リズム天国

【りずむてんごく】

ジャンル ノリ感ゲーム♪
対応機種 ゲームボーイアドバンス
メディア 128MbitROMカートリッジ
発売元 任天堂
開発元 任天堂
J.P.ROOM
発売日 2006年8月3日
定価 3,800円
判定 良作
ポイント 操作は超カンタン、でもやりごたえは十分
複雑化する音ゲーへのアンチテーゼ
リズム天国シリーズ
リズム天国 (アーケード) - ゴールド - みんなの - ザ・ベスト+


概要

ゲーム中に流れる音楽のリズムに合わせてボタンを押すタイプの、リズムアクションゲーム(公称ジャンルは"ノリ感ゲーム♪")。
音ゲージャンルの難易度激化やマニア以外お断りの雰囲気についていけなくなった人や、元々ゲームの苦手な人でも手軽に楽しめるよう作られており、一般的な音ゲーに比べて気軽に遊べる「ミニゲーム集」的な音楽ゲームとなっている。
開発スタッフは『メイド イン ワリオ』を手がけたスタッフとほぼ同じであり、本作もまた作風・プレイ感覚ともに非常に似通っている。

GBA最後の任天堂タイトルであり、DSLite発売後ということもあり大方の任天堂携帯機への展開はすでにDSへと移行していた時期だったため初動は今一つだったが、口コミで評判が広がりハードをまたいで続くシリーズとなった。
音楽プロデューサーの「つんく♂」が企画・監修・楽曲提供をしているが、先入観を持たれないようにするためか、そのことは発売直前まで伏せられていた。


内容

ゲームの流れ

  • 1プレイあたり1~2分程度の「リズムゲーム」を順番に攻略していく。一度出現したリズムゲームは、自由に何度でも遊べる。
    • リズムゲームは全8ステージに分かれており、各ステージは5つのリズムゲームと、「リミックス」というボスステージで構成されている。総リズムゲーム数は48。
      • ステージ6リミックスをクリアすれば、ひとまずエンディングとなる。
    • 同じリズムゲームを何度かクリア失敗すると、そのリズムゲームを飛ばして次に進むこともできる(ただしステージ6リミックス以降は飛ばせない)。こうした初心者への配慮はぬかりない。

リズムゲーム

  • リズムゲームはいずれも「リズムに合わせてボタンを押す」というシンプルなルールだが、ゲームごとに曲や操作形態や画面構成などが異なる。
    • ほとんどのゲームは「タイミング良くAボタン(+十字ボタン)を押す」という単純な操作だが、一部にボタンを長押ししたり十字ボタンを使い分けるゲームもある。
    • 各ステージ最後のリズムゲーム「リミックス」は、そのステージ内のそれまでの5リズムゲームを1つのオリジナル曲に混合してまとめたもの。
    • ステージ6以降のリズムゲームは、それまでのリズムゲームの高難度バージョンとなっている。
    • リズムゲームの種類は、リミックスやバージョン違いを省いて大別すると25種。
  • プレイ評価について
    • 各リズムゲーム終了後、一言寸評と4段階のプレイ評価(「やりなおし」「平凡」「でも平凡」「ハイレベル」)と、評価に応じた一枚絵および一文が表示される。
      • 評価「平凡」以上で次のステージが登場。「ハイレベル」を獲得したステージにはメダルがつく。
      • やりなおしの結果になっても、上手かった所があればそこを褒めてくれる。
  • リズムゲームを遊ぶと、「ノリ感」というパラメータが上下する。
    • 本作はステージごとに細かいスコアが残るような仕様はないが、最近のプレイにおいて入力タイミングが完璧に近いほどこの値が上昇する。
    • 採点基準はゲーム中では明かされておらず、目安程度のアバウトな存在に留まっているが…?
  • ゲームごとに舞台や登場キャラといった設定もそれぞれで異なり、個性的な世界観を作り上げている。
    • かわいいキャラがリズムに合わせて動くものもあれば、『メイド イン ワリオ』のようにシュールでヘンな内容のものもある。
    • 詳しい設定は語られないが、クリア後の一枚絵や一文で登場キャラのその後の展開も描かれており、簡潔ながら各ゲームの世界観を楽しみやすい。
    • いくつかのリミックスでは、各リズムゲームのキャラが新しい服装や髪型になっていたり、別のキャラに差し替えられていたりもする。

