビューを送っている。
  • 当初ノーマルゲームはもっと難易度が高かったのだが、あまりにも難し過ぎると判断した企画班により難易度が調整される結果となった。これを不服とした矢川氏が勝手に入れたのが裏烈火である。
  • テクノ路線のBGMは当初ナグザット側からのウケが悪く、ボス曲(一般的STGらしい=烈火らしくない曲)以外ことごとく没にされていた。しかし、作曲者の塩田氏は決して方向性を変える事無く初志貫徹でBGMを作り続け、最終的にはナグザットが折れる形でゲーム中のBGMが採用されている(それでも没になったBGMは、これまた裏烈火へ勝手に入れたという)。
  • 開発スタッフが「セガのロゴが表示された後、それが爆発して任天堂のロゴが出てくる」という演出を思い付き、実際にサウンドやプログラムが制作されたものの、ナグザットに止められて没になった。裏技のサウンドテストで聴けるSEの中に、セガ及び任天堂のロゴ表示音っぽい音が収録されているのはその名残である。
  • 「敵や弾を大量に出し過ぎたためにどうしてもちらついてしまう」という方向性だけではなく、「最初からちらつく前提でいればファミコンのスクリプト限界数以上の敵や弾を出せる」という発想で作られている。(つまり、極端な言い方をすれば「ちらついていない状態」の方がイレギュラーなのである…)
    • まず前提として、ファミコンのスプライト表示処理の仕組みの盲点を突いた高度かつ特殊な処理「スプライトダブラ」を組み込み、スプライト同時表示量をファミコンのカタログスペックのおよそ2倍に増やすという反則技を行っているのだが、それでも全く追いついていない。その他、多くのスプライトを複数ワンセットで高速で交互点滅表示させるなどして擬似的にスプライトを大量に表示させているように見える処理も細かく行っているが、それでもなおスプライトオーバーによるチラツキが激しいため、視認性の観点から言えば完全に収拾がつかなくなっている部分が散見される。

移植

  • 2012年12月12日より、3DSのバーチャルコンソールで配信されていた。
    • 配信元はナグザットの親会社である加賀電子。
    • ほぼ完全移植だが、目に優しくなかった画面の点滅が軽減されている恒例の配慮がなされている。他、表ステージ2・兼裏ステージ6のBGM「HYDE」の一部パートが本編プレイ中に正常に再生されないバグが確認されている。サウンドテストの裏技での視聴時にはこのバグは発生しない。
      • ファミコンが持つ音源の「DPCM」というチャンネルを使用したパートの音の再生がうまくいっていないことから、「DPCMバグ」と呼ばれることもある。
      • 時期は不明だが、3DS本体の更新に伴ってこのバグは解消された模様
      • 3DSのバーチャルコンソール本体側の仕様上「電源を再投入する方法が裏技同然」*2という欠陥があるので、裏烈火に突入できるプレイヤーは注意。
  • 上記のVC版は残念ながら既に終了しており、また現行機での移植もされていないので、新規購入していない方はFC本体でプレイするしか手段がない。(2024年現在)
    • もし手に出したいという人は勿論、歯応えのあるシューティングを遊びたいという人も、是非自分の目で価格も含めスーパーハードな世界を確かめてほしい。

その後

  • 矢川氏はこの後、ライジングで『バトルガレッガ』を始めとするバトルシリーズや、その後に移籍したケイブで『鋳薔薇』シリーズを手掛ける事となるが、相変わらず深いシステム理解なくして進行不能な内容を連発している。
+ タグ編集
  • タグ:
  • 1992年
  • FC
  • STG
  • 縦シューティング
  • ナグザット
  • キッド
  • ナグザットSTGシリーズ

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年01月26日 20:25
添付ファイル

*1 現在はタイトー開発本部室所属。元々はテクノソフトのプログラマーであったが、当時はコンパイルに在籍しており後にライジングへ移籍。その後2010年頃にタイトーへ移籍した。ちなみにその後、矢川氏自身もライジングへ移籍した後、現在はケイブに所属している。

*2 本作のVCを起動したまま3DS本体の電源をOFFにする