初音ミク and Future Stars Project mirai
【はつねみく あんど ふゅーちゃー すたーず ぷろじぇくと みらい】
概要
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『初音ミク』をはじめとする音声合成ソフトウェア、いわゆるボーカロイド(VOCALOID)をモチーフとしたリズムアクションゲーム。
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ディンゴが製作した『初音ミク -Project DIVA-』シリーズに対して、本作はセガ社内のチーム「SEGA-AM2」が製作にあたった。
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PV上で歌唱・ダンスする3DCGモデルは、ディフォルメフィギュア「ねんどろいど」を元に作成されている。
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なお、ボーカロイド(VOCALOID)という言葉は、本来はヤマハが開発した音声合成技術の呼称だが、この記事では「クリプトン・フューチャー・メディア社の音声合成ソフトウェア『キャラクター・ボーカル・シリーズ』および関連作品に登場するキャラクターたち」という意味で使用する。
ゲームシステム
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立体視対応のPV映像を背景として、円周状の「リズムサークル」が表示される。この上には「A」「B」「X」「Y」「☆」と明記された「マーカー」が配置されている。そして円周の上を時計の秒針のような「針」が一定速度で時計回りに進んでいく。針がマーカーに重なった瞬間に、対応する3DS本体のボタンを押す(☆はどのボタンでも可)。長押しもあり。
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針が一周するとリズムサークルは消去され、別のサークルが新しく描き直される。
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うまく操作を続けると「レベル」が上がり、マーカー配置が少し難しくなっていく。レベルがMAXになると「チャンスサークル」が出現。この上のマーカーは全て☆印となる。さらにミスなくチャンスサークルでの操作を続けると「SPマーカー」が出現。このSPマーカーを全て取得すると、高い評価と多くの「ミラポ」(ゲーム内通貨)がもらえる。
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難易度は全曲とも、「ラクラク」「ホドヨク」「トコトン」の3段階。
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「ラクラク」:出現するアイコンはAとBのみ。しかも一つのサークル内に出現するアイコンはどちらか1種類に統一される。
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「ホドヨク」:ABXYすべてのアイコンが出現。一つのサークル内に出現するアイコンは最大2種類。
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「トコトン」:ABXYすべてのアイコンが出現。一つのサークル内に出現するアイコンは曲によって3~4種類。
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タイミング評価などは『DIVA』と異なり「COOL」「OK」「BAD」「MISS」の4種類に分類される。
特徴および評価点
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3DCGでダンスを踊るボーカロイドたちは、デフォルメフィギュアシリーズ「ねんどろいど」をベースとしている。
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ねんどろいどのモデリングの監修は、フィギュアメーカーであるグッドスマイルカンパニーが行った。ねんどろいど体型のボーカロイドたちの愛らしいダンスを、立体視で堪能できるのが大きな魅力である。
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一説ではピクセル単位で監修を行ったとか。その甲斐あってか正に「動くねんどろいど」である。
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2.5頭身にディフォルメされた体型なので顔が大きい。そのためコロコロと多彩に変わる表情が視認しやすく、いっそう楽しく可愛らしいPV映像となっている。
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衣装も各キャラごとに多彩なものが用意されている。特定楽曲と対応したものはその曲のデフォルト衣装として設定されているが、ゲーム中に獲得できる「ミラポ」を消費して購入すると、他の曲や「マイルーム」でも着せることができるようになる。
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収録曲数は全21曲。主題歌として本作のために作られた完全新曲「ゆめゆめ」「on the rocks」を収録。それ以外の曲はニコニコ動画などで人気の高い既存曲である。
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すべての曲が、オリジナルそのままのフルサイズで収録されている。
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総数は少ないが、人気曲、定番曲を押さえつつも極力『Project DIVA』シリーズとかぶらないようにという配慮が感じられるラインナップである。
歌詞のドラマ性が高くフルサイズでないと収録困難な「悪ノ娘」「悪ノ召使」、GUMIと他ボーカロイドのデュエット曲「マトリョシカ」「ハッピーシンセサイザー」など、『DIVA』未収録の楽曲をいくつも収録。
また「妄想スケッチ」「深海少女」などのように、現在は『DIVA』シリーズでも遊べるが収録時期は本作の方が先だったという例も多い。
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本作発売時点で『DIVA』に先行収録されていた曲は「クローバー♣クラブ」と「ファインダー」の2曲。どちらもフルサイズ収録であり、PV背景や衣装も本作独自の物なので、新鮮な気持ちで楽しめる。
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収録曲のうち9曲は、ねんどろいどモデルのダンスではなく固有ムービーのPVとなっている。いずれも素晴らしい内容で好評。
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本作のために新規に製作されたPVもあれば、オリジナル(元祖)PVに手を加えて3D化した物もある。
