タクティクスオウガ 運命の輪

【たくてぃくすおうが うんめいのわ】

ジャンル シミュレーションRPG
対応機種 プレイステーション・ポータブル
メディア UMD 1枚
発売・開発元 スクウェア・エニックス
発売日 2010年11月11日
定価 UMD:5,980円
DL:4,980円
レーティング CERO:B(12歳以上対象)
廉価版 アルティメットヒッツ:2011年12月22日
UMD:2,800円+税
DL:2,000円+税
判定 良作
ポイント 原作スタッフ再結集による「再構築(リ・イマジネーション)」
システムやゲームバランスが大幅に刷新
イベント、加入キャラクターも大幅に追加
クラスごとのレベル制やレベルアップボーナスには賛否が分かれる
オウガバトルサーガ


概要

オリジナル版スタッフが再集結してリメイクした、SRPGの名作『タクティクスオウガ』。
「再構築(リ・イマジネーション)」を標榜しており、ゲームシステムやグラフィックなどに大幅な改良が加えられている。


評価点

ゲームシステムの変更点

戦闘システムの変更

  • 戦闘参加人数は原作では10人固定だったが、本作はマップの広さによって増減するようになった。
    • 基本は6~10人が最大参加人数の場合が多い。イベントボスマップなどは最大12人まで参戦可能。逆に4人などの少数限定マップや、デニム(&一部の仲間)のみが出撃するマップも追加されている。
    • 敵の数も全体的に原作より増加している。
    • また、ユニオン(自軍)の仲間の最大人数が30人から50人に飛躍的に増え、人員整理の必要が実質無くなった。
  • ユニットのWT値や各能力値、命中率やダメージ算出方法の見直しが図られた。
  • 原作では近接攻撃は必ずカウンターが発生していたが、本作では「カウンター」スキルを装着しなければ発生しなくなった。その代わり、スキルを付けているとオリジナル版ではカウンターが出来なかった間接攻撃もカウンターが可能になった。カウンターのダメージもスキルのランクによって上昇する(通常攻撃時の25%→50%→100%)。
  • 消耗アイテムは、原作ではあらかじめ装備したアイテムしか使えなかったのに対し、本作では所持している全てのアイテムの中から使うことができる。
    • ただしすべてのアイテムが自由に使えるわけではなく、攻撃アイテムやHP全回復などの強力なアイテムは「消耗品使用」スキルを装備しなければ使用できない。
    • 「アイテムスリング」というアイテムを遠距離に投げられるようになる装備品も登場し、アイテムが高い利便性を持つようになった。また、一部の魔法はMPではなく所持している触媒アイテムを消費する。
  • TP(タクティカルポイント)というステータスが新たに採用された。MPは魔法用であるのに対して、TPは技用である。『外伝』のSPと意味合いが近いが、こちらは戦闘時の行動(攻撃や被ダメージなど)で増加し、溜まったTPを消費し、武器の種類ごとにある必殺技や、クラスごとにあるアクションスキルを使用できる。
    • 威力の高さや効果の大きさからいずれも戦況に大きな影響を与えるものばかり。また味方同士で同士討ちして強引にTPを溜めるというテクニックも存在する。
  • 属性システムが大きく拡張。『ベイグラントストーリー』に近い雰囲気のシステムになっている。
    • 基本属性「火・水・風・土」と、一部ユニット限定属性の「光・闇」エレメントに「雷・氷」が追加され、全8属性になった。
    • キャラクターひとりひとりが4属性のいずれかの属性を持っていたが、クラスやキャラクターによる属性RESは撤廃されており、そのキャラの苦手な属性攻撃で「弱点を突く」ことはできなくなった。
      • キャラクターごとの属性は撤廃されたが、「○属性補正」というスキルを付けることで、属性を持った武器や魔法の威力を高めることができる。複数の属性スキルをつけることで2種類以上の魔法を扱うキャラを作ることも可能だが、スキルは使用回数によって育つ仕組みなので、使う属性は1つに絞ったほうが望ましい。
      • なお、この変更でフォリナー4姉妹が地水火風それぞれ得意属性を持っているという設定は無くなっている*1。「属性を司る巫女」であるクラス「シャーマン」に就けるキャラはちゃんと雷・氷の分を加えた6人となっているが、6姉妹になったわけではない。
    • 武器の持つ「斬・突・打」という打撃属性、それに対する防具の相性というシステムが追加された。
    • 「種族特攻」が細かくなり、一部の武器に特定の種族に対する攻撃力が設定されていたり、「人体学」などのスキルを着けることで特定の種族に対する攻撃力・防御力を高められるようになった。
  • 原作では戦闘でHPが0になったキャラは(戦闘中に蘇生させないと)即消滅(ロスト)してしまっていたが、本作では、味方のHPが0になると「負傷」状態になり動けなくなるが、3ターン以内にアイテムや魔法を使って蘇生すればその場で戦闘に復帰可能という『ファイナルファンタジータクティクス』を踏襲したシステムになった。
    • 負傷状態のまま3ターン経過した場合はマップから消滅するが、次のマップでは使用可能。ただしユニットごとに初期状態で3つ持っている「ハート」が1つ減り、ハートが3つ減って0になるとそこで初めてロスト=以後使用不可能となる。
    • 蘇生用アイテムは序盤から店売りされており、ハートを回復させるアイテム(ただし入手は困難)もある。またハートが0になったキャラがロストする際も、スキル1つを他のキャラに継承させることが可能である。
    • ただし、ウォーレンレポートには戦死者はもちろん、負傷者数もカウントされているので、負傷者ゼロを目指すなら注意。また、負傷にはユニットの忠誠度低下などのリスクもある。そして、どういう理屈なのかはわからないが、その負傷者が属している民族のカオスフレームが上がる*2
  • オリジナル版では「Bonus Money」として戦闘勝利時に軍資金を獲得できたが、今作では代わりに入手できる「オヴェリス黄銅貨」などの換金アイテムを売却して資金を賄うようになっている。

