アリス・イン・ナイトメア

【ありすいんないとめあ】

ジャンル ホラーアクションアドベンチャー
対応機種 Windows 98/Me/2000
Macintosh
発売元 原語版:エレクトロニック・アーツ
日本語版:エレクトロニック・アーツ・スクウェア
開発元 Rogue Entertainment
発売日 原語版:2000年10月6日
日本語版:【Win】2001年1月25日/【Mac】2002年3月21日
定価 5,980円(税込)
廉価版 EA BEST SELECTIONS:2002年12月12日/2,800円(税込)
EA BEST SELECTIONS:2004年3月18日/1,800円(税込)
備考 原題『American McGee's Alice』
判定 良作


概要

ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』を原作とし、これらの後日談として制作された3Dアクションゲーム。
設定やストーリーは原作に含まれる不条理性を強く意識したものとなっており、ホラー要素を加えたアレンジが施されている。
物語の骨子は『 心を病んだまま成長したアリスのトラウマ克服のための冒険譚』 である。
その独特の狂った世界を表現する美しいビジュアル、秀逸なBGMが米国本国で好評を獲得した。海外でのファン人気は高く、日本でも知名度自体は高いとは言えないがファンサイトがそれなりに存在している。

メインディレクターは『DOOM II: Hell on Earth』や『QUAKE』シリーズのレベルデザインを手がけたアメリカン・マギー (American McGee)、作曲はNine Inch Nails創設期のメンバー、クリス・ブレナ(Chris Vrenna)が担当。
実際の開発は上記のメンバーを中心に『QUAKE』や『QUAKE II』のミッションパックを製作したRogue Entertainment*1が手がけている。


ストーリー

不思議の国と鏡の国の冒険を終えたアリス。
二つの冒険のあとも、幼いアリスはたびたび夢の中で帽子屋や白ウサギと出会い、奇妙なお茶会を楽しんでいた。 その興奮も冷めやらぬある日、アリスの家が原因不明の火事に遭い全焼、同時に両親と姉を亡くしてしまう。
その事件以来アリスの心は非常に重く閉ざされ、ラトレッジ精神病院に史上類を見ないほどの難病患者として入院する。
それから10年後。アリスは18歳になったが、未だ監獄のような薄暗い病室の中にひとりウサギのぬいぐるみを抱いて眠る日々が続いていた。

そんなある日、ウサギのぬいぐるみが突如として意思を持ったかのようにアリスに助けを求める。
再びアリスは不思議の国へ赴くが、既にそこはあの時のようにワクワクが待っている場所ではなかった。
血の付いたナイフをにぎりしめ、アリスは小さな決心をする。
もう一度、美しい不思議の国を取り戻そう―――と。

ゲーム冒頭、不気味にアレンジされたキャラクターたちが再びアリスを不思議の国へ誘う…。


システム

  • キーボードとマウスを使って操作する。デフォルトではPADは使用出来ない。
  • 敵を武器を使用して攻撃、アイテムを使ってステージを進んでいく。
  • ゲームの本筋としてはオーソドックスであり、会話イベントorムービー→マップを進んでいくの方式で進む、ボス敵は存在するが数は少ない。
  • 進むごとにステージが変わり、マップごとに様々な新アイテムが落ちている。
  • イベントでの登場がメインだが、チェシャ猫を任意に呼び出してヒントを聞くシステムがある。
  • 特定の場所で、アリスを一定時間変身(バーサーカー化など)させることが可能。
  • 条件を満たせばコスチュームチェンジすることが可能、ただし性能は変わらない
  • 通常版では音声のみならず、テクスチャ表現も日/米と選択可能、米版はモデリングがガッチリしている(廉価版では選択不可)

評価点

  • なんと言ってもそのおどろおどろしい舞台と雰囲気、そして不気味にアレンジされているキャラクターが特徴的である。
    • チェシャ猫や兎など、お馴染みのキャラたちも怪物のようにおぞましい姿と化しているが、見た目で分かるほどの面影はきちんと残されている。他にもゴブリンのような見た目の小人、おぞましい姿のトランプ兵など、本作ならではのテイストに溢れている。
  • 主人公のアリスが「非常にクールな少女」という描写になっており、童話由来の可憐な少女像とイベント時の冷静さ、冷徹ぶりとの凄まじいギャップが感じられる。
    • この主人公アリスは、外国の戦闘系女性キャラにありがちなアマゾネス系のマッチョキャラではなく、原作のままの少女のイメージを崩していないため、日本人でもすんなり受け入れられる造詣になっている。
    • アリスがナイフを片手に接近戦で切り刻む、トランプを投げつけて切断するなど、原作本来のイメージとのギャップも素晴らしい。
    • ちなみにアリスを一定時間放置しておくと、装備している武器ごとに違った待機アクションを行う。
  • チェシャ猫の圧倒的な存在感。
    • 本作のナビゲート役と言えるチェシャ猫だが、非常に個性が高く、このゲームの世界にはピッタリなナビゲートキャラである。
  • 日本語版のCVには豪華なキャストが当てられている。
    • 主人公のアリス役に小林優子氏、チェシャ猫に大友龍三郎氏など、吹き替えの声優としてかなり豪華である。特にチェシャ猫役の大友龍三郎は非常にマッチしており、チェシャ猫の人気の高さに献上していると言ってよい。
  • BGMが非常に評価が高く、サントラも人気があり現在はMP3の配信などで落ち着いているが過去にはプレミアが付いていた。
    • 本作のBGMはあくまで作風にあわせているBGMであるが、非常にマッチしている。
  • 難易度を4段階から選べるので初心者でも難易度を最低にすればクリアは比較的容易。
  • 3D映像は2000年当時であることを踏まえるとかなり綺麗な方である。
    • 解像度は最大1600×1200まで対応しており、高解像度テクスチャにも対応している。サウンドもサラウンド対応。ちなみにゲームエンジンは『QUAKE III』で使われた「id Tech3」がベースとなっている。

