御神楽少女探偵団

【みかぐらしょうじょたんていだん】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 プレイステーション
メディア CD-ROM 4枚組
発売元 ヒューマン
発売日 1998年9月17日
価格 6,800円(税別)
プレイ人数 1人
レーティング 【GA】CERO:C(15才以上対象)
配信 ゲームアーカイブス:2009年10月14日/600円
セーブデータ 1ブロック
周辺機器 アナログコントローラ(振動)、マウス対応
判定 良作

概要

  • 御神楽少女探偵団シリーズ第一作目。大正時代を舞台にした探偵アドベンチャー。
    • 「帝都一の名探偵」と呼ばれた探偵御神楽時人と、助手の3人の少女、及び時人の世話係である少年が帝都で次々と起こる難事件を解決していく。
  • 監督・脚本・ゲームデザインは、『クロックタワー』を手掛けた河野一二三氏。

あらすじ

帝都の街を騒がす猟奇的事件の数々。事件の陰に暗躍する怪人たち。
貴方が、続発する事件と常に無関係とは限りません。
いや、もうすでに巻き込まれているのかもしれません。
知らずしらず忍び寄る怪人達の魔手。予期できぬ危険に曝される恐怖。
そんなときは、是非、当事務所へお越しください。
所員一同、心よりお待ちしております。
どんなに難解な事件でも、たちどころに解決いたします。

+ 登場人物
  • 御神楽時人(CV:津田英佑)
    • 御神楽探偵事務所所長。30歳。一見、頼りなさそうだが、天才的な推理力の持ち主で「帝都一の名探偵」の異名を持つ。
  • 鹿瀬巴(CV:水樹洵)
    • 御神楽探偵事務所3人娘の1人。17歳。明朗快活な性格で、所内では最も行動派。本作のメイン主人公。
  • 桧垣千鶴(CV:松来未祐)
    • 御神楽探偵事務所3人娘の1人。17歳。3人娘では最も古株。大人しく礼儀正しい性格の眼鏡っ子。
  • 久御山滋乃(CV:高夏子)
    • 御神楽探偵事務所3人娘の1人。18歳。ややキツい性格の華族の令嬢。柔術の使い手でもある。
  • ランドルフ・丸山(CV:深見梨加*1
    • 御神楽探偵事務所の所員。12歳。通称「蘭丸」。孤児であったが、時人に拾われたことで事務所に住み込みで時人の身の回りの世話をしている。中性的な顔立ちの美少年。
  • 諸星大二郎(CV:石井康嗣)
    • 警視庁捜査一課の警部。46歳。時人の良き理解者。
  • 守山美和(CV:深見梨加)
    • 御神楽探偵事務所がある守山ビルのオーナーで、美術商を営んでいる。26歳。時人の想い人。

特徴・システム

  • ディスク4枚組
    • 2枚はゲーム本編、残り2枚はゲームのファンディスクとして使われている。
    • ファンディスクはインターミッションディスクと設定資料集とムービーを見れるスペシャルディスク。ゲーム本編の進行具合によって随時解放されていく。
  • ストーリーは全5章+練習シナリオ。
    • 章は練習シナリオを除いて、それぞれ「事件編」「捜査編」「解決編」で構成されている。
    • 「事件編」は事件が発生するまでの導入部。「捜査編」は助手3人娘の鹿瀬巴、桧垣千鶴、久御山滋乃を操作し、聞き込みと情報の整理するメインパート。「解決編」は探偵・御神楽時人によって事件が解決される形となっている。
    • ただし、第3章と第4章は実質的な前後編となっており、2章分合わせて一つの大きな事件を扱う。また、最終章は前編のみの収録である(後述)。
  • 推理トリガーシステム
    • 「捜査編」にて、事件の捜査の為に相手と会話をする際、セリフの色が通常と変わっているケースがある。そのセリフの部分で「トリガー」を引くことで、事件と関係がある場合はさらに詳しく話を聞くことができる上、推理ポイントが獲得できる(重要な情報であるほど、ポイントは大きい傾向にある)。20ポイントに達すればセーブ画面を挟み、次のパートに進める。
    • トリガーを引くことができる回数は各パートごとに決まっており、残り回数が無くなっても20ポイントに達していなかった場合、ゲームオーバーとなる。
    • 色の変わるセリフの大半は関係の無いフェイクであり、その中から適切な情報を見極めなければならない。しかし推理トリガーには限りがあるため、無闇矢鱈と引けない。
      • 手掛かりがあからさまな時もあれば、本当にさり気無い時もあり、常によく話を聞く必要がある。必要なトリガーを引けないまま話が進む事は無いので、もし引くことに躊躇ったら一旦その場を退いて別の場所を回ったり、ゆっくり考え直すのが得策。
      • しかし思いがけない台詞から突破口が開ける事もあるため、時には不正解を恐れず思い切って突っ込んでみる事も大切である。
    • 間違えた所で引いても回数が減るだけで、専用の台詞が出たり登場人物に指摘されることは無い。
  • アクションムービー
    • 所謂「QTE(クイックタイムイベント)」。犯人追跡等のアニメーション中にコマンド入力が求められ、失敗するとゲームオーバー。その場合、直前から再挑戦可能。
  • 操作は『クロックタワー』に続いてカーソルによる。

