熱血高校ドッジボール部 PC番外編

【ねっけつこうこうどっじぼーるぶ ぴーしーばんがいへん】

ジャンル スポーツ(ドッジボール)
対応機種 PCエンジン
メディア 2MbitHuカード
発売元 ナグザット
開発元 エーアイ、アトラス
発売日 1990年3月30日
定価 5,800円(税抜)
プレイ人数 1~2人(2人プレイは対戦プレイのみ)
レーティング CERO:A(全年齢対象)
※バーチャルコンソールで付与されたレーティングを記載
備考 バーチャルコンソール:2008年9月30日/617Wiiポイント
判定 良作
くにおくんシリーズ


概要

アーケード版の稼働、ファミコン移植版の発売に続いてPCエンジン向けに発売された『熱血高校ドッジボール部』の移植作品。
諸般の事情により、発売元はナグザットとなっている。

本作はアーケード(AC)版をベースにファミコン(FC)版の要素を折衷した内容となっている。
FC版の要素としては必殺シュートの概念・内野選手個々の能力設定などがあるが、能力設定はFC版ほどに細かいものではなくなっている。
また、AC版の要素としては試合時間の導入*1・選手のグラフィック・参加チーム・内野の人数が該当する。
そのため内野は4人となり、チームにおいてはソ連・インド・謎の軍団は登場しない。


ゲームモード

世界大会モード

AC版を忠実に再現したモード。
花園高校に勝利したあとはイギリス・アイスランド・中国・アフリカ・アメリカと対戦、それぞれに勝利し、最終的にアメリカに勝利することでクリアとなる。
ただし、本作ではアメリカに勝利後に簡単な表彰式が挟まれたあと、試合時間が30秒短縮した上で再びイギリスとの対戦に戻るループ仕様となっている。
クリア(アメリカに勝利)するごとに試合時間が30秒減らされていき、相手チームも必殺シュートを頻繁に使うようになるが、AC版と異なり、体力や防御力には補正が加わっていない。
また、内野メンバーはFC版と異なり、対戦ごとに入れ替えることが出来ず、常に固定の4人を使用することになる。

+ 本作登場チームメンバー編成
チーム 内野 外野
熱血高校 くにお
チビ×3(こうじ・しんいち・あきし)
チビ×3
花園高校 りき
チビ×3(あきら・なりたか・けんいち)
チビ×3
イギリス 怪物(じえむす)
痩身(はわあど)
チビ×2(ろばあと・まっきい)
チビ
痩身×2
アイスランド 怪物(へいるまん)
痩身×3(よあんせん・とろっせん・ろうそん)
痩身×3
中国 怪物(らおちぇん)
肥満体×3(りいふぁん・しゃおちん・いりゃん)
痩身×3
アフリカ 怪物×3(んじょも・びりまな・がだ)
痩身(にぱれれ)
怪物×2
痩身
アメリカ 怪物×4(ういりあむ・まいける・びる・るいす) 怪物×3
宇宙人 怪物
チビ×3
チビ×3

※内野選手には名前の設定があるが、外野選手には名前の設定がない*2
※宇宙人はクエストモード最終戦でのみ登場し、内野選手の名前が全て「????」となっている。
※AC版紹介ページにある呼称を流用しているが、本作では痩身とチビのグラフィックが顔以外共通となっているなど、AC版と差異が生じている。

2P対戦モード

プレイヤー2名で対戦出来るモード。
FC版の対抗試合モードを彷彿とさせるかも知れないが、残念ながら海外チームを使用することは出来ない。
対戦カードは「熱血高校 vs. 花園高校」で固定となり、能力値などはともに熱血高校のものが適用される。
また、このモードに限り試合の制限時間も存在しない。
2本先取の3本勝負で勝利すると…?

クエストモード

PC番外編オリジナルのモード。
宇宙人にボールをぶつけられたくにおがその仕返しをすべく東奔西走するというモードで、道中で対戦して勝利したチームのキャプテン(各チームの一番上に名前のある選手)を仲間に加えることが出来る。
ただし、仲間に加えるときはくにお以外の既存メンバーとの入れ替えとなり、一度入れ替えたメンバーは再度対戦して勝利しても加入させることは出来なくなる。
また、メンバーの入れ替えはトレードという形を取るため、例えばアメリカのキャプテン「ういりあむ」を加入させる際に、熱血高校のメンバーである「あきし」を外した場合は、以降アメリカチームに「あきし」がいることになる。
宇宙人に関する情報がない状態で戦いに勝利すると、宇宙人の居場所のヒントをもらうことが出来、そのヒントに対応した国のチームと対戦し、そこで宇宙人を発見するという流れを熱血高校と対戦する全6チーム分こなすと、相手の本拠地である月(!?)に乗り込んでの最終決戦となり、これを倒すことで晴れてゲームクリアとなる。
なお、宇宙人が正体を現したときに画面が激しくフラッシュするので注意。

