カエルの為に鐘は鳴る

【かえるのためにかねはなる】

ジャンル アクションRPG
対応機種 ゲームボーイ
発売元 任天堂
開発元 任天堂
インテリジェントシステムズ
発売日 1992年9月14日
定価 3,800円(税別)
配信 バーチャルコンソール
【3DS】2012年9月5日/411円(税込)
書換 ニンテンドウパワー
2000年3月1日/800円/F×4・B×1
レーティング CERO:A (全年齢対象)
セーブデータ 2個
判定 良作
ポイント カエルとヘビに変身して謎を解く
テンポのよいコミカルなストーリー
戦闘は文字通りのオートバトル


ストーリー

むかしむかしあるところにカスタード王国とサブレ王国という、仲のよいふたつの国がありました。
そして、それぞれの国には同じ年頃の王子サマがおりました。
カスタード王国のリチャードは、ちょっぴりおシャレでクールな王子サマ。
サブレ王国の王子*1は単細胞で熱血漢、情にはもろいお金持ちのおぼっちゃま。
ふたりは良きライバルでしたが、剣術の試合だけはなぜかリチャードに勝てないサブレ王子でした。
そんなある日、ふたりのもとに大変なニュースが届きました。
絶世の美女とうわさの高い「ティラミス姫」の治めるミルフィーユ王国が、悪の大魔王「デラーリン」率いる「ゲロニアン軍団」に占領されてしまったのです。
さあたいへん! ふたりは姫を助けるため、ミルフィーユ王国に向けて旅立つのでした。
(VC版説明書より)


特徴

  • フィールドマップと町中ではRPGのような見下ろし型視点、ダンジョンでは真横視点の謎解き・探索重視の2Dアクションの要素があるアクションRPG。ハートによるライフ表示(ハート1個が4段階に分かれる)、回復アイテムを入れる瓶、重い物を動かせるようになるアイテム、最強の盾といった特徴はゼルダの伝説シリーズを髣髴とさせる。
    • 公式やCMでは『変身ギャグベンチャー』と銘打たれている。
  • 戦闘は、敵とぶつかるだけで勝手に戦闘が進むオートバトル。運要素は一切なく、主人公のステータスが一定以上あれば確実に勝利できる(能力差が大きいときは触れた瞬間に敵を弾き飛ばして勝利になる)が、足りないときにはザコ敵にも勝てなくなる。
    • ステータスはストーリーを進めてアイテムを手に入れることでパワーアップしていく。このパワーアップは実質的に、ボス攻略のためのフラグ立てでもある。
    • プレイヤーが戦闘中にできることはBボタンで選択できる「逃げる」か「アイテム使用」のみ。ボス戦では逃げられず、アイテムも「使う隙が無い」というメッセージが出て使えない場合が多い。
  • ストーリーを進めていくと、水に浸かったときにカエルに、温泉卵を食べたときにヘビに変身できるようになり、倒れるか食べると気持ちよくなって気絶する果実を使用することで人間に戻る。人間・カエル・ヘビの3つの姿をうまく使い分ける謎解きアクションが本作のキモである。
    • 人間の姿は戦闘能力が最も高く、重いブロックを押して動かせる、人間キャラと会話できるなど、総じて基本形態といったところ。
      • 王子は泳げない設定であり、カエルに変身できないうちは水に入るとどんどんライフが減り、最後には倒れてしまう。
    • カエルの姿になるとジャンプ力が格段に向上し、水の中も自在に移動できるが、戦闘能力は著しく低下し、ヘビ相手だと無力になる。
      • 虫系の敵に対しては食べる事で一方的に倒せるうえに、1匹につきライフが1回復する。一定の時期まではゲロニアン兵に話しかけることでエサをもらい、ライフを回復することもできる。
    • ヘビになるとジャンプ力は皆無になる(1ブロック分の高さならはい上がれる)が、細い通路を這い進める。
      • 自分より弱い敵ははじき飛ばすか、噛み付いて「ブロック」にするかを選択出来る。このブロックは足場として利用できたり、人間の状態で押して動かせたりする。
      • ヘビ相手と会話することができ、ゲロニアン兵に話しかけると苛められ、カエルに話しかけると(例外はあるが)逃げられる。
  • アイテムの日記帳を使うことで、どこでもセーブが可能。
    • セーブを行うと「にっきをみる」という項目でこれまでのストーリーのあらすじを見る事が出来る。
    • あらすじ機能は後世のRPG定番のシステムになっていくが、初出は今作と思われる。
  • ゲームボーイでは珍しく、漢字カナ混じりのテキスト。
    • 使用されている漢字は102種類と少ないものの、十分に漢字が使われている印象を受ける。
    • 怒 声 」「 驚 愕 」など、場面に応じて文字サイズが四倍角になる。特徴的なSEも同時に流れるのでインパクト抜群。
  • 登場人物はみな非常に個性的。
    • 熱血漢な主人公とクールなライバルがさらわれたお姫様を助けに行く...というところまでは王道だが、最初は事あるごとに金の力で問題を解決しようとする主人公。そしてそんな主人公を利用するかのごとく、要所要所のイベントで超高額の金を要求される。
    • 主人公が大金を使うのは「他に手段がない時」「とにかく急がなければならない時」「貧乏な子供が、なけなしの物資を自分のために使ってくれたお礼」などであり、嫌味な点は全くない。もちろん金でなく自分の力で解決しようとする意思もある。
      「金の力に物を言わせる」のではなく、「正義のためにはどんな損失も恐れない」という好感の持てる主人公である。
    • 主人公の旅路を度々かき乱してくる魔女マンドラ、片言でしゃべるアルフレド・じんべぇ、発明家アレヲ=シタイン博士など印象に残りやすいキャラが多い。
    • (強力な)仲間と一時的に同行できるのも、後の『ゼルダの伝説 夢をみる島』のワンワンなどに通ずるものがある。