クラスとスキル・装備

  • クラスの種類・内容は原作をベースにしつつほぼ別物になっている。
    • 汎用クラスは男女ともに同じになった他、クレリック・プリースト・エクソシストのような似たようなクラス(原作ではいずれも回復魔法を使える回復職)は1つに統一された。汎用クラスは14種類+条件を満たすと手に入るものが3種類存在する。
    • 固有クラスは一部のキャラしか就けないという扱いで、固有クラスを持つキャラもクラスチェンジできるようになった。クラスを変えるには「職業の証」というアイテムが必要となり、頻繁な転職が抑制されている。
    • ホークマン、フェアリー、リザードマンといった亜人種も、制限付きだが人間同様のクラスチェンジができるようになった。また、その種族専用のクラスも用意されている。
      • 『転職証』さえあるなら、パラメータ条件を満たさなくても(上記の制約の範囲で)自由にクラスチェンジができるようになった。そのためもあり、オリジナル版で重要な要素であったアラインメントの存在意義が大幅に下がり、キャラ付け程度のものになった。
  • 「スキル」システムが追加。ユニットを自分好みにカスタマイズできるようになった。
    • 戦闘で手に入ったSPを消費しスキルを覚え、スロットに装備することで効果を発揮する。覚えられるスキルはクラスごとに異なり、クラスレベルが上がるごとに覚えられるスキルも増えていく。
    • スキルはクラスによって効果を発揮しないものもある。また、アクションスキルは基本的にそのクラス専用のものになっており、他のクラスで使用することはできない。
      • 原作では似たような近接職だったナイトとバーサーカーは、前者はダメージを大幅にカットする「ファランクス」*3、後者は攻撃力を大きくアップする「ブラッディアサルト」というアクションスキルをそれぞれ使えるという形で差別化されている。
    • 「武器学」「属性補正」「種族学」といった効果を高めるスキルは、戦闘で該当した行動を取ることで経験値が溜まりレベルが上がっていく。このため、個性を付けて使い続けることで強くなる作りになっている。
  • レベルの管理が「キャラごと」から「クラスごと」に変更された。経験値は戦闘終了時に出撃メンバーに自動で配分される。
    • オリジナル版で賛否両論を起こしていたトレーニングは削除。自由にレベルを上げたければ戦闘をこなしていく必要がある。その代わり、エンカウントバトルの難易度はやさしめに調整されている。また、エンカウントバトルに主人公を出さなくても良くなったので、本当にレベルを上げたいクラスだけを重点的に配備することが簡単になった。
  • 装備については総数や種類が原作から大幅に増えている。その一方で装備制限なども加わっている。
    • 原作の「誰でも何でも装備できる」という仕様から、クラスによって装備品に制限があるという通常のRPGに近い仕様になった。
      • 本作の弓はアーチャーなどの一部クラスのみ装備できる。また同じカテゴリーの装備でも、各武器によって(例えば装備箇所の片手・両手の種別によって)装備の可否が分かれる。
    • また、装備にレベル制限が加わっている。クラスのレベルが装備の持つレベル制限を越していなければ装備できない。
      • 強い装備は弱い装備より重いが、原作のように「機動力損失が大きすぎて低級装備のほうがマシ」ではなくなり、レベルを上げて高級装備に乗り換えるという一般的なレベルデザインになった。
    • キャラの持つエレメントは撤廃。クラスの得意武器も撤廃。その代わりに、上記の「武器学」スキルによってキャラの得意武器が表現されている。
    • ショップでは素材を使って合成を行うことで、装備品の強化を行うことができる。