+ クエストモード攻略ヒント。ネタバレ注意

宇宙人に関する情報について

宇宙人の情報を持っていない状態で対戦したあとで貰える宇宙人に関する情報は、「○○の国に行った」というような抽象的な表現となっている。

ヒント 対応する国
黄金の国 日本
(花園高校)
紳士の国 イギリス
寒い国 アイスランド
赤い国 中国
暑い国 アフリカ
自由の国 アメリカ

時折「見かけなかった」という答えが返ってくることもあるが、これはハズレという意味ではなく、どこの国に行っても宇宙人を発見できるという意味である。
攻略サイトなどではこの答えを「今いる国(対戦して宇宙人の情報をもらった国)」と解釈しているところも散見されるが、実際は上記の通り、今いる国以外のどこに行っても宇宙人を見つけることが出来る。
なお、宇宙人を発見した国はそのプレイの間は二度と対戦が出来なくなる*3ので、情報に該当する国のキャプテンを仲間にしたいときなどは注意が必要。

宇宙人について

  • 宇宙人は必ず上から3人目に並んでいる選手が化けている。
    • 例えば花園高校なら「なりたか」だし、イギリスなら「ろばあと」が該当するので、彼らを集中的に狙えば早く対戦を終わらせられる。
      • なお、宇宙人を見つけるためにはその前に必ず一度対戦をして宇宙人の居場所の情報を入手しなくてはならず、情報を持っていない状態、あるいは情報を持っていてももらった情報と違う国に行った場合は上から3人目の選手を倒しても宇宙人を発見する事が出来ない*4
  • ちなみに、最終決戦で戦う宇宙人は内野メンバー全員が体力が最大の44で能力も非常に高く、加えてダッシュ速度も速い強敵である。
    • 打たれ強くキャッチも上手いので、時間切れで敗北となりやすい相手。

評価点

良好なゲームバランス

  • 全体的な調整は言わずもがなだが、特に挙げるべきは必殺シュート周りの調整であると言え、FC版では必殺シュートの性能差がかなり強烈となっており、「もず落としシュート*5」が猛威を振った反面、あまりにも使えなかった必殺シュートである「稲妻シュート*6」など、必殺シュートの格差はどうしても挙げざるを得ない問題点であった。
    • 本作ではもず落としシュートは追尾性能が大幅に低下し、加えてしゃがみで確実に避けられるようになり、稲妻シュートは威力は弱いままだが、それでもシュートの軌道などの性質が変わったことで当てやすくなった。
      • 主だったところだと上の2つが目立つが、それ以外の必殺シュートも調整を施されており、例えば「ブーメランシュート*7」も性質上FC版では当てづらいシュートであった*8が、こちらもターゲット追尾性能が強化されているので幾分か当てやすくなっていたりする。

クエストモード

  • やはり各国のキャプテンを加えて組むチームというのは夢があり、このモードではくにおは固定*9ではあるものの、それ以外は自由にメンバーが組めるのは純粋に評価出来る点であろう。
    • ゲームバランスが取れているので、いわゆる「地雷」と言われるようなキャラクターはいないし、逆に敢えて最後まで熱血高校の初期メンバーで行くプレイももちろん出来る。

FC版の問題点の改善

  • キャラクターの点滅・スプライト欠けが激しすぎることはよく指摘されていたものだが、本作ではそれらは大きく改善されており、目にも優しくなった。
    • 更にメンバーもAC版同様に4人になり、ゲームスピードも程良く高速化された。
      • ただし、ゲームスピードの高速化の影響で後述するキャッチタイミングに絡んだ問題が出てきてしまった所は否めない。

問題点

FC版から削除された要素の数々

  • FC版にあった必殺シュートとは異なるが、通常シュートよりも強力な「ナイスシュート」を打つためのパラメータであった「シュートテク」がナイスシュートの削除と合わせてなくなっている。
    • それ以外にも能力設定がFC版と比べるとかなり大まかなものとなっているため、個々の個性で言うと明らかに弱まってしまった。
  • グラフィックもAC版の流用なため、同じグラフィックのメンバーが何人もいることになってしまい、おまけにクエストモードを除いて内野メンバーも完全に固定されてしまっている。
  • FC版では通常と異なる方法で唯一「円輪シュート*10」を出すことが出来たり、必殺シュートの投げ方が他と異なるなどの強い個性があった花園高校のなりたかのこれら個性は全て削除されてしまった。
  • FC版の少しやり過ぎとも言えるくらいの演出に比べると地味になっているのは否定出来ず、特にFC版において圧縮・ブーメラン・ほえほえの各必殺シュートに付与されていた世界一周効果*11の削除を惜しむ声も多い。
    • とはいえ、AC版にほぼ準拠したグラフィックでFC版のようなある種出鱈目な動きをしてしまうと、それはそれで違和感が凄まじいことになってしまうのも否めないが。
    • 必殺シュートやボール命中時のSEに関してもFC版に比べるとやはり地味になってしまっている。
  • クエストモードの仕様やFC版で強い個性を放っていたこともあって、FC版で追加されていたインド・ソ連の削除はもったいない要素であると言える。
    • ただ、本作では前述の通り全体的に能力設定が大まかなものになっている上、FC版の各チームの能力傾向がそのまま本作で適用されている訳ではない*12事もあり、果たして登場したところでFC版のそれを再現されていたかどうかとなると若干怪しい部分もあるのだが。
      • ボールパワー(攻撃力)がやや高い程度にされた「もるどふ*13」や大して打たれ強くもない「むはまど*14」が出てきてガッカリさせられる可能性も無きにしも非ずなため、そういう意味では登場しなくて良かったのかも知れない。