評価点

  • ゲームバランスのよさ
    • 戦闘の結果はステータスに応じて決まってしまうが、ザコ敵相手であれば逃げてやり直すことができるし、シンボルエンカウントであるために、戦闘そのものを避けることもできる。
    • 逆に、敵よりも王子の方が圧倒的に強い場合は、触れた瞬間敵を弾き飛ばして勝利できる様になっている。独特の戦闘システムが煩わしくならないように工夫されている。
    • ボス戦は現時点で手に入る最大のステータス、最強の武器と防具を取得し、ライフ満タンで挑んでライフ1つを残したギリギリの状態で勝てるというバランスで設定されている。
    • ダンジョンの謎解きは複雑すぎず簡単すぎずという絶妙な難易度で、人間・ヘビになる必要がある場所では変身アイテムが宝箱に入っている親切設計。一方でジャンプをミスると敵に囲まれる場所で無力なカエルになるトラップもある。
    • ライフがゼロになってもゲームオーバーにはならず、最後に訪れた町の病院に送られるだけでペナルティは無い。
      • ライフの回復も、病院だとハート1個につき2クリと安価で行える上、各地に点在する「イケイケだま」という水晶玉に触れるとその場でライフが全快する。
  • コミカルなストーリー
    • シナリオ担当はファミコン探偵倶楽部シリーズを手掛けた坂本賀勇氏。
    • パロディやジョークがあちこちに散りばめられており、斜め上にプレイヤーの予想を裏切っていく展開は「してやられた」気分になる。そして、最後の最後でド直球の王道展開となるのが実にお見事。ラストバトルは若干ショボいが(後述)、BGMと相まってかなり熱い。
    • 地名やアイテム・キャラクター名の幾つかに何かしら元ネタが存在する。そもそも、タイトルがヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』のもじり。
    • 「サブレ王国」「カスタード王国」「ミルフィーユ王国」などお菓子関連の単語が元になっているものが多いが、金塊を手に入れるために向かう山が「フーリン火山」、温泉のある村の名前が「ゲロベップ温泉」、アイテムを開発している「ナンテンドウ」、体力を大幅に回復させる「ワイン一番絞り」と、元ネタは豊富。
    • 埋蔵金掘りに夢中の「こぴーらいたー」*2がいる。
    • 「東京コミックショーZ」という名前のロボットや「カザンオールスターズ」という名前の集団など、今の時代ではまずできないようなはっちゃけたパロディも。
  • 主人公含め登場するキャラの言動も思わずクスリとくるテキストが多い。
    • 村や町には壁新聞があり、ノリはスポーツ新聞の見出し風。ストーリー進行によって内容が変わり、ほんの短期間だけしか表示されない新聞も存在する。
    • しかも、全てナンバリングされている。そのため、全部読むつもりでいて、ナンバリングが一つ抜けていたりするといい感じに脱力感が味わえる。
    • どう見ても「軍手」にしか見えないパワーグローブや、いかにも怪しすぎる薬等、アイテムにもツッコミどころが豊富。
    • エンディングの最後で行われる主人公と姫の従者の会話も非常に有名。
      + 終盤~エンディングに関するネタバレ ティラミス姫と魔女マンドラが同一人物であることが物語の最後で判明する。ティラミス姫と結ばれリチャード達を見送った主人公は、最後の最後でどちらが本来の姿かを姫の従者に問うのだが、従者は少しの沈黙の後以下の通り答えるのである。

      そのようなコトは どちらでも
      同 じ
      では ありませんか!

