提督の決断

【ていとくのけつだん】

ジャンル 歴史シミュレーションゲーム
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対応機種 PC-9801
PC-8801
X68000
FM TOWNS
MSX2
スーパーファミコン
メガドライブ
発売・開発元 光栄
発売日 【PC98】1989年9月21日
【PC88】1990年11月
【SFC/MD】1992年9月24日
定価 通常版:14,800円
Withサウンドウェア:17,200円
判定 良作
提督の決断シリーズ
初代 / II / III / IV
コーエー歴史SLG作品


概要

光栄(現・コーエーテクモゲームス)が製作・発売した歴史シミュレーションゲームで、第二次世界大戦を扱ったWW2シリーズの第一作である。
当時戦争もののゲームと言えば大戦略シリーズのようなボードゲーム型が基本で、プレイヤーのやる事も戦闘部分のみという作品が多かった。
対してこの作品は、それらに無かった要素を多く取り入れ、「歴史」シミュレーションに相応しい作品として仕上がった。

特徴と評価点

  • プレイヤーは大日本帝国海軍またはアメリカ合衆国海軍の第一艦隊指揮官(提督)となって、艦隊を編成し太平洋にある各都市・基地を占拠しつつ敵艦隊を撃滅していくよう指示を出して行く。
    • あくまでも海軍提督というところがポイント。このため戦果が悪いと戦略会議で陸軍の意見を通されたり、最悪解任されてゲームオーバーとなってしまう。
  • ゲームオーバーとなる条件は他にも第一艦隊が撃破されるというのもある。これを避けるため第一艦隊は母港に待機して他の艦隊で戦わせ、内政・外交に専念するということも可能。
  • 敵国の艦船をすべて撃沈するかすべての港湾基地を占領することが最終目的だが、それ以外にも作戦目標を達成すれば終了するショートシナリオがある。シナリオは「日米交渉決裂」(昭和16年11月1日開始)から「大和特攻」(昭和20年4月7日)まで。
    • シナリオ9本の内「日米交渉決裂」を除く8本がショートシナリオ。作戦目標を達成するとそのまま終了するか、通常シナリオに移行するかを選択できる。
    • ショートシナリオの作戦自体はそれほど難しくない。しかし、ショートシナリオを終えて通常シナリオに移行するとなると話は別。当然、史実の通りミッドウェー海戦以降のシナリオ(シナリオ5「ソロモン海戦」以降)では、日本は徐々に難しくなる。特に最終シナリオ「大和特攻」で通常シナリオをクリアするのは至難の業。手持ちの艦船が少ない中で、艦船・国力ともに日本を凌駕するアメリカに挑むことになる。
  • オープニング(単色表示によるアニメーション)が非常に重厚で渋く、また楽曲は「宇宙戦艦ヤマト」などで著名な宮川泰。軍歌調のものを始めとした多彩なBGMでゲームの雰囲気を盛り上げている。
    • ちなみにアメリカ軍の母港BGMはハワイアン・ミュージックである…。
    • ゲーム画面のバックが黒色であると言う点も重厚さを醸し出す手助けをしている。続編では表示色数が最大8色に制限されていたPC-8801版が出なかった事もあってか、一般的なカラフルな画面になってしまった。
  • 戦闘は戦略パートと戦術パートに分かれている。
    • 索敵機を飛ばし、広い海の中から敵を探す事から始まる。うまく見つけた場合攻撃となるが、航空隊を向かわせるにせよ艦隊が向かうにせよ、準備と到着までの時間が掛かる。相手も移動している可能性があるので、発見ポイントにいるとは限らない。相手の動きを読んで攻撃を向う事となる。当時の海戦の雰囲気がよく出ている。
    • 戦術パートは一般的なターン制のSLG。艦船での戦闘なので、当然、遠距離攻撃ができる。当時の他の光栄のゲームでは見られなかった、ゲーム性があった。
