Gears of War

【ぎあーずおぶうぉー】

ジャンル TPS
対応機種 Xbox 360
発売元 マイクロソフト
開発元 Epic Games
発売日 2007年1月18日
定価 7,140円
レーティング CERO:Z(18才以上のみ対象)
判定 良作



この恐怖はまだ序章にしか過ぎない…



概要

次世代ゲーム機って、グラフィック以外の部分は昔と比べてあんまり進化してないんじゃ?
そんなことが囁かれていただろう2006年の終わりに、本物の次世代ゲーム機の作品として登場した本作。次世代機を代表するサードパーソンシューティング。
洋ゲーの中でも取り分け濃いキャラクターデザインの本作だが、内容も負けず非常に濃厚なゲームとなっており、グラフィックエンジンである「Unreal Engine 3」の開発元であるEpic Gamesが作り込んだ美しいグラフィックと革新性の高いアクション内容によって多くのゲーマーを虜にした。
発売後には数多くのメディアで2006年 Game of the Yearに選ばれた*1
ゲームの中核となる「カバーアクション」は非常に優秀で、後に数多くのゲームに採り入れられるなど、TPS業界全体に与えた影響も大きい。


ストーリー

液体状のエネルギー資源「イミュルシオン」を巡り、惑星セラでは長きにわたって大戦が続いていた。
しかしそんなある日、突如として地底から現れた謎の生物「ローカスト」が、人類に総攻撃を開始する。
自在に地底を掘削し、生体兵器を駆使する未知の存在ローカストとの前に、大戦で疲弊した国々は次々と陥落、攻撃開始から最初の24時間で惑星セラに暮らす25%の人命が失われた。
ローカスト達は人類からの交渉を一切受け付けず、ただ人類を駆逐するために動いていた。
追い詰められた人類は、ローカストが掘削できない固い地盤を持つハシント高原へと退却。
化学兵器と衛星軌道のレーザー衛星を見境なく用いた焦土作戦により、惑星セラの90%を焦土と化しながらも、かろうじてローカストのハシント侵攻を阻んだ。
しかし未だローカストの脅威は消えず、「統一連合政府(COG)」はイミュルシオンをふんだんに用いた新型爆弾「ライトマス」を地底へと打ち込み、一気にローカストを殲滅する作戦を立てる。

ローカスト戦役でも多数の軍功を挙げた「マーカス・フェニックス」は、世界大戦からの歴戦の勇士である。
彼はある作戦において軍研究所に勤務していた父アダムを救おうと命令違反を犯し、懲役40年の判決を下され服役中だった。
ところが、服役していた刑務所が突如ローカストの襲撃を受け、マーカスは窮地に陥ってしまう。
それを救ったのはマーカスの戦友であり、現在はCOG軍のエース部隊「デルタ」に所属し、仲間からは「ドム」と呼ばれている「ドミニク・サンチャゴ」だった。
辛くも襲撃を切りぬけたマーカスは、ドムの計らいでデルタ部隊に配属され、戦列に復帰する。
そしてデルタ部隊はライトマス作戦の一端を担うことになり、マーカスは再びその伝説的な手腕を発揮していくこととなる。


特徴・評価点

グラフィック・音楽

  • 美しいグラフィック
    • 「Unreal Engine 3」を使用したゲームは数多いが、流石本家だけあって非常に作り込んである。
    • ほぼ全ての箇所に法線マップ(表面をデコボコさせる技術)が使われており非常に生々しい。
    • 次世代機初期のタイトルとしては一歩抜きん出ているといって良い。
  • 音楽
    • ノースウェスト・シンフォニア交響楽団が担当したオーケストラはゲームの雰囲気と良く合っていて盛り上げてくれる。

