Master of Monsters II

【ますたー おぶ もんすたーず つー】

ジャンル SLG&RPG
対応機種 PC-9801VM/UV以降、X68000
発売・開発元 システムソフト
発売日 1991年3月
定価 8,800円
判定 良作

写真は本作のWindows移植版である。追加シナリオ集も含んだセット。



概要

  • ファンタジー世界のモンスターを使った戦術SLG『マスターオブモンスターズ』の続編。前作のシステムを発展させており、基本システムはシンプルなまま、遊びやすいものとなっている。
    • 『マスターオブモンスターズ』は1988年発売のSLG。前身のSLG『ファンタジーナイト』をさらに推し進めたもの。コンセプトはファンタジー版『大戦略』であり、プレイ感覚も同様だが独自の仕様も多い。
  • ファンタジーものらしくRPG要素があり、戦いで経験値を得、レベルが上がるシステムとなっている。さらに一定のレベルになるとクラスチェンジする。

特徴

  • マップをヘクス(六角形)で構成した典型的なターン制SLG。
    プレイヤーは青/赤/黄の3国のうち1国の「マスター」となり、常に三つどもえの戦いの中で制限ターン以内に自分以外のマスター2人の打倒を目指す。
    • 前作では4国だったのが、本作では「3国+中立国(無所属)」となっている。
    • 前作であった単独マップモードは無くなり(練習用マップは単独だが)、本作では一連の複数マップを制覇するキャンペーンモードがメインとなっている。言わばSRPGのようなスタイルとなっており、マップクリア後、経験値を積みレベルアップした配下のモンスター達をそのまま次のマップに持ち越せる。
    • 4つの独立したシナリオ(+練習用の単独マップ)が用意されており、好きなシナリオを選んでプレイ可能。
      • シナリオは縦横に連なったマップを任意の順序で攻略していき、グランドマスターの存在するマップをクリアするのが目的。「階層」が存在し3次元となっているシナリオも多い。
      • シナリオ同士に関連性は無く、シナリオ間のマスター・モンスター・アイテム持ち越しは出来ない。
        また、一応ストーリーらしきものはあるものの、ファイアーエムブレム等のSRPGのような、しっかりしたストーリーやキャラ性はない。

マスター

  • プレイヤーの分身、もしくは敵国の大将。様々な種類のマスターがおり、大魔法・攻撃手段などで個性がある。プレイヤーが使用できるのは三種類。
    • 「ウォーロック」秩序(LAW)のマスター。低いレベルで使いやすい全体回復魔法を覚える。
    • 「サモナー」中立(NEUTRAL)のマスター。女性。HPが低め、知力も低めだが属性が中間的なため様々な属性のモンスターを支配しやすい。マスター自身の移動力が高めで塔を移動しながらの召喚がやりやすい。ワープ移動でもあるため囲まれても脱出可能*1。レベル20で敵のモンスターを奪い取って支配してしまう「ハント」を使用可能になる。
    • 「ネクロマンサー」混沌(CHAOS)のマスター。上二人より体力・知力が少し高い。また混沌のモンスターには、魔法攻撃の一撃が大きく攻撃回数が抑えられてMP消費が少ないモンスターや、防御率の優れたモンスターなどが多くそれらを扱いやすい。
  • 上記以外の敵専用マスターも多い。また各シナリオの最終面には、更に強いグランドマスターが待ち構えている。
  • LAW属性のマスターは、LAWモンスターを半分のコストで支配可能。その代わりとして、CHAOSモンスターの支配には2倍のコストが必要である。CHAOS属性のマスターについてはその逆。NEUTRALのマスターはNEUTRALのモンスターをコスト半分で、LAW/CHAOSのモンスターを1倍のコストで支配出来る。仮に全ての属性のモンスターをまんべんなく召喚・支配するとなると、この点についてはコストで圧倒的にお得である。
    • ただしNEUTRALのモンスターは、いまいち強力とは言いがたい。そこまで深刻な問題でもないが。
  • マスター自身もユニット(後述)の一つとして参戦し、経験を積めばレベルアップする。またレベルに応じて各種の「大魔法」を覚えていく。
    • 大魔法は通常戦闘の「魔法」攻撃(後述)とは別のもの。攻撃、回復や補助系などRPGらしいものが揃っている。
      • 但し大魔法を使うと一時的に知力が減少し、支配力(後述)もその分低下してしまう。使いすぎてモンスターに離脱されないように注意。
      • また消耗した知力はマスターが塔の上にいないと回復しない。マスターの移動は慎重に。
    • なお前回猛威を振るった精霊魔法は、本作には実装されていない。

