本項目で黄金の太陽 開かれし封印(以下、『封印』)と黄金の太陽 失われし時代(以下、『時代』)の両方を解説する。



黄金の太陽 開かれし封印

【おうごんのたいよう ひらかれしふういん】

ジャンル RPG
対応機種 ゲームボーイアドバンス
メディア 64MbitROMカートリッジ
発売元 任天堂
開発元 キャメロット
発売日 2001年8月1日
定価 4,800円(税別)
配信 【WiiU】バーチャルコンソール:2014年4月3日/702円
判定 良作
黄金の太陽シリーズ
開かれし封印 / 失われし時代 / 漆黒なる夜明け

概要(封印)

  • GBAでは数少ない長編のRPG。
    • GBAとは思えない良質なグラフィックとBGMは高い評価を受けた。
  • エナジー*1は戦闘での攻撃や回復だけでなく、マップでの謎解きなどにも利用出来る。
  • エレメンタルの精霊であるジンは攻撃等に利用出来る他、キャラクターのクラスの決定にも用いられ(それによって利用出来るエナジーも変わる)、とれる戦略などの幅が広い。
  • 一方で、ストーリー・テキストは全体的に不安定。

世界観・ストーリー(封印)

舞台となる世界「ウェイアード」には、かつて錬金術という学問が存在した。錬金術は強大な力を持つために封印され、復活の鍵となるエレメンタルスターはアルファ山に収められ、ふもとのハイディア村に住むエナジスト達によって守られていた。
しかし、錬金術を復活させようとする者達によってエレメンタルスターが奪われてしまう。
錬金術の復活を阻止すべく、ロビン達は冒険の旅に出る。

システム(封印)

エナジー

  • 地火風水の4つの属性があり、エナジストはいずれかの属性を持っており、仲間となるキャラクターもそれぞれの属性で一人ずつとなっている。
  • エナジーは戦闘時に使用するだけではなく、大きな柱を動かしたり、人や動物の心を読んでヒントを得るといった謎解き要素にも深く関わる重要な要素となっている。

ジン

  • エレメンタルの精霊。ジンによって固有の能力を持つ。
  • 所持するジンの属性と数によってキャラのクラスが変わり、ステータスや使用できるエナジーが変化する。
  • 複数のジンを使用することで「召喚」という強力な攻撃が行える。
    • 召喚に使われたジンはリカバリ状態になり、一定時間使えない&所持数にカウントされなくなる。
    • クラスが変化→ステータスダウンといったデメリットも存在するため、プレイヤーは召喚を使うタイミングを考える必要が出てくる。
  • 敵の弱点の属性のジンで攻撃して倒すと、アイテムを落とす確率が上がる。レア装備の入手にはジンは欠かせない。
    • 本作で集めたジンは『時代』に引き継ぐことが可能であるが、全てのジンを引き継がなかった場合は次作で入手出来ない召喚が存在する

シナリオ展開

  • 主人公であるロビンとその仲間達4人の目線で描かれていく。
  • シナリオ自体は未完結で、次回作『時代』に続く。

通信対戦

  • 自分の育てたパーティを使って、通信対戦を行うことが可能。
    • ただ、本作が一人用に特化した作りをしているため、あくまでおまけ要素としての側面が強い。
  • 専用の対戦ルームでは、サウンドテストや勝ち抜き形式のランダムバトルができるため、そちらを目当てにするプレイヤーの方が多い。

評価点(封印)

