ランドストーカー ~皇帝の財宝~

【らんどすとーかー こうていのざいほう】

ジャンル アクションRPG
対応機種 メガドライブ
メディア 16MbitROMカートリッジ
発売元 セガ・エンタープライゼス
開発元 クライマックス
発売日 1992年10月30日
定価 8,700円
配信 バーチャルコンソール
【Wii】2007年9月25日/700Wiiポイント
判定 良作


概要

クライマックス代表となったプログラマー・内藤寛が手掛けたクォータービューのアクションRPG。
同氏が考案・設計した「DDS(ダイヤモンドシェイプド・ディメンジョン・システム)520」を利用し、奥行きや高低差をダイナミックに活用した擬似3Dアクションとしてのゲームデザインが特徴である。

トレジャーハンターである「ライル」が、悪党に追われて逃げてきたサッキュバスの少女「フライデー」と出会い、
モンスターの巣食う「メルカトル島」に隠されているという莫大な財宝を求めて旅に出るというストーリー。
キャラクターデザインは『シャイニングフォースシリーズ』の玉木美孝が担当している。

特徴・システム

マップ

  • ゲームマップはDDS520システムにより菱形のパースがついた立体で描かれ、これを並べ積み上げる形で奥行きと高さを表現している。
    • マップ同士のつなぎ目もゲーム全体を通じて整合性が取られていて、例えば吹き抜けに向かって飛び降りると、上マップでの座標をキープしたまま下マップに落下する。
    • 視点の関係で見えない裏側に隠れた場所にもオブジェクトが配置されている事がある。
  • 本作のマップ内に存在するオブジェクトは、ジャンプ高度さえ十分であれば、例えば「町人の頭上」にも飛び乗れる。
    • 「箱」のように持ち運べる物は、少しずつずらして積み上げて階段を作る事もできる。

アクション

  • Aボタンでジャンプ、Bボタンで剣による前方攻撃、Cボタンで目の前の物を持ち上げる。
    • 物を担いでいる時にCボタンを押すと目の前に置き、ジャンプ中は少し離れた場所へ投げる。前方へジャンプしながら投げると、より遠くへ投げる。
    • ジャンプ中は、歩行時と同様に十字キーによる空中制御を受け付ける。
    • 中盤以降、上記のテクニックを利用した謎解きも多く登場する。この他に重要な特殊操作はなく、操作系はシンプルである。
  • 移動は十字キーで行う。マップが斜めなので、移動方向も斜め入力する必要がある。
    • 一度進行方向が決まってしまえば、その後は斜めを押し続けなくてもある程度融通を利かせてくれる。

キャラクターの強化

  • レベル制ではなく、マップ探索などによるアイテム収集でプレイヤーキャラを強くしていく方式を採っている。
    • 4系統ある装備品(武器・防具・靴・指輪)は、その多くがダンジョンで拾ったりイベントをこなしたりして入手する。店売り品は少ない。
    • ライルのライフ最大値は「いのちのもと」というアイテムを手に入れると増えていく。
      • こちらは宝箱に入っていたりお店で買えたり*1、入手法は様々。
      • 最大値が上がるほど攻撃力も高くなる。

その他

  • 基本的なHP回復アイテム「エケエケの実」はフライデーの好物という設定があり、持っているだけでHPが0になった際にフライデーが回復魔法を使って助けてくれる。要するにHP半分で自動的に蘇生。最大所持数は9個で豊富に出てくる他、安く買える。
  • 移動は基本的に徒歩のみだが、途中であるサブイベントをクリアすると、「トレントの息子」が利用できるようになり、決まったポイント同士ではあるが、各所にある木と木のワープ移動が可能になる。