インターミッションディスク

  • 本編のクリアに応じて事件の後日談やおまけシナリオ「探偵の休日」をプレイできる。
  • インターミッション画面では御神楽時人を操作して町中を回れるようになっており、登場キャラクターと雑談ができる。
    • 各スポットでは「探偵の休日」のミニゲームを再プレイしたり、BGM鑑賞などの遊び要素が用意されている。探偵事務所に行くと「探偵の休日」がプレイできる。
  • 「探偵の休日」本編の事件をクリアするとその事件の後日談的なエピソードとして解禁される。全部で3つあり、それぞれ2人の中から1人選んでプレイできる。
    • 対応選択アイコン:特定のキャラクターとの会話で表示される。選択した対応によって各キャラクターの好感度が変化する。
      • ミニシナリオクリア時にもっとも好感度が高いキャラクターとの結末が語られる。
    • ミニシナリオ:ある特定の場所に行くと発生。ミニシナリオをクリアで「探偵の休日」は終了。

シナリオ一覧

+ ※ネタバレを若干含みます
五銭銅貨 練習シナリオ。本編の2年前、巴が御神楽探偵事務所に入る切っ掛けとなった事件。カフェ「山茶花」で女給をしている巴は、店内に遺書が置かれていることに気付き、居合わせた刑事の栗山と共に遺書を残した客を探す。
幽鬼郎 所員になりたいと押しかけて来た滋乃の紹介で、ある富豪の娘から「姉を探してほしい」という依頼を受けた御神楽探偵事務所。しかしその姉は見世物小屋で死体と化しており…。
太白星 浅草日本館でオペラ歌手が殺害された。犯人はすぐに逮捕され、犯行を自供している。しかし美和はその人物が犯人とは思えず、時人に捜査を依頼。彼女に想いを寄せる時人は二つ返事で引き受けてしまう。
夢男 新潟の男爵家より、屋敷の周囲をうろつく怪しい人物についての調査が依頼される。蘭丸が女装してメイドに扮し、件の屋敷「比翼荘」へ潜入捜査に向かう事になったが、それはやがて凄惨な連続殺人事件へと発展する。
蘇る夢男 夢男事件は犯人の自殺で解決を見たかに思えた。しかし一週間後、比翼荘では更なる犠牲者が…。
猟奇同盟 新聞記者を名乗る人物から「猟奇同盟という組織について話したい」と警察に電話が掛かってきた。しかし彼は諸星警部と時人が訪ねた時には既に殺害されていた。彼の遺した僅かな手掛かりから「猟奇同盟」について調べる巴達だったが…。

