新・光神話 パルテナの鏡

【しん ひかりしんわ ぱるてなのかがみ】

ジャンル アクションシューティング
対応機種 ニンテンドー3DS
発売元 任天堂
開発元 プロジェクトソラ
他、協力数十社
発売日 パッケージ版:2012年3月22日
ダウンロード版:2013年10月31日
定価 パッケージ版:5,800円
ダウンロード版:4,790円
プレイ人数 1人(通信プレイ時2~6人)
レーティング CERO:B(12歳以上対象)
判定 良作
パルテナの鏡シリーズ
光神話 パルテナの鏡 / Of Myths and Monsters / 新・光神話パルテナの鏡

概要

前作から実に25年ぶり*1となる完全新作。開発は桜井政博氏率いるプロジェクトソラが担当。
ジャンルは三人称視点のアクションシューティングに変更され、システムもほぼ一新されている。

キャラクターデザインは2008年発売の『大乱闘スマッシュブラザーズX』登場時のものに準じている。

グラフィックがリアル調になったのに併せて、シナリオもよりシリアスになった……と思いきや、 前作の特徴であった、ギリシャ神話の格調高さにそぐわぬギャグ表現もさらに拡張されている。
シリアスなあらすじにギャグ的演出を多数盛り込むゲーム性を得意とする、桜井作品ならではのコメディテイスト全開の作風が特徴。

ストーリー

かつて悪逆の限りを尽くしていた冥界女王メデューサが25年の時を経て復活した。

"冥府軍"を率いて地上界、天界へと侵攻を開始するメデューサ。

これに対して立ち上がるのは、かつてメデューサと対の女神だったパルテナと、その使いであるパルテナ親衛隊長ピット。

飛べない天使が女神の奇跡を翼に受け、冥府軍を浄化するために天界から飛び立つ。

(公式サイトより引用)

基本動作

  • 基本的な操作方法はDSの『メトロイドプライム ハンターズ』と似ている。基本動作はスライドパッドで「移動」、タッチペンで「狙い」、Lボタンで「攻撃」の3つ。
    • 照準の移動およびカメラ操作をタッチペンで行い、敵に狙いを定めて攻撃という流れ。攻撃は射撃と打撃の2種類が存在。
      • 射撃はLボタンを押しっぱなしでの「連射」と、一定時間射撃せずにいると発射可能になる「溜め射撃」の2種類に分かれる。
      • 敵に近づくと照準の形が変化し、この時Lボタンを押すと射撃が「打撃」になる。射撃または打撃でしか倒せない敵もいるので使い分けが大切。
    • キーコンフィグで、ボタンでも操作できるように変更可能。

神器

  • 本作におけるピットの武器。神器には兵装種と呼ばれる9種類のカテゴリがあり、それぞれに12種類ずつ神器が存在する。神器が変われば攻撃内容だけでなく運動能力なども変化する。
    • 兵装種の名称と大まかな性能は以下の通りだが、カテゴリにこだわらない大胆な性能設定がされた武器も少なくないのが本作の幅の広さを象徴していると言えよう*2
    • 神器自体にも射撃/打撃の威力ボーナス(それぞれ★の数で表現される)や様々な補助効果(スキル)による付加価値があり、「価値」という数字によってその武器の強さが示されている。高い価値の神器ほど★の数やスキルの数が多いが、多くのハートを支払ったり、より高いホンキ度で遊ばないと手に入らない。
  • 神器の入手方法は、シングルプレイの宝箱から、マルチプレイでのご褒美、手に入れたハートを捧げて授かる(買う)、宝物庫でのアンロックなど様々。中には宝物庫の条件を満たさないと解禁されない神器もある。
    • 異なる2つの神器を融合すれば、新たな神器を作り出せる。融合で作った神器は融合元の神器の星の数とスキルをある程度受け継ぐ。但し、理想の神器を作るにはそれなりにコツが必要。
    • また、所持している神器を「タネ」にし、すれちがい通信で配布できる。神器はタネにしてもなくならない。入手したタネはハート(本作の通貨)を払って神器に戻したり、ハートに還元したり、タネ同士を融合して新たな神器を生み出したりできる。
+ 神器の種類一覧
撃剣
射撃と打撃のバランスが取れたオールラウンダーな性能が基本。そのため癖が少なく、初心者でも扱いやすい。
狙杖
遠距離戦に特化したものが多く、射程が非常に長い。さらに遠距離で当てるほど威力が上昇するが、弾が殆ど誘導しないため、正確な射撃の腕が求められる。近距離戦は苦手。
射爪
機動力を活かした接近戦が得意。打撃コンボの回数が他の神器に比べて多いものの単発火力は低く、コンボを最後まで当てきる事が重要となる。射撃のリーチは短いが、連射性能に優れる。
神弓
狙杖同様、遠距離戦が得意。弾速が早めで誘導性に優れるが、狙杖に比べると射程と威力は劣る。連射性能は低い。
破掌
連射と誘導性に優れ、初心者でも攻撃を当てやすい。そのかわり、リーチは短めで威力も低め。
巨塔
連射で弾が出ないが敵弾をかき消せる。更に、溜め射撃は壁を貫通する。射撃/打撃共に高威力だが、攻撃動作と移動は遅く、溜め時間が長い。
爆筒
溜め射撃は敵や地形にあたると爆発を巻き起こし、周囲の敵を巻き込む。敵が群がっている所に撃ちこむと効果的。移動は遅め。
衛星
動きが軽快で、空中戦では連射中でも移動速度が落ちない。射撃の威力は遠距離になるほど増す。
豪腕
接近戦に特化した神器で、射爪と比べると機動力で劣るが火力で勝る。射程は非常に短い。