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収録曲のうち6曲は「ボーカルチェンジ」が可能。PVのねんどろいどモデルが選んだキャラに変わるだけでなく、歌声もちゃんと選択したキャラのものに変わる。中には歌詞まで変わる曲もある。ただし曲ごとに設定された対応キャラにしか変更できない。
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ボーカルチェンジ機能を解禁する条件は「すべての曲をクリアしてエンディングを見る」と「その曲を難易度「ホドヨク」以上でクリアしたことがある」の両方を満たすこと。ボーカルチェンジ対象キャラは、「ホドヨク」以上をクリアのたびに1人ずつ解禁されていく。
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『DIVA』の「固有ムービーPV曲を除く全ての曲で、全てのキャラに自由自在に変更できるが、歌声は変化せずデフォルトのまま」という仕様と比べると、どちらもそれぞれ違った魅力があるといったところか。
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AR(拡張現実)機能を採用。ソフトに同梱されているARカードを使用して、現実の風景の中でねんどろいど体型のボーカロイドが動きまわったり、ゲーム本編と同じダンスを披露する姿を鑑賞することができる。本体カメラで写真撮影してSDカードに保存することもできる。
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ダウンロード版ソフトにはARカードは付属しないが、公式サイトでpdfファイルとして配布しているので、自分で印刷して使用する。
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各ボーカロイドを「マイルーム」に住ませて、気ままに生活する姿を眺めたり、簡単なコミュニケーションをとって遊んだり、不意に発生する各種のイベントを楽しんだりすることもできる。
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各種イベントは現実のイベントが発生するたびに起こるためクリスマスやお正月はもちろん所有者の誕生日にはケーキで祝ってくれたりもする。
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特にWAのルームはイベント発生時に背後の掛け軸の文字がそのイベントにちなんだ文字に変わるため、イベントが起きれば要チェックである。
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セガでミクが絡むゲームとしては珍しく、インターネット社製のボーカロイドであるメグッポイド(GUMI)もキャラクターとして収録されている
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先述のように、クリプトン製ボーカロイドとGUMIのデュエット曲が2曲収録されている。どちらも固有ムービーPVのため、ねんどろいどモデルのGUMIは登場しない。
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3DS本体の立体視機能をONにすると、リズムサークルがPVよりも手前に飛び出して見える。人によっては、立体視にした方がサークルとPVが混ざることが少なくプレイしやすいかも知れない。さらにPV自体も全て立体視対応なので、重層的な3Dゲーム映像が体感できる。
賛否両論点
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リズムゲームのデザインに関して
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前述の通りサークル式なのだが良く言えばわかりやすい、悪く言えば単調なデザインであり、動きが少ない。
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特にラクラクは「一つのサークルに一つのボタンしか配置されない」ため、サークルが切り替わるまでAボタンもしくはBボタンを押すしかない。
そのためラクラクをプレイしてつまらなくて飽きたという声も少なくない。
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しかしトコトンになるとボタンや譜面、チャンスサークルに工夫が持たれ、リズム良く押す事や連打、初見殺しなどバリエーションに富んでいる。
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そのため音ゲーでありながらスルメゲーと揶揄される事もある。
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先述したが、収録曲数が21曲というのはフルプライスの音ゲーとしては少ない。曲やPVが魅力的なだけに、もっと数が欲しかった、物足りないという声があがった。
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ただし全てオリジナルどおりのフルサイズで収録されており、ボーカルチェンジ機能もあることも考えると、単純に他の音ゲーと比較することは難しい。
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フルサイズ収録ゆえに1曲が長く、お手軽ではない。常に長丁場のプレイとなるので集中力を切らさないことが要求される。
問題点
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リズムゲーム中でOK判定の時の効果音が変
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COOLの効果音は小気味よく「タンッ」といった音なのに少しでも判定がずれOK判定になると「ぼすっ」と音がする。
失敗したという気持ちが一層強くなり、パーフェクトを目指していたプレイヤーをドン底に突き落とす。……とは言いすぎかもしれないが、普通にプレイしていても気持ちはよくない。
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オプションで効果音を変えられる。他の効果音は少しはマシであるが、似たような落差はある。
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またリズムゲームでの判定にも不満が多い。体感してマーカーが重なってからちょっと遅めにボタンを押さないとCOOL判定にはならない。
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最高ランクのSSを出すにはすべてをCOOL判定にしなければならないので、「フル収録」「判定」「効果音」の3つがパーフェクト達成に立ちはだかる事になる。
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ボーカロイド間の格差が大きい。