戦闘システム

  • 本作は普遍的なターン制の戦闘システムだが、これにジンシステムを加えたことが大きな特徴となる。
  • ジンはセットスタンバイリカバリーという三種の状態を個別に持っており、それぞれ以下のような特徴がある。
    • セット…キャラクターにジンがセットされた状態。
      セットされているキャラクターのステータスを強化されたり、使用できるエナジーが変わったりと様々な影響がある。また、「ジン開放」コマンドからセットされているジンを選択することで、戦闘に有用な効果を発揮できる(効果はジンによって異なり、強力な一撃を繰り出したり、ステータスを補助したりするなど多岐に渡る)。「ジン開放」で呼び出されたジンは、自動的にスタンバイ状態になる。
    • スタンバイ…「召喚」に備えた状態。
      スタンバイ状態のジンを使用し、召喚という強力な全体攻撃が可能になる。この召喚はスタンバイ状態のジンを多く使えばそれだけ強力になり、各属性に4段階まで強くさせることが可能。「召喚」で呼び出されたジンは、自動的にリカバリー状態になる。
    • リカバリー…ジンが休んでいる状態。
      この状態のみコマンドによる状態切り替えが行えず、フィールドマップでしばらく歩くか、戦闘でターンが経過すると、自動的にセット状態に切り替わる。ターン経過によるジンセットは1キャラクターにつき1ターンに1つしかできないため、強力な召喚を立て続けに行えばそれだけリカバリーに時間がかかる。
  • ジンのセット状態を維持して安定性を求めたり、強力な召喚で一気に戦闘を優位したりと多様な戦い方ができ、このジンシステムが戦闘を奥深くしているといっても過言ではない。
    • 一つのテクニックとして、各人に同属性のスタンバイ状態のジンを分けておくことで、召喚後のリカバリー時間を短縮することが可能。これにより1キャラクターが弱くなることを避けたり、1人に集中させて、他の3人の戦力低下を防いだりといった考えも生まれる。
  • 一般的なRPGでのMPにあたる「EP」は歩いていると回復していくほか、ダンジョン内にはEPの回復スポットもそれなりに配置されているため、通常戦闘でもある程度は出し惜しみせずエナジーを使っていけるバランス。
  • 店売りの汎用品を除く武器には全て「必殺技」が設定されており、通常攻撃を行った際に確率で演出が発生し、通常よりも強力な攻撃を行える。
    • 後述するがこの演出も評価に一役買っており、戦闘を飽きさせにくい。ボタンを連打して通常攻撃をしているだけでも派手な演出が次々と発動するため非常に爽快。
  • 本作の特筆すべき点として、戦闘のテンポの良さが挙げられる。
    • エナジーや必殺技の演出時間は2秒前後に抑えられており、演出中にボタンを押すことで演出の途中でもダメージ等のメッセージを送れる*2ため待ち時間を感じさせない工夫がなされている。高位の召喚などの特別に長い演出はボタンを押すことで途中でカットすることも可能。
    • これにより、美麗で大迫力の戦闘演出とテンポの良さの両立を実現している。演出のカットについては当時のRPGでは据え置き機・携帯機を問わずほとんど実装されていなかった機能であり、優れた快適性にプレイヤーを驚かせた。
  • 戦闘バランスもおおむね良好。普通に進めていくと敵は少し強めに設定されているが、ジン開放や召喚をうまく織り交ぜることで突破できる。
    • 逆にそれらを効率的に使えないと、ジンのセット状態を維持しすぎてジリ貧になったり、召喚で敵を倒しきれずにステータスが下がった状態で返り討ちにあうことがあるため、歯ごたえのある難易度ともいえる。

美麗なグラフィックとBGM

  • 桜庭統氏によるBGMはいずれも評価が高い。
    • 独自のサウンドドライバが積んであり、「本当にこれGBA?」と疑いたくなるような凄まじいクオリティのBGMは今なお高い支持を受けている。特に戦闘曲はすべて文句なしで、通常戦闘の曲を聴いて震え上がったプレイヤーは数知れず。
    • 大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ』では本シリーズはプレイアブルキャラとしての参戦こそ果たせていないものの、一部の戦闘曲がステージ楽曲として採用されていることからも人気が窺える。
  • マップのグラフィックも非常に美麗。
    • 町の住居内は雰囲気重視の曲線的な描画や柔らかいタッチで描かれているのに対し、謎解き要素の存在するダンジョン等はややかっちりとしたタッチで描かれている。
    • これにより、グラフィックが綺麗なRPGで起こりがちな「通行できる地形と背景が区別しづらかったり、謎解きで使う物体や地形が分かりづらい」といった問題が抑えられている。地味ながらありがたい配慮。
  • GBAとは思えないほどに派手な戦闘演出。召喚や必殺技は必見。
    • 召喚されるキャラクターはカッコイイもの、可愛いもの、よくわからないものとバリエーション豊富でデザインも好評。
    • 必殺技は派手な演出、地味な演出両方が存在するが、新しく入手した武器に必殺技があれば、演出見たさに自ら戦闘を行う人もいたのではないだろうか。
+ 召喚集
+ 必殺技集
  • 謎解き

