ビックリマンワールド

【びっくりまんわーるど】

ジャンル アクションRPG

対応機種 PCエンジン
発売・開発元 ハドソン
発売日 1987年10月30日
定価 4,500円
判定 良作
ビックリマンシリーズリンク
ワンダーボーイ/モンスターワールドシリーズリンク


概要

  • PCエンジン本体と同時に発売されたPCエンジン最初期の作品。ウエストン(販売はセガ)のアーケードゲーム『ワンダーボーイ モンスターランド』を当時人気だった『ビックリマン』*1にキャラ替え移植をしたPCエンジンのローンチタイトルである。
  • 主人公ブックはヘッドロココに、最初に会う占い師はスーパーゼウス、ラスボスは始祖ジュラ(ブラックゼウス)等と、イベント及びボスキャラがビックリマンキャラに変更されている。
  • ちなみにパッケージデザインからもわかるように発売当時は「ビックリマン」のTVアニメが放映を開始しており、東映動画(現:東映アニメーション)の権利許諾シールもあることから、ぶっちゃけた物言いをするなら 「(『ワンダーボーイ モンスターランド』の器を借りた)アニメ版「ビックリマン」のゲーム化」 でもある*2

特徴

  • 『モンスターランド』同様に、全11ステージをクリアしてジュラの城に待ち構える始祖ジュラ(ブラックゼウス)を倒すのが目的。
  • プレイヤーのヘッドロココはゲーム開始時はパンツ一丁 裸で腰に白い布を巻いただけで何の装備もしていないが、剣はボスを倒すことにより、鎧、盾、靴はお店でゴールドを利用して購入して強化できる(一部アイテムは稀にザコが落とす)。
  • お店の中にはゴールドを支払うとヒントが貰えて体力も小回復する酒場や、残体力が得点に変換された上で全回復する病院も存在する。但し、病院は利用するたび料金が増加するので、頼りきりにはできない。ここぞという時に利用する必要がある。
  • 10面までは基本的にボスを倒し守っている鍵を入手し(一部クイズに答えるだけで戦わないで倒せるボスもいる)、柵のかかった出口に到達すればクリアとなる。
  • Iボタンを押すとジャンプし、IIボタンで剣による攻撃ができる。十字キーの下を押すと所得した武器アイテム(爆弾、竜巻、ファイヤーボール、雷)を使用する。
    • 十字キーの上を押すとハシゴを登ったり、扉に入ったりすることができる。一見ただの壁に見えるところが隠し扉の場所もある。
  • キャラ替え移植なので、攻略法は『モンスターランド』のものがほぼそのまま通用する。
    • 最終面は所謂『ドラクエII』のロンダルキアの洞窟のような正しい道順を通らないと先に進めない迷宮になっており、道順が分からなければ隠しアイテムのベルを入手する必要がある。ただしこのベルはわらしべ長者のように隠しアイテムを交換していって最後にラスボスに大ダメージを与えられるルビーと二者択一となるため、一度ルートを覚えたらルビーを取ったほうがよい。
  • 敵を倒す、または特定地点を通過することによってゴールドが出現する。中には雲の上や針の山の上から出現するものもあり、出現地点を覚える必要がある。
    • アーケード版『モンスターランド』で出来たゴールド増殖技はゲームバランスやハイスコア集計の関係で出来なくなり、ゴールドは地道で稼ぐしかなく、『モンスターランド』とはまた違った買い物の計画を求められる。*3
  • ステージ内は制限時間があり、一定時間経過すると体力がハート1マス分消滅する。時間は体力回復アイテムまたは砂時計を取ることによってリセットされる。
  • 体力はハートのマスで表され、初期値は5だが一定スコア(3万、10万、20万、30万、40万の5回。50万、60万、70万の時はハートの数が最大の10に達しているため増えないが、代わりにハート2つ分回復する)を超えると1マスずつ増え最大10となる。体力が0になるとゲームオーバー。道中の敵や一定ショップで入手できる(スタート直後にもスーパーゼウスからもらえる)復活の薬があればハート5マス分回復してその場から継続できる。
  • ゲームオーバー後はタイトル画面に直行するようになったが、タイトル画面でいずれかの方向キーを押しながらRUNボタンでゲームオーバーになったラウンドの最初からコンティニューは可能。
    • コンティニューすると代償として得点が初期化=最大ライフがリセットされるが、ゴールド・装備・病院で治療した回数がそのまま引き継がれる。
    • ちなみに、アーケード版『モンスターランド』では最後にマップ切り替えた地点からのスタートで、剣以外の装備とゴールドがその地点到達の時点に戻される。最大ライフはそのままで点数だけ0点に戻り、最終面はコンティニューできない。

