SIMPLE1500シリーズ Vol.92 THE 登山RPG 銀嶺の覇者
【しんぷるせんごひゃくしりーず ぼりゅーむきゅうじゅうに ざ とざんあーるぴーじー ぎんれいのはしゃ】
ジャンル
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シミュレーションRPG
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対応機種
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プレイステーション
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発売元
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D3パブリッシャー
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開発元
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ヒューネックス
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発売日
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2002年3月28日
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定価
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1,500円(税別)
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判定
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なし
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ポイント
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そこに山があるからだ
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SIMPLE1500シリーズ
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君は知っているだろうか…いまだ誰も制覇したことのない山が存在していることを…
概要
D3パブリッシャーによる廉価版ゲームシリーズ『SIMPLE1500』の1作。
SIMPLEシリーズは当初は万人向けの無難なゲームが中心だったが、徐々にバカゲー要素を盛り込んだコアユーザー向けゲームが混じるようになっていった。本作は後者の典型例といえる。
タイトル通り、
「登山」をRPG化する
という類を見ないコンセプトのソフトで、プレイヤーは登山者という名の戦士達を操作して、山という名のバトルフィールドに挑み、様々な障害・困難という名のザコモンスター共に打ち勝ち、山頂という名のボスモンスターをぶっ倒さなければならない。
ゲームシステムは、分かりやすく言えば『伝説のオウガバトル』系であり、プロデューサーの岡島氏自身も類似性を認めている。
特徴
パーティ
まず4人1組のパーティを編成する。パーティキャラは、次の4つの職業がある。
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アタッカー
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パーティにいないと、そのマップのボス「山頂」に挑む事ができない。
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攻撃力が高い、所謂「戦士」。必殺技は、前列にいる時は単体に、後列にいる時は全体にダメージを与えられる。
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クライマー
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パーティにいると、マップ上での移動速度が上がる…というか、いないとすっげーノロい。
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素早さが高く、戦闘では真っ先に攻撃できる。必殺技の効果はアタッカーと同じだが、威力は劣る。
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シェルパ
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パーティにいないと、キャンプ(休息)が行えない。
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防御力とHPが高く、瀕死の味方を庇う事もある。必殺技は列に関係なく単体攻撃だが、威力は平凡。
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ナース
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戦闘中に味方を回復できる唯一の職業。HPが減った味方に単体回復を行う。
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必殺技は全員のHPの大幅回復。
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回復以外の行動は、後列では味方の攻撃・防御・素早さのどれかをアップする「味方用注射」、前列では敵の能力をダウンさせる「敵用注射」。後者の注射は1ポイントだけダメージも与えられるが、通常攻撃は行えない。
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…とまあ、太字の部分の特徴が原因で、全ての職を1人ずつ入れざるを得ず、実質編成の自由度は無いに等しい。せいぜいボスバトル時にアタッカーを増やした即席パーティを作るぐらいだろう。
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多くのパーティを作ればそれだけ攻略は楽にはなるが、1日ごとに人数に応じた「給料」が引かれていく。資金が0になるとそのマップでは敗北となる。
マップ
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ゲームの舞台となるマップは、「富士山」「アルプス」「アンデス」など6種類あり、順番にクリアしていく事になる。クリア済みのマップに再度挑む事もできる。
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マップには「洞窟」というイベントマスがあり、そこにパーティを送ると資金を入手できる。入手額はランダムで、一度入った洞窟は消滅する。
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洞窟は1マップに4個所出現するが、出現場所はランダム。
バトル
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戦闘はシンボルエンカウント式で、高山病・落石・凍傷といった現実の登山における障害が擬人化してモンスターとして襲いかかってくる。
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山頂に近付くと、中ボス「守り神」(とザコ2匹)との戦闘がある。倒さないと進めない。
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山頂では、そのマップの大ボス「山頂」(とザコ2匹)との戦闘があり、倒すとその山を征服したとしてクリアとなる。
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クリアするまでに消費した時間・資金によってクリアランクが決まり、全てのマップをAランク以上でクリアするとエンディングを見る事ができる。
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戦闘はオートで行われる。プレイヤーにできるのは、特定の敵を集中攻撃させる「突撃」、資金を消費して4種類のお助けキャラを呼び出す「アイテム」、最寄りのキャンプ場所まで退却させる「逃げる」という3つの指示のみ。
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全員のHPが0になると全滅し、そのパーティは「遭難」扱いになる。一定時間内に救助しないと多額の資金を失う。
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パーティの「やる気」を意味する「スピリットゲージ」という物があり、時間経過やダメージを受ける事で減っていく。減ると移動速度が落ちる上、0になったパーティは強制的にバトルから逃げ出すので、キャンプさせて回復させる必要がある。
評価点
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BGMは雄大なものが多く、いかにも「登山ゲーム」という雰囲気を醸し出している。
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モンスターのグラフィックも、モンスターの種類が少ないながらそれぞれは丁寧に描かれている。
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もっと多彩であれば確実にゲームの評価を押し上げていたはず。
問題点
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仲間にできるキャラは何人もいるが、職業とレベルが同じキャラは完全に同一のステータスとなる。
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顔グラフィックやセリフ、組み合わせの相性などは存在しない為、名前以外に個性は一切無い。
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装備品やステータスアップアイテムも存在しない。
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しかもキャラの人数は無駄に多く(職業ごとに25人ずつ)、パーティ編成にいちいち時間がかかる。
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どのマップも戦闘と洞窟以外のイベントは一切無い上、マップの形自体も広さが違うだけで、ただ真上の山頂を目指すのみという内容。ほとんど「作業ゲー」である。
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最終面では敵シンボルが異常なまでに頻繁に湧き出す。『ロマンシング サ・ガ』も真っ青である。おかげでろくに前進もできない。
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戦闘は敵味方共に、クリティカルが全てのカギを握るという「クリティカルゲー」である。いくらレベルを上げたパーティでも、後半のボスはHPが異常に高い為、いつまでもクリティカルを出せないとHPより先にやる気を無くして逃げ出す確率の方が高い。
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敵キャラの必殺技デモはやたらと時間がかかる。しかも「ただ雪玉を延々延々延々ぶつけてくる」とかそういうのばかりだから、気の短い人は確実に「もうわかったよ!」と叫ぶだろう。
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データをセーブし、リセットして再開すると味方のHPが全快している。リセットではなく「ロード」のコマンドで再開した場合は変化なし。
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ダメージを受けた状態でセーブせずに元のデータをロードすると、逆になぜかHPが減った状態で再開される。明らかにバグである。
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戦闘中にメッセージスピードを切り換えられるが、ロードすると初期化される。まあ切り換えてもあまり変わりはないのだが。
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地面のひび割れをモチーフにしたザコ敵がいるが、名前が「クレバス」ではなく「クレパス」と誤表記されている。
総評
障害となる現象をモンスターに見立てて登山をRPG化するという企画自体は、非常にユニークではあった。しかし実際はそのユニークさのみが全てで、「ただザコを倒してボスに挑むだけ」の作業ゲーとなってしまった。
まさに「そこに山(という敵)があるから」挑む、それだけの代物だった。企画の段階では、面白いバカゲーになりえていたのかもしれないのだが…。
最終更新:2022年05月20日 07:25