おまけ要素

  • 上述通り、リズムゲームで評価「ハイレベル」を達成すると、リズムゲームメダルがもらえる。これを集めることでおまけステージにおけるミニゲームなどのおまけ要素が解放される。
  • 時折「パーフェクトキャンペーン」がクリア済みのゲームのいずれか一つで実施され、その時にノーミスクリアを達成すると更に別の特典がもらえる。
  • メダルを集めて開放されるミニゲームには、入力に応じて音が出る「リズムおもちゃ」、ハイスコアが記録される「エンドレスゲーム」*1がある。
  • リズムを刻む楽器の代表格と言えるドラムセットを、GBAのボタンでまるまる演奏できるモードを収録している。
    • メダルを集めることでお手本どおりドラムを叩く「ドラムレッスン」が解禁されていく。100点満点とランク付けで採点されるが、最高の100点Sランクを出すのは至難の業。
    • スタジオ(いわゆるサウンドテスト)ではゲーム中の楽曲を聴くだけでなく、その楽曲に自分でドラムを合わせる「ドラミング」をすることができる。パーフェクトキャンペーンをクリアすることで、ゲームのBGMや色々な音色のドラムセットがここに追加されていく。

音楽ゲームとしての特徴

本作は音楽ゲームの定番となった「流れてくる譜面に合わせて曲を演奏する」形態を採用していない。
「曲にノってリズムを刻む(規則性のある連続した音の流れを作る)」事を重視し、数パターンのリズムを使い分けて攻略するようなゲームデザインとなっている。

特徴的なのは、メロディを刻むような操作はまったくなく、複数のリズムを同時にこなす(いわゆる「混合フレーズ」)ステージも極めて少ないが、
逆に目視確認で入力するのはとてつもなく難しいステージが多い事が挙げられる。そればかりか画面にあからさまな目隠しを被せてくるステージも随所に存在する。

譜面をこなすテクニックではなく、あくまでも「リズムにノる」事にフォーカスを当てたゲームだと言えるだろう。


評価点

  • 1ゲームあたりの所要時間は1~2弱分程度とやや短い。プレイヤーの入力を要求する回数(音ゲー的にいうと「譜面の密度」)も比較的少なく、ボタン数の多くなく、合間の時間に遊ばれることもある携帯ハードに合致している。
  • これまでサウンドに関して厳しい評価が度々聞かれたGBAだが、その最後の任天堂作品で音楽ゲームというだけあり、音質は妥協やハードの足枷などはほぼ全く感じさせない。MOTHER3とともに、ニンテンドーDSはおろか据え置き機にすら劣らないとも思わせるサウンドを搭載している。
  • プレイヤーの入力に対する画面上の見た目の変化が面白い。アニメーションにはキレがあり、『メイド イン ワリオ』テイストの残るシュールな世界観やかわいらしいキャラクター*2と曲調との相性も良く、ボタンを押す事が単純に楽しいというシンプルな魅力に溢れている。
    • ステージの例を以下に示す。これら全てが、テンポもノリも良いステージ曲のリズムに合わせてボタンを押すだけで操作できる。
      • 「リズム脱毛」
        やけに濃い顔をした野菜にヒゲが生える。生えたリズムと同じリズムでヒゲを抜いてあげよう。巻き毛は長く押さえないと抜けない。
      • 「しろいおばけ」
        あるお宅の塀からおばけがひょこひょこ顔を出している。7拍刻んだ後8拍目で塀の間を駆け抜けるので、タイミングに合わせて弓で退治。矢が命中するとドアが開いて家屋に吹っ飛ぶ。曲が進むと顔を出さなくなって音が消えたりもする。
      • 「ポリリズム」
        工場のラインで「赤いモノ(詳細不明だが、ミスると爆発する)」を運搬するゲーム。ラインには何故か所々に穴があく(理由不明)が、方向キーとAボタンを押すとラインが上下し、上を転がる赤いモノを跳ね上げて穴を飛び越える。2ライン同時操作で難易度は高め。
    • ゲームによっては、「成功」「失敗」の他に「ぎりぎりセーフ」「ギリギリアウト」にもアニメパターンが用意されている。
    • ゲーム中に表示される画は全体的にシュールなので、初見では何をすればいいのかわからなかったり、画面にまどわされたりすることもたまにある。それもまた本作の醍醐味。

