チョコボと魔法の絵本
【ちょこぼとまほうのえほん】
ジャンル
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アドベンチャー(ミニゲーム集)
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対応機種
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ニンテンドーDS
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メディア
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512MbitDSカード
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発売元
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スクウェア・エニックス
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開発元
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ハ・ン・ド JOE DOWN(音楽アレンジ)
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発売日
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2006年12月14日
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定価
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4,800円(税別)
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判定
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良作
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ポイント
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チョコボシリーズ初のミニゲーム集 新キャラ登場で雰囲気もリニューアル 対戦式のミニゲームやカードゲームも備える 取れそうで取れない絶妙な目標点数 音楽や演出のファンサービスも充実
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ファイナルファンタジーシリーズ
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概要
ファイナルファンタジー(FF)シリーズのマスコットキャラクターである「チョコボ」を主人公としたアドベンチャー型ミニゲーム集。
この時点において、ゲーム機におけるチョコボシリーズ作品は1999~2000年頃の『チョコボコレクション』や『はたらくチョコボ』を最後に作られていなかった。
今作では製作チームがゲーム会社『ハ・ン・ド』への下請けに変わっており、そのためかそれまでのチョコボシリーズからはメインキャラクターなどに若干の変更がある。
あらすじ
ここは、4つのクリスタルに守られたとある平和な島。
島のチョコボ牧場には、白魔導士のシロマと黒魔道士のクロマ、それに沢山のチョコボ達が住んでいます。
お姉さん役のシロマは今日もチョコボ達に絵本を読んであげようとしますが、そこにクロマが「旅先で珍しい絵本を見つけた」と言ってやってきます。
それは目玉のついたいかにもおどろおどろしい本でしたが、クロマは早速読んでみようとチョコボに本を開かせました。
しかしそれは大魔王「ベブズ」の封じられた、暗黒の魔道書だったのです!
不完全ながら本の姿で復活したベブズはクロマの持っていた絵本や、村のチョコボ達ほぼ全員を吸い込んでしまいました。
チョコボは大魔王の完全な復活を阻止して、チョコボ達を救い出すことができるのでしょうか?
特徴
キャラクター
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登場キャラクターの大きな変更点は以下の通り。『チョコボの不思議なダンジョン 時忘れの迷宮』以降の次回作にもほぼ引き継がれている。
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女性キャラ「イルマ」とチョコボの「ヴォルグ」などの新キャラ
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特にイルマは、清廉なイメージの強かったメインヒロインの「シロマ」と違い、態度に棘のあるライバルキャラとして登場し新しい風を吹き込んだ。
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相棒役として定番だった「モーグリ」は、本作では正体バレバレのチュートリアル役キャラクター「ポップアップヒーロー」として登場する。以降の作品でも「○○ヒーローX」という名前で登場するようになった。
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FFシリーズの定番キャラである「シド」のデザインの一新
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本家FFシリーズに準拠して豪快なオッサンキャラが定番だったシドだが、本作から若々しい青年として描かれるようになった。
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アニメ『ファイナルファンタジー:アンリミテッド』で「若いシド」という概念はあり、本家FFシリーズでも後に『ファイナルファンタジーXIII』で取り入れられたが、ゲーム作品では本作が初である。
ミニゲーム
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プレイヤーはチョコボを操作して島の各地に点在する「絵本」の中に入り込み、ミニゲームを行うことになる。
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絵本は『うさぎとかめ』をモチーフにした「サボテンダーとアダマンタイマイ」のように、基本的に実在の名作童話を題材にしている。
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「絵本」のミニゲームは一人プレイ用のモードと、CPUと計2~4人で対戦する対戦用モードに分かれる。
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「サボテンダーとアダマンタイマイ」(レースゲーム)を例にとると、一人プレイではゴールまでのタイムアタック、対戦モードでは一位となるための競争を行うことになる。
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対戦モードには1~5までのレベルがあり、「レベル1…vsチョッカーズ(最弱)1匹」→「レベル2…vsチョッカーズ3匹」→「レベル3…vsミズーイ(中級)+ピーカブ(同)」といったように、レベルが上がるごとに対戦相手の数や強さも上がっていく。
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最初から全てのレベルが遊べるわけではなく、一定の条件クリアで新しいレベルが解禁されるシステムになっている。
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DS本体を持ち寄っての他のユーザーとの通信対戦も可能。Wi-Fi対戦はできないが。
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ミニゲームで一定の成績を残すと、絵本のストーリーのエピローグが追加されるとともに、絵本の力で「奇跡」が起きストーリーが進行する。
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ひとつの絵本につきエピローグは3種類。出典となった童話とほぼ同じオチになるものもあれば、そうでないものもある。
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ストーリーが進む以外にも、一定の成績で特定のチョコボを救出できたりポップアップデュエル(後述)のカードを入手できたりする。
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絵本として遊べるミニゲーム「絵本ゲーム」以外にも、島の各地で多くのミニゲーム「チョコっとゲーム」を遊べる。