革新性の高い各種アクション

  • カバーアクション
    • 障害物の前でAボタンを押すことによって身を隠すことができる。隠れた状態で左スティックを操作することによって体の一部を乗り出した正確な射撃を行える。
    • カバーアクション中にAボタンと左スティックを合わせて入力することによって小さい障害物は何時でも乗り越えることができる。
    • 本作が発売する前にも障害物に隠れながら攻撃出来るゲームはあったが、要素の1つとしてではなくゲームのメインとして扱ったことにより高い完成度を実現している。パイオニアでこそ無いが、本作がカバーアクションをメジャーにまで引き上げたのは間違いない。
  • ブラインドファイア
    • 障害物に隠れた状態で射撃ボタンを押すことによって体は隠したまま銃だけを露出して射撃することが可能。
      • 銃だけではなくグレネード等もこの状態で投擲可能。
    • ブラインドファイアは命中率が悪く離れている敵に使うには無謀とも言えるのだが、肉薄した接近戦や近づいてくる敵を仕留める分には非常に有効に機能する。これによって唯でさえ面白い銃撃戦が更に戦略的な物となっている。
  • チェーンソォォォォ!!
    • 通常の殴る近接攻撃の他にランサーアサルトライフルを装備していればチェーンソーでローカストどもをぶった切る事ができるのだ!
    • ローカストがチェーンソーでぶった切られるシーンはこのゲームの見所の1つ。ただし、普通に接近するだけでは絶対に当てられないので、どうやって近づくかが鍵となる。
    • その他の武器も個性豊か。敵を挽肉に変えるほどの威力を有するショットガンや衛星からのレーザー放射を行うドーンハンマーなど、多彩な武器が登場する。
  • ダッシュ
    • Aボタンを押し続けることによってダッシュが可能。ダッシュの状態ではカメラが寄った演出になり非常に見栄えが良い。
    • 障害物にカバー中に左スティックを上に倒しながらAボタンで障害物を乗り越え、そのままAボタンを押し続ければダッシュに移行可能なので攻撃に転じる際も利用価値は高い。
    • ダッシュ → カバーというアクションもスムーズに行うことが可能。
  • 抜群に良い操作性
    • 前述のように本作のキモとも言えるカバーアクションを全てAボタンに割り振ったお陰で、本来なら複雑になりそうな各種アクションを直感的にプレイできるように作られているため、操作性に悩まされることは無い。
    • キャラクターの動作もスムーズでストレスを感じることはほぼ無い。

マルチプレイ

  • シングルプレイも面白いのだが、マルチプレイもそれに劣らず完成度が高い。
  • デスマッチ系は一回死んだらそのマッチでは復活不可能なため、緊張感溢れる試合が楽しめる。

日本語版

  • 吹き替えは非常に優秀。特に主人公であるマーカスの渋い声*2は男性であってもキュンとなる。
  • この豪華声優陣による、テンポがよく軽快なキャラ同士の掛け合いも本作の魅力の1つである。
    • 中でもマーカスが「わかった じゃあプランBで行こう…プランBは何だ?」とドムに話しかけるが、ドムからは「あ?ねぇよそんなもん 」と返されるやり取りは現在でもアチコチで使われている名言の1つである。 
      • ちなみに、本体のシステム言語を英語にするとゲーム内の会話も英語になる。

問題点

  • ダッシュの演出はカッコいいが、映像がかなりブレるので人によっては酔いやすい。
  • 全体的に即死級の威力を持つ攻撃が多いためにシューティング初心者にはきつい。ステージ3で1発死の敵と戯れることになるといった具合。
    • ただし、コンティニュー地点は多めに設定されており、やり直しは楽。
    • 特にラスボスであるラーム将軍の強さは今でも語り草。暗闇と僅かな光の中、上記の即死させてくる敵を引き連れている上、本人も強い。現在でも「ラーム将軍」で検索すると「ラーム将軍 理不尽」と検索候補が出て来る程である。
      • もっとも、攻略法はちゃんと確立されているし、反則的だがとあるバグを使えれば一方的に攻撃できるので、どうしても勝てない初心者は狙ってみると良い。
  • マルチプレイは『HALO』シリーズの比較的スムーズなものに比べ少々ラグが酷い。また、ショットガンの扱いに慣れていないと常に苦戦を強いられる。チェーンソーはロマン。
  • 日本語版はCERO:Z(18歳以上のみ対象)でありながらゴア表現に規制がある。ゴア表現が魅力的なゲームでもあるので規制の無い海外版を購入した人も多い。
    • しかし、上記の日本語版の吹き替えの良さから、それを知った海外版ユーザーが後悔したという逸話もあったりする。
  • 日本語版では一部の攻略ヒントに致命的な誤訳がある。