前代未聞のUNDO機能「C.H.A.R.I.O.T.」

  • 本作のタイトルにもある「運命の輪」と呼ばれるシステムの1つ。戦闘中にLボタンを押すことで、50手以内の行動ならいつでもターンを巻き戻してやり直すことができるという便利機能。
    • 使用条件や回数制限などは一切なく、C.H.A.R.I.O.T.を使用した場合はやり直す前と後の展開が両方枝分かれして保存されるため、「やっぱりやり直さないことにする」と言った融通が非常に効きやすくなっている。
    • この機能をフル活用すれば、敵に攻撃をガードされても攻撃する位置を変えることで戦闘結果を変えたり、ユニットが戦闘不能になったらその前に戻して戦闘不能を防いだりといったことがとても簡単にできるため、セーブ&ロードの手間が大きく省ける。
    • もちろん従来のとおりにプレイしたい・難易度を上げたければ一切使わないことも可能。ウォーレンレポートには「C.H.A.R.I.O.T.無使用勝利数」が記録され、一度も使用せずにクリアすることで得られる称号もある。

さらに充実したやりこみ要素

  • オリジナル版では「死者の宮殿」という連続してマップを攻略していくダンジョンがあったが、本作ではこの手のダンジョンの数が増加し、クリア後のやり込み要素になっている。
  • 「称号」システムが追加。ストーリーで選んだ選択肢や強敵を倒すなどの行動に伴い獲得できる。
  • ストーリーを一度クリアすると、もう一つの運命の輪システムである「W.O.R.L.D.」が使用可能になる。
    • これは、「自軍の編成状態を保ったまま、シナリオ上の「アンカーポイント」と呼ばれる要所に自由にジャンプしてそこからプレイし直すことができる」という、いわゆる「つよくてニューゲーム」を発展させたシステムである。
    • これにより、育てたユニットを使って1周目とは異なるルートに進んだり、二者択一の要素やルート限定の仲間を全員集めるといったプレイが可能。
    • また敵の強さはこちらの最大レベルに合わせて自動で調整される仕様になるため侮れない。
    • ちなみに、W.O.R.L.D.を使った場合は自軍の状態とシナリオ上の展開は別扱いになる。例えば1周目でキャラAを仲間にし、2周目でそのキャラAを見殺しにするルートに進んだ場合、キャラAは「仲間には存在するがシナリオ上は死亡している」という扱いになる。

