ラジアントヒストリア

【らじあんとひすとりあ】

ジャンル RPG
対応機種 ニンテンドーDS
発売元 アトラス(インデックス・ホールディングス)
開発元 アトラス、ヘッドロック
発売日 2010年11月3日
定価 5,980円(税別)
セーブデータ 3個
レーティング CERO:B(12歳以上対象)
判定 良作

概要

「時間移動」をテーマにしたファンタジーRPG。
ラジアータ ストーリーズ』に携わったスタッフによる作品であり、キャラクターデザインも同作に参加していたこにしひろし氏が担当している。
キャッチフレーズは『死亡フラグをへし折るRPG』。時間と平行世界を移動する力を駆使して、本来死ぬはずだった人々の運命を変えていく、文字通り「死亡フラグをへし折る」展開が特徴である。

ストーリー

何もかもが砂の中に埋もれ消えていく、滅びの世界。
わずかに残された資源をめぐり、大陸の東に位置するアリステルと西の大国グランオルグが、いつ終わるとも知れぬ戦いを繰り広げていました。
グランオルグを探っていた密偵を護衛し帰国させる際、主人公ストックは追っ手との戦いで深手を負い生死をさまようことに。
目を覚ましたストックが見たものは、時間と空間がねじれた不思議な世界「ヒストリア」。
ストックは、謎の子供たちから自分が時空を移動できる能力を手に入れたことを知らされ、滅び行く世界がストックの力を必要としていると告げられます…。
 「二つの時空、過去と未来を駆け巡り、滅び行く世界を救うのだ。」
(Amazonにおける本作の「商品の説明」より)

特徴

  • 物語は、白示録を持つ主人公が「正伝」と「異伝」という二つの平行世界を軸に両者を行き来することで展開され、プレイヤーは所々で重要な選択をすることなる。その選択によっては、パラレルエンドに進む場合がある。
    • これはその後の顛末がダイジェスト調にまとめられているという、所謂「バッドエンド」のことだが、少し前の時間に戻るだけでオープニングに戻されることはないため、わりとスムーズに進み、ストレスを感じさせない。
    • この二つの歴史は深層で繋がっており、所々で物語が行き詰るが、過去や平行世界に時間移動して事件を解決することでキャラクターの意識が変わり、物語が進むようになっている。
      • そのため、完全に独立して存在しているという意味でのパラレルワールドではない。
    • 過去に戻るというシステムの都合上、シナリオやサブイベントを進めるために一度見たイベントを再度見る機会が多いが、スキップ機能や会話の早送りがあるので、お使い要素の割に作業感を感じさせない。*1
      • また、このシステムのためアイテムの取り残しをする心配がない。
  • フィールド上で敵と接触することで戦闘が始まる「シンボルエンカウト方式」が採用されている。
    • フィールド上では「スマッシュ」で敵を吹き飛ばして気絶させられ、その状態で接触すると先制攻撃ができる。
    • 逆に、敵に後ろから接触されるとバックアタックとなり敵に先制されてしまうが、主人公の移動が速いので、注意していれば心配ない仕様になっている。
    • また、中盤のシナリオで獲得できる「サイレンス」によって、主人公のMPを消費する代わりにフィールド上の敵と一切接触せずに移動することができるので、不要な雑魚戦を回避できる。
      • 万が一接触しても、戦闘から逃走しやすいのでそこまで問題はない。
  • 本作の戦闘システムは少し変わったものになっている。
    • 敵が「3×3」のグリッド上に配置されている。味方キャラクターは敵のグリッドの位置を変えられる「グリッド移動スキル」をもっており、これを利用して、複数の敵を一カ所にまとめ、強力な攻撃でまとめて倒すのが基本戦略となるが、複数の敵を一気に倒した時はなかなか爽快である。
      • また、敵が前方のグリッド上にいると物理攻撃のダメージが大きくなり、後方グリッド上だと低くなるので、長期戦となるボス戦ではわざと強い敵を後方に移動させるといったように戦略性も割と高い。
    • 戦闘はターン制だが、「チェンジ」コマンドを使うことで味方だけでなく敵とも行動順を交換できるようになっている。
      • 本作の戦闘では連続して攻撃するとコンボが溜まり、攻撃力が高くなったり、「スティール」で敵からアイテムを盗みやすくなったりするのだが、敵と行動順をわざと変えることで味方のコンボ数を稼いで戦闘を早く終わらせることができる。
      • 他方で、「チェンジ」を使うとバロック状態となり、何らかの行動を起こすまで通常よりも大きなダメージを受けてしまうので、敵に倒されないように味方の行動順を変えて素早く倒すことが戦闘の肝となる。
    • こう書くと難しそうに思えるが、実際には簡単なパズルを解く感じである。ボタンを連打するだけでは全く勝てないが、少し頭を使うと割と簡単に倒せてしまうし、テンポが良く、戦略性が高い。
      • 雑魚敵もボスも理不尽に強いわけではないが(僅かにはいる)、決してヌルいわけでもなく、バランスは良好である。そのため、普段ゲームをしない人にも遊びやすいゲームである。
      • 一方で、雑魚敵との戦闘でも二、三分程かかり、テンポが悪いと言われることがある。特に終盤はその傾向が強まる(後述の問題点)。
  • レベルが低いと、経験値に補正が入り多く得られ、また、コンボ数を稼ぐと、戦闘終了後に経験値やお金がボーナスで入ってくるので、レベル上げやお金集めに四苦八苦することはほとんどない。*2
  • 背景が3D、キャラクターシンボルが2Dのドットであり、また、ボイスやムービーがなく、メインキャラクターには会話中にイラストが表示される程度で演出面では不足を感じさせるが(SFCや初期PS1のレベルだとよくいわれる)、グラフィックやドット絵が緻密に描かれており、後述のストーリーやキャラクターと相まって「古き良きRPGらしい」などと概ね受け入れられている。