総評

走って隠れて撃つ、ゲームは非常に単純だがその全てが極限まで作り込んであるのは職人芸。
かっこいいキャラクターの複雑なアクションがシンプルな操作によって行えるというのは、まさに次世代の衝撃体験であり、ゲーマーだけではなく多くのゲーム制作者達にも衝撃を与えた。
本作の登場によって次世代ゲームのハードルが上がり、「ギアーズ以下」という一刀両断な評価を受けた数多くのアクションゲームが記憶に残らず消えていく事になる。

セールス的にも大成功した本作は後にシリーズ化し、『2』そして『3』と続編が作られていくことになる。
しかし、発売年を考えるとシリーズ第1作がゲーマー達に与えたインパクトを越えるのは容易ではないと思われる。
そういった意味では、TPSの記念碑的な作品とも言えるかもしれない。


余談

  • 2007年11月にグラフィックの強化とステージを追加したWin版が発売されている(北米のみ)。Win版の独自コンテンツ部分の開発は『PainKiller』を手がけたポーランドのPeople Can Flyが担当している*3
  • 本作は元々『Unreal』の派生作である『Unreal Warfare』というFPSとして開発されていたが、リードデザイナーである「CliffyB」こと、クリフォード・ブレジンスキーが偶々気晴らしでプレイしていた『Kill Switch*4』のカバーアクションシステムの要素に触発されたことと、開発中に発売された『バイオハザード4』の影響を受けてTPSに変更された。
  • 本作を始めとした『Gears of War』シリーズは意外にも女性のファンが多いらしく、女性プレイヤーに配慮して後に『3』にて操作可能な女性キャラクターが登場している。
  • ファイナルファンタジー』シリーズのゲームデザイナーとして知られる坂口博信氏は過去のインタビューで、「Gears of War のようなものを作ってみたい」と発言したことがあり、このことから『Gears of War』が日本のクリエイターからも一目置かれた作品であることが窺える。
    • また、その中で坂口氏は「高い品質での日本語吹き替え/ローカライズが施されているが、マーケティングに力が入れられておらず、国内ではだれもギアーズのことを知らない」と述べ、国内での『Gears of War』シリーズの知名度の低さを嘆いたとされている。
  • 2015年8月に、One向けに本作をフルHDでリメイクした『Gears of War: Ultimate Edition』が北米・欧州地域で発売された。その後、2016年3月にはWin版も発売された*5。しかし、「国内の倫理に適合しない」という理由で日本版は発売できず*6、Win版はWindowsストアのみでのDL販売となっており、Windows10専用*7で、なおかつ日本からは購入不可という酷い扱いである。
    • なお、Win版については現在マイクロソフトのサブスクリプションサービスである「PC Game Pass」で配信されており、Windowsの地域設定を「米国」にすることでプレイが可能という報告がある*8

