江戸川乱歩の怪人二十面相DS
【えどがわらんぽのかいじんにゅうめんそうでぃーえす】
ジャンル
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推理アドベンチャー
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対応機種
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ニンテンドーDS
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メディア
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128MbitDSカード
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発売元
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タカラトミー
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開発元
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エイティング
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発売日
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2008年12月18日
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価格
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5,040円(税込)
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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3箇所
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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判定
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なし
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ポイント
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推理小説「怪人二十面相」のゲーム化 古典的なコマンド総当りゲー ボリュームが薄すぎる…
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概要
タカラトミーからリリースされた推理アドベンチャーゲームであるニンテンドーDSソフト。
有名小説家・江戸川乱歩執筆の児童向け推理小説「怪人二十面相」をゲーム化した作品である。基本は原作エピソードを忠実になぞっているが、一部の設定が変更されている。
任意セーブ方式(一部オートあり)。ほとんどの操作はタッチと十字キー・ボタンの両方に対応している。一部のシーンでボイスあり。
ストーリー
凄腕の名探偵・明智小五郎の助手を勤める小林芳雄少年の元に、「世間を騒がせている大泥棒・怪人二十面相からの新たな予告状が届けられた」という情報が入った。
二十面相とは因縁のライバル関係であった明智は"あいにく"留守中であり、彼が直接事件を解決する事ができない。
明智から探偵としての実力を認められている小林少年は、明智の代理として二人の仲間と共に「少年探偵団」として活動を開始する。
果たして、少年探偵団は怪人二十面相の犯行を阻止する事ができるのだろうか…?
本作では「羽柴邸編」と「国立博物館編」の2つのエピソード(全4章構成)でストーリーが描かれる。
主なモード・ルール
本作は上記ストーリーをプレイできる「本編」と、プチ推理問題集である「明智事件録」の2モードが収録されている。
本編(「少年探偵団 対 怪人二十面相」)
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ゲームの流れ。
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ごく一般的な推理アドベンチャーゲームと大体同じ感覚でのプレイを行う。原則として、小林少年視線での行動がメインとなる(例外あり)。
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ゲーム中で行える行動は、主に「重要人物からの会話の聞き込み」「舞台現場の捜索」「探偵アイテム使用」「真相の解明」「事件の推理」の5つに分けられる(下記)。
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シナリオはすべての章において完全一本道進行であり、イベントの分岐は発生しない。また、いかなる行動ミスをしようと、ゲームオーバーなどのペナルティはない。
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表示されている会話の高速スキップ・バックログが可能。但し、一部のイベント中では機能しない場面もある。
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ゲーム中にSTARTボタンを押すと任意セーブが行える。セーブできる箇所は"使用中のもの"のみ。章をクリアすると、任意セーブが必ず挟まれる。
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すべての章をオールクリアすると、各章を自由に選んでのプレイが可能となる。
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ゲーム中は以下の4つのコマンドが用意されている。
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「話す」…探索中の舞台現場にいる重要人物から、会話の聞き込みを行う。
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「移動」…他の舞台現場へと移動する。
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「調べる」…舞台現場の捜索を行う。
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「アイテム」…所持している探偵アイテム・及び入手したパズルピースの確認が行える。
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会話の聞き込み
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"話すコマンド"で現場にいる重要人物から会話の聞き込みを行い、様々な情報を入手していく。
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時折会話中に「赤い文字の会話」が表示される。これをスライドしてから決定を行うと、「パズルピース」を入手できる。
「赤文字以外の会話」「赤文字が完全にスライドしきれていない」「既にピースを入手している赤文字」のいずれかをスライドしてもピースは入手できない。
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赤文字スライドとは別で、特定の会話を聞き込む事でもピースが入手できる場合もある。
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舞台現場の捜索
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"調べるコマンド"で現場周辺を捜索し、事件の真相への手がかりを見つけていく。
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現場の怪しい場所をタッチし、すべての捜索をしなければならない。タッチ箇所によっては、重要人物からの新たな会話の聞き込みが追加されている事もある。
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探偵アイテム使用
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シナリオ途中にて「何かのアイテムを使用せよ」という指示が出される場面がある。
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あらかじめ所持している7つの探偵アイテムから、適任なものを選択しなければならない。本作では"新たなアイテムの入手・及びアイテム消費"は一切発生しない。
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真相の解明
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パズルピースを特定数入手すると、「真相の解明イベント」が発生する。
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ジグソーパズルの要領でピースをはめ込み、パズルを完成させると事件の真相へと大きく踏み込める。
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事件の推理
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各章のクライマックスでは、事件の全容を暴く「推理」が行われる。
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推理はすべて3択の選択肢方式となり、推理ミスをしても同じ推理からのやり直しだけで済む。
明智事件録