奇跡

  • 「ひとりで」の地上戦及び「みんなで」で使用可能となる、プレイヤーをサポートするための特殊能力。使用回数が定められており、0になると使えなくなる。
    • 後述のマルチプレイではヤラレチャッタ時に、使用回数が一定量回復する。回復量は価値の高い神器ほど多いが、奇跡によっては使用回数が回復しないものもある。
  • 奇跡のセットは6×6の36マスに、ロックマン エグゼシリーズの「ナビカスタマイザー(ナビカス)」のようにパズルのピースの様な各種奇跡を配置していくというもの。効果が強力な物ほど、そして同じ奇跡でもレベルが高いほどスペースを圧迫する。
  • 奇跡は「ひとりで」の宝箱や、「みんなで」のご褒美として入手可能。中にはひとりで専用、みんなで専用の奇跡も存在し、それらの奇跡はそれぞれのモードでしか入手できない。
  • パズルを考えるのが面倒な場合は、最も無駄の無いパターンで自動的に奇跡を組み立ててくれる「おまかせモード」がある。これだけは欲しいという特定の奇跡だけを置いて、隙間だけをオートで詰めてもらう事も可能と至れり尽くせり。

シングルプレイ

  • 所謂ストーリーモード。全25章で、一度クリアした章は何度でも挑戦できる。
  • 基本的にはレールシューター形式の「空中戦」で敵地に向かい、その後箱庭型アクションシューティングの「地上戦」で最後に待ち受けるボスを撃破するという流れ。但し、一部の章では例外もある。
  • 空中戦、地上戦共に体力が尽きると「ヤラレチャッタ」。体力の回復は空中戦の場合、特定の地点で出現する回復玉で行う。地上戦の場合、回復系の奇跡を使用、道中に落ちている食べ物、神のドリンクを取得、温泉に浸かる等の回復手段が存在している。

空中戦

  • 空中戦には5分間という制限時間があり、どのステージの空中戦も5分ほどで終了する。
  • 地上戦に比べて神器の性能が増すが、連射中は移動速度が減少する。
  • 空中戦でのみ、専用のゲージを消費して強力な「スペシャルアタック」が使用可能。ゲージは2本分存在し、時間経過や滑空姿勢の状態で敵弾をギリギリ回避するといったプレイングで回復する。
  • 暫く攻撃をしていないと滑空姿勢になる。この間は移動速度が向上するほか、面積が小さくなり敵弾に当たりにくくなる。
  • 回避行動として、スライドパッドを倒した後、すぐに反対方向に倒すという操作でローリングが可能。敵弾を弾く効果がある。

地上戦

  • スライドパッドをゆっくり倒すと歩き、勢いよく「弾いて」倒すとダッシュする。ダッシュは各種攻撃と組み合わせる事も可能で、暫く続けるとバテて一定時間行動不能になる。
  • タッチペンを左右にスライドすればカメラの移動が可能。
  • 地上戦では奇跡が使用可能となる。下画面の左下に各奇跡のアイコンが2~3個ほど表示されており、タッチペンの左右スライドで表示する奇跡を切り替え、アイコンタッチでその奇跡を使用する。
  • 敵の攻撃に当たる直前にスライドパッドを弾くと「回避」、敵を照準に収めながらスライドパッドを横に弾くと、敵を中心に弧を描いて移動する「回り込み」ができる。回避は連続で使用すると隙が生じて失敗しやすくなる。