続編・派生作品

  • 『Gears of War 2』(360 2009年7月30日発売)
    • シリーズナンバリング第2作。「Unreal Engine 3.5」をグラフィックエンジンに使用しており、描画の表現力が向上している。前作で好評だったシステムに加え、チェーンソー同士の鍔迫り合いである「チェーンソーデュエル」や、敵を捕獲し盾として自分の前方へと構える「ミートシールド」といった新要素が追加されている。
  • 『Gears of War 3』(360 2011年9月22日発売)
    • シリーズナンバリング第3作。『Gears of War』3部作の完結編。今までのローカストに加え第2の敵「ランベント」が登場し、三つ巴の戦いを繰り広げる。キャンペーンではこれまでのマーカスとドムの2人CO-OPから、シナリオ進行でメンバーは替わるが4人CO-OPとなっている。
  • 『Gears of War: Judgment』(360 2013年3月21日発売)
    • シリーズのスピンオフ。『1』から遡ること15年前が舞台となっており、主人公は3部作でも活躍したデーモン・ベアード。操作方法やシステムが一新されており、マルチプレイではシリーズ初のクラス制が導入されている。
  • 『Gears of War 4』(One/Win 2017年5月25日発売)
    • シリーズナンバリング第4作。新たな『Gears of War』サーガの始まりだとされ、『3』から25年が経過した惑星セラを舞台としている。主人公はマーカスからその息子であるJD・フェニックスに世代交代。彼ら新世代の人類と新たなる敵との死闘が繰り広げられる。
      • 当初、日本ではCEROによる独自の表現規制基準に本作のゴア表現を上限であるCERO:Zの基準に落とし込むのが困難との理由で『4』の発売は見送られ、代わりに海外版がマルチランゲージとなり日本語が収録されると発表された。
      • しかし、海外での発売から半年後の2017年4月に一転して日本語版の発売が発表。さらに、これまでの日本語版にあった表現規制は一切なく、海外版と同一の表現であると明言された。これによりオリジナルの表現そのままの『Gears of War』を正式に日本語環境で遊べるようになった。
      • ただし、音声仕様は英語音声+日本語字幕のみとなっており、旧3部作で高い評価を得た吹き替えは無い。これらの仕様は以降のシリーズ作品でも同じである。
    • なお、2014年1月にEpic Gamesが保有していた『Gears of War』シリーズのフランチャイズ権がMicrosoftに売却され、『4』以降の開発はMS傘下のThe Coalitionが担当している。また、Windowsとのマルチプラットフォームでの発売となっている。
  • 『Gears POP!』(iOS/And 2019年8月22日)
    • シリーズのキャラクターが「Funko POP!」スタイルの2頭身で登場するリアルタイムマルチプレイのコラボゲーム。
  • 『Gears 5』(One/Win 2019年9月10日発売 XSX 2020年11月10日発売)
    • シリーズナンバリング第5作。前作『4』にも登場したケイト・ディアスがシリーズ初の女性主人公となり、新たにセミオープンワールドとRPG要素が導入されている。
      • また、シリーズ伝統の「Horde」に加え3人協力プレイの「Escape」といった2種類のCO-OPプレイモードが搭載され、マルチプレイもカジュアルな「Arcade」とe-Sports志向の「Escalation」の2種類が用意されている。
    • なお、シリーズ名は『Gears of War』のままであるが、新しいグループ商品に合わせてタイトルを短くする為、本作から『Gears』というタイトルに変更され、以降のシリーズ作品でもこの名称が使用されている*9
    • 2020年11月10日より、アップデートでXSXに最適化された。
  • 『Gears Tactics』(Win 2020年4月28日発売 XSX/One 2020年11月10日発売)
    • シリーズのスピンオフ。シリーズ初のターン制ストラテジーゲーム。『1』から遡ること12年前が舞台となっており、主人公はケイトの父であるゲイブ・ディアス。
      • Win版が先行発売され、後に次世代機であるXSXのローンチタイトルとしても発売された。

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最終更新:2024年02月14日 14:44

*1 日本でも「日本ゲーム大賞2007」の海外作品部門であるグローバル賞を受賞している。

*2 演じているのはベテラン声優の廣田行生氏。

*3 その出来栄えが好評だったことから、同年にEpic Gamesの買収を受け、Epic Gamesのポーランド支社となった。その後、社名を一時は「Epic Games Poland」としていたが、2015年6月にEpic Gamesから再び分離独立し、買収前の社名に戻している。

*4 2003年にナムコの米国法人子会社であるNAMCO HOMETEKがPS2/Xb/GBA/Winで発売していたTPS作品。

*5 PC版はさらに4K解像度にも対応している。もちろん快適なプレイにはそれなりのハードウェア環境を要求される。

*6 ソフト自体にリージョン規制はない為、北米版を購入してのプレイは可能。

*7 動作環境がDirectX12のみとなっているため。

*8 地域設定が「日本」の場合は配信作品リストには表示されないためプレイは不可。

*9 前作『4』も発表の時点でのタイトルは『Gears 4』とされていた。