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ゲームの流れ。
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本モードにストーリー性はなく「明智が出題するプチ推理問題に答えていく」プレイスタイルとなる。本編との関連性はない。
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全51の問題から好きなものを選び、問題を読んだ後に「問題内に表示された怪しい"文章"のスライド」「正解だと思った選択肢の回答」「事件現場のタッチ」のいずれかで答えを選んでいく。
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本編同様にペナルティ・ゲームオーバーはなく、回答に失敗しても何度でもやり直しが可能。どうしても分からない場合は、明智からのヒントを聞く事もできる。
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問題を正解すると、問題選択画面の該当問題欄に「解決」のマークが付く。51すべての問題を解決すると全問題制覇となり、明智からの祝福のメッセージが聞ける。
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本モードは事件を解決する度にオートセーブがされる。
問題点
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薄すぎるボリューム。
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本作の総プレイ時間はわずか4~5時間程度。短すぎる。
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もちろん、先述は本編と明智事件録すべてのプレイを想定した時間である。各モード共に周回プレイが存在しない為、1回クリアすると"やり込む"部分が見当たらなくなってしまう。
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自由度の低さ。
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本編は完全一本道進行であり、どうプレイしようが内容の変化がない。
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強いていえば、「"事件の推理"時にてミスすると、小林少年のお茶目なリアクションが見れる」位の変化はあるが、エピソード自体の変化は全く起きない。
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こういう原作付きアドベンチャーには「原作とは違うIF展開が発生する」というサプライズを期待する方も多いと思うが、本作には"そういうもの"は取り入れられていない。
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難易度が低すぎる。
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本編において、どの様な行動をしても一切のペナルティが発生しない。すなわち、コマンド総当りだけで確実にクリアできてしまう。
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まるで80年代の推理アドベンチャーの再現である。今時のアドベンチャーにある凝ったシステムは"ほとんど"作られていない。
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一応メーカー側は「"真相の解明"によるパズルピースの組み合わせ」を売りとしているが、実際はただジグソーパズルをするだけであり、推理要素に組み込む必然性が薄い。
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7つ用意されているアイテムの使用頻度が非常に少なく、ほとんど死にシステムでしかないのも謎。原作における探偵アイテムの活躍も魅力の一つなのに…。
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明智事件録の推理に関しても、基本怪しい箇所をチェックすれば、適当な回答でも大方正解できてしまう。
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ペナルティがないので、選択肢回答・事件現場タッチ系の問題は総当りで100%正解可能。親切な仕様と解釈するにしても、この優しすぎる回答方式は如何なものか…。
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その反面、文字スライド回答系の問題は無駄にややこしい場面が多く、「答えが分かっているのに正解できない」という事態に陥りやすい。
一例としては、「現場に落ちていたナイフ」が正解の場合、「ナイフ」「落ちていたナイフ」の回答だけでは正解として扱ってくれない。この辺は地味に不親切である。
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安っぽいキャラクターデザイン。
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今時の子供プレイヤーでも親しみが持てるキャラデザを起用しているが、まるで同人ゲームの絵柄と揶揄されやすい。
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本作のキャラデザはあまり上手い絵柄とはいえず、一部の絵柄は作画崩壊気味な場面も見られる。親しみのある絵柄という意味では悪くはないが…。
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各キャラは"ほぼ"すべてにおいて立ち絵で済ましており、イベントスチル的な表示が滅多にされない。立ち絵のバリエーションも少なく、同じ素材が頻繁に使われる。
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ほとんど空気なボイス。
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ボイス入りではあるが、喋る箇所が極めて少ないという悲しさ。
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演じている声優陣が豪華ではあるが、正直この程度のボイス量でプレイヤーが喜ぶとは思えない。中途半端にボイスを入れる位なら、ボリュームの強化に力を注ぐべきなのでは?
評価点
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原作再現度は悪くない部類。
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こういう推理系の原作ものは「原作改変しすぎて別物と化している」と批判されるものもあるが、本作においては比較的高い原作再現がされている。
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原作が児童向けの推理ミステリー小説という事もあり、本編においては"推理ものにありがちな陰惨な描写"がなく、誰一人死なないままでエピソードが描かれる。
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「若くして高い推理力を持つ小林少年」「超万能探偵の明智」「病的な泥棒でありながらも人を傷つける事を嫌う怪人二十面相」など、主要キャラの性格付けの再現度も高めである。
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但し、本作においては"小林少年率いる少年探偵団"が主役であり、原作に比べると明智の出番が少なくなっている。"ここ"を残念がるプレイヤーは少なくないと思われる。
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また、原作自体にも当てはまる事だが、全体的にご都合展開が目立つ節もある。「捻りの効いた推理ミステリー」を期待するのはお門違いといえるかもしれない。
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本編とは対照的に、明智事件録は容赦なく(問題の中で)人が殺されている設定が多く、本編に比べると大人向けな雰囲気を放っている。
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システム周りも悪くない部類。
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ほとんどの操作はタッチ・十字キー・ボタンのすべてに対応している上に、コマンドなどの配置も分かりやすい為、操作の不備で困る心配はまずない。
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あって当たり前な機能ではあるが、高速スキップやバックログに対応している点も一応評価したい。
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子供向け作品な割に"文章の漢字使用率が高め"なのが気になる。とはいっても、難しい漢字にはちゃんと"ふりがな"が括弧入りで付けられている。
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漢字の多用も原作再現ではあるというか、原作が古い小説であるためやむを得ない部分ではある。中途半端に現代向きの言い回しへ翻訳してしまうのではなく、ふりがなを振って読めるようにしたというのは評価のできるところだろう。
総評
難易度の低さは「子供向けだから…」と割り切るにしても、価格に釣り合わないボリュームの薄さが非常に残念な次第。せめて現状の倍近くのボリュームがあれば…。
最終更新:2021年12月03日 14:28