AC版にあった一部のボイスの変更・削除

  • くにおが必殺シュートを使ったときの「なめんなよ!」、体力がなくなったときの「ぐえっ!」、ボールをパスする際の「ハイ!」といった声が変更されており、怪物が必殺シュートを使ったときの「フン!」が削除されている。

キャッチタイミングがシビア

  • FC版の難易度「難しい」もなかなかキャッチタイミングがシビアなのだが、本作ではそれ以上にキャッチタイミングがシビアであり、ボールが当たる本当に直前でなければボールがキャッチ出来ないと言っても過言ではない。
    • ゲームスピードの高速化と合わせて球速も全体的に高速化されているため、必殺シュートは殊更キャッチが難しくなってしまっている。
      • 本作では、しゃがみでの回避でほとんど問題なくシュートを避けることも出来るため、下手にキャッチを試みるよりもひたすら避けてやり過ごした方が被害が少なく済むオチになりやすい。

追い打ち攻撃によるハメ

  • FC版では、シュートを受けてダウンしているキャラクターに追い打ちを掛けても当たることはあるが倒れたままダメージを受ける形になっていたが、本作ではダウンしている選手にシュートを当てると再び浮き上がってダウンをするようになったことでキャラクターの位置が動くようになった。
    • これにより、貫通特性シュート(貫通シュート or アッパーシュート)を当て、吹っ飛ばしてダウンさせた相手を味方の外野選手で追撃、そのまま体力が0になるまでハメ殺すことが出来るようになってしまった。
      • 時間こそかかるが、慣れれば確実かつ比較的簡単に出来るため、ある意味問題であると言える。

総評

先のFC版の内容に比べて削除された要素が多いことが惜しまれるが、その代わりゲームバランスで言えば必殺シュートを筆頭にFC版よりも洗練されているため、1つのゲームとしての完成度はFC版に勝ると劣らない高い域にある。
また、クエストモードのシステムやハチャメチャなシナリオ運びなどの内容に対して好意的に見る意見も多く、FC版で不満意見の強かった点滅やスプライト欠けの問題が解消されていることも大きい。
そのため、こちらもまた優れた出来を誇る傑作の名を戴くだけのゲームであると言え、実際にFC版よりも本作の方を好むユーザーも決して少なくない。


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最終更新:2021年03月14日 19:26

*1 ただし、「ボールキープの時間制限」の概念は導入されていない。

*2 ちなみに、内野メンバーの選出は全てFC版からの3名とPC番外編で追加されたメンバー1人となっているので、外野メンバーはFC版からの6人のうちの残り3人と見ることも出来るが、あくまで憶測の話である。

*3 ステージ選択画面に×がついて選択出来なくなる。

*4 後者の場合も対戦後に改めて宇宙人に関する情報をもらうことが出来る。

*5 ボールを上空高く打ち上げて、ターゲットの頭上から高速で落下させる必殺シュート。追尾性能がやたら高く、しゃがみで避けてもお構いなしに当たる事が多い上、落下タイミングもまちまちなのでキャッチのタイミングも取りづらく、威力もそこそこに高いという非常に強力な必殺シュート。

*6 上下にジグザグ軌道を取りながらターゲットに迫る必殺シュート。威力が低い上に相手コートの端の方までボールが届かず、軌道上相手に当てにくいという文句なしに使いものにならない必殺シュート。

*7 一旦ボールを遠方上空に飛ばした後、ブーメランのように相手ターゲット目掛けて切り込んでくる必殺シュート。

*8 ブーメランシュートは高威力だが追尾性能が低く、切り込んでくるまでに間がある。その間に動かれてしまうとまず当てられない。

*9 もっとも、ストーリー上ボールをぶつけられた仕返しをしようとしているくにおが外せてはおかしいのだが。

*10 水平に大きく輪を描くような軌道で相手を薙ぎ倒す必殺シュート。軌道上キャッチしづらく貫通特性を持つが、威力自体は全必殺シュートの中で最も低い。

*11 ボールに当たって吹っ飛ばされた相手が一旦画面から消え、そのまま反対側の画面端から戻ってくる演出が世界を一周して戻ってきたかのように見えることからこのように言われる。

*12 例えば、FC版のイギリスチームは体力がそこそこ多いものの、かなり打たれ弱くなっており、必殺シュートによっては一発で40近いダメージを受けてしまう。本作では「(序盤の相手故に)補正で多少ダメージが増えている」という表現で留まる程度になっている。

*13 ソ連のキャプテン。全キャラクター中最高のボールパワーを誇り、ダッシュジャンプからのシュートはまさに驚異的。

*14 インドのメンバーの1人。全キャラクター中最高の打たれ強さ(防御力)を誇り、一部のシュートで2のダメージを受ける他は1のダメージしか受けない。ただし体力はかなり低い。