評価点

  • 当時としてはアーケード版の移植作品として、かなり高水準な移植度。
    • アーケードゲーム作品を家庭用に移植する場合、性能が低いハードで作り直すため、アレンジが加えられたり、どうしてもグラフィックや音楽、ゲーム内容が別物になったり、何らかの形で劣化したりは避けられないものだった。アーケード版はセガのハードにも移植されているが、その移植度には明確な差がある。
    • 本作は、一部キャラクターがビックリマン関連に変更されている点を除くと、アーケード版の再現度がかなり高い。操作感覚やステージマップ、敵の動き、グラフィックなど、ゲームの根幹部分やプレイ感覚、仕様が高水準に再現されている。
    • 特にサウンド面においては、BGMとSEのどちらも音程が若干低い程度の違いしかみられず、非常に忠実に再現されている。音程の違いについては、違和感がすぐ消える程度である*4
  • 当時の流行りものを取り入れプレイヤーの間口を大きくした。
    • 原作の『モンスターランド』は当時アーケードでは珍しかったRPG要素を含んだ横画面アクションであり、RPGにありがちな冗長な経験値稼ぎは存在せず、1プレイ時間も長くても1時間弱とプレイヤーの財布に優しいゲームであった。かといって決して簡単なゲームではなく、シビアな操作が要求されるのでアクション性は非常に高くボスもきっちりパターンにはめるなどしないと勝てないやりごたえのあるゲームである。
    • またPCエンジンという新ハードでスプライトを多く使えるようになったことにより、大きいキャラクターを同時に画面に表示することが可能となり原作に忠実な移植をすることができた。後述のセガマークIII/マスターシステム版『モンスターワールド』と比べると一目瞭然である。
    • そしてゲームセンターに行くのが時期尚早な小学生にも受け入れられるように一大ブームだったビックリマンチョコのおまけ*5である「悪魔vs天使シール」のキャラクターを使用。キャラゲーにありがちなゲーム性の問題をほぼ損なうことなく入れ替えることができ、モンスターランドが家でも遊べビックリマンのキャラゲーができるという一石二鳥となった。
  • コンティニューと酒場の改善
    • 上記の通り、今作はコンティニューするとゴールド・装備が引き継がれる仕様に変更されたため、駆使することでお金を稼ぎつつ装備を補強できるようになった。更に『モンスターランド』の最終面ではコンティニューが出来なかったが、本作では最終面でもコンティニューを出来るようになっている。
    • アーケード版は酒場は一度聞いた情報は二度聞けない(同じ物を頼むと味を聞いてきたりする)がPCE版では二度聞けるようになっており情報を聞き漏らす可能性が低くなった。
  • 砂時計の仕様が調整された。
    • アーケード版のラウンド11では「エリア間で砂時計(残りタイム)が共有される」が、PCE版は「エリアを移動するたびに砂時計が回復」する仕様となっている。このゲームには耐久力と得点が非常に高いモンスターが存在し、ラウンド11は分岐するルートを正しく進まないと少し前に戻されてループする迷路になっている。上記の敵はラウンド11に登場するので、道を間違えることで得点を永久に稼げるパターンを作れる。これにより、ラウンド11でコンティニューしてライフが初期化したとしてもその敵を倒せば簡単に最大値まで増やすことも出来るので立て直しが利くようになった。極端な話、時間さえあればゴールドを貯めアイテムを購入しわざとやられて…を繰り返すことができるようになったため雷のゴリ押しでクリアできるようになっている。
      • アーケード版のコピー基板(海賊版)は、プロテクトが正常に解除されていないために、PCE版と同様にエリア切り替え毎に砂時計が回復する。奇しくもこれが難易度の緩和に繋がっている。

賛否両論点

  • 削除されてしまった箇所がチラホラ。
    • 扉、SEのみ流れる笛、ラウンドクリア画面、3面最後のマップの最初にあるはずの屋外部分、スタッフロール等、恐らく容量不足の為に細かい部分で再現出来なかった箇所がある。
    • エンディングではスタッフロールの代わりにゼウスがヘッドロココを労う台詞に差し替えられた。