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「チョコっとゲーム」では、一定の成績「シルバー」と「ゴールド」を達成することでそれぞれ1枚のポップアップデュエル用カードを入手できる。
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最終的には「ゲームクリア」+「全ての『絵本』モードのミニゲームをレベル5までの難易度でクリア」+「全てのチョコっとゲームで『ゴールド』クラスを取得」までがコンプリートに必要となる。
ポップアップデュエル
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全122枚のカードから特定枚数のカードを選んでデッキを組み戦う、一種のカードゲーム。DS本体の通信対戦のほか、Wi-Fi対戦も可能であった。
2014年5月20日に任天堂がWi-Fiコネクションを終了したため、現在はWi-Fi対戦不可能。
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カードは基本的に、ミニゲームの褒賞として入手する。
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完全なおまけ要素ではなく、ストーリー中で勝たなければゲームが進まない強制戦闘も幾度かある。
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カードとデュエル準備
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全てのカードは赤(炎)、緑(地)、黄(雷)、青(水・氷)、灰(無)の5種のいずれかの色に分かれ、灰を除いた4種の色のカードの相性は基本的に「赤→緑→黄→青→赤→…」の4すくみ関係にある。
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全てのカードには、上(赤)・下(青)・左(黄)・右(緑)の四方向に「剣」のマークか「盾」のマークが設定されている(剣のマークは最大1つ)。マークのない方向もある。
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大半のカードは、何らかの「アビリティ」(効果)を持っている。
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プレイヤーは事前にカードを選んで、デッキを組む。同じカードを複数枚入れることはできない(そもそも1枚しか所持できない)。
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デッキは基本的に15枚1組(ストーリー当初は枚数を減らした練習デッキでプレイする)。
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デュエル中
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まずお互いにデッキを山札として、その山札から手札として3枚カードを引く。対戦相手の手札は色だけ確認可能。
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その後、各ターン毎にお互い手札から1枚出し合い、それぞれのマークの配置によってダメージ計算とアビリティの発動が行われるかどうかが決まる。
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出すカードは15秒内にタッチペンで選ぶ。早く出した方が先攻となり、先に攻撃できる。
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ターン終了時(エンドフェイズ)に、山札から1枚引いて減った分の手札を埋める。また、使ったカードと同じ色のクリスタルポイントが1つ貯まる(灰以外のみ)。これを繰り返す。
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山札がゼロになった場合は、既に使ったカードを再び戻して山札とする。
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既定のHP(プレイヤーは20で固定、CPUは相手によって異なる)がなくなった側が敗北となる。
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戦闘について
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どちらかのプレイヤーが「剣」のマークがあるカードを出した場合、「剣」のマークがある位置における、相手のマークによって勝敗が決まる。どちらのプレイヤーも「盾」マークだけのカードを出した場合、何も起きずそのまま終了する。
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「剣」→「なし」…ダメージを与え、アビリティが発動。
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「剣」→「剣」……ダメージを与え、アビリティが発動。ただし、ダメージは半分(切り捨て)になる。
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「剣」→「盾」……ダメージは無く、アビリティも発動できない。代わりに、「盾」マーク側がダメージを与え、アビリティが発動する。
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特定のアビリティには、エンドフェイズに貯まるクリスタルポイントが必要となる。
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特定のアビリティを受けると、1ターンの間「やけど」(赤カードからのダメージ倍)、「スロウ」(必ず後攻になる)などの状態異常になる。
評価点
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ミニゲーム
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難易度設定が絶妙であり、ストーリーを進めるだけなら簡単だが、全ての要素をコンプリートさせるにはそれなりに骨が折れるように作られている。
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「ボムのかべ」の16秒の壁、「コロコロゼリー」の60ポイントの壁などは多くのプレイヤー達を唸らせた。
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いわゆる「ミニゲーム」として想像されるプチゲームの他にもCPUとの対戦ゲームもいくつも収録されており、ミニゲーム集特有のしょっぱさも大幅に緩和されている。
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ミニゲームの数自体も十分多く、タッチペンの使い方も様々、マイク機能を使うものもあるなどバリエーションも十分。
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魅力的なストーリー
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本筋のストーリーは「古の魔王が復活したので倒す」という分かりやすい勧善懲悪ものだが、場所によっては重く深い一面も若干ながら垣間見られる。
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『チョコボの不思議なダンジョン2』ほどではないが、チョコボシリーズの一般的なイメージを裏切るようなシリアスな部分が引き継がれている。
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ポップアップデュエル
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あくまでサブの要素ではあるが、単純にしてカードゲームにおける収集・戦略の楽しさを備えており評価は高い。
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FF・チョコボシリーズにおけるモンスターのオリジナルイラストや技名が使われていることから、コレクション性が強く集めるモチベーションを生み出しやすい。
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音楽
