天下統一II 乱世の覇者

【てんかとういつつーらんせのはしゃ】

ジャンル SLG

写真はWindows用相剋の果てバリューパック
対応機種 PC-9801VM/UV以降
発売・開発元 【PC98】システムソフト
発売日 1991年7月
定価 9,800円
判定 良作
天下統一シリーズリンク


概要

前作の領国拡大を中心としたコンセプトを踏襲しつつ、システムをさらに発達させた続編。前作に比べ、多くの新システムが導入されている。また、ボリュームも大幅アップした。

特徴と『I』からの変更点

  • スタートが1546年からとなった。
  • ボリュームが増加。
    • 城数が250から400以上へ。武将数も800から1000へ。また『I』にはなかった蝦夷、安房、伊豆、飛騨、伊賀、和泉、伯耆、淡路が新たに加わった。
  • 大名に関して
    • スタート時点での一国一大名制度を廃止。このため一国に複数の大名がいたり、すでに複数の領国を持つ大名がいる。
    • 大名のランク付けが増えた。『I』では豪族、小大名、戦国大名だけだったが、これが国人、豪族、小大名、戦国大名、覇者、天下人と大幅に増えた。ランクは実行できるコマンド数、コストに影響する。
    • 大名に従属という関係ができた。これはシステム的には同盟の一種。だが従属させた大名に対し援軍を要請する事ができる。さらに臣従というコマンドで、従属した大名をただの家臣にしてしまう事ができる。『I』では大名を家臣にする事ができず、生き残るか滅びるしかなかった。
  • 武将に関して
    • 武将や城の名前が変わる。例えば上杉謙信は、元々長尾景虎と名乗っていた。それがある時期が来ると名前が変わるのだ。これは城も同じ。ちなみに歴史的な事象は全く関係なしで、単に時期だけで変わる。
    • 武将の基本パラメータが軍事、知謀、政治の三種類からなるようになった。『I』の内政が知謀と政治に分かれた格好だ。知謀は謀略等に政治は内政や外交等に影響する。
    • 寿命が史実に近いものになった。前作では武将別に寿命が設定されておらず、同じような年齢で死ぬ。それを、各武将別に設定されるようになった。
    • 武将のパラメータが変動する。年齢によって基本パラメーターが増減する。要は年齢による成長と衰えを表したもの。30代~40代前半くらいまでをピークに、山なりの変化をする。
    • 軍団制の採用。『I』では1ユニット1武将だったが、本作では軍団制により、1ユニット最大四武将で構成される。
    • 武将隠居と追放。『I』では配下の武将をシステム上減らす事ができなかった。これを可能にした。
    • 寿命が来ると後継武将が出て、そのまま兵を引き継ぐ事がある。『I』ではこの後継武将がランダムで選び出された武将の能力をそのまま受けるため、史実にないような名将になる事があった。本作では、後継武将は能力が若干低く抑えられるようになった。
  • 各国に兵質という属性が加わった。これは徴兵する兵の強さを表しており、士気(『I』での編成係数)に影響する。このため徴兵に際し、単に石高だけではなくこの兵質も気に留める事が重要。
  • 兵農分離システムが加わった。当時の兵はもっぱら農民なので、農繁期になると動員がままならず戦ができなかった。本作でも農繁期の春、夏はまともに戦ができない(武将の兵力×兵農分離率が春・夏の兵力、但し防衛時は兵農分離率は適用除外)。これを職業軍人を作り出す事で、いつでも戦ができるようにするシステム。兵農分離率が高いと行軍で疲労度が増えにくく農繁期での動員率が上がる、ただし維持費がかかるようになり最大保有兵力も減る。またこの逆で郷士制度というものがある。こちらは職業軍人を減らすシステム。さらに農繁期に無理やり戦をする総動員というコマンドもある。これを実行した場合、収穫が下がり、さらに住民感情まで下がる。
    • 農繁期は戦がやりにくいシステムとなってるが、史実では農繁期でも戦は行われていた。典型的な例は桶狭間の合戦だろう。
  • 内政に鉱山開発が加わった。
  • 外交要素の強化
    • 他の大名に関係改善のための使者を送り出す事ができる。『I』と違い、大名間の関係が表示されるようになった。これは同盟等の外交に影響する。当然関係が芳しくない大名とは同盟など結べない。そこで使者を送って、改善するのだ。
    • 朝廷に働きかけ、官位を貰い威信を上げる事ができる。威信が上がると同盟などが成功しやすくなる。
  • 隣国工作が可能に。隣接した国の住民感情を下げる事ができる。場合によっては、一揆を誘発させる事も。
  • 城の属性の増加
    • 城の強さに地形レベルという要素が加わった。これは地の利の考えを反映したもの。例えば山城なら、山にある時点でかなりの防御効果を持つので、城そのもの強度に上乗せされる。一方、平城の場合は、地の利はほとんど期待できないので、城の強さは城そのものの強度のみとなる。
    • 城の防備に兵糧という要素が加わった。籠城する兵士達を支え、籠城した兵が多いほど消費される兵糧も多くなる。
  • 戦に関して
    • 道の属性に疲労度が設定された。これは道の広さで示されており、広い道では疲労度が低く、狭い道では疲労度が高い。この疲労度は士気(『I』での編成係数)に影響する。例えば、狭い経路から攻めかかると、士気が極端に落ちあっさり敗北という場合もある。また長距離を移動した場合も疲労度が蓄積し士気が落ちる。こちらは兵農分離率が高ければ疲労度の上昇を抑えられる。
    • 城への工作の内容が増えた。『I』では城の耐久度を下げるだけだったが、さらに兵糧の減少、駐留している軍の士気を下げる工作が加わった。この士気を下げる工作のため、寡兵で大群を破るような事が、できるようになった。
    • 戦のフィールドが広がった。『I』では5×6だったものが6×8へ。さらに勝利条件が敵のいずれかの部隊の撃破だったものが、敵陣への到達に変わった。
    • 『I』では正面の敵しか攻撃できなかったが、攻撃(『I』での長槍)のみ、斜め前の敵に攻撃できた。