    • 第一艦隊以外の戦闘はCOM戦。
      • プレイヤーが直接動かせる艦船ユニットは第一艦隊のみで、第二艦隊以降はコンピュータ任せになっている。COMは意外に頼りになる。
    • 第一艦隊が母港にいないと各種内政・外交・兵器生産の多くが行えない。
      • このため、第一艦隊はできるだけ母港に留まっているのが内政的には圧倒的に有利であるのだが、戦闘効率は当然CPUよりプレイヤーが操った方が上。大規模作戦時には第一艦隊を出していくのが通常のプレイとなる*1
      • …と言ったプレイスタイルを想定してか、第一艦隊が母港を出港する時にはグラフィック入りでファンファーレが流れる。
  • 光栄らしく、艦隊戦・航空戦だけでなく、外交や内政といった戦略面にも力が入れられている。
    • プレイ国は日本(ゲーム中では大日本帝国)とアメリカ(ゲーム中では連合国)だけだが、外交相手としてイギリス・フランス・オランダ・ドイツ・イタリア・スイス・スウェーデン・ソビエト・中国・オーストラリア・インド・タイ・ブラジルがある。
    • 本作の外交は他の光栄作品のそれとはかなり趣が異なる。「同盟」は単なる不戦同盟ではなく、日本・連合国との連携関係の構築となる。そのため、同盟が成立すると同盟国の支配地域の基地が自勢力のものになる、技術協力などが成功しやすくなるといった特徴がある。
      • 滅多にないが、イギリスやオーストラリア、オランダとの同盟が成立すると連合国所属のイギリス・オーストラリア・オランダの艦船が日本所属になる。
    • 当時の光栄作品は、どの道敵になる上効果も薄い*2といった観点から「外交不要論」なる意見まであったが、今作では技術開発などで重要な役割を果たす場合もある。
    • なお、日米間では同盟はもちろん、外交交渉すらできない。
      • その他にも中立国のスイス・スウェーデンは同盟できない。
    • 資材や兵力・燃料といった軍事力にかかわるデータだけでなく、工業力・技術などの内政面にかかわるステータスもある。
      • 特に工業力は重要なステータスで、沈没した艦船を新造しようとすると工業力を消費する。駆逐艦や潜水艦の消費量は少ないが、主力である戦艦や空母は莫大な工業力を消費するので、工業の育成と戦力の保持という二面をどう両立するかも重要である。
      • 造船には期間を設定できる。短い期間では多くの工業力を消費するが、長く期間を取ると少なくてすむ。そのため、泥縄式の造船ではなく、計画的に造船することが求められる。また、このため戦術的な大敗は史実同様に取り返しの付かない戦況の悪化を招くこともある。
      • 新兵器の開発ともかかわるため、技術も重要である。特に艦船に関する技術すべてを80(MAXは100)にすると「新型艦船」が建造できる。これはコストが非常に低い上に極めて高性能な艦船を作ることが出来る。例えば、速度は40~50ノット*3耐久力と艦船攻撃力が戦艦並みの駆逐艦といった具合である。
      • そこまでしなくとも、技術が向上すると攻撃や防御で補正を受けるため、自国が強くなったことを実感できる。
      • 特に電波探信儀(索敵用レーダー)、電波照準儀(射撃用レーダー)、新型戦闘機(ジェット戦闘機)は非常に便利なので、技術開発を怠るとかえって面倒くさい上に痛い目にあう。
  • 陸軍との交渉が肝。
    • 作戦目標を決めたり、外交を行ったり、内政を行ったりと、いろいろなことを行うためには陸軍と会議を開く必要がある。そして、陸軍が賛成するとその提案は実行される。
      • 海軍(つまりプレイヤー)が功績を挙げると海軍の発言力が強まるが、作戦目標の失敗などが続くと陸軍のほうのそれが強まり、やりたいこと・やるべきことがなかなか可決されず、ますます苦境に陥るという悪循環にはまることも。
