零 ~刺青ノ聲~

【ぜろ しせいのこえ】

ジャンル ホラーアクションアドベンチャー
対応機種 プレイステーション2
発売・開発元 テクモ
発売日 2005年7月28日
定価 7,140円
廉価版 PlayStation2 the Best
2006年7月6日/2,800円
2007年11月22日/1,890円
判定 良作
零シリーズ


ストーリー

―生き残ってしまった。

フリーのカメラマン、黒澤怜は、ある日幽霊屋敷と噂される日本家屋の撮影を依頼された。
「怜さん」助手の雛咲深紅が呼び掛ける。「そろそろ引き上げましょう」
「幽霊屋敷って聞いてたけど、何も出なくて残念ねぇ」応える怜。
撮影資材の片付けを深紅に任せ、最後に屋敷の廊下の奥を撮影する怜。すると、カメラに人影が写りこんだ。
「…優雨?」

家に帰り、写真を現像する怜。写真に写り込んでいたのは、死んでしまった怜の婚約者、優雨であった。
その日以来、怜は不可思議な夢を見るようになる。あの日本家屋をさまよう夢を…
(公式サイトより引用)


概要

テクモの和風ホラーゲーム『Project Zero』シリーズの第3作。
zero』『紅い蝶』から続く三部作の最終作と位置付けられている。

ヒロインは初登場の「黒澤怜」であるが、準ヒロインとして1作目主人公の「雛咲深紅」、更に2作目主人公「天倉姉妹」の叔父である「天倉螢」と、過去二作とそれぞれ関わりあるキャラを含めた合計三人のプレイアブルキャラが登場し、過去作とも絡んだストーリーが展開される。
なお、時系列では前々作の2年後、前作の2ヶ月後にあたる。


前作からの変更点・評価点など

グラフィック

  • 前作と比べるとあまり変わり映えはしないが、相変わらずグラフィックは美麗である。
    • 少女が主人公だった過去二作に対し、今回のメイン主人公は大人の女性であり、入浴などのサービスシーンも豊富。
    • 今回は主人公にイケメンもいるので女性プレイヤーにもお勧めできる。

ストーリー

  • 今作のストーリーは大切な人に先立たれ、残されてしまった人々の葛藤をテーマにしている。
    • 前作ほどのインパクトはないが、王道ながらも身近なテーマであり、とても引き込まれるストーリーに仕上がっている。寧ろ、強烈過ぎた前作に比べて万人向けとも言える。
    • また、過去二作の主人公たちの後日談にもなっているので、彼女たちのその後を知りたい人達にもお勧め。
    • 過去作の正史の結末はいずれも「主人公の大切な人との死別」だった事もあり、本作のテーマとも密接に関係している。
    • エンディングはそれらのテーマにおける、本シリーズが出した一つの結論と言える。三部作の完結編としても相応しい結末となっている。
      • 前作に続き起用された天野月子が歌うテーマソング『聲』は前作の『蝶』にも劣らず作風にマッチしており、ムービーとの相乗効果も非常に高い。
  • エンディング分岐の仕様も前作、前々作から変わっている。
    • 過去作ではエンディング分岐は難易度で判定され、内容もそれぞれのエンドで全く違ったものだが、あくまで通常エンドが正史でそれ以外はifと言った形だった。
    • 対して今作では結末自体は一つである。しかし二周目以降で特定の条件を満たすとある変化が起こり、通常エンドに更に演出が追加されたトゥルーエンド*1が迎えられるようになっている。
      • スタッフロールの背景に後日談を描いた一枚絵が数枚表示されるようになるだけだが、一連の怪異が完全に終わった事を実感できる内容である。特にあるシーンは過去作からプレイしていた人はきっと嬉しくなるだろう。

雰囲気

  • 現実と夢を行き来するシステム。本作は夢の世界が舞台であるため、章を挟むごとに現実世界へと戻る仕様になっているのだが…
    • 最初は何の変哲もない主人公の家だが、章が進むにつれ、家の中で怪奇現象が起こるようになり、最終的には夢の中の霊たちが現実世界にも表れる。安全なはずの現実世界が浸食されていく恐怖は背筋が凍る思いがする。
  • 現実世界に戻る度に、主人公の体を蝕んでゆく刺青の演出も同様の恐怖を感じさせる。あとエロい
  • 舞台となる日本家屋は常に雪が降っており、神秘的な雰囲気を醸し出している。