マップと地形

  • マップには様々な地形があるが、この中で戦略目標となるのが「塔」「要塞」「城」といった拠点。これらを占拠すればするほどマスターの支配力が上がるため、これらの拠点の取り合いが本作の戦略の主軸となる。
    • 塔(10)<要塞(30)<城(100)と後者ほど支配力の上昇が高い。一方、塔の上にいるユニットはターン毎にHPやMPが回復するが、要塞や城には回復機能が無い。
    • 中には初期は隠されていてヘクスを通過することによって発見できる「隠れ塔」や、クリア後に階層移動できることを示す「天の塔」「地の塔」といったものもある。
    • 「隠し地の塔」は発見することによって隠し面に行くことができるようになる。
    • 『拠点の支配力の合計+マスターの知力』が実際の支配力となり、高ければより多くのモンスターを召喚できる。但し支配力が不足すると、配下にしていたモンスターが勝手に離脱し、無所属のモンスターとなって暴れだしてしまう。ギリギリの支配力でモンスターを使役していると、塔や要塞が落とされ、配下のモンスターに離脱されたという事も。
      • 恐ろしい事に支配力が足りていても、離脱が発生する事がある。詳細は問題点で。
    • なお本作では、マップ開始時に自国か中立の塔を任意に選んで自マスターを配置することが出来る。敵も同様で、敵マスターの初期位置はゲーム毎に変わり一定しない。
  • マップには時間が流れており、太陽の状態で表わされる。ターンが進むたび日の出→日中→宵の口→深夜→日の出→…と変わっていく。この時間帯はモンスター達の攻撃力に影響する(後述)。

ユニット(モンスター)

使用する駒(ユニット)はファンタジーものではおなじみのモンスター達。その姿も能力も多彩。
そして戦いを重ね経験値を積む事で、モンスター達は成長していく。

  • モンスターはマップ内で召喚する事により出現する。新たに召喚できるモンスターの種類とレベルは各マップ毎に決まっているが、それまでの戦いで用いたモンスターも(生き残っていれば)一定数まで持ち込んで召喚することができる。
    • 一定レベルまで成長したモンスターは、クラスチェンジが発生し、上位のモンスターへと進化する。
  • ユニットにはLAW/NEUTRAL/CHAOSの属性があり、マスターと同じ属性のモンスターは通常の半分の支配力で召喚・維持できる。一方、LAWとCHAOSは対極の属性であり、マスターの対極属性のモンスターを召喚・維持するには通常の二倍の支配力が必要となる。NEUTRALは中間であり、対極属性は無い。
    • これらの属性は時間帯による強さにも影響する。LAWは昼間に攻撃力が上がり、夜間には下がる(+-25%)。CHAOSはその逆である。NEUTRALは攻撃力が時刻に左右されない。
  • 移動タイプが細かいのも特徴。例えば空を飛ぶにしても高空・低空などと分かれている。
    • 本作にはZOCの概念があり、移動時に敵ユニットの脇をすりぬけようとしても、敵ユニットの隣までで足止めされてしまう。
      • 但し本作のZOCには2つ例外がある。「移動タイプが高空のモンスターに対しては、高空のモンスターでないとZOCで足止めできない」「『ワープ』移動が出来るモンスターはZOCをすり抜けて自由に移動できる」というもの。
  • ユニットの攻撃手段は、直接攻撃の「打撃」、飛び道具やブレス等を飛ばす「投射」、MPを消費して魔法攻撃をする「魔法」の3種類。
    • 但し本作に射程の概念はなく、どの攻撃も隣接しているユニットにしか攻撃できない。離れたユニットに対して攻撃する手段は、大魔法もしくは攻撃用アイテムに限定されている。
    • 攻撃内容や回数・威力はモンスターの種類によって違う。全て使えるモンスターもいれば、打撃しかできないモンスターもいる。打撃は弱いが魔法が強力なものや、一撃の威力が高いもの・手数が多いものなど、ここでもモンスター毎の個性が発揮される。
      • ちなみに「魔法」攻撃の場合は攻撃1回毎にMPを1消費する*2ため、魔法攻撃の回数が多いユニットはすぐにMP切れになりがち。
    • 攻撃を受けた側が同系統の攻撃方法を持っていた場合、攻撃中に反撃もしてくる。無論、持っていないなら攻撃側が一方的に攻撃できる。
      • なお本作のマスターは全員、投射攻撃を持っていない。安全に戦いたいならその点を突くのが良いだろう。
    • 攻撃の属性は「火炎/氷/電撃/物理/精神」の5種類に分かれており、各ユニットはそれぞれに対応した防御率をもっている。
      • 極端なものだと、「精神属性にはめっぽう弱いが、その他の属性に対しては防御率99(ダメージを1/100にするためほぼ間違いなく1しかダメージを受けない)」というミスト系モンスターもいる。