評価点 

キャラクター

  • 主人公のストックがカッコよく、評価が高い。
    • 良識をわきまえた大人でありクールなイケメンだが、仲間のことを何より大事にし、仲間の危機には熱くなり、人の死を嘆くことができ、キザったらしい嫌味さを全く感じさせないという、まさに王道の主人公であり、非常に感情移入しやすく、プレイヤーをストーリーにぐいぐい引き込んでくれる。
      • 一見すると陳腐な性格に思えるかもしれないが、分別がなかったり、葛藤でウジウジ悩んでいたり、無駄に熱かったり、電波受信したり、変に斜に構えていたりする主人公が多い昨今、このような好感を持てる正統派主人公は逆に新鮮ですらある。
  • サブキャラクターは、敵・味方問わず、最後まで確固たる信念を持って行動していたり憎めなかったりで、嫌味なキャラがほとんど存在しないので、やはり感情移入しやすく、物語の群像劇らしさを引き立てている。
    • 特に、劇中の二人の将軍は非常に人気が高く、公式サイトの人気投票ではプレイヤーキャラクターを押さえて上位に食い込んだほど。
  • また、ラスボスは非常に人気が高い。
    • 物語の終盤に正体が明かされるのだが、その一連の行動の理由がとても人間臭くて共感を呼び、さらに、真エンドのとある行動によって、多くのプレイヤーの中での評価が跳ね上がることとなった。