    • ダンジョンには様々なギミックが存在しており、その謎解き要素が実に豊富。そのうち、多くの謎解きにエナジーを用いる場面がある。
      • エナジーが使えそうな場所にはある程度特徴があるため、慣れていけば大体分かるようになる。
      • NPCから「ここから先には進めない」と言われていても、特殊な力を使う主人公たちエナジストであれば先に進めるなど、ストーリー上にも説得力を持たせている。
    • 謎解きの難易度は割と高め。人によってはギミックの存在に気付かず、しばらく迷うことも珍しくない。
      • ヒントはあることにはあるが、あまり体を成しているとはいえず、結局総当たりで頑張るしかない。
    • 隠しダンジョンは複雑なパズルが用意された謎解き部屋と部屋を守る強力モンスターがワンセットの本作らしい仕様。物語が後半に差し掛かる頃から任意で突入できるが、特定のエナジーを要する場面があるため完全制覇はゲーム終盤となる。

    操作性・UI面

    • 移動可能な状況であればどこでもセーブが可能なほか、L・Rボタンの長押しで電源を切らずに消費電力を抑えるスリープモードに移行可能。
    • L・Rボタンにはそれぞれ1つづつ移動中に使えるエナジーをショートカットとして設定できる。
      • ダンジョン探索の際は謎解きで多用する「ムーブ」やエンカウントをカットする「プルーフ」、町の中では情報・アイテム収集に便利な「リード」「イマジン」が定番か。使用頻度的にはもっと枠が欲しかったところだが、GBAのボタン数の関係上仕方ない。
    • ショップには通常の市販品の他、特殊な効果を持った個数限定品の「ほりだしもの」のメニューもある。作中で手に入るほぼ全ての非売品のアイテムは売却したり破棄するとこの掘り出し物のメニューに加わるため、一種のアイテム預り所のような役割も担っている。
    • 移動中に使える謎解き・探索用のエナジーは消費EPが1~2と低く設定されている。先述の歩くとEPが自然回復する仕様もあり、「戦闘中にEPを使いすぎて謎解きができない」といったケースやその逆の状況はまず起こらない。
    • 複雑なパズルのある部屋ではエンカウントが発生しない場合も多く、戦闘が謎解きの邪魔にならないようにする配慮も感じられる。
    • 総じてRPGとしての快適性はおおむね配慮されており、後述の一部の問題点を除けば触っていて極端なストレスは感じにくい作りにはなっている。

    賛否両論点(封印)

    ストーリー

    • 「錬金術の復活を阻止するために、エレメンタルスターを盗んだ敵を追う」というストーリーは一貫して変わらず、目的はハッキリしている
      • ただ、その始まりは、主人公たちが好奇心でアルファ山の奥地に進んでしまったために、その隙を敵に突かれてエレメンタルスターが盗まれてしまった*3というもの。つまり、主人公たちが余計なことをしなければ問題が起こらなかった。
      • その道中も、行く先々で問題が発生して先に進めないため、エナジーで問題を解決して先に進み、更にそこでも問題が発生して先に進めず…という繰り返しになるため、ダレがち。
    • 土壇場でエナジー関連の設定が判明したり、ある遺跡群全体を指す呼称が唐突に登場したりなど、プレイヤーが認知していない設定が唐突に出てくることがある。
      • エナジー関連の設定で擁護するなら、エナジストは初期のハイディア村を除けば主要メンバー他数名しか登場しないほど貴重な存在であり、道中で説明するタイミングが無かったとも言える。

    テキスト

    • 全体的にテキストが不安定で日本語がおかしい。また、たとえ話を多用したり、単純な事実を数行にわたって語ったりと、表現が全体的に回りくどいことがままある。
    • 例えば、「そうよな」*4や、主人公パーティのメアリィの「いまらくにしてさしあげますわ」*5など、意味としては伝わるが使い方が変という場面がよくある。
      • メアリィは、その見た目やストーリー上の行動から清楚系のキャラかと思われたところに上記のセリフが発せられているため、プレイヤーの一部で腹黒キャラとして扱われていたりする。不安定なテキストの被害者としてみるか、キャラの特徴付けに一役買われたかはプレイヤーに委ねられるところか。
    • この独特のテキストは「高橋語」という、開発元であるキャメロットの社長・高橋宏之氏自らが手掛けたものの特徴として認知されている。これをネタとして面白がる人もいれば、作品を楽しむ上での障害と感じる人もいる。