グラフィック・シナリオ・BGMの強化

グラフィック

  • マップ上のグラフィックは基本的にオリジナル版と同じドット絵で、デザインもオリジナル版を踏襲しているため見た目の違和感はほぼ無い。
  • 一方で会話やステータス画面で表示されるキャラクターは、オリジナル版の濃い画風のドット絵からイラストに変わっている。イラストは過去に『メタルギアアシッド』を制作し、『光の4戦士』でも吉田明彦と共に仕事をした政尾翼が担当。
    • ザエボスなど原作のイメージからかけ離れてしまったキャラもいるが、吉田氏が監修を行っているため不思議と違和感は無い。吉田明彦氏はキャラクター原案の他にも、タロット絵やパッケージ絵などを担当している。
  • 戦闘中はクォータービューから見下ろし型に視点を変更したり、拡大・縮小したりするといった機能も搭載。地形が入り組んだマップで場所関係を把握しやすくなった。

シナリオ

  • オリジナル同様松野氏が担当。基本的なストーリーの流れはオリジナル版と同じで、バルマムッサの大虐殺はもちろん、倫理的にヤバいであろう「さっすが~、オズ様は話がわかるッ!」も(表記は微妙に違うが)ちゃんと残っている*4
  • 一方で新イベントも追加。特に戦闘中にデニムや因縁のあるキャラが敵リーダーと掛け合いする場面が増えた。
    • ラヴィニス、クレシダ、アゼルスタンといった新キャラも登場。また暗黒騎士団のオズマなど、描写が大きく増え実質新キャラと言えるほど掘り下げられているキャラもいる。
      • ただし敵リーダーに存在した二つ名*5や、特徴的なテキスト(「ッ」や「ン」など)が削減されていることを惜しむ声もある。
    • 「リィ・ブム水道」「ヴァネッサ街道」「ゾリューシ油田」などのマップが追加され、新たなバトルが発生するようになっている。
  • ウォーレンレポートの解説にも手が加えられ、一部のユニット(ヴォルテールやサラ、海賊ダッザなど)も掲載されるようになった。
    • ヴォルテールやアロセールの解説文はSFC版のプレイヤーならニヤリとできるネタが仕込まれている。
  • 章間のインターミッションでは『FFXII』の回顧録のように英語ボイスを交えた戦況説明がなされる。
  • クリア後は無料のDLCによってifのシナリオを体験できる。
    • 原作では非業の末路を辿ったキャラを自軍に加えることができたり、原作ではシナリオ展開上叶わなかったテンプルコマンド全員と戦闘できる展開もある。
    • オウガバトルサーガの世界観の拓展につながらないのが悔やまれる。
  • 未来(続編)を予感させる追加エンディングの存在。
    • 上記の無料DLCを最後までクリアすることで発生する。
    • この追加エンディング内では語り手がそう遠くはない未来にまた大きな災厄が発生するだろうという意味深な発言をする。
  • リメイクにあたって原作より掘り下げられたキャラクターも何人か存在。
+ ややネタバレ注意
  • 1人めは弓使いのアロセール。
    • 他が「戦士」とか「騎士」とか「魔術師」なのにもかかわらず、彼女だけ二つ名が「雷神アロセール」という伝説的存在のような名前。
      • 恐らく原作で「雷神の弓」を持って大暴れできた事に由来。本作でも前述の通り「雷神の弓」は非常に強力な武器となっている。
    • 原作ではCルートでしか仲間にならなかったが、本作では全てのルートで仲間になる。
  • 2人めは原作ではモブ(汎用)の敵リーダーだったガルガスタン人の騎士、ディダーロ。特にイベントもなく「無念のディダーロ」というヘンテコな二つ名が一部でネタになっていた彼だったが…
    • なんと本作ではルートごとに彼の登場する専用のイベントが追加。どのルートでも騎士の鑑と言えるような見事な生き様を見せ、多くのプレイヤーを魅了した。ちなみに3ルートで「無念」という台詞の使い方が異なる凝り様。
  • 3人めに銃士レンドル。もともと名前付きの専用イベントがあるものの中身は汎用キャラという残念なキャラだったが、ヴォルテールなどの他の味方汎用キャラを差し置いて専用グラフィックになったうえに、口調や民族も変わるなど、名前とクラスが同じ別キャラに生まれ変わっている。
    • ただし、戦闘グラは旧作におけるガンナーの物を流用。とはいえ、そもそも汎用ガンナーの戦闘グラ自体が描き直されているため、ここでも彼専用になっている。
  • 上記の三人以外も、フルネームが与えられたり、ウォーレンレポートで詳細が記載されたりと、どのキャラも深く掘り下げられている。
  • それとは逆に、リメイクにあたって追加された新キャラクターである騎士ラヴィニスは高潔な美貌の女騎士であり、追加キャラクターでは唯一パッケージ画像にも登場しているなど、発売前にはいかにも贔屓されていそうだと話題になったのだが…
+ ネタバレ注意
  • 実際にはCルートを選ぶと早々に退場してしまい、Lルートでも複数段階にわかれた条件を満たさなければ仲間にならない。
  • その条件も「ウォーレンレポートに追加される目撃情報を見る」「特定の戦闘で特定のキャラクターを参加させると発生する会話を(勝利する前に)最後まで見る」などを期間限定、少ないヒントでこなす必要があり、攻略情報が充実するまでは「敵対したので倒したら普通に死んだ」「仲間割れしたきりラヴィニスが全然出てこない」「一度は助けたもののそのままフェードアウト」と言った失敗談が続出した。
  • とはいえ、民族性がストーリーの大きな柱になっている今作において、出自に由来する周囲との軋轢や所属の迷いをシナリオに無理なく組み込み、ガルガスタン陣営の内部事情を描く上でも一役買っている彼女の追加自体は成功しているといえる。