ストーリー

  • よくある時間移動ものなのだが、非常に整合性の取れた出来であり、また、好感のもてる主人公が魅力的なストーリーを紡いでいくので、「次はどうなるんだろう」とわくわくしながらプレイできる。
    • 基本的なストーリーは、情報部のハイスの下で密偵を続ける「正伝」と、親友のロッシュの誘いに乗って新米部隊の副隊長になる「異伝」であり、大筋のシナリオが変わるわけではないのだが、立場の違いから異なった視点から世界を見ていくことになり、一方の歴史では見ることのできなかった世界の姿やそれぞれの思惑を、もう一方の歴史で垣間見ることができる。
    • パラレルエンドの内容は鬱なものが多いのだが、前述の通り、ストレスの溜まらない造りになっており、また、ヒストリアのNPCのアドバイス(通称、反省会)が面白いので、収集していくと結構楽しい。
    • 物語の背景に領土戦争があったり、人間と獣人との対立があったり、それぞれの陣営の指導者の野望が交錯していたりして、勧善懲悪にならずストーリーに程良い重厚感を与えている。
    • エンディングは『ラジアータ ストーリーズ』と違い、ハッピーエンドなのだが、通常エンドでは物悲しさが残るものである。
      • しかし、特定のサブクエストをクリアすることで見ることのできる真エンドは、最後の最後までまさに「死亡フラグをへし折る」ものであり、プレイヤーを大いに感動させた。
  • 所々で行き詰る箇所があるのだが、ヒストリアの案内役のNPCがアドバイスをしてくれるので、次に過去や平行世界のどこに行くべきなのかすぐにわかり、物語のテンポを損なわずに、「死亡フラグをへし折」っていく感覚を味わえる。

音楽

  • 下村陽子氏の音楽は評価が高く、世界観と調和してストーリーを大いに盛り上げている。
    • 全体的にパイプオルガンを多用した荘厳で落ち着いた音楽が多い。また、完全新作RPGを下村氏のみで作曲したため、下村節を堪能できる。
    • また、作曲・作詞が下村氏、ヴォーカルが霜月はるか氏のエンディング曲『HISTRIA』は歌詞や曲調、霜月氏の歌声が世界観やストーリーとマッチして、こちらも高い評価である。