    問題点(封印)

    イベントシーンのテンポが劣悪

    • 「キャラが喋ろうとするたびにいちいち身振り手振りを挟んだり小刻みに伸縮する*6」「『!』や『?』などの感情を示すバルーンを出す頻度が多すぎる」「誰かが一度喋ったことを無意味に聞き返したり反芻する」「必要性の無い場面で頻繁に主人公に問いかけて選択肢を出す(はい/いいえのどちらを選んでも無意味)」「そもそも会話の内容・やりとりが冗長」
      …等々、演出・テキストのありとあらゆる面で非常にテンポが悪い。先述のテキスト面での不安定さもあり盛り上がりづらく、人によっては初見の重要イベントですら退屈に思えてしまうことも。
    • ボタンを連打してスキップできるようなものではないため、長いイベント後のボス戦で敗北して再挑戦する場合などは大変苦痛。

    謎解きの場面でのテンポもやや悪い

    • 謎解きで使用する一部のアクションやエナジーの演出に冗長なものが存在する。
    • 顕著なのは『封印』『時代』全編を通して最も頻繁に使われる「物体を押す」アクション。物体を1マス押すのに1秒程度もかかる非常に鈍重な動きなため、数マス先に物を移動させるだけでも結構な時間がかかる。
    • 物体を1マス隣に移動させるエナジー「ムーブ」も同様に頻繁に使用するのだが、こちらもエナジー発動の演出などを含めると1回に4秒程度も要する。連続で使用する場面も多いため煩わしい。
      • このため、「どこに岩を動かせばいいのかの完成形は頭の中に描けているのに、実際にその形に配置するのに何十秒・何分もかかってしまう」といった場面も少なくない。
    • 本作と謎解きアクションの感触が非常に類似している『ゼルダの伝説シリーズ』の携帯機作品と比べても、快適性の面では幾分見劣りしてしまっている。

    ジンのセットと連動したクラスチェンジシステム

    • セットするジンの属性の総数を調整することで行えるクラスチェンジだが、ステータスや使用できるエナジーが中途半端なクラスが多く、試行錯誤の必要がある割にいまひとつ実用性に乏しい。
      • キャラクターと同じ属性のジンをセットするとそのキャラクターの個性そのままでステータスが強化される上位クラスに就ける。この編成は癖の無いステータス・エナジー構成で戦いやすいため、あれこれ考えるより同属性で固めることがベターな選択になりがち。
    • ジンの解放によるスタンバイ化、およびリカバリー状態から強制的にセットされることでクラスが変わると、途端に使えるエナジーやステータスが大きく変わり、その度に戦略を考えなければならず、面倒。
      • 上記の同属性統一クラスはセット中のジンの数が増減しても使えるエナジーの系統が変わらないためステータスの変化以外は影響が無いが、複数の属性を使用するクラスはこの強制セットによる頻繁なクラス変化によって戦い方が安定しないことも弱点となる。
      • ジンの解放を使わなければ戦闘中のクラス変化は起こらないものの、ノーコストで攻守共に様々な効果を使えるジン解放は非常に利便性が高いため、戦略の幅が狭まってしまう。
    • 総じて、クラス間性能面の練り込み不足・システムとの噛み合わせの悪さが合わさり、見た目ほど自由度の高い編成を楽しむことができないシステムとなってしまっている。
      • 混成属性クラスには全体回復エナジーを使えるキャラを増やせる組み合わせや「ニンジャ」「サムライ」といった尖った性能を持つ強力なクラス、移動中のエンカウントをカットできる便利なエナジーを使えるクラスなどもあり、決して同属性統一が常に最適解というわけではないのだが…。
    • ジンはパーティ全員に均等な数になるように配分しなければならない*7。仲間にできるジンは基本的にストーリー進行に合わせて属性ごとに1体ずつ順当に増えていくが、取り逃しが起こった場合は属性ごとの所持数のバランスが崩れてしまい、クラス編成に影響が出る。
      • あぶれてしまった不要なジンはスタンバイ状態にしておきクラスチェンジに影響を出さないようにするのも手だが、召喚時に使用するジン(=その後自動でセットされてしまうジン)は任意で選べないため、その属性の召喚を戦闘に組み込みづらくなってしまう。