悪魔の釜

  • シングルプレイにおける難易度調整機能。章開始時にハート(本作の通貨)を賭ける事で「ホンキ度」の調整が可能。自分で調節できるのは勿論、プレイ内容に応じてホンキ度を自動調整してくれる機能も存在。
  • ホンキ度は2.0を基本とし、0.0=9.0の範囲を0.1単位で自由に変えられる。2.0から上げたり下げたりするときにはハートを賭けなくてはならない。
    • ホンキ度が高いほど敵が強くなり、賭けるハートの量も増える。その分敵を倒した時に得られるハートは増加し、神器や奇跡も強力な物が出やすくなる。
      • 但し、途中でヤラレチャッタ時は賭けたハートとホンキ度を強制的にある程度失う破目になる。コンティニューを繰り返せば攻略はしやすくなるが報酬の質が落ちるし、極論ノーミスでなければ指定したホンキ度をクリアした事にすらならない
      • とはいえ、同じホンキ度でも後半にある難しい章ほど報酬の質が高くなりやすい。
  • なお地上戦では、一定以上のホンキ度でプレイしていないと開かない「ホンキ度扉」が存在する。
  • スマブラfor3DS/WiiUのシンプルモードでも、殆ど同じシステムが戦士の天秤という名前で採用された。

マルチプレイ

  • 通信機能を用いて、フレンド又は不特定多数のプレイヤーと最大6人で対戦ができるモード。ローカル通信、Wi-Fi通信の両方に対応している。操作体系は地上戦と同じ。
  • ステージはランダムで決定され、対戦後にご褒美として神器や奇跡を入手できる事がある。但し、何もしないプレイヤーはご褒美を貰えないようになっている。
  • ルールは3vs3に分かれてチーム戦を行う「天使の降臨」、全員が敵同士になる「バトルロイヤル」の2種類が存在する。
    • 天使の降臨では、ヤラレチャッタ時に神器の価値に応じてチーム力が減少、0になると最後に倒されたプレイヤーが天使となって降臨。天使の体力を0にすると勝利。
      • チーム力の減少量は、神器の価値の大きさに比例する。また、天使の神器はランダムで決定される。
    • バトルロイヤルでは、最終的にスコアが最も多かったプレイヤーの勝利。スコアは相手を撃破すると加算され、撃破されると下がる。得られるスコアは撃破した相手の神器が高価値なほど大きい。

その他

  • やり込み要素として「宝物庫」が存在。条件を満たすとパネルが解禁されていき、武器や奇跡、音楽などのご褒美が貰える。但し条件を満たしてもご褒美が何もないというケースもある。
  • 収集要素として、スマブラでいう所のフィギュアに相当する「おドール」が存在している。本作用に用意されたARカードを使った遊びも可能。
  • 手に入れたハートをパルテナ(条件を満たすとナチュレにも)に捧げる事ができる。ちなみに見返りは全くありません*3

評価点

3DSを最大限生かしたゲームデザイン

  • カメラ移動とエイミングをタッチペン1つで行うといったゲームシステムは「移動」「狙い」「攻撃」の3つの軸に象徴されるようにシンプルでわかりやすくまとまっており完成度は高い。岩田社長曰く「スマブラを3Dにしたらこんな感じになるのかと言う感じ」。
  • 空中戦はシンプルなシステムだが、5分間で各ステージとも3DSの特徴である3D立体視を使った様々な演出が盛り込まれており、見応えのある映像が繰り広げられる。

爽快でスピーディなアクションシューティング

  • 地上戦は飛び道具を連射しながら回避や回り込みを駆使して立ち回り、隙を見て強力な前ダッシュ攻撃や近接攻撃を叩き込むなど、『電脳戦機バーチャロン』と似たようなアクションの快感が味わえる。

キャラクターの魅力

  • 基本的に明るくユニークな性格付けがなされているキャラが多く、敵味方問わず全体的に活き活きとしている。
  • 特にパルテナは「美貌とお茶目な可愛さを兼ね備えた女神」という任天堂の中でも珍しいキャラであり、ピットとの関係も相まって好評の声が多い。