問題点

  • サイレンス習得イベントは敵のサイレンスを見てほぼすぐ覚える。主人公とはいえ少々チートすぎないか。
  • 全体的にSEの出来が悪い。
    • 特に、主人公のストックの足音はよく指摘される。よりにもよって、クールでイケメン、優秀な密偵がダカダカダカダカと走っていく様は何とも間抜けである。もちろん、隠密活動中もこれである。
      • サイレンスで敵の中を掻い潜っていくときに、このダカダカダカダカという足音で敵に気付かれずにいる様はシュールの一言。「忍んでない密偵」とか「スットコさん」などと揶揄されることも。
    • 下村氏の美しい音楽を邪魔されることとなり、しかも、コンフィングで音量の調整ができないため、本作で最もよく指摘される問題点である。
      • ちなみにこれはディレクターの平田氏も「なぜ気付かなかったのか」とリメイク版のQ&Aで嘆いている。
  • 時間移動して戻るときの場所が決められているので、サブクエストを埋めようとして目的の場所に行くまでに、一度見たイベントやボス戦を繰り返さなければならない。
    • 行きたいところに直接行けないので、クリア後にサブクエストを埋めるのは、レベルが上がって戦闘が楽であるといっても少し面倒。
  • かゆい所に手の届かないスキップ機能。
    • 早送りもイベントスキップも最初から使えるため、初見のイベントやメッセージを飛ばしてしまうことがある。
      • 他の箇所で立てたフラグにより細部が変化することもあるのだが、途中まで同じだからと見切ってボタンを押すと容赦なく飛ぶ。早送りでも初見のメッセージは読めない可能性が高く、そして巻き戻しはできない。
      • 一回限りしか見られない特別扱いの追加シーンも、やっぱり容赦なく飛ばされる。
    • 早送りはメッセージ限定のため、画面上で演技や演出が行われている間は止まる。
      • キャラの移動や画面のスクロールが始まると、その部分だけ通常通りの速度となる。なまじ早送りは快速なだけに、テンポが削がれる。
    • スキップは良くも悪くもシーン単位。
      • シーンの細部が変化していても飛ばされるのは、先述した通り。
      • 複数のシーンが連続で挿入されている場合、その回数だけスキップさせる必要がある。イベント回収のために何度も行き来する箇所が、幾つかこれに該当していてストレス要素に。任意のシーンだけを、選別して観賞できるという意味からは美点なのだが。
    • どちらも無ければもっと不満が募っただろう機能には間違いない。ただもう少しだけ練りこむ余地はあったと思える点が惜しい。
      • 巻き戻し機能か、メッセージ限定でもバックログを搭載するだけでかなり違ったはず。ついでに、せめて「初見は飛ばさない」オプション。
  • プレイヤーキャラの性能のバランスが悪い。
    • よく指摘されるのは、アトのトラップ技である。
      • これは、敵が占有していないグリッドにトラップを仕掛け、そこにグリッド移動で敵を誘導するとダメージを与えるのだが、大抵の敵はこれで瞬殺できてしまう。また、とあるキャラが後半に覚える技は、グリッドにいる敵すべてを中央のグリッドに移動させるのだが、前述のアトのトラップとの連携によって、何も考えずにいても、ボスを含めてグリッド移動ができるすべての敵を瞬殺でき、戦闘の肝であるはずの戦略性がなくなってしまう。*3
    • 一方、序盤からずっと使える初期メンバーのレイニー・マルコは、中盤から仲間になる強力なキャラに埋もれてしまい日の目を見なくなる事が多い。
      • レイニーは魔法使いタイプなのだが、MPが致命的に低い、攻撃範囲が狭い*4、さらに、強力な上位魔法もレベルが上がるとストックやMPの潤沢な別の魔法使いタイプのキャラが覚えてしまい、後半は戦闘での見せ場が全くなくなってしまう。
      • マルコは所謂僧侶タイプの回復役なのだが、別のキャラが使える上位回復技を悉く覚えず、これまた後半には空気となってしまう。*5
    • ただし、終盤で明かされる設定から、この調整は仕方ないと考えるプレイヤーもいる。幸い今作はそこまで難易度が高くないので、レベルさえ上がっていれば終盤でも十分活躍することはできるのだが。
  • 操作可能なキャラが多い割に、戦闘へ同時に参加できるのは3人きり。
    • 一枠目はストックで固定されており、仲間が何人いようと実質的には2人までしか使えない。
      • 仲間が3人以上いる期間は、残る2枠をプレイヤーが任意で入れ替える。レベルを均等に上げたいプレイヤーにはやや不満が残る。
    • また、入れ替え操作は移動中にしかできず、戦闘やイベントが始まってしまうと交代不能。
      • 3人以上の仲間を連れている場面がほとんどなので、イベントシーンではすぐ隣にいたはずの「補欠」たちが何をしているのかも若干ながら気にはなる。
    • ただし、操作するキャラが多いと戦闘のテンポはさらに悪くなることが予想されるため、ゲーム的な処置として割り切るべきではあるのだろうが。
  • 終盤になると、グリッド移動できない敵が多くなり(しかもラストダンジョンではサイレンスによって避けることができない)、また、強力な上位魔法や全体技を覚えられるので、かなりごり押しの戦闘でも敵を倒せてしまい、戦闘の肝だった「グリッド移動をして敵を倒すパズル要素」がなくなり、面白みがなくなる。
    • 戦闘の味付けとして取り入れたのだろうが、それどころか本作の戦闘システムそのものを否定しかねないものである。
  • やりこみ要素がほぼ皆無。
    • レアドロップ、レアスティールは*63人で行動しているときからあり、そこそこ多めだが作業感がどうしても強くなる。