評価点

  • 城、武将数が増え、国々が史実と同様になったのは素直に嬉しい点。
    • 城や武将の名称が時代によって変わる点も、戦国時代の雰囲気をさらに強くしている。
  • 一国複数大名制により、より史実に近くなった。『I』にあった大名の無理な配置がなくなった。
    • 『I』では本来大名のいない国に、家臣の立場の武将が無理やり大名にされているなどがあった。
  • 外交要素に深みが増し、外交もよりやりがいのあるものに。
    • 『I』にあったバランス調整のための史実と異なる同盟が、一部なくなっている*1
  • 武将、城、国ともパラメータが増え、戦略要素を深くしている。
    • 知謀のパラメータの追加により、武将の特徴がより出るようになった。
    • 城も山城、平城の意味合いがハッキリでるようになった。
    • 国に新たに加わった兵質のパラメータにより、戦略や徴兵基準が単に石高だけではなく多彩になった。
    • 商業のパラメータが国ではなく城に属するようになったため、これも城の攻略基準を多彩にしている。
  • 戦のシステムがより複雑になり、面白味が増した。
    • 道の疲労度要素の付加は、進軍経路を考えるという戦略性を加える事に。
    • 城も兵糧の存在により、兵糧攻めと総攻めのそれぞれの意味合いがハッキリするようなった。
    • 謀略コマンドが増え、寡兵で大群を破る手段が増えた。またこれにより、知謀の意味はより強くなっている。
  • 配下の武将を隠居、追放できるようになったため、『I』にあった上限一杯で新たに武将が雇えないという状況が起こらなくなった。
    • これはCOM側も同様で、『I』では限度いっぱいのCOM大名が支配する国から新武将が現れなかった。これも解消された。

問題点

  • コンピュータが弱くなった。ある意味本作の最大の欠点。『I』ではあれほど強かったコンピュータが、システムの複雑化にともない弱体化した。規模が小さい内は活発なのだが、中規模程度の大名になると、コンピューター側の動きが鈍くなる。このため、序盤こそ厳しい大名はいくつもいるが、やはり難関を越えてしまうと消化試合となってしまう。
    • この理由の一つが、『I』であったコンピューター側のチート要素をなくしたため。
  • 一部、移動により疲労の設定ミスがある。
    • 兵農分離が出来ない薩摩と土佐の大名は、疲労度の関係上蝦夷へ攻め込めなくなっている。
  • 春夏秋冬で1年が終わってしまう。これは『1』と共通の仕様だが、兵農分離システムが導入された事によって普通に戦えるのが秋冬の2回だけとなってしまった。しかも、東北北陸は大雪で冬場は戦闘不能になるので実質1回になってしまっている。
    • あっと言う間に1年が過ぎてしまうので、もたついているとせっかくの武将が寿命で死んでしまう。

総評

『I』のコンセプトである領国拡大を、さらに進化させた続編『II』。シンプルだった戦に多様な要素が加わる事により、攻めの幅が広がった。本シリーズの特徴である、士気の要素をさらに発達させた事により、攻める経路を考える必要が出たり、謀略により寡兵で敵を打ち破れるようになったりと、工夫する楽しさがある。
また、二つしかなかった武将の能力も三つに分けることにより、より史実に近い性格が出るようになった点も、武将を動かす楽しさを増した。
だが一方で、惜しむらくはコンピューターの思考が弱くなった点だろう。これは拡張ソフト『パワーアップセット』や、Windows用移植版でもあまり改善されなかった。
それでも、本作のWin版は天下統一シリーズの定番となり、未だに根強い人気がある。

I・II共に好評で、以降もこのままシリーズが続けば、やがて信長の野望シリーズと共に戦国SLGの代名詞になるかに思えた。
しかし、この後は衰退が顕著になる。
IIのほぼ10年後に出た続編『III』とその続編『IV』は、大きく期待を裏切る惨憺たる出来で、ゲーム性以前に製品として疑われるようなものであった。
システムソフト・アルファーの質の低下は疑いようがなく、Vの家庭用ゲーム機移植版『戦国天下統一』にいたっては、クソゲーオブザイヤーの次点作にまでに落ちてしまった*2

I・IIのような他に類を見ない名作戦国SLGを知っている者からすれば、シリーズの現状は信じがたく目を覆わんばかりであろう。今となっては、I・IIの優秀性を再認識するだけである。

その他

『II』系統はその後、システムの改良とシナリオが追加される拡張ソフト『パワーアップセット』、
パワーアップセット適用状態のIIをWindowsに移植した『天下統一 ~乱世の覇者~』とデータベースソフト『天下統一クロニクル』、
そして、乱世の覇者をさらに改良した『天下統一 ~相剋の果て~』と拡張ソフト『天下統一 ~相剋の果て~ シナリオ集』が発売された。
特に、シナリオが追加できるようになったWindows版は、インターネットコミュニティで個々のユーザーが独自にシナリオを製作し、
新たなゲームの楽しみ方を生み出した。

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最終更新:2023年10月26日 08:36

*1 もっとも甲相駿三国同盟が、プレイ開始時からあるのは『I』と同じく史実と違うが。

*2 既に製作に関与しなくなっていた黒田幸弘への批判を躱すためか、「※本製品については、ミューズソフト株式会社および黒田幸弘氏は、いっさい関わっておりません。」とシリーズ最新作『V』の公式サイトに記されている。