評価点

  • マップが高さと奥行きを同時に持ち、「タイミングと加減が肝のジャンプアクション」と「縦横無尽に歩き回る冒険もの」という、従来はサイドビューとトップビューで住み分けていた2種類の面白さを融合させている。
  • ダンジョンには謎解き要素も多く、アクションの熟練と発想力の両方を要求される。
    • 箱庭的なステージで見えるが届かない宝箱。これをどうやって取るのか…と考えたり、ヒントからある行動をすることで扉が開いたりなど、ギミックや謎解きに様々なものがあり、飽きさせない。
    • 物を持ち上げるというアクションも、店で物を買ったり、積み上げて足場にしたり、投げつけてスイッチを押したりなど、多用途に使う。
  • 地形の陰や背面も歩ける自由な箱庭が構築されていて、プレイヤーは自然と怪しい箇所をくまなく調べ回りたくなるように出来ている。レベル制ではない点も、丁寧な探索が攻略上の優位につながる事を実感しやすい。
  • 斜めになっている分、最初は操作に手間取るが、慣れてくると軽快に動かせる。操作性は良い方と言っていいだろう。
  • クォータービューで描かれた画面の見栄えが良い。前後関係に応じてオブジェクトが重なり合い、箱庭世界の綿密さが窺える。
    • オブジェクトのサイズが大きく、町人や敵といった各キャラクターや部屋の調度品の描き込みも入念である。また、原画の再現度とデフォルメ具合のバランスが良い。
  • ライルのアニメーションはとても滑らか。ジャンプ1つとっても、手足の角度や装備品などが細かく動く。
  • 軽快でノリが良く、またシーンごとにメリハリの効いているBGMの人気も高い。

賛否両論点

  • 一部の謎解きでズルができる。
    • ダメージモーション中に当たり判定消滅時間があり、これを利用すると階段が仕掛けで塞がれている所で敵を足場にして仕掛けを無視して上に登ったり、仕掛け扉などの一部障害物を通り抜けたりできてしまう。
    • 剣では届かない場所にあるオブジェクトを破壊するといった謎解きに、市販されている「画面全体にダメージを与えるアイテム」が有効。
    • これらもどうしても解けない・できない場合の救済策とも言える。