3DSのゲームの中でトップクラスの3Dグラフィック

  • 特に空中戦の美麗さと派手な演出は目を見張るものがある。

バラエティ豊かな内容

  • 1人用は全25ステージ。それぞれのステージに場面も展開も登場する敵やボスも大きく異なっている。
    • 難易度についても悪魔の釜による事実上91段階の難易度調整のおかげで、初心者から上級者まで幅広く楽しめる。
      • ホンキ度を下げればアクションゲームやシューティングゲームに不慣れな人でも安心。逆に高難易度は相当に幅広く、最高クラスに近づくとゲームの腕は勿論、理想に仕上げた神器を持ち、奇跡を計画的に使ってようやくクリアに手が届くレベル。ザコ敵1匹ですら脅威となりかねない。
  • 神器の数、奇跡の数共に豊富。「異なる価値観のぶつかり合いが対戦の面白さ」と桜井氏が自ら語った通り、これらの組み合わせにより様々な戦術が取れるのも評価点。
    • 神器は前述の通り融合を繰り返していって、ある程度自分好みの性能にカスタマイズ可能。自分なりの最強を求めていくというのも本作の楽しみ方の1つであろう。
    • マルチプレイでは強力な神器ほどヤラレチャッタ時の失点が大きいチームコスト制を採っている。対戦ゲームにありがちな、強力なキャラ(本作では神器)一辺倒なバランスに比較的なりにくいのも特徴。考えなしに高価値な神器を使うのではなく、自分の腕に見合ったものを使うのが大切だという事である。特に天使の降臨。

テンポの良さ

  • ムービーが少な目で(更にスキップ可能)、ゲーム中の目的や操作説明は全て下画面の会話内で完結している。遊びのテンポを壊さない、という桜井氏の配慮が見て取れる。

マルチプレイの放置、切断などへの対策

  • かつて桜井氏が手掛けた『大乱闘スマッシュブラザーズX』のマルチプレイでは、過剰な馴れ合いや切断、ステージの固定化が問題視されていた。本作ではその対策として、何もしないプレイヤーはご褒美を貰えない仕様になっている。
    • それにも拘らず放置するプレイヤーもいるが、これは完全にプレイヤー側の問題といえよう。チーム戦である天使の降臨においては迷惑極まりない話であるが。
  • ステージは毎回ランダムで決定されるようになり、固定化という問題が改善された。
  • 回線が切断された場合、そのキャラの操作はコンピューターが引き継ぐ。

大乱闘スマッシュブラザーズXから似たような要素が引き継がれている。

  • 開発元が大乱闘スマッシュブラザーズXの開発元の1社にして中核であるプロジェクトソラであるため、桜井氏が携わったゲームの要素が伝統的に引き継がれている。
    • おドール←フィギュアや、宝物庫←クリアゲッターなど。おドールでポン←フィギュポンのように、XではなくDXから取った要素もある。
    • なお、本作のピットとパルテナのモデルは大乱闘スマッシュブラザーズXでの描きおろしであった。

BGMのクオリティ

  • 作曲陣が桜庭統、光田康典、岩垂徳行、古代祐三、高田雅史とゲーム音楽業界を代表する人物ばかりで豪華。公式サイトで一部が視聴できるので、聴いてみてはいかがだろうか。
  • 発売から3か月程しか経っていないにも拘らず、「PRESS START 2012」で本作のBGMの演奏が決定した事からも評判の良さがうかがえる。

賛否両論点

天界漫才

  • シングルプレイ中は常にピットやパルテナ、敵の首領などを交えた会話がゲーム中ほぼ途切れずに繰り広げられるのだが、その内容は終始コミカルで、メタ発言、パロディなどのネタが豊富にちりばめられている。たまにシリアスになる場面もあるがラスボス戦でさえ普通にギャグを入れてくる。
    • ストーリー中において一切コミカルな面を見せないのは、冗談抜きにメドゥーサ位しか存在していない*4
    • 前作におけるギリシャ神話にそぐわないギャグテイストをちりばめたコミカルな作風を、時代に合わせて発展させたような内容…とでも評すべきか。
    • コロコロコミックに載っている少年ギャグ漫画のような雰囲気という例えがちょうど近い*5
    • とは言え、普段軽いノリの面々もシリアスな場面ではきっちり締めてストーリーを盛り上げてくれる。普段お茶目さが強調されるパルテナも、メドゥーサに対しては冷酷な一面を見せる等、決してギャグ一辺倒の存在ではない。この差が最も顕著なのが本作のラスボスである。
      • ちなみに、ゲーム中のテキストはディレクターの桜井氏が1人で書き上げている。
  • 3種の神器
    • 第9章でメデューサを倒すために使用するのだが、その後に黒幕が姿を現してからの章では黒幕との初戦までしか使用できない
      • その間を見る限り、使えなくなっているわけではないだろうが…
    • また、メデューサの章も他の神器でも問題なクリアできてしまう。この扱いはどうなのだろうか…
  • 会話内容はゲームのヒント(敵の特徴や特殊操作などの説明)も多く含まれているため聞いて損はないのだが、音声をカットする設定は全ての章をクリアしてからでないと出現しないため、こうした天界漫才のノリが合わない人にとってはプレイそのものが苦痛になる可能性すらある
    • 声を消して、字幕をOFFにすれば、下画面の立ち絵以外は無くなるが、会話以外のボイスが巻き添えになる。
    • 声優は高山みなみ、久川綾、大本眞基子、大塚芳忠をはじめ有名所の実力派声優を揃えており、内容はともかく演技が稚拙で苦痛に感じられる事は無いと言い切って差し支えない。

