戦場のヴァルキュリア2 ガリア王立士官学校
【せんじょうのう"ぁるきゅりあつー がりあおうりつしかんがっこう】
ジャンル
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アクティブ・SRPG
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対応機種
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プレイステーション・ポータブル
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メディア
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UMD
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発売・開発元
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セガ
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発売日
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2010年1月21日
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定価
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6,090円
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象)
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廉価版
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SEGA THE BEST 2010年12月9日/2,800円 2011年11月23日/1,800円(各税別)
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判定
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良作
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ポイント
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据置機から携帯機への続編 システム面は大きくテコ入れ 携帯機ゆえビジュアル面は劣化 「戦死」の廃止でシナリオは歪になった しかし携帯機SRPGとしての出来は良い
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戦場のヴァルキュリアシリーズ
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ストーリー
ランシール王立士官学校――将来の軍士官を養成する伝統ある名門校に、
それぞれの思いを胸に秘め、新たな士官候補生たちが入学する。
彼らはまだ知らない。時代の流れが、激しく動こうとしていることを。
今、ここで初めて会い級友になった者たちが、明日には戦友に変わってしまうということを……。
(説明書より引用)
概要
PS3初期に発売され、世界中で高い評価を得てギネス協会から「PS3最高のSRPG」とまで認定された『戦場のヴァルキュリア』の続編。
今作は前作から2年後、内戦下の士官学校が舞台となっており、前作キャラクターも登場する。
携帯機であるPSPに変更した理由は主に2つあり、開発期間の短縮(前作から間隔を空けたくなかった)と、新しいユーザーの開拓(前作は年齢層の高い男性が多かった)を目指したとのこと。
特徴
戦闘システム「BLiTZ(ブリッツ)」への新要素
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複数エリアでのミッション
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前作では各ミッション1つのマップが舞台だったが、今作では「拠点」でつながった複数のエリアが展開され、新たな戦略が必要になった。
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例えばエリア1からエリア2に進みたいとき、通路上に陣取っている戦車を強引に破壊するよりも、エリア3からエリア1へつながる拠点を占拠し、そこからエリア2を目指す方が効率がよい。
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戦況により変化し、戦況を変化させる「モラル(士気)」
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モラルは複数エリアにあるすべての戦線の影響で上下するので、広い視野でミッションを攻略することが必要になった。
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効率よく進攻できればモラルもどんどん上昇し、ますます有利な状況が作れる。一方前線ばかりに気を取られていると、思わぬところでモラル低下の原因が発生し、戦線がこう着することもある。
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各ミッション開始時の数値は3で、戦況によって0~6まで変化する。0になるとミッション失敗。
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また、ポテンシャル(スキル)はモラルが高いほど発動しやすくなる。
カスタマイズ性の増した車両ユニット
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新たに「装甲車」が登場。「戦車」より防御力は低いが、歩兵を運んで長い距離を移動できる。
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事前にパーツを装備しておくことで、ミッション中に仮の梯子や橋を設置したり、道を塞ぐ岩を破壊したり、さまざまな形で歩兵をサポートできるようになった。
「兵種(ジョブ)」の大幅な増加
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前作の5兵科10兵種から5兵科35兵種に増え、部隊編成の自由度が広がった。
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各キャラが、固定の「兵科」の中で枝分かれしつつクラスアップし、2種類の上級「兵種」、4種類の最上級「兵種」を目指す。
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主人公のアバンのみ、兵科をまたいで35兵種すべてに兵種変更できる。
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武器の種類も増え、従来の銃火器だけでなく、近接武器の「軍用レンチ」や、味方を強化・敵を弱体化する「楽器」といった風変わりな武器も追加された。
「戦死」の廃止
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前作でいう戦死(キャラロスト)の条件を満たしたキャラは、今作では「入院」するようになった。
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具体的には、そのミッション中は再出撃できなくなり、その後も3ミッションクリアするまで出撃不可という形になった。
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これにより、相変わらずの個性的すぎるキャラたちがシナリオに絡んだり、キャラごとのサブイベントが用意されるようになった。
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しかし、戦争が題材のシナリオにとって致命的な問題も発生している(後述)。
