エリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士2~

【えりーのあとりえ ざーるぶるぐのれんきんじゅつしつー】

ジャンル 新感覚RPG
対応機種 プレイステーション
発売・開発元 ガスト
発売日 1998年12月17日
定価 5,800円
廉価版 PlayStation the Best:1999年12月16日/2,800円
配信 ゲームアーカイブス:2008年3月21日/600円
判定 良作
アトリエシリーズリンク


あらすじ

シリーズ1作目『マリーのアトリエ』の後の話。
流行病に倒れた少女エルフィール・トラウム(エリー)は、ザールブルグのアカデミーを卒業し旅に出た錬金術師のマルローネ(マリー)に命を救われる。
ゲームは、マリーに憧れたエリーが錬金術士になるためにザールブルグを訪れ、アカデミーに入学するところから始まる。
入試の成績が悪かったエリーは寮に入ることができず、自力で生活することを余儀なくされる。
エリーはイングリド先生から工房(アトリエ)を与えられ、錬金術の仕事をしながら卒業を目指す。

特徴

前作からの変更点

  • 今作の舞台も前作に引き続きザールブルグ
    • その為、前作登場キャラクターも数多く出演しているが、新キャラも多い。
      • 前作キャラは全員が登場しているわけではなく、例えばアカデミー売店の店員は新キャラへと変更されている。
    • 採取先も前作と同じ場所も多いが、一部は環境の変化や立ち入り禁止等を理由に行けなくなっている。
      • その代わり、別の採取先やイベントが大幅に増えているためプレイの上で支障はない。
  • プレイ年数の変更
    • 前作では留年後の話ということもあり、エンディングまでのゲーム内時間は5年間確定だったが、本作では普通に卒業(4年)、1年留年(5年)、マイスターランク(6年)、5年留年(9年)など、プレイ内容によって卒業までのゲーム内時間が変動する。
      • 年数を延長する条件を満たしていても、任意で卒業(または退学)を選択できる。
      • 当然、エンディングまでのゲーム内時間の変動によってエンディングの内容も変わる。
  • 育成システムの変更
    • 主人公エリーのレベルが錬金術レベル(錬金術によって上がる)と冒険レベル(戦闘によって上がる)に分けられた。
    • 倒した人間が経験値を得る形式から、パーティ全員で経験値を分ける形式に変更された。