      • 作戦目標決定など、海軍が功績を挙げていても陸軍に反対される確率が高いコマンドもある。
      • 陸軍が反対する際の、「 陸軍としては海軍の提案に反対である 」というセリフは、本作を象徴する名(迷)言として各所でネタにされている。
    • 陸軍は序盤から作戦目標に日本であればハワイやポートモレスビー、連合国であれば東京やトラックなどの難所ばかり提示してくる。
      • そのため、「最大の敵は相手国ではなく陸軍」などといわれることもしばしば*4
  • 無電による情報の取得。
    • 指示を与えた後の結果などが無電(無線電信)を意識しており、当時を思わせる趣きのある演出になっている。
    • 「無線封止」を行い、第一艦隊の被発見率を低下させる、と言う要素も盛り込まれている。
  • テンポがよい。
    • 毎月一日に燃料・予算・資材などが納入される。
    • 航空機は陸軍の承認が必要なものの予算を投入すればすぐに出来上がる。なお、機種は「戦闘機」、「雷爆機」、「偵察機」と一元化されており、細かい機種設定は無い。技術が向上すると「長距離爆撃機」、「新型戦闘機」も加わる。他に基地攻撃専用の武器であるロケット弾も。
    • 艦船の改造(電探の設置、新型戦闘機の離発着可能な空母への改装など)・新造は1ヶ月単位で扱われる。このため1日に改造しても月末に改造しても月が変わると1ヶ月経過の扱いとなる。これを利用すればわずか1日で改造を終わらせることも可能。
    • 輸送も一瞬で完了。ただし、母港からの距離に応じて次回の輸送が可能になるまでの間隔という概念がある(例えば、ある基地に一回輸送すると次の輸送は10日経たないとできない)こと、制海権・補給線を確立していないと行方不明になる輸送船や航空機もあることから無茶な輸送はできない。
      • 史実無視という側面もあるが、ゲームのテンポをよくしているのも事実。
      • 続編に比べるとリアルさには欠けるが、その分シンプルな楽しさがあった。
  • 通商破壊もできる。効果は非常に小さくあくまで一応レベルだが、プレイヤーが日本軍の場合、初期にこれを喰らうと結構効く。
  • 中だるみしにくい。
    • 特に日本では歴史シミュレーションで問題となる中だるみが起こりにくい。というのも昭和17年を過ぎると、史実通り連合国の新造艦が次々と登場してくる上、攻略すべき基地には史実での要所ポートモレスビー(基地所属の爆撃機はなんと最大480機!)、異様に頑丈なハワイ・サンフランシスコ・ロサンゼルスが待ち受けている。
    • しかも、拠点となる母港は自由に変更できないため、アメリカ本土に行くまでが一苦労。
      • ただ、最終盤は敵艦をほとんど沈没させているため緊張感は欠けがち。
  • 日本は序盤シナリオは戦力が充実しており楽で、後半シナリオは国力が乏しくなり非常に厳しい。何故か電気以外の技術力まで下がってしまう。逆に連合国は序盤は資源が分散している為、中央集約に時間が掛かるが、後半は溢れる国力で圧殺できる。
    • ちなみに、日本側でプレイする場合はミッドウェイ海戦シナリオで始めるのが最も国力が高い&難易度が低い。
      • ただし日本軍の支配領域が広いため、連合軍がどこを攻めてくるか分かりにくく、敵の主力を撃滅するまで忙しい迎撃戦を強いられる。これが辛い様ならできるだけ初期のシナリオから始めればよい。
      • 逆に大和特攻・日本側で連合軍と講和に持って行ければ、マスタークラス。
    • なお真珠湾攻撃シナリオは、目的地であるハワイが前述したように異様に頑丈な上に普通に迎撃・反撃してくる*5ため、返り討ちに遭って逆にこちらが壊滅する可能性もあり、印象ほど楽ではない*6