評価点

  • 革新的な推理トリガーシステム
    • それまでの推理ゲームと言えば、「聞く」「話す」「調べる」などの複雑なコマンドを駆使して進めていくものだったが、本作は「気になった発言に突っ込む」というだけの至ってシンプルなもの。
      • それだけなのに、事件の展開を予想する推理力が必要なことやペナルティに対する緊張感、合っていた場合の「ピコーン」という気持ちの良い効果音などから「実際に捜査している感覚が味わえる」とプレイヤーからは大変好評である。
      • なぜこのようなシステムなのかと言うと、「推理小説という素材を表現するにはどういうシステムが相応しいのか?」という起点からゲームデザインを始めた為と、更に続編で語られたところを要約すると「普通の人は情報を並列的に見がちで、情報が本来持つ階層構造が分からず、真実に迫れない」「探偵の仕事は、情報の取捨選択によって適格な情報を見極め、そこから真実を導き出す事」と理由付けされている。この「情報の取捨選択」が本作ならではの捜査の面白さに繋がっている。
    • 後の『逆転裁判』シリーズも本作のシステムを参考にしたと言われており、電撃オンラインに掲載された『逆転裁判』と『ダンガンロンパ』のプロデューサー対談でも、ダンガンロンパプロデューサーの寺澤善徳氏が「逆転裁判やダンガンロンパのルーツは御神楽少女探偵団にあると思っている」と語っている。当時としては斬新で画期的なシステムであった。
      • 両作ともに盛り込まれている、相手の台詞の中の重要な情報、怪しい発言、矛盾点を突っ込んでいくゲーム性は正に本作のそれである。
      • しかし、間違えなければダメージを受けないこれらの後発作とは異なり、本作の推理トリガーは正解不正解問わず使用すれば残り回数は減っていく。「あとどれくらい間違えてもいいか」が分からないので迂闊に突っ込めない緊張感が生まれている。
    • 後述するが、失敗時には少々面倒くさいシステムにもなってしまっているが。
  • 本格推理物に属するシナリオ
    • 恋愛ゲーム的な見た目に反して、中身は河野氏の言を借りれば「ドロドロの陰惨な推理物」である。
    • 怪しい影のつきまとう怪奇的な事件にどこか裏のある登場人物、謎が深まる事件の展開や必ずしも幸せとは限らない結末など、大正から昭和初期という時代設定と本格的な推理物を上手くマッチさせている。
      • 推理小説で例えると江戸川乱歩の作品的な雰囲気である、と言えば伝わるだろうか。
    • 「太白星」のような比較的明るめのシナリオもある一方、「夢男」は事件の凄惨さ、真相の残酷さ、結末の救いの無さで遣る瀬無い気持ちになること請け合い。
    • さすがにハッキリと場面をCGなどで描写することは少ないものの、エログロな要素も意外と多い。
    • 尚、主人公が3人娘なのは「ボケとツッコミ、合いの手というお笑い芸人のようなテンポいい会話を狙った」ためと、プログラマーがギャルゲーを作りたかったから
      • キャラクター面でも3人とも差別化が出来ており、軽快な掛け合いで捜査を進めていく。
      • 一部のパートでは蘭丸が操作キャラになる。しかもメイドに女装しての登場なので一応「少女探偵団」のタイトルに反してはいない
  • ハイレベルなグラフィック
    • ストーリーの途中に挿入されるアニメーションは質の高いものである。
    • またキャラクターの立ち絵も当時としては非常に珍しく、多くの動作のアニメーションが用意されて活用されている。
      • キャラクターが喋ったり、笑ったりといった表情の変化や手を振るなどの大げさな動作までアニメーションで表現される。
      • 通常の表情は勿論のこと、主人公3人娘はちょっとしたギャグ調のデフォルメ顔も用意されている。残念ながら頻度は低く、また、せっかく作られたのにほぼ使用されていない表情もあるが。
  • 多彩な音楽
    • 事件の展開に応じて変化する雰囲気に沿ったもので、ゲームを影から支えている。音楽が流れる度に画面下に曲名が表示されるという、後のゲームの先駆けのような事も。
    • OP、EDには主題歌も用意されており、両曲とも本作の雰囲気に合わせた歌詞・曲調となっている。作詞作曲は当時ヒューマン社員だった志倉千代丸。
      • インターミッションでは主役3人娘の声優陣が歌う曲まで収録されている(しかもカラオケバージョン付き)。
  • 充実したコンフィグ
    • 5ページにわたるコンフィグは、メッセージ速度やウィンドウ枠などに加えてから背景のフェード色まで調整できるなど、家庭用ゲームにしては細かいとこるまで設定できる。
  • プレイステーション用のソフトにしては珍しく、512ドット×480ライン解像度出力を用いたソフトでもあり、その高解像度によってテキストを独自のフォントで表記しているほか、ルビが表示されている。
  • 豊富なオマケ要素
    • 2枚ものディスクがファンサービスとして使われており、その内容も本作のファンからすれば嬉しいものなっている。
    • ディスク3「御神楽少女探偵団の休日」では、ゲーム本編から離れてゲームに登場するキャラクターとの日々の交流を楽しむことができる。ミニゲームや分岐もいくつか用意されており、ボリュームもそれなりにある。
      • 探偵ものだからと言って事件を追うばかりではなく、登場人物の日常にもしっかり焦点を当てているのはポイントが高い。
    • ディスク4「御神楽少女探偵団のおまけ」では本作の設定資料集とゲーム内のアニメーションが閲覧できる。
      • アニメは本編のものが(アクションムービー失敗時のものも含め)全て閲覧可能。但し、本編で見ていないものは閲覧できない。
      • キャラクターイラスト、背景、ラフ、絵コンテなど、200ページを越える設定資料集は見応えのあるものとなっている。なんとディスクラベルまで見られるので、ゲームアーカイブスで購入した人も安心*2