アイテム

  • 塔を占領すると、まれにアイテムが手に入る事がある*3。その種類は様々。
    • モンスターのパラメーターを上昇させたり、特殊なモンスターへクラスチェンジできるようなもの。
    • 各種の消耗品。攻撃用アイテムのほか、一定回数支配力を回復させたり、1ターンだけ味方ユニット全体の移動力をUpさせたりと効果は様々。
    • モンスターの装備品。装備したモンスターの攻撃力や防御力、移動力などが上昇する。但し装備しているモンスターが敵に倒されると、奪い取られてしまう。

評価点

  • モンスター達を成長させる楽しさ。
    • 経験値により成長するモンスター達。姿が威厳溢れるものへと変わり、パラメーターの上昇はもちろん、モンスターの種類によっては空を飛べなかったものが飛べるようになったり攻撃手段が増えたりもする。そして手塩にかけて育てた彼らが、一連のマップを戦い抜く鍵となるのである。
    • 一連の複数マップ制覇が基本の本作。長く戦いを共にする事となる彼らへの思い入れも強くなり、成長の満足感も大きくなった。
  • 戦術性が発展した。
    • 前作に比べ、地形の種類、属性やモンスターの種類等が増えたため、戦術性が上がっている。ただシステムの基本自体は前作と同様なため、プレイしやすい。
    • 成長するとかなり能力が増えるので、将来を見据えながらの召喚も頭の使いどころ。
  • 前作と違い、戦闘画面でキャラがアニメーションするようになった。
    • ビジネス・アスキー社の攻略本『マスター オブ モンスターズII 天界への手引き』によれば、過去作と比べ以下のように変化していったという。地味ながら進歩しているのである。
      • 『大戦略』や『ファンタジーナイト』ではトーン一色。→前作(I)ではカラー化したが、動きは絵が左右に動く程度。→ 本作ではキャラが前作よりも小さくなったものの、色々とアニメーション。