問題点

  • ゲームが長引きやすい。
    • 基地を陥落させるために何度も攻撃しなくてはならない上に戦闘の総ターン数が多く、一度に参加できるユニットも航空機を含めると16を超える。この為同じ事の繰り返しとなり、絵面や操作の両面で飽きがきやすい。
      • 攻撃の命中率やダメージもあまりあてになるものではなく、その点も無駄に戦闘が長引く一因になっている。
      • 戦闘画面をオフにしても戦闘経過は詳細に報告されるので、コンピュータの戦闘は観戦オフ推奨。また第一艦隊は基本的に母港で政策を見るため、プレイヤーが直接操作をする事はないのがまだ救いだが。
      • 戦闘表示on/offで戦闘結果は相当に変わってくる。もっともこれは光栄のゲームではありがちな事で、戦闘のたびにon/offを選択できる『II』・『III』においては、プレイヤーにとって有利な選択を行うというプレイヤーチートが…*7
  • 航路設定が非常に面倒。目的地を決めての委任はできず、一定距離ごとに目的地を決め直さなければならない。
    • 艦隊の現在地点から直線で目的地に向かう仕様のため、目的地指定時に線上に島などの航行不能物があると「途中で陸地があります」や「指定できません」という表示がでる。
    • 特に日本の初期母港である呉周辺など周囲が陸地に囲まれている場所で顕著。
  • いきなり無茶な兵器ができる。
    • ゲーム開始時にボーナスポイントを割り振れるのだが、ゲームレベル1だと割り振り次第では1941年の開戦時から長距離爆撃機・新型戦闘機・電波照準儀などを開発できる。
      • 補足説明すると、史実において、本作の長距離爆撃機に相当する爆撃機B29は1944年に初出撃した。ジェット戦闘機もドイツで1944年に登場して戦果を挙げるが、まともに運用できるものが登場したのは戦後である。電波照準儀(と電波探信儀)についても、電気技術で遅れていた上にそもそも電気技術を軽視していた日本軍では戦中まともに運用されていない。
    • 長距離爆撃機はその名の通り、離れた基地への自動爆撃が可能で、且つ撃墜されにくい。10機程度では大した効果はないが、100機もあれば、威力は十分。複数の前線基地に配置すれば、それだけで相手基地が陥落することも多々。
      • ちなみに上陸作戦でも登場することがあるが、ユニットとしては弱く、また相手も新型戦闘機がない限り攻撃してこない為、無視してOK。
    • 本ゲームでは戦闘機と雷爆機の役割が決まっているため、長距離爆撃機は基地施設や艦隊は攻撃できても陸兵と敵航空隊は攻撃できない。なのに陸兵からは攻撃され撃墜される。
    • 電気や砲熕などの技術レベルを大幅に上げると「ロケット弾」なる兵器が開発されるが、艦船への搭載量が少ないため、手間のわりに威力は微妙。しかも兵器生産と艦船改修が必要となり、これを搭載した艦船は空母の場合は雷爆機が、その他の艦種では偵察機の搭載が不可能となる。
      • 基地武装度が高い敵基地への空撃では甚大な被害が出るため、援護艦隊による事前ロケット攻撃には一定の効果はあるのだが、ロケット弾を生産し配備するには大きなコストが必要となり、見合わないだろう。
  • 艦船の命名と建造に制限がある。
    • 本作では自由に艦船の名前をつけることができず、「沈没した船の名前」か「予め用意されている名前(ただし機種によっては使えない)」を使うしかない。また戦没した船がなければ新造はできず、沈没した艦がなくても新造したければ自沈処分するしかない。
      • このため、艦船の最大数も史実の艦船の量に左右される。艦船の絶対数が少ない日本は不利。
      • ついでに言うと何年も先に完成する艦船がゲーム開始時に予約されており(例えば空母「信濃」など)、それが完成するまで枠の少ないまま進めざるを得ない。もっともこれは日本軍・連合軍、お互い様であるが。
      • 現存艦とは別に用意されている艦名も少ない為、艦種の偏った建造ばかりしていると「大和」という名の潜水艦、「伊19」という名の弩級戦艦という史実の命名基準から外れた名称となることもしばしば。*8
      • そもそも潜水艦は「新規建造用に用意されている艦名がない」為、沈没再建造以外では必ず艦名基準から外れることになる。
      • 機種によっては艦名を一覧から変更できるが、保有可能な艦船の数は変わってないのでやはり日本が不利。
  • 「弩級戦艦」の誤用
    • ゲーム内容に直接係わるわけではないが、シリーズの以降の作品でも大和型の分類が「弩級戦艦」となっている。本来の意味での「弩級戦艦」は、太平洋戦争開戦時での最古参の金剛型よりもさらに前の世代であり、当時は既に日本海軍に現役の戦艦としては存在していない。
    • 戦艦の歴史に詳しくない人にとっては気にならないであろうが、仮にも「弩級」という言葉の発祥元である海軍を主軸にすえたゲームでのこの誤用は不見識の誹りを免れないだろう。
    • 本作では「超戦艦」と言った意味合いで使っているのだろうが、「弩級」を「常識外に凄い」と言った意味合いの言葉として、よりによって発祥元より後世の戦艦に適用したためにこのような事態になってしまったと思われる。
  • 将校の能力の効果がわかりにくい。命中率に差が出るらしいが…。勇猛な戦果って何?