      • 特に最強の鎧シュヴァリエは4人装備対象がいるにもかかわらず素敵な入手しにくさを誇る。*7
      • ドロップ率はHIT数で補正がかかるので結果レベルが上がりやすくなり、全レアドロップを手に入れようとしたらレベルがカンストしたでござるなんてことも。
    • 特にクリア後の隠しダンジョンがないこと。パーティーメンバーが揃って戦えるのがラスボス戦しかなく、しかも、そのラスボスがお世辞にも強いとは言えない。せっかく育てたキャラを自由に選んで遊べるダンジョンがないのはかなり惜しい。
    • 一応、本編に関わりがなく、ラスボスよりも強いボスがいるのだが、正伝の道中のサブイベントの一つであるので、異伝でしか仲間にならないキャラは戦闘に参加できない。
    • クリア後に自由に世界を歩き回れるといったこともないので、真エンドを見てしまうと何もすることがなくなってしまう。
  • 一部のキャラの空気さ、あっけない退場はしばしば批判される。
    • とりわけ、序盤から事あるごとに主人公たちの前に立ちふさがる2人の人物のあっけない退場はよく批判される。多くのプレイヤーはどこかで決着をつけるものと考えていたので、肩すかしを食らうことになった。
      • その敵役キャラが部下を率いて立ちふさがるシーンがあるが、その戦いのシーンにこいつは部下に戦わせて自分は戦わない。連戦かとプレイヤーに思わせておいてイベントで死ぬ。結局正伝、異伝ともに戦うことがない。本来はモブキャラのはずの「死神」(敵キャラ)の方が待遇がいいのはどう考えても変だろう。
    • メインキャラのうち、レイニー、マルコは序盤からずっと一緒に行動するのに、イベントで見せ場があまりなく、後半に至ってはほとんど空気であると批判される事がある。
      • ただし、個別のサブクエストは用意されており、レイニーのそれは非常に評価が高く、また、マルコのサブクエストのパラレルエンドは良くも悪くも印象に残るものであり、全く空気かといえばそうではない。*8
    • またガフカというメインキャラは、登場するのが極めて遅く、そのうえ一緒に行動する機会もほとんどないとあって感情移入が難しい。
      • 戦闘能力はかなり高い部類に入るものの、それを発揮する機会に恵まれていない。おまけに重戦士系として調整された能力が、ロッシュという序盤から出番の多いキャラと被ってしまっている。
      • このロッシュも操作キャラとしての本格的な加入はかなり遅く、ガフカが加わるのと同じルートでのみ、ガフカより先に仲間として使えるようになる。異伝ではガフカが仲間になる前後に離脱するのでレベル差が酷い事に……。*9このため戦闘に出してもらう機会を更に食い合ってしまう。ただでさえ機会そのものが少ない者同士で
    • エルーカというメインキャラは物語上の重要性こそ非常に高いが、操作可能な仲間として使える場面はとても少ない。
      • 極めてピーキーな性能を有しており愛を注ぐと強いのだが、愛なくしての起用は困難だろう。レベルを上げる機会が限定され過ぎ、普通に進めていると他のキャラとのレベル差が凄いことになる。
      • 特に終盤へ入ってから長期離脱するのが致命的。最終決戦ギリギリに戻ってくるが、メインキャラの中でも際立って打たれ弱く育てるのは大変。*10
      • ただし今作は魔法が強めに設定されており、バーストライト。相手は死ぬ。*11と雑魚に無双可能になる強さを秘めている。
    • これらは、容量や納期など開発上の問題で削られた部分だと考えられ、ファンからは惜しがられている。
  • 前述の通り、会話時にメインキャラクターにはイラストが表示されるが、そのキャラの選択に偏りがあり、ストーリーにしっかり食い込む重要人物になぜかイラストがついてなかったり、逆に比較的重要でなさそうなキャラにイラストがつけられていたりする(これもやはり、開発の都合で使用可能なキャラが減らされた名残らしい)。
    • また、表情の差分がないので、泣いているはずなのにイラストでは笑っているということもあり、差分ぐらいはつけて欲しかったとよくいわれる。
  • 大筋のストーリーは整合性が取れているが、致命的ではないものの、幾つかの箇所に他の設定との矛盾が見られる。
    • 特に、「真エンド」の内容はそれまでの説明と食い違うもので、面食らうプレイヤーが多かった。しかし、前述の通り、後味は良いものなので、それほど大きく批判されることはない。
  • CMやPVではストーリーが多数に分岐しているようだったのに、実際には本筋のストーリーが二本道で、しかも世界を自由に歩き回れることもないので、他の時間移動ものに比べて自由度が低い。
    • そのため、「ADVをRPG風にしたゲーム」といわれることも。
    • これも、原案では16種類のエンディングがあったらしいが、容量の都合で削られたようである。
  • レベルアップしたキャラはHPとMPが再計算される。これだけ書くと首を傾げるだろうが、装備品の上昇補正が再計算されてしまうのだ。
    • 具体的に言うと基礎HP500、装備で+50(計550/550)のキャラがレベルアップしたとして、基礎HP510、装備で+50(HP510/560)となる。
      • ならレベル99にすれば……と思いきや先頭リザルト画面の演出で経験値を獲得している(ように見える)せいか戦闘する度に再計算される。マルコ涙目。
      • これによりHP・MPを強化する装飾品、指輪系は大きく価値を減らすことに。女性陣はHPが低く是非補強したくなるだけに残念。
      • 下がるよりはマシではあるが…。