独特な操作体系

  • タッチペンによるエイミングやカメラ操作は、慣れさえすれば直感的で素早い操作が可能だが、合わない人には全く合わない。
    • 例えるなら、FPSやTPSの照準操作を(ノートPCの)タッチパッドまたはトラックボールで操作するようなクセの強さである。3DSでは「右スティックで照準移動」という一般的なゲームパッドスタイルの操作が不可能なため、このような操作方法にせざるを得なかった面もあるのだろう。
      • 一応ABXYに照準移動を設定する操作方法も可能ではあるが、十字キーで照準を操作するようなものなので当然タッチペンのような柔軟かつ繊細な操作は不可能、さらに最大速度でもタッチペンに劣る*6。一時的に左スティックでの照準操作もできるが、移動と同時に行ってしまうのでとても使いづらい。
      • FPSやTPSは、ゲームパッド操作よりも照準を素早く動かせるマウス操作の方が有利であり、桜井氏もタッチペン操作の優位性を強調しているが、ゲームパッドスタイルに比べると万人向け・ライトユーザー向けの操作方法とは言いがたい。
      • 別売りの拡張スライドパッドを装着すれば解決できるかのように思えるが、拡張スライドパッドに照準移動の操作を割り当てられないのであまり意味がない*7。これは本作の開発終盤になって拡張スライドパッドの話が持ち上がったためである。
      • 拡張スライドパッド前提で左スティックに照準操作、十字キーに移動を設定すればあるいは…と思いきやまさかの十字キーに移動を設定できない問題が立ちはだかる。もっとも、ABXYに移動を設定した場合歩き移動ができず全てダッシュになってしまう。ダッシュにはスタミナを消費するため移動が常にスタミナ管理とリンクしてしまい、仮に設定できたとしても使い勝手が悪いという評価は結局覆せないだろう。
    • 本作には標準で3DS専用スタンドが付属している。スタンドを使わなくともプレイに支障はないが、本体を固定しなければ本体を持つ手への負担が極めて大きくなる。快適な操作は難しい。
      • これを解決する方法としてタッチペンを持つ右手の薬指と小指を本体に挟むという持ち方や、親指で照準を操作する方法も考案されている。
      • 携帯ゲーム機なのに同梱されているスタンドを使用して遊ぶのが前提とされているため、携帯ゲーム機である必要性がないとの指摘もある。ちなみに本作発売当時、据置機のWiiUはまだ発売されていなかった。
  • 奇跡の選択・使用の操作やUIにもやや難あり。
    • 下画面の左下隅に、一度に3つまでしかアイコンが表示されない。画面右側・上側にアイコンを寄せたり、全ての奇跡をまとめて一覧表示するといった具合のカスタマイズも不可能。奇跡の並び順もピースのはめ方などで変化させられず固定されている。
    • タッチペン操作では素早く照準を動かせるという利点があるが、「照準の移動」と「(右手操作による)特殊能力の選択・使用」を同時に行えない*8といった難点もある。そもそもボタン数の少ない3DSではどの道困難な操作だが。

神器「パルテナの神弓」について

  • 本作パッケージにも使われているイラストでピットが所持している神器であり、また『スマブラX』にて衝撃の参戦*9を果たした際もこの神器を使用していたため、ピットと言えばこの神器、と考える人も少なくないだろう。しかしながらこの神器、本作ではエンディング後に最後の宝物庫を解禁し、その上で特定の条件を満たさなければ入手できない。パッケージ絵で大々的にお披露目しておきながらこの扱いというのは流石にいかがなものか。
    • しかも入手条件が「24章を11分以内にクリア」。幸いにしてホンキ度制限が設定されていないので、ホンキ度を最低限まで下げた上で奇跡を駆使して強行突破すればそこまで難しくはない。
    • 神器としての性能は、放った弾が加速していくという性質を有し、更にダッシュ攻撃の威力の代償としてホーミング性能と通常射撃の火 威力が低い上級者向けの*10
      • 一応、のちに発売された「スマブラfor」でも「使いこなすが難しい理由」の解説がある。
      • この尖りまくった性能故に入手難度を高くしたのかもしれないが、パッケージ絵などで神器の象徴のように扱われる神器が初心者お断りの尖りまくった性能・そもそも初心者はタイトルくらいでしか見れないというのも、それはそれでどうなのだろうか。