    システム上の不便さ

    • システムとしていくつか不便を感じるところがある。
    • 戦闘にて、攻撃対象としていた敵が攻撃手番になる前に撃破された場合、他の敵にターゲットを変えるなどはせず、自動的に防御行動に変更される。
      • モンスターが複数出てきた際には、味方の攻撃力や素早さ、相手の体力を考慮してターゲットを分散させる必要がある。
      • FC、SFCの時代であれば技術的にこのようにせざるを得なかったと言えるが、さすがにGBAの時代にもなると不便を感じてしまう。
    • アイテムは装備を含めて一人につき15種しか持てず、そのうえ売ったり捨てることができない重要アイテムや特定のエナジーを習得できる専用装備などが存在するため、アイテム欄がひっ迫しがち。
      • 先述のショップの掘り出し物のシステムはアイテム欄のひっ迫を軽減するためには必須となる機能なのだが、ゲーム中でこの仕様について何故か説明されない。
    • ドラゴンクエストで言うところのルーラが存在せず、村・ダンジョン間の簡易移動が行えない。
      • ジンの取り忘れが発覚した時など、非常に長い移動を強いられることがある。マップによっては一方通行の場所も存在するため、回り道をする必要も出てくる。

    ラスボス撃破後にセーブができてしまう

    • 先述の通り、本作はポーズメニューからいつでもセーブが可能なのだが、あろうことかラスボス撃破後であってもセーブができてしまう。
    • ラスボス撃破後は買い物をするかエンディングを見るくらいしかできることが無くなるため、実質的にそのデータは本作では使い物にならなくなってしまう。
    • いくら今作が前後編の前編にあたる作品とはいえ、今作にも「時代」への引き継ぎに向けたレベル上げやアイテム収集、隠しダンジョン・裏ボスの攻略などのやり込み要素は多数存在するのだが…。
    • 強大なボスを倒してイベントを終えた後にセーブをしないプレイヤーはほとんどいないと思われるため、恐らく大半のプレイヤーがこの罠に引っかかってしまい、泣く泣くゲームを最初からやり直したことだろう。

    総評(封印)

    戦闘バランス、謎解き要素共に高水準にまとまった本格的なRPGである。
    グラフィックや音楽もGBAというハードの割に高品質。特に戦闘演出はかなり凝っており、本当にこれがGBA初期に出たのかと疑いたくなるようなレベル。
    反面、ストーリーはよく言えば王道、悪く言えば地味な印象が拭えず、テキストも非常に独特で冗長なため、そこについてはあまり期待できるものではないかもしれない。


    黄金の太陽 失われし時代

    【おうごんのたいよう うしなわれしとき】

    ジャンル RPG
    対応機種 ゲームボーイアドバンス
    メディア 128MbitROMカートリッジ
    発売元 任天堂
    開発元 キャメロット
    発売日 2002年6月28日
    定価 4,800円(税別)
    配信 【WiiU】バーチャルコンソール:2014年7月23日/702円
    判定 良作

    概要(時代)

    • 『封印』の続きのストーリーを描いた純粋な続編。
      • 元々『封印』の時点では物語が完結していないため、『封印』が前編・『時代』が後編 と表現した方が正確かもしれない。
    • 本作では、前作の主人公であるロビンから一転し、道中でも登場していたガルシア一行の視点となり、前作エンディング後の物語となっている。
      • 前作のセーブデータを引き継げる。引き継ぎによってロビン達が加入する際のパラメータに影響があるほか、発生するイベントも存在する。
      • 『封印』から続いた物語は本作で一旦解決を迎える。
    • ゲームエンジンは『封印』のものと同一のためシステム面での大幅な変更はないが、追加要素は色々なものが存在する。
    • ストーリー・テキストは前作同様に問題点が多い。