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ハ・ン・ド製作になった今作では、劇中曲にはすべてFFシリーズ、またはチョコボシリーズ作品のアレンジ音楽が使われている。
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オリジナル曲はなくなったが、アレンジの評判は上々。ラスボス戦はFFシリーズの戦闘曲としてよく名前が挙がるアレである。
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チョコボのテーマを焦燥感を煽るものにアレンジした「ムーブ・デ・チョコボ」「バトル・デ・チョコボ」なども評価は高い。
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しっかりとサウンドテストも付いている。
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インターフェース
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チュートリアルがしっかりしており、豊富なミニゲームも複雑な操作が必要なものは少なく初見でまごつきにくい。タッチペンだけでストレスなく進行可能。
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特定のチョコボを解放することで、一度行ったところへのワープ機能も追加されるため、移動面もそれなりに快適。ロードもほぼ皆無。
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収集要素のやり残しや、ストーリー上の次の目的地なども特定の場所で教えてくれるため、目的を見失うことはほぼない。
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移動画面では上にマップを表示、ポップアップデュエルでは上で戦闘画面・下で操作など、ほぼ全ての場面においてDSの上下画面が無駄なく使われている。
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ファンサービス
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絵本の題材がチョコボシリーズのモンスターになっていることに加え、他にも多くの部分でチョコボシリーズ・FFシリーズを意識したネタがある。
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初代『ファイナルファンタジー』のオープニングをパロディ化するなど、どちらかと言うと古参シリーズファン向けのネタが多い。
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しばらく放置しているとチョコボが寝る、公園の遊具を調べると遊びだすなど、チョコボのかわいさを満喫できるギミックもいくつか設置されている。
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エンディングの仕掛けにはドキッとしたプレイヤーも多いはず。
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ポップアップデュエルのカードには、任天堂のWi-Fiスポット専用のものが5枚ほどあるのだが、
実はこれらはゲーム内でコマンドを入力すると入手可能!
オンラインサービスの終了とともにパスワードが公開された。
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よって現在でもコンプリートが可能である。非常にありがたい仕様であり、他のゲーム/メーカーにも見習ってもらいたいと言える。
問題点
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ミニゲーム
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だいたいのミニゲームに大なり小なり運の要素が入ってくるのは当たり前だが、中には運への依存がかなり強いものもあるので評価が分かれる。
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「コツコツきんのはり」などに代表される、「当たり」に到達することが目的のミニゲームにその傾向が強い。
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特に、『黒ひげ危機一発』のような内容の「マジックポットのツボ」は100%完全な運ゲーで、ゴールドランクに到達するにはそれなりに強い運が求められるため批判意見も散見される。
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もっともゲームの進行自体には影響なく、「1つぐらいはこういうものもあっていい」という意見もそれなりにはある。
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それよりはボムのミニゲームの難易度の高さの方が酷い。本当に難しい(時間制限が)。
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ハイスコア狙いでプレイを繰り返す際に、ミニゲーム冒頭の演出が少々うっとうしい。ものによってはスキップ可能だが。
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ミニゲームごとの進行度合いが一覧で見られるようにして欲しかったという声は強い。
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ポップアップデュエル
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評判自体に大きく影を落とすほどではなかったが、発売から程なくして戦術の研究が進みバランス面の問題が目立ってきた。
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「剣」「盾」「なし」のマークが3すくみになっていないため考えてみれば当たり前なのだが、「盾」マークを多く揃えた防御カードばかりのデッキがWi-Fi対戦で目立つようになってしまったのである。
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「盾」マークが4つ中3~4つを占めるカードなどもいくつか存在しており、これらに対して…
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相手が「剣」を持つカードで攻撃してきた……運悪く「盾」マークのない場所に攻撃された場合のみダメージを受ける。それ以外の場合こちらが効果発動、有利に立てる。
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相手が「剣」のないカードで防御してきた……どちらも五分。お互いにクリスタルが加算されるが、少なくとも大きな不利にはならない。
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となるため、どうしても防御デッキ有利なのは否めない。バランス改善は次作を待つことになる。
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Wi-Fi対戦の切断者(負けそうになると接続を切ってしまう)対策がされておらず、被害がやや目立った。
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また演出スキップなどができないため、長期戦になると戦闘が少々冗長に感じられやすい。
総評
概要にもあるが、チョコボシリーズは90年代後半に大量に発売されて以降、発売が一旦途絶えていたシリーズであった。
おまけにミニゲーム集という地味なジャンルもあって年末商戦に埋もれがちになってしまい、ユーザーからの発売前期待度はあまり高くなかった。
しかし発売後は地味ながら丁寧な作りに熱中するプレイヤーも多く、Wi-Fi対戦もそれなりに盛り上がり売上も予想以上のものとなって続編に繋がった。
現在はWi-Fi対戦不可能になったが、それでも欠点の少なさからこの手のジャンルに抵抗がなければ十分楽しめる作品だろう。
余談
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本作の完成度を評価されてか、小規模メーカーであったハ・ン・ドは00年代後半から製作本数が目に見えて増加。
最終更新:2023年01月27日 06:21