問題点

視認性の問題

  • 全体的に画面が派手すぎて敵弾が見えにくい場合が多々ある。敵弾の見た目や軌道も多種多様で統一性がないので、咄嗟の対応が遅れやすい。

ステージ構成の問題

  • 各ステージは空中戦と地上戦が必ずセットになっており、それぞれ単体で遊べない。
    • 空中戦は自由度が低く探索要素も無いので、地上戦に比べて遊び甲斐に欠ける面もある。そのためクリア済みステージの地上戦だけを遊びたいといった場合には、毎回5分間の空中戦を強制されるのが余計な要素に感じられるケースもある。
    • 本作の空中戦に相当するゲームジャンル「フライトシューティング」と地上戦に相当する「サードパーソンシューティング(TPS)」*11は、共に「シューティング」と付くものの、本来は全く別のジャンルのゲームなのである。それを不可分な形で1作品に纏めてしまったのだから、地上戦は好きだが空中戦は苦手という意見や、その逆の意見が出てしまうのも当然の結果と言えよう。
      • 本作は対人戦モードなどの存在が示す通り、どちらかと言えばTPSの地上戦がメインのため、フライトシューティングの空中戦がやや浮いてしまう結果となっている。
  • 空中戦特有の問題点
    • 空中戦での自機の当たり判定が分かりにくい。
      • 立体視をOFFにしている時に顕著。
      • 敵弾に関しては誘導する性質を持っているので、大きくかわすのが基本であるというのが前提となっている。しかしその前提を踏まえた上でなお、位置をずらしてかわそうとしたつもりでも敵そのものや障害物にぶつかってしまう事故が割と発生しやすい。
    • ローリングが使い辛い。
      • ローリングの操作方法に難があり、咄嗟に出しにくく連発もできない。
      • ローリングを使わなくても避けられる攻撃と、ローリングを使わなければ避けられない攻撃の見極めが分かりにくい。
    • 画面の左奥で雷光が走ったので右側に避けたが、雷光が此方に到達する時には避けた先が画面右側に来るようになっていたので被弾した、という理不尽なケースも見られる。
    • 空中戦には「跳弾」というテクニックが存在している。これは「滑空状態で敵の弾にかすると弾く事ができ、スペシャルアタックゲージが少し溜まる」というものであり、戦いの記録として回数が計上される他に、これを特定回数行わないと開放されない宝物庫もある。
      • が、説明書でもチュートリアルでも一切言及されない。公式HPの動画「ちょいテク集」で紹介されているが、ゲーム内だけでは跳弾のやりかたどころか、その存在すら把握できない。
      • そもそも「跳弾」という名称は誤解を招きやすく*12、他に「反射」など適切なネーミングはなかったのか疑問である。
  • 地上戦特有の問題点
    • マルチプレイを前提とした設計に合わせてか、全体的に周囲の状況を把握しにくい仕様になっており、目視に頼るしかない部分が大きい。
      • カメラがピットに寄りすぎで、周囲を見渡しにくく、敵に囲まれた時などの複数の敵との混戦では状況の把握が困難。ミニマップやレーダーなども一切無く、敵を自動的にロックオンしてカメラを向けるような機能も無いなど、動きの激しい3Dアクションゲームとしては不親切な部類と言ってもいい。
      • 画面外の敵が攻撃態勢に入っている、敵弾が飛んで来ている方向を知らせるガイド表示は一応あるのだが、弾が速くて反応しきれない事もままある。
  • ステージ中でのパルテナなどの会話による攻略のアドバイスが遅かったり、あまり的確ではなかったりと、あまり役に立たないケースが多々見られる。
    • 攻撃しなかった場合はほぼ無害だったりそもそも倒せなかったりしてするのに対して攻撃すると敵に見つかってしまってかえって危険になる敵が目の前に出現した時、「攻撃してはいけません」とアドバイスを言われるのだが、敵を見つけ次第速攻で倒すのが定石なこのゲームでは言うのが遅すぎる。
      • 攻撃した場合に限り、ピットは「もう遅いみたいです」と返事をするあたり、スタッフが想定した通りのタイミングではあるようだ*13