BGM

  • オリジナルを担当した崎元・岩田氏はもちろん続投、さらに彼らの音楽プロダクション『ベイシスケイプ』所属の複数のアレンジャー達によってアレンジされている。
    • BGMは長くなっている曲が多く、中盤以降の展開は新鮮で面白い。特にオリジナル版ではトレーニングのテーマで知られる「Harvest Dance」は原型を留めてないほどの大胆なアレンジが施された。また、一部『伝説のオウガバトル』で使用されたBGMも混ざっている。
  • オリジナル版にあったサウンドテスト(MUSIC/ON)は、本作ではウォーレンレポート内の「ディーバの譜面」として存在。聴ける楽曲数は進行に応じて増える。ライナーノーツも健在だが、流石に反省したのか今回は真面目。

処理速度の良さ

  • 敵AIの思考・移動時間が大幅に短縮された。オリジナル版と比べるとその差は一目瞭然。
  • ゲーム中のあらゆる場面でロード時間は短い。UMDのままでもそれなりにロード時間は短いが、メディアインストールを行うとほとんど気づかない程度にまでロードが短くなる。
    • だが思考時間が引き延ばされるケースが少なくなく*6、後述の問題もあり、テンポの速さにはつながらなかった。

賛否両論点

  • 一部の武器の「隠し補正」
    • 一部の武器は、「装備するキャラのステータスが高いほど攻撃力が上がる」という説明に明記されていない効果(通称:隠し補正)を持っている。
    • 具体的には「ロンバルディア」「ブリュンヒルド」「雷神の弓」などが該当。隠し補正の影響は大きく、同レベル帯の他の武器より数段階格上の攻撃力になるため、バランスを崩す一因になっている。特に雷神の弓は雷属性補正のスキルと相まって異常なまでの火力になる。
      • もっともロンバルディアとブリュンヒルドは終盤のイベントで確実に入手する武器であり、ラストダンジョン・ラスボス用の救済措置としての役割も持っていると思われる。
  • 原作を超える「弓ゲー」っぷり
    • 原作では弓が強力でありしばしば「弓ゲー」と揶揄されていたが、本作では弓の射程が軒並み拡張されている、(特に序盤で)全体的にユニットの移動力が落ちている、弓の軌道を事前に確認できるスキルがあり、目標に攻撃が届くかの判断がつきやすくなった、ライバル武器の弱体化*7などにより、弱体化どころかむしろ強化されている。
      • 人間のアーチャーは移動力の低さがネックになるが、人間のニンジャ、ホークマンのアーチャーなどは結局高機動力と長射程攻撃が強力なシナジーを成し、戦場は矢弾に支配されていく。
      • オリジナル版同様片手弓と両手弓があるが、片手弓の種類が非常に増えたうえ、両手弓は高性能である。