システム関連

  • 今作では三人の主人公を使用してストーリーを進めていく。
    • 黒澤怜
      • メイン主人公。物語は基本的に彼女の視点で追って行く。現実パートで操作するのも彼女だけである。
      • 攻撃力・移動速度ともにバランスが良く、キャプチャーサークルが大きいため攻撃が当てやすい。
      • 使用できる強化レンズが多く、敵を怯ませたり緊急回避に使えるフラッシュを備える等、プロのカメラマンらしい特徴がある。
    • 雛咲深紅
      • 霊力が強いために攻撃力は高いが、体力が低く、移動も遅い。また、キャプチャーサークルが小さいため攻撃が当て辛い。
      • 強化レンズは使えないが、ストーリーを進めると通常の2倍霊力を溜められるようになる「二重チャージ」や、敵の動きを遅くすることが出来る「御神石のお守り」など強力な固有能力を持つ。
      • 小柄で細身なため床下の隙間など狭い場所も探索できる。
    • 天倉螢
      • 1作目のプロローグで操作した「雛咲真冬」以来久しぶりの男性プレイアブルキャラ。霊力が低く、リアリストである彼は、霊に対する攻撃力がとても低いが、物陰に隠れて霊をやり過ごすことが出来る。霊力が低い(=霊に影響を与えにくい代わりに霊の影響も受けにくい)ことに加えて頑健な男性であるため打たれ強く、移動も速い。
      • 他の二人がシャッターチャンスやフェイタルフレームを狙うのが主体になるのに対し、霊力が低くチャージが早いためにそれらのメリットが薄い螢は通常撮影を主体として進めることになる。また一部の強化レンズが使用でき、彼だけが使える超強力な強化レンズもある。
      • 身体能力が高いため他の二人では押せない障害物を動かしたり、離れた足場に飛び移ると言ったアクションが可能。
      • 民俗学者をやっているためか、他の2人では入手できない本を入手できる。ただし、説明書に書かれていない上にそれで彼のパートが楽になる事やストーリーに変化が出ると言った事はないため影が薄い。
      • 二周目以降では彼の行動次第でエンディングに影響が及ぶようになる。
  • ストーリーが進行すると、屋敷内に「瘴気」が発生するようになる。
    • 瘴気が発生している間は画面が白黒になり、無敵の怨霊「刺青の巫女」がところ構わず追い回してくる。また、敵から受けるダメージも増加してしまう。
    • 屋敷のところどころにある「祓いの灯火」を灯すことで、瘴気を防ぐことが出来るが、灯火は数分しか持たず、小さくなっていく蝋燭が気持ちを焦らせる。
  • 射影機のチャージは前々作と同じシステムになった。
    • 本作では与えるダメージにチャージ量が最も大きく影響してくる。そのため怜や深紅の場合、一対一においても素早くチャージ量を稼ぐために敵の動きを制限するレンズや能力を使う戦法が有用となり、前作から更に戦略性が増している。
  • フェイタルフレームコンボが強化された。
    • コンボをつなげても威力が下がらないようになった。また、コンボ数が無制限になった。
      • コンボが強力になった一方で、フェイタルフレームの撮影は困難になり、またコンボをつなげるほど受付時間が短くなるため、バランスは取れている。
      • これにより戦闘の爽快感が上がった。

難易度

  • 難易度はEASY,NORMAL,HARD,NIGHTMAREの4種類がある。
    • 難易度は高くなればなるほど所持フィルム数と回復アイテムの数が少なくなり、敵が固く、強くなる。また、シャッターチャンスとフェイタルフレームの受付時間が短くなる。
      • 特に最高難易度であるNIGHTMAREの難易度はシリーズ屈指であると言われている。フェイタルフレームは目や耳で確認してからボタンを押したのでは間に合わず、体で覚えていないとまず撮影できない。また、フィルムの枚数が非常に乏しいことから撮影ミスがほとんど許されず、特に螢はほぼ全ての攻撃でフルチャージのシャッターチャンスかフェイタルフレームを撮影しないと敵1人倒せないほどである。
    • また、前作と異なり、今作では1周目からHARDやNIGHTMAREを遊ぶことが出来るので、超ヘビーユーザーはさらにマゾヒスティックなプレイを楽しめる。
      • ただし、HARDモードやNIGHTMAREモードが出現したクリアデータが入ったメモリーカードは必要である点には注意。
    • 一方で低難易度は比較的簡単な部類に入り、後述のアイテム補充システムも合わせて、初心者にも親切な設計になっている。
  • 今作では、最弱のフィルムである○七式でさえ数が限られている。
    • ただし、現実世界に帰還すれば○七式と一四式フィルムの個数は一定の値にリセットされる他、床に落ちている一四式フィルムと万葉丸も復活するので、詰むことはほとんどない。
    • 現実世界への帰還は、ストーリーによるもの以外は任意であり、帰還した回数は経過夜数という形でセーブデータに記録される。ヌルいのは嫌!というコアなユーザーは是非最短夜数クリアを目指そう。
  • 上述した通り、今作は難易度はエンディング分岐に影響しない為、高難易度は厳しいという人でも安心である。

その他戦闘関連

  • 怨霊の数は、前作ほどは多くなく、前々作よりは多い程度であり、集団戦もある。
    • 怨霊の数に関しては「今作ぐらいがちょうどいい」という意見が多い。
  • どこかイベントバトル感のあった過去作のラスボスに比べ、今作のラスボスは純粋にテクニックが要求される、正統派のボスとなっている。
  • シリーズ恒例のコスチュームチェンジも健在。主人公毎に複数の衣装が用意されている。
    • 浴衣、スーツ、深紅の前々作での衣装、果てはエプロンドレス(しかも怜と深紅でそれぞれ違うデザイン)と言ったはっちゃけたものもある。螢さんの衣装が少ない?仕方ないでしょう…。
    • 前作は眼鏡を掛けさせる事が出来たが、今回は他に髪飾り、カチューシャ、猫耳と言ったアクセサリーも装着可能になった。螢はきつね耳を付けられる