問題点

  • きっちり斜め45度からの視点で遠近感は無く、またオブジェクトに影が無く色味の差異なども無いため、空中に浮いているオブジェクトの位置が非常に掴みづらい。
    • プレイヤー視点では、高い手前と低い奥側が全く同じに見える。
    • ジャンプで飛び移っていく足場の位置関係が解りにくいというのは困り者で、特に足場から落ちたら元の場所まで戻るのに遠回りをさせられる構造になっているダンジョンなどは、かなりイライラさせられる。
    • 同じく、空中オブジェクトはその向こう側のオブジェクトにきれいにかぶさって見えるので、一部難しい場面がある。
    • こういった見間違えやすさを利用するような意地の悪い仕掛けは無いのが救い。*2
  • くどいようだが、斜め入力が基本という操作は当時のゲームパッドとの相性がいまいちで、取っ付きは良くない。思い通りに動かせるようになるまでは、しばらく忍耐の期間が必要だろう。
    • メガドライブの純正パッドは十字キーの入力が非常に不安定な事がそれに拍車をかけている(当時から純正パッドの操作性の悪さはよく言われていた)。
    • ライルを動かせるようになってすぐのダンジョンには敵が出ず、その次に攻略するダンジョンには最弱の白スライム、および最後にオーク数体しか出現しないのは、それへの配慮と思われる。
    • 慣れても細かい位置調整がしにくい。しかしジャンプなどでそういう操作が求められる場面が多い訳で…
      • 厳密には次回作ではないが、同視点のSFC「レディストーカー」では斜め入力の他に「上が右上、右が右下…」と45度回転させた入力に対応させ改善されている。*3
  • 地形で、特に屋外では、段差から飛び降りできる場所とできない場所の区別がほとんどつかない。できないせいで遠回りするはめになったり…。
  • 必要性が無い不快な仕様がある
    • キノコ型のモンスター・ラフリップス。普段は小さい状態で、大きくならないと攻撃できない。それだけならいいが、同じグラフィックの「ただのキノコ」があり、その中にモンスターが混ざっているという事もあるため、非常にややこしい。しかも、モンスターであればライルが近づくと大きくなるはずなのだが、たまになかなかならないこともあり、敵だと解りきっているのに大きくなるまでひたすら待ったり、しばらく待って動かないのでオブジェクトかと思えばダメージを食らったり…。
    • 近くに壁や木などの障害物があると剣が当たってしまい、振ることができないのだが、謎解きなどではこの必要性は全くない。モンスター相手に、よし攻撃!→カキーン→ウボァー!なんてのは多々ありすぎ、ストレスが貯まる。ただ戦いにくくなるだけの、全く無駄な設定。
      • これは、ライルが剣を横に振るせいなのだが、敵は武器持ちの場合皆縦に振るので、同じことが起こらない。そのため、剣を振れない狭い場所では、一方的にやられてしまい、余計に腹が立つ。
    • 一部、敵の配置が理不尽。筆頭は前述のラフリップス。普段が小さいせいで段差や障害物の陰でやたら見にくかったり、時には全く見えない位置からいきなり巨大化して襲ってくることもあり、始末におえない。
    • また、部屋に入るといきなり目の前に敵がいて攻撃してくる、というケースがたびたびある。本当に入ってすぐ攻撃が来るので、知らなければ対処のしようがない。しかも、それを喰らうとノックバックしたはずみで部屋から追い出されてしまう可能性が高く、さらにタチが悪い。
  • メルカトル、ホーリーの修行が異常に難しい。
    • ミニゲーム的なもので、必ずやらなければならないものではないのだが、とにかく難しい。
    • 金貨20枚で1回挑戦だが、こちらのライフは強制的に1にされてしまうため、1ダメージで終了。でも相手は1回1回多い。
    • 報酬はだんだん上がり、40人抜きでやっと金貨400枚。同じ額なら普通にザコを倒して稼いだ方が早く、苦労に見合う金額では全くない。
    • しかも、攻撃して普通のモンスター同様倒した時の効果音は鳴るのだが、こいつは鳴った瞬間もまだ攻撃してくるので、倒したと思ったら反撃を喰らって相討ち終了、という理不尽なことが多発する。
    • 50人抜くと終了であるアイテムがもらえるが、1回しか使えず、役に立つとは言えない。
    • とどめに、部屋の隅で倒すと変身の解けたホーリーが永遠に回転し続けて自分も動けない、というバグが起こることがある。
  • アイテムコンプができない。
    • メルカトルの町にある店が商売替えをして薬屋か怪しい店を開くイベントがあるのだが、薬屋ではアンチパラライズがここでしか買えず、怪しい店で売られる品物はすべてここでしか買えない。
      • このせいでアンチパラライズ1つの為にアイテムをすべて揃える(奪われたアイテムもアイテム欄には残っている)ことが不可能になっている。
      • 怪しい店はともかく、アンチパラライズがどこにもないのは疑問である。チェックに抜けがあったのだろうか。

総評

安定した面白さを持ち広く親しまれてきた「ジャンプアクション」「マップ探索アドベンチャー」という2つのゲーム性が、高いレベルで融合している。
謎解き難度や慣れが必要な操作性を考えると総合的な難易度は少し高い部類に入るが、ミス時の救済措置もあり、プレイヤーを突き放すような不親切さはない。
本作は極めて早い時期に擬似3DアクションRPGとして完成されていると同時に、ドット絵時代のゲーム特有の温かみにも溢れ、新しさと親しみやすさを兼ね備えていた点が評価された。

時が経ち一レトロゲームとなった今でも、『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』のようなゲームを好きな人ならお勧めできる。
一見手の届かなさそうな場所に、いかにも挑発的な態度で鎮座する宝箱を前に頭を悩ませる…という、どこか懐かしい楽しさを味わえるだろう。