ごく一部の不親切なボス戦

  • 基本的に殆どのボス戦では、相手に関する情報やヒントが会話中に含まれているため、いわゆる「詰む」という事はあまり無い。
    • ただし17章のボスは例外。周囲の緑色の光をすべて破壊するまでダメージが与えられないようになっているが、この光がちょうど足場の外周に位置しているため*14、普通にボスと向き合っていると視点の死角に入ってしまい気づきにくい。
    • だがそんな初見殺しであるにも拘らず、戦闘中の会話にはなぜか一切ヒントが示されない。このせいで死角の緑色の光を攻撃するという攻略法に全く気づかず、長らく詰んでしまうプレイヤーが発売後暫くしても見られる程であった。
    • 一部の極端に射程の短い神器だと攻略の難易度が跳ね上がる場合があるボス戦もある。
  • 理不尽と言う程でもないが、23章のボスは奇跡によってしっかりと対策をしていないと厳しいレベルの強さを有している。
    • どのくらい強いかと言うと、本ゲームを何回もホンキ度9.0オールクリアしているディレクターの桜井氏ですらも、奇跡「死んだふり」と「打ち上げ花火」の無敵時間を駆使しなければその難易度で倒せなかったと述べている程。ボスバトルではこのボスと必ず戦闘するという事を念頭に置いて奇跡を構成すべし。

マルチプレイ時の問題

  • 神器の強さ、使い勝手等のバランスは決して悪いわけではない。しかし、中には対策をしていないと一方的にやられてしまうような物も存在する。
    • しかしこれは発売後実に1年以上環境が変化し続けたような奥の深さに起因するもので、初心者以外がこれに狩られてしまう事はなく、中級者以上には持続力の無さゆえ逆にカモにされる。ネット対戦を実装したゲームにおいて初心者狩りを助長する(≒初心者離れによる過疎化に繋がる)要素が放置されている事自体どうなのかと言われれば、返す言葉が無いのだが。
  • 明らかに攻撃が当たっているのに当たっていない、相手プレイヤーが壁の中に入り込むなどの現象が起きる事がある。
    • もっとも、ゲームの仕様上ラグが気になるというだけで、ラグが酷いというわけではない。この手のゲームではむしろ快適な部類とされる。
  • また、上で述べた通り切断対策はされている筈なのだが、にも拘らず放置プレイヤーが部屋に残り続ける現象も多数報告されている。
  • チート対策は残念ながらまだまだ不十分で、通常プレイでは不可能なスキル構成の神器が散見される。

やり込み要素に関する問題

  • ハートの存在意義が両極端。
    • シングルプレイを普通にクリアするまでならハートの必要性はほとんどない。
      • 神器は新たに入手したものを融合していくだけでほぼ事足りる。ハートを消費して神器を入手しようとしても、よほど大量にハートを稼がない限り、融合で強化していった神器よりも低性能の神器までしか入手できない。
      • 難易度を増減させる際にはハートを消費する必要があるが、基本的にはステージをクリアすれば消費分以上のハートを回収可能。
    • 一方、やり込みを前提に考えると、理想の神器を作るために大量のハートが必要となり、誇張抜きでいくつあっても足りなくなる。すると今度は周回に向いた特定の章を延々と繰り返す羽目になり、バランスが両極端。
  • 神器融合の法則性が複雑で、思い通りのスキルを組み込むのが難しい。
    • 一応、3DSを2台用意してタネを稼げば理想の神器が比較的楽に作れるようにはなるが、ハードルは高い。
      • 上述した「ハートが足りなくなる」と言うのはこれが最大の原因。すれちがい通信で得たタネを融合して神器にする際に、多額のハートが必要となるのである。
  • 神器周りの便利機能が少なすぎる。
    • 全108種類の神器に対し保有できる神器数はなんと最大1000。それだけ保有できるにもかかわらず神器のロック機能や作りたい神器の融合パターン検索、所有スキルの検索といったシステムはなく、全て自分の目で一つ一つ確認していかなければならない。保有できる神器数が膨大であるが故に検索時の負荷が激増するという事情を考えると仕方のない部分ではあるが…。
    • 上限まで保有した状態で新たに神器を手に入れた場合、「ひとりで」プレイ中であれば既存の神器を処分して空きを作れるが、マルチプレイ中は不可能でただ新規の神器を処分するしかない。
    • 使える機能は装備時に9種の兵装から一つの絞り込みと、入手順、入手順に装備履歴が複合された「じゅんばん」順、つよさ(価値)順、五十音順、兵装順への並べ替え程度しかない。
  • 奇跡集めの仕様。
    • 入手済みの奇跡が何度でも出現する上に、未入手の奇跡の出現率を上げる手段も無い*15
      • 同じ収集要素のおドールはプレイに関係ないオマケ要素にもかかわらず複数の入手手段があり、未入手のおドールの出現率を上げる事までできてしまうのに…。