    変更点・追加要素

    • 前作は舞台となる世界「ウェイアード」の一部分のみだったが、本作は船の登場により「ウェイアード」のほぼ全域を冒険することが可能となった。
      • ただし、前作で登場した街・ダンジョンなどは訪れることは出来ない。
    • 戦闘要素の大幅な追加
      • 召喚、ジン、クラス、エナジーの種類が大幅に増加。
      • 異なる属性のジンを組み合わせた召喚が登場し、ダメージを与えた際に追加効果を与えるものやパーティの回復に特化したものなど、実に多彩になった。
      • 特定のアイテムを装備することで追加されるクラスも登場した。
    • 加工品の登場
      • 特定のアイテムをとある場所で装備品などに加工してもらえる。ものによっては強力な武器も出来、攻略に重宝する。
    • 隠しダンジョン、隠しボスといった寄り道要素も追加。
      • 中でも全てのジンを集めると挑戦可能となる隠しダンジョンの隠しボスはラスボスすら凌ぐ凶悪ぶりであり、プレイヤーの間で話題となった。

    評価点(時代)

    戦闘要素のボリュームアップ

    • 前述のとおり、召喚、ジン、クラス、エナジーの種類が大幅に増加したことで、戦略性の幅が更に広がった。
    • 前作の召喚は大ダメージを与えるだけの存在だったが、本作ではステータスアップなどの追加効果を付与する召喚も登場するため、多種多様な使い方ができるようになった。
    • ジンの数も大幅に増加し、前作のジン引継ぎを行えば、最終的に一人あたり9体ものジンがセットできる。
    • 物語中盤で前作のキャラクターらもパーティに加わり、8人体制となる。
      • 一度に戦闘に参加できるのは従来通り4人まで。残りの4人はバックメンバーとなり、最初の4人が全滅するか、コマンドでパーティチェンジするかで戦闘に参加することができる。
    • 前作の戦闘用エナジーは後半になるにつれて火力不足に陥り雑魚敵の掃討にしか使われていなかったが、本作では種類が増えたことにより火力面でも安定するようになった。
      • 特に単体技の種類が多く、必殺技頼みで大ダメージを狙うか、エナジーで安定したダメージを求めるかの戦略を練ることも可能に。

    演出とBGM

    • 前作同様、演出面と桜庭統氏によるBGMは評価が高い。追加された召喚や必殺技はプレイヤーを飽きさせず、新規追加されたBGMはいずれも高水準。
      • 特に、ラスボス曲は物語の締めに相応しい出来であり、こちらも『大乱闘スマッシュブラザーズX』にてアレンジ曲が追加されている。
      • BGMは前作と同様、通信対戦ロビーのサウンドテストにより視聴できるが、本作で使用されていない『封印』の曲も視聴できる。
    • 前作では召喚や必殺技と比べて若干見劣りする戦闘用エナジーだったが、それも多数種類が追加されたことにより、演出面からみても豪華になった。
      • 主人公、前作主人公が覚える単体攻撃エナジーの「オデッセイ」は、演出のカッコよさや威力の高さから特に人気が高い。

    やり込みの追加

    • 隠しダンジョンや隠しボスといったやり込み要素が多数用意されている。
    • 単純に強いボスもいれば、本編では登場しない特殊行動をするボスなども存在し、高い戦略とレベルが要求される。
    • 隠しダンジョンをクリアすることで手に入る召喚もあるため、モチベーションも自然と高くなる。
      • ただ、作中最強の召喚の入手方法が作中最強の隠しボスを倒すことであるため、せっかく苦労して入手しても活躍できる場がないのが悲しいところ。

    謎解き

    • ダンジョンごとに設定されている謎解きギミックも健在。前作と比べるとフロアを跨いだ謎解きや広大なダンジョンが増えている。
    • 相変わらず難易度は高めだが、前作と比べてヒントがわかりやすくなっているため、迷うことは少なくなった。

    賛否両論点(時代)