総評

アトラスのゲームにしてはあまり難易度が高くなく、やりこみ要素も薄く、システムだけみれば良作と判断できるかどうかは微妙であろう。
しかし、好感の持てるキャラクターと魅力的な群像劇のストーリーに引き込まれると評価が跳ね上がる。

荒削りな部分はあれど致命的な問題点はなく楽しく遊べる出来であり、また、それを補って余りあるキャラクター・ストーリー・音楽やライトゲーマーにも遊びやすい難易度などを総合的に見れば、充分に良作と判断できる。
とりわけ、ストーリーの質でRPGを選ぶ人や昔懐かしいゲームを求めている人、最近の主人公に嫌気が差している人には、是非お薦めしたいゲームである。


余談

  • あのラジアータ ストーリーズ』のスタッフが関わったため、発売前はシナリオが不安視されていた。
    • しかし蓋を開けてみると、王道なファンタジーRPGながらシナリオとキャラクターは緻密に練られており、後述の通り売り上げこそ振るわなかったものの、前評判とは裏腹に高い評価を得ることとなった。
    • 2017年6月には新規シナリオやキャラボイスを追加したリメイク版『ラジアントヒストリア パーフェクトクロノロジー』が3DS用ソフトとして発売された事からも人気の高さが窺える。
  • タイトルこそ『ラジアータ ストーリーズ』と似ているが、本作との設定的な繋がりは全くない。
    • ただし本作のとあるサブクエストのパラレルエンドには『ラジアータ ストーリーズ』で話題になった「種族間の全面戦争・殲滅エンド」のような結末で終わるものがある。
      • ちなみに企画書の段階では本作のエンディングも『ラジアータ ストーリーズ』同様に破滅的なものであり、アトラスからの提案によって現在の形になったとのこと*12
  • 何を思ったかアトラスが売上目標を13万本と大胆に設定した一方で、目に見える地雷と警戒されてあまり売れなかった結果、値が崩れ、ワゴン行きになってしまった。
    • ゲームの出来が良い分、これを惜しがるファンは多い。
    • 一方で本作タイトルから『グランヒストリア』というSFCのRPGを連想するような、ごく一部のマニアックなユーザーは迷わず本作を購入したらしい…。
  • 下村陽子氏が作曲した音楽も非常に高い評価を受け、一時、Amazonにおいて本作のサウンドトラックが品切れとなった。
  • 攻略本に一部間違いがある。
    • 攻略本では速度を上げる腕輪が製品版よりも早い段階で買えたり、非売品のはずの腕輪が買えると書かれている。開発段階では速度のパラメータは重視されていなかったのかもしれない。

ラジアントヒストリア パーフェクトクロノロジー

【らじあんとひすとりあ ぱーふぇくとくろのろじー】

ジャンル RPG


対応機種 ニンテンドー3DS
発売・開発元 アトラス(セガゲームス)
発売日 2017年6月29日
定価 【通常版】6,480円(税別)
【限定版】9,800円(税別)
セーブデータ 6個+SDカード8個+中断セーブ1個
レーティング CERO:B(12歳以上対象)
判定 良作

概要(3DS)

新規シナリオやキャラボイスを追加した3DSリメイク版。キャラクターデザインは廣岡政樹氏に変更されている。
物語は前作にあった「正伝」と「異伝」という二つの平行世界のほかに、前者二つの平行世界とは前提を異にする「亜伝」が追加されている。
亜伝の世界もまた深層では繋がっており、事件を解決するために「正伝」や「異伝」を行き来することになる。
亜伝にもパラレルエンドは存在し、選択を間違うと本来の歴史に悪影響が出てしまった形で締めくくられる。
「正伝」及び「異伝」のストーリーが一段落つくまではクエスト形式で登場する*13が、一度エンディングを迎えると本格的に話が進行するようになる。