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特にKAITOは収録されている曲が2曲のみであり、ひとつはMEIKOとのデュエット曲「on the rocks」、もうひとつはミク曲「SING&SMILE」のボーカルチェンジ版のみという状態である。
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その他の同社ボーカロイドはボーカルチェンジを含めれば3曲以上あり、2曲という数はゲスト扱いのGUMIと同数である事が、不遇の印象になお拍車をかける。
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すれちがい通信に対応しており、ニコニコ動画のようにPVにコメントを残す事が出来る。
この仕様に関しての個人の嗜好はさておき、一度のすれ違いでは1つのコメントしか交換されないため俗に言う「AA」や「弾幕」が1つしか表示されないという寂しい事になる。
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ゲーム内通貨(ミラポ)の使い道が乏しく、各種コスチュームとすれちがい通信時のコメントにしか使い道がない。
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隠し要素の解禁が難しい
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今作はプレイしていくうちに隠し要素が解禁されるがその条件が厳しい。
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隠し要素とその条件
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はちゅねミク
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ミクの顔をルームやゲーム内ではちゅね顔にすることができる。条件は「全曲クリアしてエンディングを見る事」なのでこれは簡単にできる(何故か次回作では難しくなった)。
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みくりすたる
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コスチュームの一つ。条件は「難易度問わず1曲SSランクを出す事」。前述の通りSSランクを出すのはラクラクでも中々骨が折れる。
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ヒーローKAITO
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わかりやすく言えば「キリっとした顔のKAITO」。はちゅね顔と同じくKAITOの顔を変えることができる。
条件は「エンディング中タッチ画面に表示されるサイリウムをタイミング良く振り続ける」事。タイミング良く振ればサイリウムが光るがどのタイミングで振ればいいかわからず、どの程度成功してるかの進捗率も表示されないのでこれまた骨が折れる。 成功すればEDが終わった時に変化が出るのだが、結果が出なくてガッカリという事も。
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Miiに変身
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全コスチュームを買えば解禁できる。みくりすたるを出せれば問題ないが、この隠し要素は条件より内容そのものに問題がある。
その名の通り3DSに登録しているMiiに変身できるので、Mii(自分)をデュエット曲で踊らせようと考えたプレイヤーは多いだろう。 特に「逆さまレインボー」という曲はダンスの中にほっぺにキスをするシーンがあるので(邪な)期待をしたプレイヤーもいただろう。 しかし実態は
デュエットの曲は2人ともMiiに変わる
ので自分が自分にキスをすると何とも言えない状態に。 早い話が「誰得」である。
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総評
『DIVA』シリーズとは違った面白さを提供しようという意欲とオリジナリティが色濃く感じられる作品。『DIVA』がやってないことや、できないことを数多く実現している。
特にねんどろいどモデルのキャラクターは大好評で、幅広い層のファンを獲得した。
しかし一方で、リズムゲームとしての快適さ・遊びやすさや、全体的なボリュームの面では不満の声も多く上がり、今後のさらなるシリーズ展開に期待が寄せられる作品となった。
余談
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ニコニコ生放送での公式宣伝番組に出演したスタッフによれば、企画段階では『DIVA』と同じシステムを採用することも検討されたが、『DIVA』の画面表示が3DSの立体視と相性が悪いものであったため、別システムの作品にしたらしい。
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「ねんどろいど」をCGモデルベースとして採用した理由については、可愛らしいディフォルメ体型のCGモデルを模索して試行錯誤していたら、どんどんねんどろいどに近づいてしまったので、公式にタイアップを結ぶことにしたと語っている。
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マーカーには色が付けられているが、「Aは赤、Bは青、Yはピンク、Xは緑」。つまり3DSのゲームなのに、PSPなどのソニー製ゲーム機と同じ色配置である。
これは『DIVA』に慣れた人がプレイしやすいようにという配慮なのだが、慣れたプレイヤーほど「X(エックス)と×(バツ)を間違える」という事がしばしば見られる。
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残念ながら今作ではボタンの色をオプションで変更することができない(『2』でもデフォルトは同じ配色だがオプションで変更可能)。
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公式サイトの体験版の紹介ページの注意書きにはご丁寧に「※プレイ可能な回数は30回です。39回ではありませんのでご注意ください」という表記がある。
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今作のプロモーションのために、等身大ディフォルメ体型の着ぐるみ初音ミクが作られた……のだが、そのなんとも言えない姿のため「ミクダヨー」という名前がファンからつけられてしまった(後に公式に逆輸入)。
その後いろいろとあり、現在では「ミクダヨー」は初音ミク関連のリアルイベント等で大活躍しつつも、ミクとは別個のキャラクターとみなされている印象が強い。
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2013年11月28日、続編『初音ミク Project mirai 2』が発売。
最終更新:2021年12月18日 19:10