その後の展開

  • クォータービューの擬似立体システムの後継作として『レディストーカー ~過去からの挑戦~』がスーパーファミコンで発売された。
    • こちらはジャンプ操作が存在せず、本作とはかなりプレイ感の異なる作品となった。
  • また、その後も後継作として本作の直系に当たり、マルチシナリオ制も採用するなど意欲的な作品の『ダークセイバー』がセガサターンで発売された。こちらは操作キャラクターはドット絵だが、3Dオブジェクトがすべてポリゴンで表現されており、視点移動も可能に。
  • 本作のマップデザイナーの一人であった大堀康祐は後に独立し、有限会社マトリックスを設立。同社にて本作の流れを汲むアクションゲーム『アランドラ』が開発されている*4
  • 東京ゲームショウ2005にてPSP対応のリメイク版が発表され、ファミ通の発売カレンダーにも発売日未定として載っていた。
    • しかし、その後公式サイトが閉鎖されており、制作中止になったものと思われる。
  • 2019年9月発売のメガドライブミニに本作が収録された。

余談

  • 「DDS520」の数字部は、「520マップまで扱える」という事を表している。
    • 同システムは開発中に改良を加えられて性能が向上し、実際のゲームでは600以上のマップが使われている。
    • 当時、内藤寛氏はインタビューにて、「他の人がめんどくさがるちまちまとデータを入力する作業が好き。このDDS520もデータ入力が沢山あって大変」と自虐も込めて解説している。
  • OPで流れるジプタ遺跡の探検模様を見ると、本作がメチャクチャ難しいゲームのように見える。「落下すると復帰不能」や「一度見送ると詰み」といったタイプのトラップは、本編には無いので安心してほしい。
  • DC『クライマックスランダーズ』に、ライルとフライデーが登場する。ライルはプレイアブルキャラクターの一人。
  • このゲームが発売される時に、内藤寛氏本人を主人公にした漫画が掲載された。また、この頃に内藤寛氏がパーソナリティを務めるラジオ番組がいくつか放送されている。メディアミックスとはいかなくてもかなり大胆な戦略である。
    • 当時の大阪の人気番組「MBSヤングタウン(通称、ヤンタン)」の中でほんの数分のランドストーカーの紹介を内藤寛氏が行うコーナーもあった。*5
  • クライマックスのゲームの起動時に現れるサキュバスの様なシルエットは今作のフライデーから。同社の顔として存在感を発揮している。
  • また、このゲームあたりから内藤氏を天才プログラマーと持ち上げる空気がメガドライブ雑誌やファミコン通信で出てきている。
    • 当時、SFC陣営で顕著だが殆どスポットの当たることのない開発者をタレント化して引っ張り出してくる事が多々あったのでその流れに乗っかった様なもの。わかりやすい例で言えばご存知ドラクエの堀井雄二氏やFFの坂口博信氏、メガテンの岡田耕治氏、後の飯野賢治氏等。
      • メガドライブ陣営にこの様なタレント化出来そうな開発者が皆無で、なんとか同様の人を作り出そうと相当難儀していた。メガドライブ陣営では他には音楽の古代祐三氏(スーパー忍)、個人ではないがセガの「体感ゲームのスタッフが作った」の宣伝文句等。

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最終更新:2023年06月28日 15:41

*1 基本的には1店舗につき1個、現品限りでの販売になります。

*2 しいて言えば2番目の武器『イフリートソード』入手の手前ぐらいだが、ここは1マップで完結しており、短めかつ落ちてもすぐに再挑戦できる構造になっており、ストレス要因とは受け取られにくい

*3 この時にSFCのコントローラーが持ち手が円形なので気持ち斜め45度に持ってプレイすると慣れが格段に早くなる。

*4 キャラクターデザインも本作に続いて玉木氏が務めた

*5 コーナーというよりも、他のパーソナリティとは別枠で独立したもので、「少し長いCM」の様なもの。