問題点

  • リズムゲーム「クイズ」
    • 中盤で登場するリズムゲーム。本作の中でも最も異色といえる内容で、急に別ゲーをやらされるのでプレイヤーからの不評が多い。
    • BGMは無く、司会者がボタンを連打した回数を当てるというルール。全8問。
      • 司会者の連打回数を数えるのは困難なので、普通にやる文には司会者の「連打のリズム」を覚えて、プレイヤー側もそのリズムと同じようにボタンを叩くことになる*3。また、司会者の連打回数はある程度のランダム幅がある。
    • どちらかと言えばおまけゲームの一つとして収録されるような内容のゲームであり、実際おまけ要素の一つとして、このクイズのエンドレス版が存在する。…それなら尚更、本編で強制的に遊ばせなくてもいいのでは。
    • 後々の「リミックス」でもこのクイズが登場するが、そちらでは普通にBGMが流れているので音楽に合わせてボタンを押す楽しさがあるし、連打回数も少ないので特に問題になるほどではない。
  • そもそも難易度があまり高くない事もあって、ボリューム不足がしばしば指摘される。「定価を高くしてもいいから増量希望」「すべてのリズムゲームに上位ステージがほしかった」という声も。
    • メダルを集めて解放する一部のゲームのみにしかスコアアタックがない点なども不満点として挙げられやすい。
    • ただし、さすがにパーフェクトキャンペーンで楽をする方法はなく、全てのおまけ含む全要素を解放するハードルまで低いわけではない。
  • パーフェクトキャンペーン時を除き、ノーミスを達成してもゲーム中の変化が特に無く達成感が薄いので、パーフェクトを目指そうというやり込み甲斐に欠ける。
    • ノーミスを達成してもクリア時の評価は「ハイレベル」と何も変わらない。またゲームにもよるが、パーフェクト入力に成功したかどうかが分かりにくく、見た目の変化などの違いがほとんど無いので、入力タイミングがズレてパーフェクトに失敗しても、そのことに気付きにくい。
      • パーフェクトキャンペーン時に限り、ノーミスが継続していることを示すハートマークが表示されるので成否判定は分かりやすい。しかしパーフェクトを達成したリズムゲームは二度とキャンペーンに挑戦できないので、このハートマークを表示してプレイすることもできなくなる。
  • 一部ボーカル付きの曲*4などは、楽曲提供者本人(つんく♂)の作風が大きく前に出ている。ここに好き嫌いが出たり、敬遠される理由にもなったり。

総評

今や世に音ゲーは数多く存在するが、本作は特に操作の簡単さが抜きん出ている。これに見た目の面白さが加わり、シンプルな魅力がウリの音ゲージャンルにおいて地味ながら大きな存在感を示している。
曲にノリながらボタンを押す。それだけの単純なことで楽しいのだと改めて気づかされてくれる。
音ゲーが一部のマニア向けにガラパゴス的な進化を進め、初心者お断りのニッチなジャンルになっていく中、ほぼ誰でも価格相応かそれ以上に楽しめるという「万人向けゲーム」の鑑のような作品として、本作はGBA有終の美を飾ったと言えるだろう。


余談

  • 本作の開発にあたって、任天堂側のスタッフはつんく♂本人からダンスレッスンを受けることになった。
  • 上述どおりGBA最後の任天堂作品。その事もあってか取り扱い店が限られてしまい、入手しにくい時期もあったといわれる。
  • 第10回(平成18年度)文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門優秀賞受賞。2007年にはセガによってアーケードゲームとして逆移植された(Wikipedia「リズム天国」項より)。
  • 「曲にノってリズムを刻む」仕様上、難易度は上がるものの視覚情報がなくてもクリアできる。全盲で全曲パーフェクトを達成したプレイヤーも存在する。(産経ニュース)
    • 初代故に「ナイトウォーク2」など画面を見なければ絶対に分からない物もあるが、全体を通して「ノリがあれば遊べる」というスタンスはシリーズを通して受け継がれている。
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最終更新:2023年10月17日 04:23

*1 おまけ専用のミニゲームの他、本編収録のリズムゲームのエンドレス版もある。

*2 『メイド イン ワリオ』からもオービュロンステージに出てくる「うちゅうウサギ」がゲスト出演している。

*3 連打回数さえ合っていれば良いので、厳密には司会者と全く同じリズムやテンポで入力する必要はない

*4 本作においては時東ぁみ、久礼(田中)聡史によるものが収録されている。なお時東は後に事務所移籍を経て「トーキングブンブン」名義として歌手活動を再開。つんくと袂を分った。