賛否両論点

  • あまりにも雰囲気やキャラが気持ち悪いため、人によって好みは激しく分かれる。
    • スプラッタ表現は比較的控えめではあるが、雰囲気が合わない人はやめた方がいい。

問題点

  • PAD操作が出来ない
    • 恐らくこれが一番の短所であると思われる。本作はジャンプをしたりするアクションゲームであるので、キーボード操作に慣れていないと中々きつい。
      • 2000年のPCゲームなので致し方ないこともあるし、元々FPSが主流の米産なので日本人だけの短所と言える。
    • 裏技的なものとして、コンソールモード(いわゆるデバッグモード)の設定によりパッド操作も可能、また現在ならばフリーソフトである「JoyToKey」を使えば、無理やりパッド操作をすることも可能なのでさほど問題ではない。
  • マップが比較的広いため、迷った時は大変である。
    • 3D慣れしていない人は3D酔いする可能性がある。
  • 投げナイフ(飛び道具)が強すぎる。
    • 投げナイフは通常難易度なら敵を2発で倒せてしまうため、近距離武器のナイフなどの出番が少なくなってしまう、近づかれてしまい逃げられなくなった時に使用する程度。
    • 敵の耐久力が上がる難易度「悪夢」では、投げナイフで敵を遠くから倒しておくスナイパーゲーになりやすい、ただしMPを消費するため闇雲に投げていてはやられてしまう。
  • 日本語版でも、イベント以外では米ボイスになる。
    • 米ボイスでのアリスが水中で溺れている声は非常に笑いを誘う。
    • なお、ローカライズに当たっては道中の掛け声や呻き等が英語のままというのは現在でも珍しいことではない(God of Warシリーズ等)。
  • 廉価版では音声選択とテクスチャ選択が不可で日本版の機能しかない

総評

『不思議の国のアリス』という既存の作品に新たな解釈と独自の設定を呼び込んだ画期的ゲームである。
馴染み深い童話を下敷きにしつつバイオレンスかつグロテスクなアレンジであるため人を選ぶものの、有名な童話の二次創作作品でありつつアクションというジャンルということで日本にも本作のファンは多い。
何より、バイオレンス感溢れるアリスのキャラクター性と原作のイメージとのギャップが、ファンにとっても魅力的かつ好意的に受け入れられたことにあるだろう。

この作風に興味を持った方がいれば、是非プレイをおすすめしたい。廉価版も出ているので非常に安価で入手できる。
米テクスチャ選択が可能な通常版は現在入手困難になっているので、こちらを購入予定な人は注意。ただし、基本的にパッド操作が出来ないので、それを踏まえて購入を検討すると良いだろう。


余談

  • ゲーム開発時、原作の本を元に制作したかったため、制作者のアメリカン・マギーは、スタッフにディズニーアニメーション版のアリスを見ないよう言ったと言われている。
  • 北米ではWin/Mac版の発売の後、PS2版も開発されていたがほぼ出来上がっていたにもかかわらずキャンセルとなっている
    • PS2版がキャンセルとなった理由については、EA側の主張が「デベロッパーの倒産によるもの」であるのに対し、マギー氏は「パッケージイラストのデザイン変更等の残虐表現に対する過剰反応と上層部が取った及び腰の態度が理由」と主張している。この件はEAとマギー氏の間で大揉めとなり、その直後に彼はEAを去ることとなった。
      • ちなみに、残虐表現や暴力描写の規制に関し、マギー氏は本作のWin版の日本語版発売時のインタビューにおいて『ただ暴力的だから、残酷だからという理由だけで規制をかけられることはおかしい。自分としてもただ暴力を楽しむためだけのような、意味のない暴力描写はやらないが、ストーリーを表現する上でどうしてもそうした描写が必要な場合がある。本作ではアリスがトラウマを克服する過程を描く上ではどうしても必要な表現だった』という旨の発言を残している。
  • 本作の実写映画化の企画も上がっていたが、現在は凍結している模様。

その後の展開

  • 米国では2011年6月14日、日本では7月21日に10年ぶりに続編である『アリス マッドネス リターンズ』が発売された。
    • 現実世界のロンドンと不思議の国を行き来し、アリス一家を襲った10年前の火事の真相に迫っていくシナリオとなっている。
      • この作品の360版ではDLCとして本作が配信されている(PS3版でも配信されているが、残念ながら海外のみ)。10年が経過してようやくコンシューマ移植が叶うこととなったが、残念ながら 英語字幕・英語ボイスのみである
      • 一方、PC版も海外のOriginストア限定という形で本作が収録された『Alice:Madness Returns The Complete Collection*2』がDL配信されていたが、現在は配信終了している。

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最終更新:2022年11月30日 10:55
添付ファイル

*1 後に4社もデベロッパーが変わったという珍事を残した『Counter Strike:Condition-Zero』の最初のデベロッパーとして参加するが、プロジェクトが一旦キャンセルされた2001年に倒産

*2 内容は本作の他、続編+全DLCが含まれた完全版という内容。