新要素

  • 疲労システムに『酔い』の状態異常が追加。
    • 下戸であるエリーは酒系アイテムを複数回使用すると酔っ払ってしまい調合の成功率が-40%と大幅に下がるようになった。
      • 酔いは『酔い止めの薬』を使うか数日が経過しないと回復しないため、おいそれとワインに頼る事は出来なくなった。
      • 酔いを避けるための疲労回復アイテムとして、割高だが『にんにく』も用意されている。
      • ちなみに、これを利用して特定の調合をわざと失敗し高難度の調合アイテムの材料になる『産業廃棄物D』を量産するというテクニックも存在する。
  • ブレンド調合
    • 材料の配分を変える事で、『品質』と『効能』というパラメータを上下させる事が出来る。配分は道具の『天秤』がなければ1刻みで調整、あれば0.1刻みで調整できる。
      • 品質はアイテムの価値を決める。同じアイテムでも高品質の方が高く買い取られ、調合の依頼主も報酬に色をつけてくれる(逆もまた然り)。また一部アイテムはブレンドを前提としているのか、レシピ通りに作るだけでは品質が低くなるよう設定されている。
      • 効能はアイテムの効果に関わる。効能が高いほどアイテムの効果も強くなるがデメリット(消費MPが増える、等)も強くなるので注意。
    • 品質と効能の両方が高くなる配合も存在するが、この配合はセーブデータ毎に変化する。
      • ごく一部を除けば大雑把に配合を変えるだけでも十分効果が出るためあまり神経質にならなくてもよい。
    • ブレンド調合成功後は、新旧どちらの配合を残すかを選ぶ。
      • もう一方はその場で売却または廃棄されるため、異なる配合を持つ同一アイテムが混在することはない。
  • オリジナル調合
    • 材料と機材を自分で選択し、それが正しければそのまま新規アイテムを作成する事が出来る。
      • 当然、選択が合っていても錬金術レベルの問題等で失敗する事はある。
    • 一部にはレシピが存在しないアイテムも存在する。これらは、集めた情報から推測して自分で色々試す必要がある。
    • オリジナル調合が追加された関係か、一部のアイテムのレシピは前作から変更されている。
  • 調合中の訪問
    • 本作では調合の最中に、交友度の高い冒険者たちが工房を訪ねてくるイベントが発生する。この時応対することで依頼を受けることができる。
      • この時の依頼は必ず一種類だけでそれを受注するかどうか選択する。ストックがあればその場で渡しても良い。冒険者ごとに欲しいアイテムの傾向は決まっている。
      • 来訪時は調合中ということもあり誰が来ているかは応対するまで「???」で表示され不明だが、アイテム「木鶏」が作成済みなら応対前でも来訪者が分かるようになる。
    • 依頼を成功させれば報酬を得るだけでなく、依頼した冒険者との交友度も上がる。
    • ただし、依頼の成否にかかわらず応対するごとに調合の成功率が10%下がる。場合によっては無視するのも手。
      • 長い時間がかかるアイテムの調合中に何度も応対に出ると、その都度成功率は下がっていく。
    • この「調合中のイベント」要素は後のシリーズ作品でも取り入れられた。
  • 酒場での依頼主の追加
    • 前作と同様の酒場主のディオ以外に、前作の冒険者の一人クーゲルからも依頼を受注できる。
    • クーゲルの依頼は「滋養強壮の薬」「絵のモチーフ」「爆弾」といった大まかなカテゴリーで指定され、該当する複数のアイテムの中から自分で選んで渡す。
      • 例えば、「滋養強壮の薬」なら『ほうれんそう』『シャリオミルク』『アルテナの水』…等から選択する。ストックがあればその場で渡してもよい。
      • また、選択できるアイテムから何を渡しても依頼は成功になり、提示された報酬を全額受け取れる(無論、期限を過ぎれば減額される。)が、渡すアイテムによってクーゲルの評価が異なり、納品した際の人気度が大きく変動する。「思いふける」でアイテムを選択する際、物によってクーゲルの表情が変化するので、これである程度の判断は可能。
  • 武器屋もできる事が増えた。
    • 本作から新たに装備の改造が可能になった。条件を満たせば銀貨を払って強化することができる。
      • 数値の増加、属性の追加、特殊能力の付加といったことが可能で、強化する度合いにより必要な銀貨の額が変わる。
    • ストーリーが進むと『グラセン鉱石』の買い取りが開始する。一度でも売ることで新しい装備が販売されるようになった。
  • 妖精さん関係
    • 今作では雇った妖精さんに調合をさせて経験値をためさせ、上位の妖精へとレベルアップさせる事ができる。しかも雇用費はレベルアップ前のままという親切仕様。
      • 雇える範囲での最高レベルの紺妖精(調合速度がエリーと等速)のさらに上に虹妖精も存在し、そこまでレベルアップさせると、"エリーの1.5倍"という驚異的な速さで調合を行えるになる。
    • 一方で妖精さんはブレンド調合・オリジナル調合が出来ず、レシピ調合でも未作成のアイテムは作れない。
      • よって未作成アイテムの調合やブレンド・オリジナル調合はエリーに、採取・作成・ブレンド済みアイテムの大量生産は妖精さんに割り振る分担作業が必要となってくる。
  • 恋愛イベント
    • 本作では一定回数のフラグを立てることで、3人の男性キャラの内1人とエリーとの間に恋愛イベントが発生する。
      • ただしシリーズでは初の試みな上にエンディングに影響を及ぼさないようになっているため内容はどれもややあっさりとしている。
    • また恋愛イベント成就のためのフラグとベストエンドを迎えるためのフラグは二者択一であることが多いのでベストエンド達成の難易度が高くなる。
      • 一応、恋愛イベント発生とベストエンド達成の両立も可能であるが、その場合はスケジュールが非常にタイトになるので注意。
  • アカデミーコンテスト
    • 最初の4年間は年度末である8月にアカデミーコンテストという試験が行われる。この試験によって学年内の順位が決定する。好成績を収めれば名声や人気度が上昇する他、キャラクターの意外な一面を見る事もできる。
    • 試験科目は『調合』『基礎知識』『基礎魔術』の3つ。
    • 調合試験では指定されたアイテムを実際に作成する。レシピ通り作ってもよいし(ブレンド調合済みならその配分が基準)、その場で配分を変えてブレンド調合してもよい。一方でレシピを入手してないアイテムの場合は材料がランダムに選ばれてしまう。
    • 基礎知識試験ではアイテムの名前や材料、作成に必要な器具を答える三択クイズが5問出題される。プレイヤー側の知識を必要とする上に時間制限もあるので予習は必須。
    • 基礎魔術試験では攻撃をしてこない『たる』を中身を傷つけずに入手・作成したことのある攻撃系のアイテム*1から使用するアイテムをいくつか選んで規定攻撃回数内で壊す。攻撃回数は7回までだが、持ち込むアイテムの数だけ攻撃回数が少なくなるため、少しずつじわじわと削るか一気に壊すかをアイテムごとの威力も考えて選ばなければならない。中身まで壊してしまえば当然減点、たまにイングリド先生の私物が中に入っておりそれを壊したら更なる減点を喰らう。そんな物を試験に入れるなと。
    • 調合と基礎知識は事前に出題範囲が掲示される。
  • 新地方カスターニェ地方の追加
    • 一定のフラグを立てると西の港町カスターニェ地方へ行けるようになる。
      • 工房はないのでアイテム作成は出来ないが、イベントや新キャラが多くここからしか行けない採取地も多い。
      • さらに条件を満たすと、カスターニェから船に乗り、海の向こうの町へ行くこともできるようになる。