問題点

  • 主人公が複数であることの弊害
    • 主人公が複数いるため、ストーリーがとぎれとぎれになってしまい、話を追いにくい。
    • キャラの格差も(特に高難易度は)色濃く出る。
      • 結局のところ、攻撃力が高く相手に攻撃させるチャンスを少なくできる深紅が最強であり、攻撃力が低く効率良くダメージを与えるのが難しい螢が最弱となる。螢で戦闘を優位に進めるには、フィルムをなるべく多く回収して手数を増やすか、敵の攻撃を誘いシャッターチャンスやフェイタルフレームを狙うなどの戦法を取らなければならない上、彼専用の威力の高いレンズも与えるダメージが低い=貯まる霊子(レンズを使うのに必要なゲージ)自体少ないので役に立つことは少ない。前述の灯火による時間制限も、戦闘に時間がかかる彼では時間に気を付けても戦闘中に時間切れとなる事が多々ある。白黒状態でも被ダメージが少ないままならまだなんとかなっただろうが…
    • また、床に落ちているアイテムや撮影ポイントは共有であるのに対し、射影機の強化や所持アイテムは個別なので、初周プレイでは特定のキャラにアイテムや強化が集中してしまいがち。
      • 特にアイテムは調べるまでは何のアイテムであるか分からず、調べると強制的に拾ってしまう。せめて拾うかどうか選択させてほしかったという意見が多かった。
    • とは言え、本作で複数主人公制に掴みがあったのか、次回作以降もこのスタイルは継承されている。
  • ストーリー後半の瘴気は、灯火探しで精一杯になってしまい、屋敷の中を落ち着いて探索できないという意見が多い。
    • ただし、刺青の巫女が出てくる演出自体は比較的好評ではある。
    • 慣れてくると、ほとんど灯火を使わなくても進めるようになるので、あまり気にならなくなる。
  • 章が終わるごとにいちいち現実世界に戻るのが煩わしい。
    • 最初のうちは楽しめる演出であるが、何周かプレイして慣れてくると、現実世界に戻ることでテンポが悪くなると感じるようになる。
  • 一部マップが過去作の使い回し。
    • ただし、これはの深紅と螢の見ている夢が混ざった結果という理由がある。どちらかといえばファンサービスの意味合いが強い。
  • 今作ではクリア後特典の解放にも霊力ポイントを消費する。
    • 前作まではシナリオやミッションのクリアを進めればその段階で特典が解放された。それと比べアンロック可能条件を満たした後更に霊力を使わなければならないのはやや不親切。
    • 今作の場合主人公が3人に増えたことで射影機強化の要素も単純計算で3倍程度になっており、霊力ポイントの用途が多くなった点を考慮してもこの仕様は面倒と言える。
    • 霊リストコンプリートに必須となる、事実上2周目以降限定の霊を撮影できるようになる機能も例外ではなく、霊力ポイントで解放していなければ使えない。
  • 進行不可能になるバグが存在する。
    • 解錠したはずの扉が再度施錠されてしまうバグ
      • 鍵は使用すると消滅してしまうので、扉がストーリーの進行に必要なものだった場合は進行不可能になる。
      • 回避方法として、 「解錠した扉は、必ず解錠直後に通過しておく」 ことが挙げられる。
    • 夜にならないバグ
      • リビングで深紅に話しかけた際に、なぜか外観が昼のまま「夜になりました」と出るバグ。
      • このバグが発生したまま進めてしまうと、ストーリーが進行不可になることがあるので注意。
    • プレイキャラが違うバグ
      • 九の刻で、本来は怜のはずが、蛍で始まってしまうバグ。
      • そのまま進めると、ある部屋で閉じ込められてしまい、進行不可能になる。
    • どのバグにも言えることだが、 バグが発生したら、セーブせずにゲームを終了し、ロードし直す ことが大切である。そのためにも、セーブはこまめに行い、可能ならば複数の段階でのセーブを残しておくこと。
    • また、廉価版はバグが発生しにくいという意見もある(公式なアナウンスではない点に注意)


総評

グラフィックは相変わらずのクオリティであり、前作に比べると印象は薄いものの、ストーリーの質も悪くない。
特に戦闘システムに関しては洗練されており、テクニカルで爽快感のある戦闘は、シリーズ一の完成度といっても過言では無い。
バグには気をつける必要があるが、それを差し引いても十分に楽しめる作品である。
なお、過去二作をプレイしてからだとより楽しめるので、先にそちらをプレイすることを推奨したい。

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最終更新:2023年02月09日 23:59

*1 今作における正史はこちらである