    ストーリー

    • 前作の目的は「錬金術の解放を阻止する」ことである一方、本作の目的は「錬金術の封印を解く」ことになる。そうした理由は劇中でしっかりと説明されるため、プレイヤーが混乱することはない。
    • 本作でストーリーは一旦の解決を迎える。しかし、その中で未解決の伏線などを多数残したままとなっている。
    • 例えば、前作から登場していて本作から操作キャラとなる、空から降ってきた謎の少女「シバ」は、自らの出自を知るために一行に加わるのだが、結局その謎は明かされない。
      • 作中でヒントになるような情報を得るが、結局は未確定のまま。今なおネット上では、その出自について議論になることも。
    • 前作と同様、所々でプレイヤーの認知しない設定が唐突に出てくることがある。

    テキスト

    • テキストの問題点も前作から相変わらず。一種の作風として認識したほうがいいのかもしれない。

    前作を含めた主人公の扱い

    • 前作では喋っていた今作主人公「ガルシア」が今作では喋らなくなり、前作では全く喋らなかった前作主人公「ロビン」が今作で急に喋るようになる。
    • 前作は「ロビン」だけが無口であり、その人間像はプレイヤーのイメージに委ねられるかと思ってあまり違和感は感じられなかったが、本作においてただ主人公であったため喋らなかったということが判明する。
      • 「ロビン」は、その童顔気味のキャラクターデザインや前作の行動から、プレイヤーの間でそれとなく一人称を「僕」とイメージしていたところ、本作で一人称が「俺」であることが判明し、困惑したプレイヤーは多数存在する。
    • 「ガルシア」は前作プレイで性格などの人物像は把握できるため、そこまでの問題はない。ただ、作品を跨いで突然無口になるのはやはり不自然(ちなみにEDでは再びしゃべり始める)。
    • これは開発元キャメロット製作の伝統なのか、同社製作の作品は基本的に主人公は喋らせないようにしている*8。ただ、本作においてはキャラクターの人物像がしっかりと設定されているのに主人公だけ無口にさせているため、そのようにした理由が読めずに違和感を感じる結果となった。

    引き継ぎ

    • まず『封印』からのデータの引き継ぎ方法は、ケーブル通信とパスワードの二つ存在する。通信ケーブルが無く、GBA本体が1台でも引継ぎが行えるようにされており、良心的。
      • ただし、パスワードで行う際の文字の分量は引き継ぎ出来る要素によってパスワードの長さが3段階あり、最低限ジンのみを引き継ぐ場合は16文字で終わるが、装備品などを全て引き継ぐ場合には260文字もの入力が必要になる。
      • パスワード入力はすべて平仮名*9で行われる。当然、1文字でも間違うとエラーとなるため、間違えたときは前作のパスワードを確認した上で、また最初から入力しなければいけない。
    • ストーリーの続編物としての宿命か、あらゆるものが引継ぎ前提となっている。
      • メインストーリーは、『封印』のあらすじ説明があるため、ある程度の補完は可能。しかし、細かい設定までは把握できないため、やはり物語全体を楽しむのであれば前作のプレイは必須。
      • 本作で登場する隠しダンジョンは、所持しているジンの総数で開放される。前作のジンを引き継がないと全ての隠しダンジョンに行くことができない。

    問題点(時代)

    • 先述の通り、ゲームエンジンが『封印』と同一のため、演出・システム面での問題点は(本項に記載が無くても)前作からほぼ据え置きと考えていい。

    イベントシーンのテンポが劣悪

    • 相変わらずイベントのテンポは非常に悪い。こちらもテキストと同様に割り切って諦めるしかない。

    クラスチェンジシステム

    • 前作からクラスが大先述の通り幅に増加されたが、使い勝手は相変わらずで、やはり同属性で固めるのが最適解になりがち。
    • 特定のアイテムを装備することで就けるクラスという新要素が加わったが、いずれも上位クラスになるためには3種類もの属性のジンをセットしなければならない。ノーヒントでは発見が困難な上、残りのジンの属性のバランスが偏るため他のキャラのクラス構成に苦労することになる。