評価点(3DS)

  • キャラクターボイス対応
    • 豪華声優陣によるキャラクターボイスの対応によってストーリーを盛り上げるようになった。
  • 良質なキャラクターデザイン
    • キャラクターデザインは廣岡政樹氏に変更されているが、こにしひろし氏のデザインを取り入れながら発展させており、追加された表情差分もあってとても生き生きしている。
      これについては後述するとある人物以外はおおむね好評を得ている。
  • 改善点
    • うるさいと言われ続けたストックの足音は、SEの完全な差し替えの他、コンフィグで音量調節が出来るようになり完全に解決した。
      • さらにサイレンス中は足音が完全に消えるようになり、ちゃんと忍んでいるようになっている。
    • スキップ機能は初見のイベントは飛ばせなくなることで解決している。
      • シーンの細部が変化しているとスキップしても変化した部分が飛ばされないので、ちゃんと変化したことがわかるようになった。
    • 「亜伝」及び「終わりの章」が追加されたことで、パーティーメンバーが揃って戦える機会が格段に増加。
      亜伝は序盤から仲間になったキャラクター全員を自由に選べる*14ので、楽しんでプレイできる。
  • 時間移動して戻るときの場所が僅かながら増えている。これによってスキルの習得イベントに直接飛べるようになったため習得が楽になった。
  • 腕試しダンジョンに「時の牢獄」が追加されている。ここで手に入る装備で一先ず裏ボスまでは行けるため、レアドロップ・レアスティールはやりこみ要素の域に留まるようになった。

賛否両論点(3DS)

  • エルーカのデザインの変更
    • DS版に登場したキャラクターはほぼそのまま*15なのだが、エルーカだけは大きくデザインが差し替えられている。(DS版パッケージでは中央のショートヘア、3DS版パッケージでは中央左のロングヘアの女性)
      これに対して旧作のファンからは「ショートが良かったのに」「普通の姫様になってしまった」という批判の声が出てしまっている。
      • 一方旧作ファンでも「気にならない」という人も居り、今作からプレイした人からは「こちらの方がかわいい」と好評である。

問題点(3DS)

  • 二つのモード
    • 今作では最初から亜伝を含めた全ての要素で遊べるパーフェクトモードと、DSと同じ進め方をして、DSの範囲を完全にクリアすると亜伝等の追加要素が遊べるようになるアペンドモードの2種類が存在する。
      のだが、結論的に言うとアペンドモードは罠である。
    • パーフェクトモードの亜伝は最初はクエスト形式で、新しい章に突入したり特定のクエストをクリアしたりすると追加されるのだが、アペンドモードの亜伝はクリア後に突然大量に発生するので面食らう。
      • しかもパーフェクトモードでは早いと1章(レベル10台)で出現する亜伝もあり、それをクリア時のレベル(普通に進めていれば50~60台)で挑むことになるのでどうしても作業感が強くなりがち。
    • では本編に影響がないかというと、本編で亜伝開始の合図が出る場所が時の刻印(時間移動して戻るときの場所)になっており、このポイントが正伝1章のサブクエスト回収にかなり便利であるため、この刻印が使えないアペンドモードはパーフェクトモードに比べてハンデを負っている。
      そしてアペンドモードでなければ見られないのは「ルートの進行を止められるイベント」のみ。テキスト集でも作るのでないならばアペンドモードを選ぶ価値はない。
      • しかもこのモードの設定はゲーム開始時にしか設定できない(進行に影響が出るので当たり前だが……)。
  • 解決されなかった問題点
    • シナリオの大筋はそのまま。つまり正伝でロッシュやガフカは終盤まで使えないといった問題点や、異伝でエルーカがほぼ使えないという問題もそのまま。
    • プレイヤーキャラの性能のバランスの悪さは、サポートスキルの追加で解決しようとしているがこれらが却ってメインメンバーの固定化を招いている。
      • サポートスキル以外の性能はほぼそのまま*16なので、攻撃範囲の狭さでレイニーが不利になったり、マルコが上位回復技を覚えない点もそのまま。
        一方サポートスキルはエルーカの戦姫の眼光*17が非常に強力なほか、マルコのラストスタンド*18やロッシュの大号令*19、レイニーのエンド●●*20もエルーカほどではないが強力。
        一方アト・ガフカはサポートスキルが貧弱*21なので、結果パーティーメンバーがアト・ガフカに固定化されやすい。
    • レベルアップ時に装備品の上昇補正が再計算されてしまうという問題点はレベルアップでHPMPが回復しなくなることで解決している。
  • 隠しボスはそれまでの敵とは比べ物にならないほど強く、時の牢獄のドーピングアイテムをカンストするまでつぎ込む事が前提と思えるぐらいの強さである。
    どのぐらいかと言うと、ハード(難易度変更できる難易度の中では最高)で裏ボスを倒したぐらいのレベルでは、フレンドリー(最低難易度)の裏ボスに瞬殺されるランク。生半可な用意で勝てる相手ではない。
    が、ドーピングアイテム集めは完全な作業のため、そこまでやりこむかはプレイヤー次第である。戦闘前には警告してくれるし、戦闘せずに終わらせることも可能である。