評価点
ユニット間バランスの向上したBLiTZシステム
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他のユニットと同様に「CP(行動コスト)」を「1」消費するだけで行動できる戦車が登場し、活躍させやすくなった。
大増量のボリューム
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本編クリアまでのミッション数が、前作の23から55へと大幅に増えた。
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他にも本編中の寄り道ミッションが13→70、クリア後の高難易度ミッションも10→49とそれぞれ5倍近くなっている。加えて、後述のDLCもある。
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どれも凝ったミッションばかりなので、やり応えたっぷり。より長く遊べるようになっている。
相変わらず個性的すぎるキャラ達
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学園モノの側面を持つ今作では、その手のゲームには必要不可欠なサブイベントの数がとても豊富。30人を超えるクラスメイトのほぼ全員に、専用のイベントとミッションが用意されている。
前作でも担当していた崎元仁氏の音楽
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特に「メインテーマ」は、士官学校の伝統を連想させるような高貴さが表れており、評価が高い。
良心的なDLC
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前作の4パック計20ミッションからバラ売りの22ミッションに増えており、値段も1ミッションわずか100円と極めて良心的だといえる。
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また、基本的に有料になりやすいとされるゲストキャラに至ってはなんと無料。ファンを大切にしようとする姿勢がよく表れているといえよう。
賛否両論点
分割マップ
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前述のように「戦略性が上がった」と評価する声もあれば、「マップが狭いので、こぢんまりしていて戦争をしている感じが薄れている」と批判する声もある。
難易度の大幅低下
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具体的には、戦死がなくなり全体的に緊張感が薄れたこと、敵のHP・攻撃力の低下、増援をすぐ呼べるようになったこと(前作では要請から到着まで1ターンの間があった)などが挙げられる。
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上記のように難易度調整が可能ではあるが、完全に解決できているとはいえない。
公式チート同然の敵ユニット「V2」
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人型ではあるが、そのままの状態ではヘッドショット(弱点攻撃)が効かない上に、HP、長射程からの対歩兵・対戦車火力、防御力のすべてが敵味方含めて群を抜いている。
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とある方法を使えば弱体化するが、ヘッドショットが有効になり対戦車火力がなくなるだけでなので、突っ込んでこられると大変危険なのは変わりない。
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これをごり押し防止の妥当な調整と見るか、無理やりな調整と見るかは本当に人によるとしか言いようがない。
問題点
シナリオ
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戦死の概念がなくなっていることがシナリオにまで影響を及ぼしており、本編通じて(名前有りキャラの)戦死者が殆んど出ない(数人程度)という、普通の戦争ではありえないシナリオになっている。
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その死ぬキャラクターの死亡経緯に関しても批判が強い。そのキャラは今作品でも屈指の人気を持つキャラクターではあるが、死亡シーンがあまりに唐突すぎる上に、その後の展開を踏まえるとそもそも死なせる必要性すらないことが判明しており、極めてお粗末な「お涙頂戴的な描写」でしかないことが原因である。
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シリーズ通してのテーマでもある「ヴァルキュリア」の扱いについても、今作のそれはあまり丁寧であるとは言えない。
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今作ではヴァルキュリア人の強大な力を疑似的に再現できるようになった「人造ヴァルキュリア装甲」なるものが登場する。
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上記の「V2」はこれの量産型装甲を装着した敵ユニットであり、一応前作でもそれらしき描写のあった代物とはいえ、そもそも量産体制が確立している事など、仮にも1930年代のヨーロッパを舞台にしている作品として余りにもオーバースペックであるとの批判が根強い。
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ヴァルキュリア人そのものを対象にした研究者も登場するのだが、その研究が具体的にどのようなものであるのか、どのような実験が行われるのか、と言ったことも具体的には語られず、不完全燃焼である点は否めない。
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この点については続編以降である程度フォローされた。
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他にも「味方のトラウマを救うために自分自身を銃で撃つ主人公」「どう考えても生存不可能な状況で生存している
軍曹メインキャラクター」など、不満点は数多い。
シナリオと絡まない「キーミッション」
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「月」が章の役割を果たしていて、毎月キーミッション3~4つと「ストーリーミッション」1つをクリアすると、シナリオが一段落して次の月に進むのだが…。
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ストーリーミッションは前後にイベントが挿入され、ミッションと合わせてシナリオを盛り上げる構成になっている。
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一方、キーミッションには直接関係するイベントがない。ミッションをクリアしても拠点となる学校に戻るだけで、戦況が少しでも変わったという描写がない。
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このキーミッションが本編の約70%を占めるので、せっかく増えたボリュームも見方によっては「不必要に大きい」と感じられてしまう。
PS3の前作と比較して、劣化したグラフィックや演出
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好評だった「CANVAS」による水彩画調グラフィックの廃止
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一応テクスチャは水彩画調で描かれているし、がんばって再現しようとしている感じは見受けられるものの、やはり根底の仕様はどうしようもない。
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イベントシーン