問題点

  • ビックリマンの原作は一切無視
    • ビックリマンワールドへようこそ。って何?天聖界じゃないの?
    • ただし、全く放置されているわけではない。スタート開始時にゼウスから剣と復活の薬を貰う時に「ジュラを倒しこのゾーンに平和を取り戻すのだ」と言われるため、天聖界の1つのゾーンでの出来事として扱われている。
    • 移植故仕方ないが、ボス戦やショップ以外は原作モンスターランドそのままのため、ビックリマンと何の関係もないキノコやヘビが歩き回る。
  • パッケージイラストはヤマト王子をはじめとした「8人の若神子」達が主人公っぽく描かれているが、ゲーム中には登場しない。
    • 一方、若神子達を差し置いて、何故か聖蝶士・聖澄士・聖華士の”聖ウォーマン”は総登場する。
    • 聖フェニックスもパッケージに描かれているが登場しない。実はヘッドロココは聖フェニックスのパワーアップ後の姿だが、ゲームでは最初からロココである。逆にタイトル画面に登場するのは(シール版の)ロココひとりだけ。
      • 聖フェニックスは(初期は)非戦闘キャラなのでアクションゲームの主人公にふさわしくないのは理解できるが、若神子の件も含めてなぜアニメ初期の集合絵をパッケージに使ったのか…。
  • ビックリマンキャラを忠実に再現したためか、上記の賛否両論点にふれたグラフィック系や原作のホブゴブリンといったボスキャラが削除された。
    • ホブゴブリンが出てくるはずの所はネロ魔身(原作のデーモンにあたる)が代理で登場する形になっている*6
    • パンツ一丁で戦うヘッドロココ*7や、原作の死神・お化けキノコ・スフィンクス・貧乏神を兼任させられたサタンマリア*8や、各色ナイトを兼任させられたワンダーマリア*9といった、シール版からはありえない光景が見られる。
    • ゲーム性を大きく変えるものではないが、ビックリマンのキャラになることで一部ボスのグラフィックが大きくなっており、これ伴って当たり判定もアーケード版の同等ボスと比べるとかなり大きくなっているものがある。
  • 隠し部屋のヒントが乏しい
    • 序盤は隠し扉のある所に行くと「かべのむこうに、ひとのけはいがする」「おや!?」といったメッセージが出るが、笛、お守り、最強の剣、紋章の部屋は何のメッセージも出ない*10
    • 2面の初めての隠し扉”かべのむこうにひとのけはいがする”、3面の鎧を売る隠し店前の”おや!?”というメッセージが出るようにプレイ中に怪しい所は上を入力するように自然と仕向けられるので隠し部屋を探すこと自体はそう難しくはないように作られている。
  • 伝説の剣はラスボス・始祖ジュラ(ブラックゼウス)に対して必須ではないが…。
    • 紋章を取る所は隠し部屋ではないものの一度入ったアイテム屋から出て入れないはずの扉に入る*11というものであり、これを忘れるとルビーが取れなくなりラスボスと真っ向勝負をしなければならないのだが、これは上記でベルを入手した場合もラスボスと戦う場合は同じ展開になるので、最悪、しっかり装備を固めていけば、コンティニューを駆使してサンダーゴリ押しやガチ勝負でも勝ち目はある。問題なのは最強武器である「伝説の尖聖剣(せんせいけん)」を入手し損ねるとかなりの火力不足に陥るため、相当の腕前が無いとリセットすることになること請け合い。
      • 一応救済措置として、伝説シリーズ以外の武器防具を装備している場合、中ザコ以上から現装備品より一ランク上の装備が出る可能性がある。伝説の剣も例外ではない。極端な例を挙げると、最終面前のワンダーマリア(ナイト系)が多数出現する城壁のシーンでエクスカリバーのままだと伝説の尖聖剣が複数出ることが有る。重複して取得しても効果は1本のみ。
  • アーケード版にあったレバガチャでのゴールド増殖技ナシの為、ゲーム中はずっと貧乏プレイ。
    • セガマークIII版もレバガチャ技は無いが、代わりにステータス画面を37回表示でのゴールド増殖裏技がある。

総評

本作のオリジナル要素は、主人公のグラフィックをはじめ、店番や各ステージのボスキャラクター程度である。
そのため、発売当時はセガマニアの読者比率が高かった雑誌『Beep』の読者コーナーや一部のプレイヤーからは「ソックリマンワールド」と揶揄された。
しかし、当時は本家セガ系のハードでも満足のいく『モンスターランド』の移植ができなかった。
マークIII/マスターシステム版『モンスターワールド』*12はキャラの小ささは言うまでもなく、ジャンプ軌道が異なっていたり、アイテムの仕様が全然違っていたり、BGMの曲数が減っており多くの面でBGMが違うなど、全く異なる点が非常に強かった*13
そのような不作続きの中で、キャラ替え移植とは言え、PCエンジンのスペックをフルに活用して『モンスターランド』を高水準で移植した事は特筆に価する。
端的に言えば、ビックリマンワールドをノーコンティニューでクリアできるならば、そのままモンスターランドも1コインALLが可能なほどの移植度である。むしろゴールド錬金技があるモンスターランドの方が難易度が低くなる。