賛否両論点

  • 解決編にプレイヤーが干渉できない。
    • 犯人を追い詰める為の捜査等、プレイヤーが干渉できるのは捜査編までとなっており、実際に犯人を追い詰める解決編は探偵である御神楽時人に任せる形式になっている。
    • プレイヤー視点は基本的には3人娘であり、(本人達は解決する気があっても)3人娘の役割はあくまで「探偵である御神楽時人の助手」といった作りになっている為、物語の形式的にはあえてそうしているものと思われる。
      • とはいえ、根拠となる証拠の提示や手がかりを元にして犯人を追い詰めたりといった行動を取れないのは寂しいプレイヤーも多い。
  • アクションムービーの存在
    • QTEとして今でも賛否が分かれるこのシステムであるが、本作もその例に漏れない。
      • アニメシーンで不意打ちのように現れるので、対処できず失敗すればまたムービーの始めからやり直さなければならない。更に失敗時には主人公達にお叱りを受けるのも却ってストレスに。
      • おまけで失敗時のムービーを閲覧するには、実際に失敗してそのムービーを見なければならない。コンプリートするなら全ての失敗ポイントを回る羽目に。
    • 難易度自体はそう高くなく、入っているシーンも「方向を間違えれば犯人に逃げられる」等、違和感がなく緊張感を高める事に役立っている。
    • アニメーションの作りや失敗した際のアクション等、LDゲームを参考にしていると思われる。
      • 失敗時も全ての失敗ポイントに個別のアニメがあり、前述した回収の面倒くささはあれど、作り込みは濃い。襲撃者に無残に殺されてしまうものもあれば、ずっこけて対象を逃がしてしまうコミカルなものも。
  • 大正浪漫の怪奇ものの雰囲気が強いという事
    • 怪奇じみた雰囲気などの描写は良いのだが、現代の推理物と比べるとかなり強引でロジカルとは言い難いシーンも多い。
      • 物語上最大のライバルに当たる人物が超人的な能力者である辺りも、この点を端的に表している。
    • と言うのも、本作の舞台設定は「現代劇では犯罪を立証する説明に対してさらに説明がいるなど専門知識が膨大になってしまうため、本作は科学捜査が発達していない時代にした」という理由がある。どちらかと言うと雰囲気重視であり、この点も意図的なものだったのだろう。
  • 疑問の残るカーソル操作
    • マップや調べるところのクリックのみならず、「話す」「移動」「メニュー」などのコマンドの選択などほとんど全ての操作にカーソル操作が要求される。
      • PS1のマウスに対応させるにしても、マウス接続時のみカーソル操作、コマンドにボタンを割り当てるなどの手段は存在しただろう。
    • また、会話ウインドウ中も含め常にカーソルが表示されたままである。
      • ムービー中もQTEの関係で会話ウインドウとカーソルは表示されたまま。