総評

桜井氏のモットーである「初心者から上級者まで幅広く楽しめるゲーム作り」は、本作でも健在であった。
開発に時間をかけただけあって、システム面においては初心者にも上級者にも自信を持ってお勧めできる逸品に仕上がっている。
システムが一新されている関係上、実質的に“パルテナ”という名を冠した新規作品であり、前作を遊んだ経験がない人やTPS初心者でも十分に楽しめるだろう。
…それだけに、独特な操作体系や天界漫才のノリ等、強烈なまでに好みの分かれる部分が散見されるのが何よりも惜しまれる。

とはいえ、そうした人を選ぶ点を差し引いても尚高い完成度を持つ作品であるのは確か。興味を持ったのであれば一度は手に取ってもらいたい。


余談

  • 主役キャラの担当声優のうち、自然王ナチュレの声を担当している大本眞基子は『星のカービィシリーズ』のカービィの声優という繋がりがある。同様にピットの声を担当している高山みなみも、同シリーズのアニメ版でナックルジョーの声を担当している。
    • 元々ナチュレのボイス担当は別の声優を起用する予定であり、大本ボイスは「仮採用」的な扱いだったが、いざオーディションを行った後に「大本の声が一番適任」という結論となってそのまま「本採用」になったそうな。
  • CEROがBとなっているが、これは「ヒュードラの首が落ちるところ」が原因だと「桜井政博のゲームを遊んで思うこと2」で述べられている。
  • 『大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U』でもエンジェランドのスマッシュアピールにも本作の天界漫才を採用している。が、こちらの天界漫才も評価が分かれてしまっている。
  • ファンからは続編及び本作のSwitchへの移植の熱烈な要望が毎度あがってきているが、桜井氏は開発チームが既に解散している事、システム面の移植にかかる労力の大きさや、新規シナリオが代わり映えのないものになってしまうという点を理由に挙げ、「続編は作らない」とコメントしている。

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最終更新:2023年12月03日 01:49

*1 日本国外ではゲームボーイで「Kid Icarus: Of Myths and Monsters」が発売されているため20年ぶりの続編となる

*2 近距離射撃と打撃が強い狙杖、ほとんど誘導しない神弓、溜め射撃でも弾が至近距離にしか届かない巨塔など

*3 とは言うものの、ハートを捧げていくと最初は遠くに見える程度だったのが徐々に近づいてきてくれる。好きな人にはこれ以上ない御褒美である。

*4 厳密にはもう1人居るのだが、ネタバレのため割愛

*5 発売前にVジャンプに漫画が掲載されたが、よくあるゲーム紹介漫画のような内容と思いきや、蓋を開けてみればゲームの内容そのものが漫画そのまんまだった。

*6 タッチペンでの照準操作速度を0~10とすると十字キーによる操作は0か8の二択になるといった具合。この極端さが足を引っ張るボス戦も少なからず存在する。

*7 左スティックの操作が割り当てられている。

*8 左手で特殊能力の操作はできるがそうなると今度はキャラの移動ができなくなる。この点は拡張スライドパッドであれば解決できなくもないが。

*9 前作でアイスクライマーやMr.ゲーム&ウォッチが参戦した為、古くて続編の出ていないゲームからの参戦はされるようになることを想像した人もいるかもしれないが

*10 とはいえ神弓カテゴリ内で比較してもダッシュ攻撃の火力は上位には位置すれど比肩するものはいくつかあり、一方で通常射撃の火力も目に見えて落ちているとも言えず、強さ的にはかなり中途半端な位置にある。ホーミング性能を落としている点が上級者向けなのは間違いないが。

*11 主観視点への変更機能がついており、ファーストパーソンシューティング(FPS)として遊ぶことも可能。

*12 通常、跳弾と言えば壁などで跳ね返った弾丸を指す

*13 この場面では攻撃せずにいれば何も言われないため、攻撃しなければ警告も受けないという仕組みになっている。また他の場面では「もっと早く言ってほしかった!」であったり、それ以前に攻撃しようがしまいがアドバイスする側の発言が二転三転する事すらある。ピット曰く「どっちなんだ!」と言われ、後に「打撃だけ使え」と説明する。

*14 この戦いでは不動のボスを中心として、ピットが乗っている足場が周りを旋回する形になっている。一応ボスと外周の光を繋ぐラインは存在するが、気付けない人は気付けないだろう。

*15 内部的にはある程度入手済みの奇跡が出ると未入手の奇跡が出やすくなるようなシステムになっているらしく、遅くても20個に一度くらいのペースで未入手の奇跡が出るため実際に本気で集め始めるとおドールよりは厳しいものの極端に果てしない道のりでもない。

*16 詳細はネタバレになってしまうため割愛するが、本作との共通点として『トリプルデラックス』でも「鏡」が物語の核心に関わる重要アイテムの1つになっているよしみからだと思われる。カービィシリーズで鏡と言えば……