シナリオ関連

  • 追加イベントのうち、カノープス加入ステージでのヴァイスとカノープスの喧嘩シーンや、Lルートガズン戦でのカチュアの振る舞いが浮いている。彼ららしい世界観に合わないという意見がある。
  • ルートごとの人物関係の設定の食い違いが原作でも指摘されたが、本作ではさらに拍車がかかり、それぞれが辿ってきた背景をパラレル扱いされている。これは、新システムのW.O.R.L.Dのためとされているが、ウォーレンレポートを読み込んでないプレイヤーの場合「あれ、このキャラこう言う設定だっけ」と混乱することもある。

問題点

ゲームバランス面

  • レベルアップボーナス
    • 戦闘後にクラスがレベルアップする時、そのクラスで「戦闘に参加していたキャラ」のベースパラメータ(裝備やスキルで変動する前の素のステータス)が上昇するという仕様がある(通称:レベルアップボーナス)。上がる量は全ステータスが0.5ずつ。
    • これにより、序盤から自軍にいるキャラクターはレベルアップボーナスの恩恵を受けやすいが、クラスのレベルがおおむね上がった後に加入したキャラクターはこのボーナスを得にくく、性能の格差が生まれやすい
      • オリジナル版の通りにタロットカードを拾うことでもベースパラメーター上げは可能だが、レベルアップボーナスに比べると上昇値が低い。
    • クラスのレベルは最大50、クラスの数も決まっているのでレベルアップボーナスの回数は有限。このため終盤や2周目以降に加入するユニットのベースパラメーター上げを見据える場合は、あえて使用せずレベルを低いままにしたクラスをいくつかキープしておく必要がある。
      • クラスごとにレベルが上がる仕様も合わせて、使用するクラスを絞る方が効率的になってしまうシステムはSRPGとして残念な所。
    • 逆にレベルアップボーナスを最大限得られるように同じクラスで統一した部隊でレベル上げをした場合は、ベースパラメーターが非常に高くなり戦闘の難易度が大きく下がってしまうというバランス的な問題もある。
  • クラスレベル制の弊害
    • 前述のようにクラスごとにレベルが管理されているため、新たに仲間になったクラスは終盤であってもレベル1での加入になる。当然、主力級のレベルに追いつくまで育てなければ戦力にならない。
      • 例えばミルディンやギルダスは設定上は歴戦の騎士のはずなのに、加入した途端にレベル1になるというチグハグな現象が起こっている。
    • ユニットごとではなくクラスごとのレベルにした点について、松野氏自身が失敗だったと示唆するような発言を後に行っている。
    • 作曲担当が同じ崎元仁氏の『戦場のヴァルキュリア』を想起させるシステムだが、そちらでは5種の兵科しかなく最初から利用可能で各自の役割も違う。それに対し、本作では下手すると上位互換関係ができてしまうクラスがあり、一部の入手がかなり遅く、そして入手から時間をかけて育てなければ初期クラスと並べない。
  • スキルレベルが全体的に上がりにくい。
    • 武器学スキルはともかく、各種レジストや説得など使用状況がかなり限定的なものでも一度に入る経験値はごくわずかなため、意図的にレベルを上げようとすると大変。
    • 「敵のある程度高いレベルのスキルを味方に継承させる」ことを促される節を見受けるが、説得したユニットは上の4つのスキルしか残らない仕様がもどかしい。
    • スキル自体で終わるならまだしも、あるレアアイテムの取得は、本作の中でもトップクラスに上がりにくい「スティール」をLv3まで育ててあるユニットが必要。