問題点

  • 本作最終話のシナリオが前編のみしか収録されていない。
    • 最終話「猟奇同盟」は、冒頭では「私達は最大の敵を迎えることになりました」と、いよいよクライマックスなのかと期待を煽る始まり方なのだが、非常に先が気になる場面で突如「つづく」でエンディングを迎えてしまう
  • システムの不便さ
    • テキストのスキップは既読のみ。
      • 通常のADVならさほど問題ではないのだが、本作ではトリガーを使い切るとセーブポイントからやり直しで、ムービーもスキップできないためリカバリに時間がかかる。
    • 機能ウインドウにアクセスする機会は限定されている。
      • 人物紹介、アイテム、設定などを行う機能ウインドウは、マップから場所を指定した時のメニューからしかアクセスできず、一般的なスタートボタンには割り当てがされていない。
      • そのため、解決編で人物がわからなくなったりしてもアクセスできないし、設定を変えたくてもすぐにできないことがある。
    • 人物紹介には事細かに新情報が追記されていくのだが、アイテムの方は極めて簡潔な紹介しか表示されないものばかりなので役に立たない。人物紹介に載らない情報を忘れてしまうと捜査に大きな支障をきたす。
      • 主人公達は常に「探偵手帳」を所持しているのだが、ストーリー上で使うだけでプレイヤーの役に立つ事は無い。
      • その割に最終話で急にアイテムを調べないと進めない箇所が出てくる。
    • バックログも無いので、うっかり飛ばしたり直前の話を読み返したくなってもどうにもならない。
  • 唐突なメタ台詞
    • メタ的なやり取りが出てくることが少なくなく、雰囲気に合わないという声も。
    • アイテムの使用方法の説明などのシステム的な解説ならまだしも、「これ解決編でしたっけ?」などとストレートな台詞が飛び出す事もある。
  • 立ち絵は素の表情から他の表情のアニメに移行する形のため、その表情がおとぼけ顔だったり笑ってたりするとシーンによっては違和感を感じることになる。
  • 前編と後編の間に間隔が非常に短いセーブポイント
    • ムービーを再生する関係で、前編終了と(QTEなしの)ムービー再生後という間隔が非常に短いセーブポイントとなる。
    • ムービー再生後のみをセーブポイントにすればいいと思うのだが……
  • インターミッションディスクではキャラクターとの会話終了のたびにマップ画面に戻される。1キャラクターにつき数種類会話が用意されているので面倒。
    • さらに、マップに入るたびにその場所の状況説明が表示される。
    • ちなみに本編ではマップに戻されることはない。
  • インターミッションディスクの「時人と蘭丸の部屋」の会話内容は直近の事件のものに限定されるため、見忘れて次の事件を解決してしまうと見られず終いになってしまう。
  • 推理トリガー正解時の「ピコーン!」のSEは爽快で気持ちよいのだが、逆に間違えた時の「ブブー」はうるさく不快。間違えたという事実以上に、精神にダメージを与えてくる。
    • ペナルティに対する緊張感には働いているが、逆に推理トリガーを引く事を躊躇わせてしまう面も。
  • 声の問題
    • 滋乃の声は棒読み気味。特に「幽鬼郎」の最初に流れるアニメではかなりの棒読みを聞かせられる。
      • 続編では上達が見られ、長台詞でも違和感を感じないほどになっている。

総評

革新的なトリガーシステムや本格的な推理物であるシナリオ、当時としてはクオリティの高いアニメーション、充実のおまけ要素など魅力的な要素を多く持つが、「最終話が前編のみ」という一点から生じる消化不良感が本作を単独で評価することを難しくしている。
しかし本作の持つポテンシャルは高く、最大の問題点である最終話が一応続編でフォローされていることを考慮すれば、十分に良作の域に達している作品と言えるだろう。