評価点

  • 全体的なボリュームアップ
    • 錬金術で作れるアイテム、調合の方法、アイテムの採取先、キャラクターや敵の数、イベントやエンディングの数、一枚絵やキャラクターボイスなどが増えた。
    • カスターニェや、さらにその先への船での移動と、行動範囲もかなり広くなっており、世界の広さを実感できる。
      • またカスターニェのBGM『飛べないカモメの物語』はカスターニェの開放的な雰囲気も相まって非常に人気が高い。
  • 自由度の高さも健在。
    • やり込み要素も多く、寝る事でゲーム内時間を飛ばせるので周回プレイも快適。
  • 戦闘システムはかなり改善された。
    • 前作は錬金さえしていれば主人公マリーのレベルが上がり戦闘でも無双していたのが、レベルが分けられたため、仲間キャラの重要性が増した。
    • かといって主人公が弱くなったかと言えばそんな事はなく、冒険レベルを上げればしっかり強くなる。
      • 入手難易度は上がったが最強武器は相変わらず強力であり、他にもドーピングアイテムの調合や武器の改造、『ローレライの鱗』などの戦闘バランス崩壊アイテム等、非常に強力な物もあるので、しっかりやりこめばエリー無双も可能。
      • また強くなれずとも、MPの高さを利用してアイテム係となったり*2、条件を満たす事で楽器系アイテムで味方を支援する『えんそう』コマンドを覚えたりと、支援に徹する事で活躍が見込めるようにもなっている。
    • 経験値の分配システムになったことで、サブキャラの育成も容易になった。
  • 酔いの追加で休息も大事になった。
    • 前作は市販品『祝福のワイン』のコストパフォーマンスが非常に優秀だったため、休息や他の疲労回復アイテムの存在意義が薄かったのだが、酔いが追加された事で、他の選択肢も大事になった。
      • ゲーム全体で見れば下手に休息したら時間が無くなるという事もなく、ここら辺はうまくバランスがとれている。
  • オリジナル調合の評価点
    • プレイヤーがレシピを知ってさえいればいいので、周回プレイなどでレシピ入手イベントをスキップ出来るのが魅力。
    • ある程度同じようなパターンがあるアイテム群もあるので、これらはレシピ入手前でも何となく作り方が想像でき、こういったものを探す楽しみもある。
  • 調合中イベントの追加
    • 調合中はどうしても調合するだけで時間が過ぎて他の事が出来なくなるのだが、依頼に訪ねてきてもらえるので、冒険者との交友度を上げやすくなった。
  • クーゲルの依頼の追加で攻略の幅が広がった。
    • 簡単に用意できるからと評価の低いアイテムばかり渡しているとみるみるうちに人気が下がっていくため、ストックや銀貨・ストーリー進行への影響を考えながら渡すアイテムを選ぶ必要があり、より手ごたえのあるシステムになった。
      • 一方で直近の金が必要であれば、人気は下がるが簡単に用意できる物で大金を得る事も可能。
    • 街の有力者からの依頼という都合上報酬も高いため、ゲーム終盤はこちらの依頼がほぼ中心となる。

