SIMPLE2000シリーズ Vol.58 THE 外科医

【しんぷるにせんしりーず ぼりゅーむごじゅうはち ざ げかい】

ジャンル 医療アドベンチャー
対応機種 プレイステーション2
発売元 D3パブリッシャー
開発元 ヴァンテアンシステムズ
発売日 2004年9月2日
定価 2,000円(税抜)
メディア CD-ROM1枚
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 良作
SIMPLE2000シリーズ


概要

そもそもSIMPLEシリーズというのは低予算である以上、オリジナリティにあふれた作品というのは少なく、二番煎じ、流行に乗っかっただけ、という作品が多いのが常である。本作も2003年の『白い巨塔』再ドラマ化に便乗した一発ネタ…のはずであった
しかし、ゲーム自体の完成度がSIMPLEシリーズとは思えぬ高さだった上、何を間違えたか以降『超執刀カドゥケウス』に代表される「手術ゲー」の先駆者になってしまったのである。


ストーリー

聖都大附属病院一般外科に外科医として勤務する主人公。彼はある日、とある急性虫垂炎患者の執刀を迫られる。その患者は手遅れのように見えるまで病状が進行していた…。
そしてその担当は、同期の親友…。彼が何故そんな判断を!?
「虫垂なんか切っても点数はよくならない」と言う彼。そんな彼の姿勢に疑念を抱く主人公。
「医師としてどうあるべきか?」、欺瞞、野心、ねたみや裏切りが渦巻く医局の中で、主人公はその答えを探し始める。
(公式サイトより)


評価点

  • 上のストーリーを読まれると分かるとおり、本作にふざけた部分はほとんどない。最初から最後まで極めてシリアスな医療ドラマが展開される。
    • 概要で名前を挙げた『白い巨塔』のごとく、「命と医者の立場の間で揺れ動く主人公」「親友ながらライバル的立ち位置の同僚」「嫌味な上司」「飄々とした医局部長」「反体制的な天才医師」といった登場人物が複雑にシナリオに関わってくる。
      • 扱っているテーマがテーマなので、茶化すのも難しかったのだろうが、結果的にシナリオの完成度は非常に高くなっている。
    • あえて、不真面目な部分を取り出すならギャルゲーのごとくヒロインでエンディングが分岐する、という演出がある。
      • とはいえ二人のヒロインも非常に真剣に命に向き合っており、決してこの部分が全体の雰囲気から浮いているわけではない。
  • 手術パートも完成度は高い。
    • ミニゲーム集に近く、ハードの違いもあるので単純に比較は出来ないが『超執刀カドゥケウス』に比べて操作系統自体はリアルとは言い難い。しかしミスする度に痛々しい音と共に患者の体力が削られるのは、単なるミニゲームとは一線を画した緊張感がある。
      • また症例は全て実際に起こりうる物であり、『超執刀カドゥケウス』の「ギルス」のような超現実的なものは一切ない。この辺りもリアリティの表現に一役買っている。
  • ボイス量が豊富。
    • 主人公自身の声と、主人公の名前が呼ばれる場面(主人公の名前が変更可能なため)以外のストーリー上の台詞はフルボイスである。担当声優は有名どころではないが、演技自体は安定しておりキャラクターと乖離したボイスもない。
  • 会話のシーンでは立ち絵が表示されるが、この質も高い。バリエーションも豊富。
  • 手術のシーンでは臓器などは比較的リアルに描かれているが、出血などの描写は省かれており耐性のない人も安心。

問題点

  • とにかく迷いやすい。
    • 次の目的地がハッキリ示されず、病院自体もかなり広いため何をしたらいいか解らずにウロウロしなければならない場面が多い。
      • マップ機能もない。病院内の構造を早く把握することが重要。
  • なぜか内視鏡手術の場面がやたら多い。
    • 外科医も内視鏡手術をやらないわけではないが、これは本来内科医の仕事である。
  • 基本的にストーリー重視であり、タイトルから想像するほど手術パートが多いわけではない。
    • 手術を単品でやり直すことも出来ず、もう一度プレイしたい場合はストーリーを最初からやり直す必要がある。

総評

SIMPLEシリーズでも珍しく非常に真面目なシナリオが特徴だが、それ以外の面での完成度も高い。
他の医療系ゲームとはひと味違う「医療ドラマ」を2,000円で体験できる、非常にお得なソフトである。

余談

  • ゲーム中、主人公が病院内で携帯電話を使っている場面がある。
    • …が、公式サイトによると「一般的に使用されている携帯電話ではなく、病院職員専用の「PHC」と呼ばれる、病院内での仕様*1が可能な電話」とのこと。
      • 聞き慣れない「PHC」という単語だが、「Personal Hospital System」の略でPHSなどとは関係ない。最後がSではないのはPHSとの混同を避けるためだと思われる。*2

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最終更新:2022年12月22日 19:28

*1 原文ママ。使用の誤字だと思われる。

*2 ちなみに電波が微弱であるという特徴から実際の病院や介護施設などの医療機関では構内通信機器としてPHSが使われていた。