    • 本作では将校の能力は基本的にオマケ程度しかない。実際の戦闘力は艦船の性能や航空機の数・練度によって決まる。
    • 効果を実感できるのは能力「作戦」くらいで、「作戦」の高い人物を陸軍との会議に連れて行くと提案が通りやすくなる。
      • 各基地に寄港している艦隊の提督による「軍政」においては、経験の向上による作戦の上昇に伴う軍政成功率の変化は誰にでも感じ取れるだろう(PC-9801版)*9
      • また、「作戦」の高い人物を第一艦隊司令にするとその人物からの助言を得られやすい。
    • 「提督の決断」だが、提督でない人物もいる。具体的には友永丈市。彼は空母「飛龍」の航空隊長で、生前の階級は大尉*10なので二重の意味で提督ではない。
      • さすがに後発のコンシューマ版(SFC・MD)では吉川潔ともども木村昌福と草鹿龍之介に差し替えられて修正されている。
  • また艦船ごとに運が設定されており運が高いほど被弾しにくいとされているが、効果を実感できるほどの差はなく死にステータスと化している。そのためか、次作以降では廃止された。
    • さらに戦闘にほとんど参加しないまま事故で爆沈したにもかかわらず本作での運は81と高い戦艦・陸奥や、最初に沈んだ米空母にもかかわらず終戦まで生き残った姉妹艦のサラトガ(運74)よりも何故か若干運が若干良いレキシントン(運76)など運の数値に疑問を感じるものもある。
  • 妙に敵が有利になる現象が多い。
    • 敵スパイによる諸工作は成功しやすく、威力もそこそこあるのに対して、こちらの工作は手間がかかる・成功しにくい上に成功しても効果も薄いと、コマンドの無駄遣いといってもいい内容。
      • ただし、敵対勢力との友好度を下げる手段は工作の住民扇動が唯一の方法であるため、存在価値が全くないわけではない。
    • またこちらの第一艦隊は全滅するとその時点でゲームオーバーになるのだが、敵国の第一艦隊を全滅させても瞬時に再編成されてしまう(撃破した艦隊や撃沈した艦船が復活するわけではない)。
      • さらに、敵国の艦隊が燃料切れかになるかその艦隊に所属している艦船が速度0ノットになった時も瞬時に母港へ帰投してしまう。
    • 公式攻略本では機雷に接触してもダメージを受ける・与えられる確率は50%となっているのに、基地に設置された敵の機雷はよく当たる。本当によく当たる。攻略本や当時の雑誌でネタにされたほどよく当たる。こちらの機雷設置は資源とコマンドの(ry
      • というか、敵基地の機雷は戦闘開始時に3個自動設置される。こちらは1日に1個しか機雷を設置できない。
      • 海上でのランダムイベントの1つである機雷接触は、シナリオ1でさえ日本の領海を出た瞬間に喰らうのは誰もが通る道であったと思われる。
      • こういった現象は当時の光栄のゲームではよくあることだった。原因は不明。
  • CPUの戦略がそれほど頭がよくない。
    • 基本的に直線的な動きしかしないため、索敵やレーダーを使わずとも敵艦隊の推測がしやすい。囮を作って敵艦隊を集中させている間に敵航路を外れたところから物資のある基地を急襲という戦法が容易に取れる。
    • 最初の戦力さえ駆逐すれば、空母2+護衛、戦艦1+巡洋艦1、駆逐艦2など、手持ちの数少ない艦船を小出しにしては逐次撃破されていく。
      • ただし最初の戦力を駆逐するところまでは、やりがいがある。怒濤の艦砲射撃で陸兵をどんどん削っていき、数日で陥落させられてしまう。敵の重点作戦目標を察知して迎撃や補給ができればいいが、そうでない場合、多くの場合において艦隊による援護は間に合わない。何せ数日で落ちてしまうのだから。
  • 陸上砲台の対艦能力がなさすぎる。航空機・上陸部隊・駆逐艦の撃破には役に立つものの、戦艦クラスに大挙されると射程外から攻撃されて一瞬で殲滅される。
    • ただし、史実でも陸上基地が海からの侵攻部隊を撃退した例は駆逐艦疾風・如月をそれぞれ陸上砲台・F4Fの攻撃により撃沈し日本海軍を一時退却に追いこんだウェーク島の戦い*11のみであるため、意外と史実通りだったりする。
    • 本来は、陸上砲台側が圧倒的に装備が劣っているような状況でもなければ、軍艦は砲撃戦で陸上砲台には決して勝てないとされている。これは不安定な水上に浮いている軍艦に対し、強固な地面の上に設置される砲台では後者の方が命中率に優れる事や、少しの被弾でも浸水・沈没の可能性がある軍艦の防御面での絶対的な不利があるなどの理由による。
    • ちなみにハワイなど武装度が99の基地などであれば、航空機に対しては結構な攻撃力を発揮する。
  • 艦船は敵からの攻撃を受けると一定確率で火災が発生するのだが、その火災が鬼仕様。
    • 消火できるのは一箇所のみな上に失敗すると全く無意味なターンになるにもかかわらず、複数箇所での火災という重ね掛けすることが可能であるため火災を発生させることができれば容易に足止めできてしまう。
    • 残りターン・装甲・火災発生回数にもよるが、それ以上攻撃しなくとも放置しているだけで沈没確定になることも。
  • 欧州戦線は、太平洋戦争の状況に関わらず史実通りで変化することはない。
    • そのためプレイによっては「日英蘭」対「米独伊」といった奇妙な状況になることも。