  • 印象的なBGM
    • BGM担当はとたけけこと戸高一生氏。おなじみの「けけソング」もある場所で聞ける。
    • フィールドBGMである「王子の冒険」はゲームボーイのいわゆるピコピコサウンドを生かした軽快な一曲となっており、今なお絶大な人気を誇る。

賛否両論点

  • ダンジョンにおける、溶岩やトゲといった即死要素。
    • 全体的に難易度が控えめで遊びやすいゲームではあるが、溶岩やトゲのある場面だけは比較的シビアな操作が要求される。
    • 本作ではどこでもセーブ可能なので、難所の手前でセーブしておくことで対策可能。またライフがゼロになっても最後に訪れた町の病院に送られるだけで済む。
  • 主人公だけ、パッケージ絵(栗毛オカッパの美少年)とドット(黒髪坊主の色黒)のグラフィックが似ても似つかない。
    • 困った事に、ゲーム中の言動はドットの方がらしい外見をしている。

問題点

  • 謎解き以外は単調なゲーム性。
    • オートバトルであるうえに「能力が一定以上なら勝てるが足りないと負ける」というバランスであるために、戦闘中は基本的に眺めているしかない。
    • ストーリー進行の大半がおつかいイベントであり、RPGとして見ると展開がワンパターンである。この2点はコミカルなストーリーにかなり助けられている。
  • 必要なアイテムが揃わないと先に進めない。
    • その時点までに必要なすべてのアイテムを集めておかないと敵に勝てないので、何を取り逃しているのかに気づかないとフィールドやダンジョンを何度も捜索することになる。
    • 実は、終盤のボスには例外的な攻略法があるものが多く、ステータス上昇アイテムを全て取らずとも勝利できる。終盤のステータス上昇アイテムは一種のやり込み・収集要素といえる。
    • 変身アイテムは消耗品であり、ダンジョンに用意されているものも数が限られている。足りなくならないように、店で買いだめしておくのが安全である。
    • ストーリーの進行状況によっては、拠点にしている町の店が利用できなくなる(特にイベントで壊れた店は二度と利用できない)ことにも注意が必要である。
  • ラスボス戦の戦闘システムが地味。
    + ネタバレあり
    • ラスボスが張った回転するバリアの間を縫ってAボタンで攻撃を繰り返す。タイミングは一定かつゆるくダメージは少ないので、まず負けることはない。むしろ、道中の方がきつい。
    • イベントとして見れば、仲間が集結し真の力を開放した伝説の武器で熱い音楽に乗せて攻撃すると敵が派手な悲鳴を上げる、とても盛り上がる展開。ここに難しいゲームを入れて雰囲気に水を差すことを避けたのかもしれない。

総評

見た目は普通のRPGだが、パロディやジョークがテンポよく挿入されたコミカルなストーリーは面白く、適度な難易度と耳に残るBGMも楽しい。ゲームボーイ初期の作品とは思えない完成度の高いゲームである。
オートバトルやアイテム収集を強制させる自由度の低さが玉に瑕だが、忘れたころに何度もやってみたくなる不思議な魅力がある。


余談

  • EDで放置すると「See you again」と出るが、残念ながら未だ続編の動きはない。
  • 海外未発売ということもあって任天堂作品の中ではマイナーな本作だが、思い入れのあるスタッフが多いのか、任天堂の他のゲームにゲスト出演をする機会が多い。
    + ゲスト出演一覧
    • ワリオランドアドバンス ヨーキのお宝
      • 「軍手」などのアイテムを開発したナンテンドウのアレヲ=シタイン博士が登場。本作ではマサカーチョット工科大学名誉教授の考古学者として行く先々で ワリオに投げられて 活躍する。
    • 大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS / Wii U
      • アシストキャラとして22年ぶりに表舞台に登場。カエルやヘビに変身・ファイターを土煙をあげてポコポコ殴る...と本作のシステムを再現した動き
      • 本作で初めて声がついた。同作のルキナ役・小林ゆうが兼役で演じており、本作のファンからは「非常にかわいらしい」と好評。
      • 「俺の知ってる王子と違う」といったパッケージとドット絵の違いを弄るネタもよく見られた。
      • 続編大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIALにも引き続きアシストフィギュアとして登場する他、スピリットとしてサブレ王子と共にリチャード王子も登場する。
    • 『トモダチコレクション 新生活』
      • 「バイリンガエル」という本作に登場するアイテムが期間限定で配信された。
  • 『Vジャンプ』連載の長寿ゲーム紹介漫画『犬マユゲでいこう』の作者石塚2祐子は本作の大ファンで、発売から十年以上経過しているにもかかわらず本作を作品内でメインに取り上げたことがある。

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最終更新:2023年02月13日 07:32

*1 デフォルト名は存在せず、プレーヤーの入力した名前に応じて「○○○○・デ・サブレ」と名乗る。

*2 MOTHERシリーズの制作で知られる糸井重里氏のこと。本作発売の数年前にTV番組の企画で埋蔵金を探していた。