  • 敵が無意味に補助術法を多用する
    • 敵AIはあまり賢くなく、魔法職クラスに物理攻撃力アップのバフをかけたりと無意味な行動を平気で繰り返すため、マップによっては進行のテンポが悪くなる。魔法・物理特化ユニット問わずバフを掛け合う情景は「花火大会」と揶揄されることも。
  • ステージ構成の複雑化
    • 原作では敵の数が少なく、味方との距離も近かったため、殲滅はその気になれば容易だったが、本作ではほとんどが10人以上で、広いステージに散らばっている。おまけに全体攻撃手段がなくなったせいで、殲滅は時間がかかるようになってしまった。上記の「花火大会」とも相俟ってテンポが著しく損なわれる。
  • 一部クラスの不遇化
    • クレリック
      • HP回復や戦闘不能からの蘇生、アンデッドの除霊などを行えるクラスだが、回復魔法の効果が弱体化し、使用できる魔法の多くが他クラスあるいは道具でも代替可能になったため強みが薄れてしまった。
      • 新スキル「聖母の祝祷」で回復量を上げられるようになってからが本番と言える。
    • ソードマスター
      • 装備可能武器が両手刀のみになり、二刀流ができなくなった。『ソードマスター』なのにソード*8が一切使えないなんて*9! これなら『伝説』よろしく『サムライ』に改名したほうが良かったのではないのか?
      • また、魔法が専用のカテゴリ「武士舞」のみに。武士舞はTPと特定アイテムを消費して発動するため、資金を圧迫しやすい。
  • クラス間バランス崩壊を誘発するダメージ計算式
    • 高レベル帯になると、ダメージ計算式の関係上Lサイズユニットが絶大な攻撃力・防御力を誇り、人間ユニットがエンドコンテンツ装備・高級スキル・ベースパラメータ上げなどでなければ対抗できない。極限育成で敵を圧殺するプレイスタイルじゃない限り直面する問題。
    • 状態異常魔法に弱く、特に魅力・悩殺で同士討ちを誘発させれば逆に仲間に壊滅的打撃を与えられるが、無効手段をつけられた暁には…
  • アイテム合成関連
    • アイテム合成は成功率が低めで、失敗しても素材は無くなってしまうため、リセットを繰り返す面倒な作業を強いられる。
    • 「欲しいアイテムの合成素材を合成する必要がある」「一度に複数合成できない」など不便な点も多い。
  • 人間以外のユニット(亜人、モンスター)をショップで雇用できなくなり、説得でしか仲間にできない。
    • このため、原作とは異なり自由に名前をつけることが出来なくなった。松野氏のtwitterによると、当初はバトル終了後に名前を再度つけることが出来る仕様を検討していたとのこと。
    • 今作の説得は一般ユニットでも可能な代わりに、種族ごとに専用のスキルが必要になっている。この仕様により、一部の加入困難なクラスでなければ取得できない説得スキルが必要なスケルトン、ゴースト、グレムリンあたりは、旧作に比べ加入までの敷居が高くなってしまっている。
  • アイテムのドロップがランダムで、レアアイテムを落とすキャラが必ずアイテムを落とすとは限らない。
    • そのため、お目当てのものを落とすまでC.H.A.R.I.O.T.を使って条件を変えながら敵を倒す「チャリオット回し」をする必要がある。アイテムコンプへの最適解とされ、その作業感は筆舌を尽くしがたい。
  • 命中・回避関連の計算が変更されているのに、相変わらず命中力や回避力が表示されない。そのため、これらに関わるステータスの殆どの効果が分かり辛い。