その後の展開

  • 1988年12月23日にはPCエンジンでCD-ROM 2 専用ソフトとして『ビックリマン大事界』を発売。
    • この作品は完全にデータベースでゲーム要素は一切ない。
  • 1990年7月にハドソンはファミコンでもビックリマンのゲーム作品『ビックリマンワールド 激闘聖戦士』を発売する。
    • この作品はガワ替えではなく、オリジナルのRPGだが当時既にビックリマンブームは終焉しておりアニメも終了間近だったこともあって訴求力が落ちており当時トップシェアのハードながら売上はさほど振るわず遅きに失したものとなった*14

余談

  • ビックリマンブームは当時既に2年続いており本作発売の直前の1987年10月初頭にはテレビアニメの放送が始まり*15、同時期には小学館の『コロコロコミック』や『学年別学習誌』でも漫画の連載がスタートした。
    • だが、1988年に入るとゲームでも社会現象となった『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』の発売や「ミニ四駆ジャパンカップ」の第1回開催によるミニ四駆ブームの全盛化といった影響を煽り受けてビックリマンブームは次第に衰えが出始めていく。またビックリマン自身も、このようなブームに大人が危険視するのは世の常で公正取引委員会がヘッドシールのレア性などが射幸心を煽ると指摘したことで第17弾(1988年12月)*16からはヘッドも12枚構成となり梱入数も均等化されたことで、コレクションの楽しみが低下しブームは一気に鎮静化することとなる。
      • つまり本作は最も波に乗っていた短いタイミングのチャンスを見事にモノにしたことになる。その結果25,000円*17と高めな新ハードの購入必須という障壁をものともせず20万本と当時のファミコンソフトに混ぜても見劣りしないほどの売り上げを達成しPCエンジンを快調にスタートさせる原動力となった。
  • 携帯アプリ版では、主人公のヘッドロココは高橋名人、ボスキャラは恐竜系に置き換え、本作をベースにした『新高橋名人の冒険島』として配信されていた。
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最終更新:2023年12月28日 16:14

*1 厳密には、ロッテが販売している同名のチョコレート菓子のおまけシールの中でも10代目以降の「悪魔VS天使」シリーズ(なので9代目以前は無関係)。

*2 タイトル画面の著作権表記にも東映動画の記述が見られる。

*3 2019年5月30日より配信開始した本家のSwitch版に追加要素「マネーハングリーモード」としてこの仕様が逆輸入されている。

*4 本家アーケード版のSwitch移植版でも、アップデートにより前述の「マネーハングリーモード」限定で、本作仕様のサウンドでプレイ可能となった。

*5 仮面ライダースナック同様シールが商品でチョコがおまけという社会問題になった。

*6 このため、ラウンド8は伝説の尖聖剣・カギを守るボスが両方ネロ魔身になり、伝説の尖聖剣をパスした場合でもネロ魔身と戦わねばならなくなった。

*7 ただし嘴状のバイザーだけは付けている。もっとも、バイザーも無かったらロココに見えないのだが…。当然、ゲーム的には兜としての機能は無い。

*8 スフィンクスの所のみパワーアップ版になっている。

*9 なおワンダーマリアはサタンマリアのパワーアップ後の姿なので同一人物。

*10 ほとんどの部屋は酒場でヒントがもらえる。

*11 これも直前の酒場でヒントをもらえる。

*12 モンスターランドという家庭用ゲームが既に存在したためタイトル変更となった。

*13 ただし、FM音源は評価が高い。また欧米では本作が未発売、家庭用ではマスターシステム版をプレイするしか方法がなかった。しかしこれが人気を博してしまったためアーケード版と異なる完全続編の「ワンダーボーイIII」がコンシューマー専用で作られることになり、これを機に「モンスターワールド」シリーズが展開されていくことになる。

*14 1988年頃「ファミリーコンピュータMagazine」のランキング「出てほしいソフト」(他ハード既存作が対象なので手っ取り早く言えば「ファミコンへの移植希望」)部門で本作は『カトちゃんケンちゃん』とともに上位に名を連ねていた。

*15 当初は15分枠だったが高視聴率だったことで1988年からは30分枠に拡大。

*16 本作発売時点では第12弾が展開されていた。

*17 参考までにファミコン本体は14800円、ディスクシステムは15,000円、翌年に発売されたセガのメガドライブでさえ21,000円。