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3DCGアニメから2Dアニメイラストになった。場面ごとに変わる背景イラストに、キャライラストが載って進行する。
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一枚絵や2Dアニメムービーも随所に挿入される。ただしアニメは、キャラの顔の描き方が粗い部類に入ると思われる。
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シナリオに絡むイベントの一部にボイスがない。
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サウンド・エフェクト
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特に銃のSEは、ビームと揶揄されるあまりにもしょぼい物に。スペックダウンの分を差し引いてももう少し何とかできたはずである。
運の絡む「単位」システム
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キャラの兵種を変更するのには特定の単位が必要で、その単位は戦闘に出撃させることで貰えるのだが、戦闘ごとに設定された数種の単位のうちどれを貰えるのかは完全にランダム。
兵科バランス
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「狙撃兵」が非常に強い。元々前作でも高命中高火力長射程を兼ね備えた相当な強兵科だったのだが、本作ではさらにステータス面等で優遇されており、壊れているとしか思えない強さ。ここまでする必要があったのかはいささか疑問。
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前作では敵側の狙撃兵も味方側と同じくらい脅威であったが、今作では火力の関係上、敵側ではあまり強くない。そのため「明らかにバランスが取れていない」という批判が強まった。
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とはいえ今作はフィールドも狭く遮蔽物も多い。そしてV2の迎撃が脅威的であるためボス戦等を除く通常ミッションでは前作ほどの強さではない。
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また、それを上回る程に剣甲兵が異常に強い。攻撃力はピカイチで、盾もあるので守りも最強。機動力の低さ程度しか弱点がなく、それも容易にカバー可能。もはやチートキャラの領域に片足を突っ込んでいる。
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その強さたるや、装備次第では前述のV2を弱体化させずとも正面からタイマンを張れるレベル。
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兵種の変更で対人能力と引き換えに対戦車能力の高い爆剣兵になることもでき、どちらも用意しておけば全く隙がない。
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しかし接近しなければ攻撃できない上APの少ない性質上、短いターン数でのクリアが要求されるSランクを狙う場合にはまるっきり剣甲兵頼みとは行かず、上記のV2など強力なユニットの存在もあり、意図されていたかはともかく救済措置の面も否めない。
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上記2種ほどではないが「突撃兵」の発展した兵種である「強襲兵」も中々に大味な調整。
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強襲兵は火炎放射器という武器を使用できるが、範囲攻撃可能・厄介なトーチカや銃座に特攻(ほぼ一撃)という特性があり、もう片方の最終段階である「突撃猟兵」をほぼ完全に食ってしまっている。
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突撃猟兵が勝っているのは手榴弾を多く持つことくらいだが、火炎放射器とAP50を失うほどのメリットとは言いがたい。
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剣甲兵ほどの防御力ではないが、APの都合上Sランククリアを目指すならば主に強襲兵が使われることになる。
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車両ユニットも、軽戦車Bが飛びぬけて優秀
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悪路走行が可能かつ戦車では唯一の
消費AP1
という強みがあり、ぶっちぎりの使い勝手を誇る。
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名前の通り戦車としてはやや装甲が弱く、V2等の攻撃には不安が残るが、序盤から高性能な鹵獲武器が手に入るため火力は凄まじい。
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なお、こちらも高ランククリアを狙う場合は工作・運搬に長けた装甲車に軍配が上がることもある。
「極み」ポテンシャルによるキャラの性能格差
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「射撃の極み」「対人攻撃の極み」などという「極み」と名の付いたポテンシャルが存在するが、これが100%発動かつ効果も非常に高いという凄まじい性能。
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にもかかわらず所持しているキャラと所持していないキャラ、あるいは2つ持っているキャラまで存在し、使い勝手に大きな差が出る。
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よりによって主人公であるアバンが所持していない。彼はどの兵科にもなれるためその分ポテンシャルの幅が広く、バランス調整とも考えられるが…。
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また「極み」内でも使い勝手のよいものやそうでないものも存在する。
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所持していなくてもキャラ愛で使える程度のバランスに収束しているとはいえ、せめて1キャラにつき1つは持っていても良かったのではないだろうか。
総評
据置機 ⇒ 携帯機という流れの関係上、前作から劣化している点は目立つ。
しかし、1ゲームとしてみた場合は間違いなくPSP最高レベルのSRPGと呼べる出来になっている。
BLiTZの良さは損なわれていないし、兵種の大幅増加は結果として戦略性の大幅な向上に繋がった。
新要素の搭載による粗はどうしても見られるものの、1でほとんど完成していたシステムに大きなテコ入れをしようとしたスタッフの意気込みは評価されるべきだろう。
前作はやってないけどレベルの高いSRPGをやりたいという人や、前作が気に入ったという人でも、気軽に遊んで問題ない良作SRPGといえる。
ただし、前作並みのクオリティを期待して買うと肩透かしを食らう感じはどうしても拭えないので、そこは注意する事。
なお、この方向性は形をほとんど変えず次作に受け継がれることとなる。
その後の展開
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2011年1月27日に、1のサイドストーリーを描いた『戦場のヴァルキュリア3』が発売された。
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『2』から難易度が大幅に上昇し、『2』の不満点をいくらか解消しシステムは昇華されている。
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だが、過度なマップの使いまわしや単純な難易度調整、敵先攻ミッションの初見殺しなどが原因で賛否が分かれている。
最終更新:2023年09月27日 18:30