隠し要素周りの不便な仕様

  • 低レベル時限定でしかドロップしないレアアイテムが存在する。
    • 取得マップに戻れるようになる頃にはこちらのレベルがオーバーして、そのアイテムを二度と取得できなくなることもあるため、コレクター泣かせの仕様となっている。
  • 新キャラ、隠しキャラの加入条件が複雑。
    • 「複数段階の条件が付く」「隠しパラメータであるカオスフレームが一定値を超えていることが条件」等と、原作にも増して複雑な加入条件が多い。
  • ダウンロードコンテンツで原作では「惜しくも仲間にならなかった」人気キャラが仲間になるが、もう1人仲間にしたいという要望が高かったあるキャラを仲間にすることはできない。

アニメーションの代り映えのなさ

  • 武器種ごとのモーションは通常攻撃と必殺技の2パターンしかなく、中にも刀剣類は全部同じと、近年にしては動きのバリエーションに乏しい。
    • 両手剣・両手刀が常に片手で持って斬るように使われるのがよく突っ込まれる。ランスロット・ハミルトンが片手剣カテゴリにあるロンバルディアを両手で持って素振りするイベントシーンがあるのに
    • 必殺技も魔法の色違いエフェクトのものが多い。また「必殺技のエフェクト中全ユニットの足踏みが停止し、発動者だけ短い攻撃モーション後足踏み再開」という仕様により非常にダサい絵面ができてしまうことがある。
      • 最たる例が片手剣の必殺技の桜花円舞。おそらく時代劇の殺陣がモチーフだが発動者の足踏みのせいで台無し感満載。
  • 魔法のモーションもカテゴリごとに1種類しかない。特に使用機会が多い6エレメント+神聖暗黑はみな同じ動き。
  • 特別なモーションは一部の固定クラスのアクションスキルとスペシャル、そしてイベントに集中する。

総評

見た目こそ原作と同じだが、ゲーム部分はオリジナル版から全く別物と言えるほど激変している。
既存人物のエピソードの補完、世界観の広がりなど、ストーリー面は原作より大きくパワーアップしており、CHARIOT、WORLDなどの新システムも好評を博している。ラヴィニス、アゼルスタンなど追加キャラもおおむね好評で、ユーリアが再登場したことも(やや強引という意見もあるが)、ファンから喜ばれた。
また、ボリュームは格段に向上し、プレイテンポも極めて良好になった。
一方でゲームバランスは、オリジナル版の一部の問題点やバランスを改善したものの、クラスレベル制やレベルアップボーナスなど新たな問題点も生まれてしまった。このことから、原作であるSFC版は好きでも本作は好まないとするユーザーや、その逆も存在する。
総じて、追加要素はもちろん、シミュレーションRPGとしても十分良作と言える完成度を維持していると言える。


余談

  • とある隠しキャラの仲間にする方法が変わっているため、ネットでも仲間にできたという報告がしばらくは確認されていなかった。
    • ゲームの解析の結果、仲間になることそのものや専用クラスがあること、イベントが起きる場所などはすでに判明していたのだが、そのイベントが起きる条件そのものが全然わからず、「どこにいるんだ」「どうすればいいんだ」と連日混乱が起きていた。
    • 結局12月3日発売の攻略本によってようやくその条件が判明した。その条件は簡単に見えるようでかなり複雑な手順を要する。
  • 後発のヨーロッパ版・アメリカ版はいくつかのゲームシステムの改善が施された。
    • レベルアップボーナスの値が引き下げられてユニット間の性能格差が出にくくなり、低すぎた合成成功率の上昇、「花火大会」については敵ユニットがバフ技を習得しなくなった、と痒い所に手が届く調整。
    • さらにDLCの配信が停止した現在、最初からDLCが適用された海外版の優位性がさらに浮き彫りに。
    • 国内版ではそれらのフィードバックが一切ない不手際さが、かの『ファイナルファンタジータクティクス アドバンス』を想起させる。
  • 2022年11月11日に本作をベースにしたHDリマスター移植『タクティクスオウガ リボーン』が発売された。
    • 『運命の輪』の単純な移植ではなく、崎元仁氏によるBGMの再レコーディング、SS版以来のフルボイス化、評判の悪かったクラスレベル制の廃止、合成が100%成功するようになった等の変更に加え、バフカード、ユニオンレベルなど、新たに追加された要素もあり全体的にリメイクに近い。

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最終更新:2024年03月15日 00:27

*1 本作では4姉妹固有の二つ名「炎のセリエ」等も無くなっている

*2 「ボロボロになるまでよく頑張ったッ。感動したッ!」ということだろうか。

*3 因みに、オリジナル版の同名の武器は『ユグドラシル』に改名されている。また、『オウガバトル64』ではクラス名と、名前の使われ方が一定しない。

*4 ただしその後のセリエの反応が変わっている。

*5 松野氏のTwitterによると、二つ名は容量が少なかったオリジナル版で敵のキャラ性を出すためにものだったとのこと。

*6 主に移動力が広く、行動の選択肢が多いニンジャ系の場合、5秒以上も思考時間を費やされることがある

*7 ボウガンの射程外攻撃がオミットされ、銃器類も射程が有限になった

*8 大抵は片手剣と、一部両手剣にカテゴライズされている。

*9 『オウガバトル64』でもソードマスターは片手剣が装備できなかったが、刀の他にも両手剣がちゃんと使えた。