総評

徹底的にリアル嗜好だったG.A.M制作の初代『太平洋の嵐』の後発として発売された本作品は、いろいろと粗いところがあるものの遊び易さからおおむね好評だった。
これまでのウォー・シミュレーションゲームはWW2に限らずHEX戦のみのボードゲームスタイル(要するに大戦略シリーズのような作品)が主流で、政治・経済・外交・技術開発、さらに陸軍との交渉などにも視野を大きく広げ、史実上の提督たちの顔CGも描かれた本作はこれまでにないものであったことも手伝って、広く受け入れられていった。
輸送や航空機生産などでのリアリティのなさや航空機の扱いが少々お粗末ではあるが、『太平洋の嵐』と異なるこれらがかえってシンプルな面白さを引き出していた。
同時代的に漫画家かわぐちかいじの『沈黙の艦隊』やWW2の架空戦記を扱った小説が流行したことも、シリーズ化の追い風となったように思う*12

そして、当時の主流機だったPC98や88だけでなくMSX2、FM TOWNS、X68000やSFC、MDといった当時のほぼすべてのパソコン・コンシューマー機にも移植され、続編も『IV』まで作成されるほどの人気作であった。しかし…。


その後の展開~黒歴史化へ

Windowsマシンが主流となり、『信長の野望 戦国群雄伝』など、光栄の旧作の中でも人気作品がWindowsへ次々と移植される中、のちに『IV』まで作られた人気シリーズの第一作であった本作が移植されることは無かった。また、2003年以降、コーエーの節目の年に発売された様々な復刻版のリストにも本作が載ることはなく、事実上の黒歴史となっている。

これには理由がある。実は、本作は政治的にリアルで問題となる内容をはらんでいたのである。それらを挙げると……

  • 新型爆弾の開発
    • 要するに原子爆弾である。おまけに当時の呼称そのまんまである。長距離爆撃機からこれを投下すれば相手基地を一発で壊滅させられるという、どうみてもかなりヤバイ内容であった。開発には莫大な国力が、建造・使用には陸軍の許可が必要で、光栄の公式攻略本にも掲載されなかったため、「隠し開発品」のような扱いだったとはいえ、雑誌を通じて多くの人に知られるようになった。そのため、後発版ではすでに公然の秘密となってしまっていた。さすがに最後発のコンシューマ版(SFC・MD)ではカットされた。
    • その後、似たような超強力破壊兵器が同社の「鋼鉄の咆哮」シリーズで登場することになるが、「巡航ミサイル」や「特殊弾頭ミサイル(爆弾や魚雷、機雷などもある)」というぼかした表現になっており「核」や「原子爆弾」といった表現は避けられている。
  • コマンド「慰労」
    • 基地で乗員の疲労を回復させるものなのだが、このときに表示されるグラフィックは水兵が女を連れて歩くというものだった。従軍慰安婦問題が政治問題化すると誤解を招くコマンド名・慰労、グラフィック、さらにこのコマンドを実行すると住民の友好度が減少するというご丁寧な仕様によって慰安婦を連想させる(つまり、「水兵が地域の女をかっさらって慰安婦にしたから友好度が減少した」と解釈できる*13。)として批判されてしまった。
      • これもコンシューマ版では「休暇」と変更された。
      • また、MSX2版・PC88版などでは「上陸させる」(これも事実上の休暇)コマンドが追加されているが、在来の「慰労」に該当するコマンドが「慰安させる」というそのまんまな名称になっている。
  • 基地コマンド「兵員供出」「燃料供出」「資材救出」「強制労働」
    • これも連合軍捕虜の問題や食糧徴発問題などに関連していたため批判をうけた。
    • 内容としては当時の光栄作品によくあった「効果の割にデメリットの大きい調達コマンド」の延長上にあったものである(『信長の野望』などの「臨時徴収」、『三國志』などの「略奪」他)。公式でも「最終手段」という扱いだった。