    システム上の不便さ

    • 本作は船により行ける範囲が大幅に広がったが、移動が不便なのは相変わらず。
      • 行ったことのある街へ移動出来る「テレポート」のエナジーが本作にて追加されるが、その入手はラストダンジョン。本作は世界が広大なだけにテレポートが最後の最後まで入手出来ないのは不便。
      • 隠しダンジョンのほとんどは「テレポート」のエナジーを使用しなければ入れない。ラストダンジョンに入った後にまた過去の町やダンジョンに戻って探索するという流れは盛り上がりに水を差しているとも言えなくもない。
      • 船は途中でエナジーを使って空を飛ぶことも可能になるが、特定の場所(浅瀬等)を飛び越える手段としての用途が主となり、移動手段としては微妙*10
    • その他、前作でのシステムの不便な点はほとんど改善されていない。

    総評(時代)

    『封印』で評価されていた戦闘要素、演出などを更にボリュームアップした完結編ということで、前作を楽しめたプレイヤーであれば本作も楽しめる内容となっている。
    ストーリーの純粋な続編であることや引継ぎ要素が多数あるといった点から、本作単体で楽しむことは難しく、プレイするならば前作からのプレイが望ましい。
    しかしながら、前作の問題点であるストーリーやテキスト、システム面は本作でもあまり改善はされていない。

    その後の展開

    • 2010年10月に待望の新作『黄金の太陽 漆黒なる夜明け』が発売された。
      • 本作の30年後を描いた正当な続編だが、その評判は悪い。詳しくは該当項目を参照。

    余談

    • いくつかの地名は実在のものをもじっている。
      • 町の民家にあるかまどを調べるとその土地の文化に合った料理が作られている。インドがモデルの町ではタンドリーチキンやマサラティー等々。ひとつひとつに解説や感想のメッセージが用意されており、なかなか芸が細かい。
    • 2作ともジンについて解説してくれるキャラがいるのだが、特定のコマンドを入力すると京都弁で喋る。任天堂本社が京都府にあることから派生したネタと思われる。
    • 本作発表時期にある宗教団体が「太陽の法」というアニメ映画を上映し、その続編が「黄金の法」だったので、もちろん全く関係ないのだが関連作品と勘違いされることが多々あった。
    • エナジーのアイデアのきっかけは、「城に行くと王様からストーリーの目標等を教える」という当たり前のやり方に疑問が生じたことにより、プレイヤーの知りたい事を何か聞き出す謎解きから心を読む事と超能力の発想が生まれた。
    • 開発当初の名前は「ゴールデン デンソル」だったが、任天堂の申し入れにより変更された。
      • 「ゴールデン デンソル」の命名の経緯は、当時のRPGのタイトル名にカタカナが多く使用されていたため。
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    最終更新:2024年01月18日 23:17

    *1 他のRPGにおいて魔法にあたるもの。このエナジーを利用する者はエナジストと呼ばれる。

    *2 例えば敵に雷を落とすエナジーの場合、落雷が敵に当たった瞬間からメッセージ送りが可能。

    *3 敵はアルファ山に侵入することはできたものの、奥地に進むことはできなかった状況。

    *4 とあるキャラの相槌で使われたセリフ。誤植として広く認知されているが、実際には「~よな」という表現に間違いはなく、国語辞書にも載っている正しい言い回し。ただ、いわゆる古語として扱われるため、「そうだな」と言うところが自然なところで唐突にこのセリフが出てくるのは違和感がある。

    *5 咳き込んで苦しんでいる老人の治療の際に発したセリフ。

    *6 一般的に驚いたり竦み上がったりする時のアニメ的表現を思い浮かべれば分かりやすいが、本作ではあらゆる場面でとにかく多用される。

    *7 例えば4人パーティで所持ジンが13体の場合、必ず 3体所持が3人・4体所持が1人 となるように配分される。

    *8 同社がかつて製作した『シャイニングフォース外伝』のIとII(前身である「株式会社ソニック」の時代)、『シャイニングフォースIII』各シナリオでも同様の作りになっている。こちらでは交代対象となる主人公の地位が高い位置にいるために一人称がほぼプレイヤーのイメージ通りだった。

    *9 海外版の場合は、英字と記号が使用される

    *10 移動力は徒歩と大差なく、飛行にMPを必要とするため、他のゲームの空飛ぶ乗り物と比べて使い勝手が悪い。ただ、飛んでいる間はモンスターとエンカウントしないため、その用途で使うのは有り。