総評(3DS)

前作の問題点は一部残っているものの、あらかたの問題点を片付け、非常に遊びやすく作られている。
魅力的なキャラクター達が織り成す良質なストーリーを楽しみたい人は是非プレイしてみてほしい。

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最終更新:2023年09月07日 04:46

*1 ただしこのスキップ機能には微妙な難点もある。詳しくは後述。基本的には優れた機能なのだが。

*2 ちなみにレベル差補正は10で止まる。11以降は10と同じ扱い。

*3 トラップが効かない=移動不可キャラには威力がそこそこ、起点に任意地点指定可な浮かせ技クロススター、または7HITもするダンシングデスで戦えばよく、HPMP双方の回復魔法、バステ耐性強化魔法も覚えボス戦でもほぼ必須キャラと素敵っぷり。

*4 マナバーストを除けば3種のみで威力も低い~微妙程度

*5 ちなみに彼は、基礎パラメータもパッとしないのでヒールマシンにしてもいいと攻略本に書かれていたり……

*6 ボス戦は確率ドロップはなくレアスティールのみ。

*7 この鎧を落とす敵の出現率はやや高め。

*8 しかしデータ的にも他のパラレルエンド(公式のシナリオ)的にも彼が某キャラを倒すのは違和感がありはする。

*9 その辺は公式も気にしているのか、ロッシュのみマナバースト2段階目が最後のものより強くなっている

*10 今作は最初に加入した段階まで非加入キャラが経験値を得られる仕様なのでじっくり遊ぶプレイヤーには離脱期間の長いロッシュのほうがレベルが低くなることも。ロッシュをちゃんと使っていれば正伝最終章ではロッシュのほうが上を保てるが……

*11 アトのダンシングデスかロッシュのヘーストモード、ガフカの無双が補佐に必要だが

*12 企画・原案の高屋敷哲氏の作風は大体破滅的な結末らしい。

*13 中には関連する亜伝も存在する

*14 ただし一部の登場キャラクターが固定されているものを除く

*15 アト達サテュロス族に尻尾が追加されていたり、ソニアの髪型が少し変わっていたりハイスの前髪が前進した程度

*16 アトのトラップ技が僅かに弱体化された程度。レベルが上がってしまえば破壊力は相変わらずである

*17 味方ターン開始時に敵の行動巡を一つ飛ばす。要するにマナバーストのターンブレイクをコストなしで使用可能

*18 所謂リレイズ効果。この効果を得られるのはこのスキルのみ

*19 全ステータス中UP

*20 ●●には3種の属性が入り、弱点を突くと一定確率で即死が入る

*21 ターン最初で発動するのでほぼ成功しないスティールや当たれば強いが滅多に入らない状態異常など