こうした問題は、歴史を扱う作品で、第二次世界大戦という扱いの難しい時代を扱ったゲームでは多々発生している。詳しい解説は用語集/全般/4の第二次世界大戦を参照

なお、本作のリアル路線は『III』まで引き継がれる(さすがに上記のすべては『II』以降には削られた)が、このころになると光栄は中国にも進出していたこともあって、リアル化内容は大問題になってしまった。
そこで『IV』ではかなり仮想戦記的な内容とした。ゲームシステムの変更もあり、これが賛否両論な作品になってしまった。
現在では新作どころか移植すら発売されておらず、シリーズ自体全く音沙汰がない状態になっている。


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最終更新:2023年08月30日 14:36

*1 もちろん全てCPUに任せてしまうプレイヤーもいるし、それで勝てないと言うわけでも全くない。

*2 当時の光栄作品はこちらの兵力が少ないと友好度や同盟の有無にかかわらず攻め込んでくる仕様だった。

*3 現実世界では現代でも最高速度30ノット(約52km/h)で高速艦とされる。

*4 これは現実も同様で、「陸海相争い、余力をもって米英にあたる」などと揶揄されていた。ちなみにこれは日本だけではなく、アメリカでも同様に陸軍と海軍は仲が悪い。そのため、アメリカ側で始めても陸軍は海軍の足を引っ張ってくれる…

*5 しかも敵戦闘機の迎撃や対空攻撃が強烈であるため、1~2回攻撃するとまともな航空戦力は残らない。

*6 運が良ければ最初の一撃で戦艦4隻撃沈くらいは可能であるが、戦果拡大を狙ってもう一撃しようとするとどんな反撃を食らうかわからない。一撃だけして日本に帰投するなら特に問題は無いが、11月の内政・外交・完全修理などを放棄しているため11月からプレイできるキャンペーンシナリオより不利となる。

*7 ちなみに『II』などでは光栄の公式攻略本でも推奨される始末である。

*8 史実でもワシントン海軍軍縮条約で空母に転用された天城級巡洋戦艦の「赤城」や震災で廃艦になった、空母天城(初代)の代艦として空母に改装された加賀級戦艦の「加賀」、軽巡洋艦として建造するが、軍縮条約を更新しなかった場合、重巡洋艦化する予定で計画通り改装された「最上型」重巡洋艦など命名基準から外れた名称を持った艦船もあるにはあった。

*9 「経験」は勇猛以外の全ての能力に加算される。作戦の低い提督で軍政を行い出すと最初の頃はその失敗率に辟易するが、2ヶ月もすれば作戦は+60され、成功率はかなり高くなる。ただし作戦についてはこの通り実感が得られるものの、他のパラメータについては比較が非常に難しい。

*10 提督は(広義の)艦隊の指揮官への呼称であり、一般的に階級は少将(海将補)以上。

*11 欧州戦線を含めても、重巡洋艦ブリュッヒャーを陸上基地から発射された魚雷により撃沈したオスロフィヨルドの戦いくらいしかない。

*12 一部には第一艦隊を潜水艦で構成して沈黙の艦隊に見立てたお遊びをする者もいた。

*13 旧日本海軍の文化として、士官の結婚を前提としない自由恋愛は禁止だが、芸者遊びに寛容であったため、内地でも金で苦労する海軍士官に娘はやれないと言う娘を持つ親や金で女を買うことへの女性からの反感もあった。