賛否両論点

  • 一部シナリオに前作前提の部分がある。
    • 地続きの続編なので当然と言えば当然だが、前作をプレイしていないと理解できない内輪ネタのようなものも多い。
      • 前作プレイヤーからすれば楽しめるが、新規プレイヤーからすると若干置いてけぼりに感じてしまう。
  • 相変わらず初心者殺しのヴィラント山
    • 前作と同様、材料採取地の一つ『ヴィラント山』は道中含め強敵が出没するにも拘らず序盤から行けてしまう。
      • 早い段階でヴィラント山で『カノーネ岩』というアイテムを入手しなければ赤系の調合が殆どできず、コンテストで苦労するという問題もある。
      • 一度全滅覚悟でヴィラント山へ行って以降は妖精に採取を任せる、騎士団によるモンスター討伐イベント*3を待つ、他に『カノーネ岩』が採れる『エルフィン洞窟』へ行く、など前作と同様の救済措置はきちんと存在する。
  • 声優変更
    • 前作で兼役だったキャラクターたちの多くに独立した声優がつくようになった。好みの問題だが、前作で慣れた人間は違和感を覚えることも。
    • マルローネの声優が何故か前作の池澤春菜から氷上恭子に変更されている。他作品にマルローネがゲスト出演した時には池澤春菜に戻っているため、氷上恭子がマルローネを演じているのは『エリー』のみ。

問題点

  • 『マリー』同様、効率的にプレイをしていると終盤のイベントもマンネリ化し、やることがなくなる。
    • 特に、調合に失敗したらリセットするというプレイスタイルだと、最良エンディングですら終盤はずっと寝ていることになりがち。
  • 新たなる地方、カスターニェ地方への行き方が見つけにくい。
    • フラグを立てた上で2年目2月以降に踊り子のロマージュに何度も話しかけないといけないのだが、ロマージュは5の倍数の日にしか飛翔亭に来ないため、運が悪いとイベントの存在そのものに気付かないままエンディングを迎えてしまう。
      • その場合、マンネリ化が更に酷くなってしまう。
    • 最高評価とも言えるエンディングを迎えるにはカスターニェ地方へ行くのは必須。
      • どころか、そこから更に船に乗って遠出しなければならない。マイスターランクへ行けば年数は延びるとはいえ、かなりの日数を移動に取られるので、カスターニェの発見が遅れると、そのプレイではベストEDはまず不可能になる。
  • ゲーム発売と同時期に出版された攻略本、『エリーのアトリエ~ザールブルグの錬金術士2~完全ガイド』にも、『完全』と言いながらカスターニェ地方への行き方に関する情報が載っていなかった。
  • 『マリー』であったミニゲームがなくなった。
    • ミニゲームは面白いものが多かったので、なくなってしまったのは不評だった。「ミニゲームなんて面倒くさい」という人には好評かもしれないが……。
  • 『マリー』よりは改善されたとはいえ、戦闘のバランスは悪い。
    • 特に、エリーに「ローレライの鱗」を装備させると、多くの敵が魅了状態(行動不能)になり、一方的に攻撃できてしまう。「ローレライの鱗」を装備させるだけで、武闘大会も簡単に優勝できてしまう。
      • さすがに「ローレライの鱗」は強力すぎると判断されたのか、後に発売されたバージョン(PS2版など)では、魅了の確率が激減するように修正された。
  • オリジナル調合の問題点
    • オリジナル調合必須のアイテムついてはゲーム内でのヒントが少なく、攻略本や攻略サイトを見ないとあまり活用できない。
  • クーゲルの依頼で人気を下げた場合の実害に気づきにくい
    • 簡単に金が手に入るからと適当なアイテムばかり渡していると人気が下がっていき、一部のイベントが起きなくなるのだが、初プレイでそれをしてしまうと人気があれば起きるイベントがある事自体に気づきにくくなってしまう。
      • 錬金要素やメインとなるイベント、カスターニェへの拡張等、主だった要素へはほとんど影響がない為、人気を下げる事のデメリットに気づかず、この状況に陥るとそのままクリアしてしまいやすい。

総評

とにかく全体的に出来る事を増やした『マリー』の拡張版とも言える内容。
一回プレイしただけでは気づけない要素も多く、非常にやりこみがいのあるゲームになっている。
新キャラ・新要素も人気が高く、『マリー』での良い部分を残しつつ、正統派の進化を遂げた良作。


その後の展開

  • 3作目として『リリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金士3~』が発売された。
    • 舞台は同じだが、時代はマリーよりもさらに昔、その頃は存在しなかった錬金術アカデミーを建設するのが目的となっている。
      • 本作でも登場しているキャラクター達も若い姿となって一部登場。
  • 前作である『マリー』共々移植が何度か行われているが、何故かスマホ移植はされていない。
  • 後にゲームボーイなど携帯機向けに発売されるシリーズは本作の後日談となっている。
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最終更新:2024年03月31日 21:00

*1 『クラフト』などの爆弾、『神々のいかずち』など魔法攻撃系の他、採取アイテムの『カノーネ岩』『うに』など。

*2 一部のアイテムはMPを消費する

*3 一定期間中のエンカウント率が下がる