問題点

  • 当時の視点でも演出は地味。BGMはなくSEもないに等しい。モンスターのグラフィックは、各勢力の単一色で描かれ、淡白。しかし敵味方の区別がはっきりしているというのは非常に利点。
  • 台詞がない。ストーリー性も薄い。シナリオ・マスター・国色を選択したら第一マップに画面が切り替わり、マスターを配置してそのままゲーム開始である。背景についてはマニュアルの付記や、マップ名・敵マスターの名前などから想像するのみ。
    • 「楽園喪失」シナリオの第一マップ「終わりの始まり」では「ナイクル王」と「王妃アケロン」が別陣営として争ってシナリオ名通りの混沌としていく世界観を示していたり、「炎の大地」シナリオのマスター名が「悪夢画家コンティ」「殺人学者スミス」などファンタジーとは思えないものだったりする。
  • 前作ほどではないが運の要素が大きい。
    • 能力値はランダムな初期値から、レベルアップごとに毎回モンスターごとに決められた範囲の中でランダムに上昇していくが、上昇量に補正が無い(低くても伸びは良くならないし、高すぎる時に伸びにくくなる事もない)ため、高レベルになると能力値のランダム差が大きくなる。特にMPは魔法攻撃の攻撃回数に影響するため死活問題。
    • 初期配置がお互いにほぼ自由なマップは、敵マスターが運よく近くにいると短期決戦を挑めて一気に楽になる。
    • 通常戦闘も、命中率の下限はどんなに低くても10%、逆に上限はどれだけ高くても90%となる。また攻撃回数が一回という文字通り一発屋なモンスターも多い。
  • モンスターによっては時間帯で攻撃力が変わるが、攻撃の命中率は変化しない。またどのマップもターン制限があり、敵の攻撃には自動で反撃するため自軍に都合のよい時間帯を待つプレイもしにくく、時間帯の存在意義が微妙。ないよりはあった方がいいが。
  • モンスターごとに固有の「攻撃力加算値」と言う隠しパラメータがあるため、ゲーム内で確認できる攻撃力が不正確でゲームプレイに支障を来す。
    • 例えば、LAW系戦士の「ソルジャー」とCHAOS系戦士の「バーバリアン」の攻撃力をレベル1で比べた場合は以下のようになる。どちらも「x2」なので2回攻撃なのだが…。
      表示上の攻撃力 攻撃力加算値(非表示) 実際の攻撃力
      ソルジャー 8x2 (1~2) 「9~10」x2
      バーバリアン 4x2 (1~10) 「5~14」x2
      • 表示上はバーバリアンが貧弱ユニットに見えてしまう。しかし実際にはどちらも攻撃力の期待値は9.5x2となり、バーバリアンの方がぶれが大きいものの、互角なのである。
    • もっとも極端な例は、妖精系モンスター。最上位「スプライト」は表示上の攻撃力は16x1に過ぎないが、加算値は最低レベル時点で1~160の幅を持っている。
    • 加算値は打撃/投射攻撃に適用され、レベルアップの度に上昇していく。このため、進化を行えない/止まったモンスターでもレベルを上げ続ければ、表示上変化は無いものの実質攻撃力は向上していく。
      • レベルアップ時の上昇値は、対象モンスターのレベルが高ければ高いほど大きい*4
    • ちなみに魔法攻撃についてはレベルアップでは向上せず、ランダムで表示上の値の50~100%の幅を取る。
      • さらに言うと、マスターの大魔法の攻撃力も50~100%幅である。
  • 見た目支配力が足りているのにモンスターが離脱する
    • そのマップやシナリオのクリアすらおぼつかなくなってしまう可能性のある、凶悪なファクターである。知力が高いモンスターが離脱しやすい。
    • 正確には、離脱率と言うより支配成功率と言ったものであり、この成功率は50~100%の範囲を取る。逆に言えば最大で50%の確率で支配に失敗する。支配に失敗したモンスターは通常通り離脱し、中立となる。
    • 支配成功チェックの計算式は 100 + (支配力 / モンスター総数) - 対象モンスターの知力 (ただし50%~100%範囲に丸める)。
    • つまり、支配を試みるモンスターたちの知力の平均値より有意に知力の高いモンスターが離脱しやすいと言うことになる。こう言ったモンスターは支配力が高く多数召喚はできないため、通常は必然的に少数であるので、通常のプレイでは常に「支配力は足りているはずなのに何故か高知力モンスターが離脱する」危険がある。
    • 回避策としてはモンスターの知力をできるだけ揃える、極端なバカモンスターを多く召喚しない、支配力ギリギリまで大魔法を行使しない、などがあげられる。

総評

 ファンタジーでお馴染みのモンスターを使った戦術SLG『マスターオブモンスターズ』。前作も、単にSLGとしての楽しさだけではなく、モンスター達を進化させるという二重の楽しみがあり、熱中度の高いものだった。
 そのシステムをさらに洗練発展させたのが本作。過度に複雑化もしておらず、シンプルにして多彩な遊びができるほどよいものとなっている。また、一連のマップで構成されるキャンペーンモードを、前作以上に前面に出したため、成長の楽しみがさらに増した。


移植等

  • マスターオブモンスターズ2 シナリオ集(1991年8月発売)
    • 追加シナリオ集。一部のシナリオは本作の続編となっており、部隊を引き継げる。
    • 新規モンスターも登場。また一部の既存モンスターには更なる進化先が用意されている。
  • Master of Monsters 魔導王の試練(1997年3月発売)
    • Windows95/98用の移植版。追加シナリオ集も含んだセット。

余談

  • 後にセガサターンで発売された『マスターオブモンスターズ ~ネオジェネレーションズ~』は、『II』のシナリオの1つ「ガイアの夜明け」がベースになっている。
    • PC用のマスターは6名に増加。一方でNPC専用のマスターがいなくなっている。
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  • 1991年

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最終更新:2022年08月07日 20:32

*1 そんな状況に追い込まれたら制限ターン内での勝ちはあまり望めないが

*2 例:魔法攻撃回数6のエンジェルが1回の戦闘で4回攻撃して敵を倒せば4消費。

*3 6%

*4 レベルアップのたびに、レベル一桁なら+1、10台なら+2、20台なら+3、30台なら+4。