余談

  • 全体的に設定や雰囲気がサクラ大戦シリーズ(こちらの初出は1996年)に似ている。
    • 主に、大正から昭和時代にかけてという時代設定で舞台が東京(帝都)、メインキャラクターが(少し恣意的な書き方をすれば)普段は少し頼りないが、いざと言うときに活躍する男と少女たちであること、アニメーションが多く使われていることなどが例として挙げられる。
    • 当時はサクラ大戦ブームの真っ最中であり、本作の開発メーカーであるヒューマンがそのブームに便乗したとも考えられる。
      • しかし、本作は上手にサクラ大戦から換骨奪胎され、かつ別のものとして昇華されており、プレイヤーからこの点について非難されることはまずない。むしろ『はいからさんが通る』*3な世界観で『(毛利…ではなく明智小五郎と)少年探偵団』*4シリーズをやったと言った方が近いだろう。
    • 舞台演劇調の演出など、少なからずサクラ大戦を意識した部分が見受けられるのは確かだが、賛否両論点で述べたように「膨大な専門知識を必要としない舞台にする」という意図もあり、徒にサクラ大戦を意識ばかりしていた訳ではない。
  • 河野氏が自己投影した登場人物は御神楽時人……ではなく、見世物小屋の変態親父・平田権六らしい。
  • ヒューマンが破産した際、著作権の譲渡に混乱が生じていた模様だが、2009年8月にハムスターとヌードメーカー*5が共同保有すると発表された。下記の『続』とともにハムスターからゲームアーカイブスで配信されている。
  • 河野氏はホラーの『クロックタワー』、推理物の『御神楽少女探偵団』を経た次は時代劇の『猫侍』を。独立後はロボットアクションの『鉄騎』、アダルトゲームの『AVキング』、スペースオペラの『無限航路 -Infinite Space-』、アニメ風作品『戦律のストラタス』などと、ジャンルを選ばない様々な作品を手がける事になる。
  • 今は亡き声優・松来未祐氏のデビュー作でもある。
    • 一作目では「松木美愛子」名義なので、気付かない人も居たのではないだろうか。
  • 本作最終話の続きは続編『続・御神楽少女探偵団』に収録されたが、本作リリース時には続編のアナウンスは無かった。実際にプレイしてエンディングを迎えた時に初めて分かるのである。
    • シナリオが未完結であることを故意に告知せずにゲームを発売する企業態度には問題があるといえるだろう。
    • 同社は以前も『トワイライトシンドローム』で同じ事をやっており、本作で繰り返してしまった事になる。しかもサブタイトルが付いていて続き物である事を察する事もできたあちらと違い、本作はそれすら無いという問題も。
      • また、同作(前編にあたる『探求編』)の最終話はエクストラシナリオ的な位置付けで本編とは区別されており、最後には次回予告まであった。だが本作は、ただ本編シナリオを中途半端にぶつ切りにしただけである。

続・御神楽少女探偵団 ~完結編~

【ぞく・みかぐらしょうじょたんていだん かんけつへん】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 プレイステーション
メディア CD-ROM 4枚組
発売元 ヒューマン
【再販版】ヴィアール・ワン
発売日 1999年10月7日
【再販版】2000年9月21日
価格 5,800円(税別)
プレイ人数 1人
セーブデータ 1ブロック
レーティング 【GA】CERO:C(15才以上対象)
配信 ゲームアーカイブス:2009年11月25日/600円
周辺機器 アナログコントローラ対応(振動)
判定 良作

概要(続)

  • 前作の続編であり、完結編。
    • ストーリーは前作で中途半端に終わった「猟奇同盟」の続き「続・猟奇同盟」から始まる。
      • 前編にあたる前作の「猟奇同盟」もそのまま収録されており、どちらから始めるか選択可能。
  • ゲームシステムは、ほぼ前作と同じ。
    • ただし、MAP内の移動先の選択方法や、移動中のアニメーションの削除、所持アイテムの表示方法などの操作に若干の変更がある。
    • レイアウトも変化しており、画面左下に話しているキャラの顔が表示されるようになった。
      • 文字も前作のような独特のフォントと大きさではなく一般的なものになった。また、フォントも明朝、ゴシック、ポップ体から選択可能。
    • 解決編では「選択推理問題」(後述)が追加された。
    • S~Dまでのクリアランクが設定された。ランクに応じてシナリオクリア後に一枚絵を拝めるようになった。高ランクでクリアすれば下のランクの絵も一括で見られる。
      • 基本的にはSはレギュラーキャラのサービスカット、Aはレギュラーキャラの現代風衣装、Bはゲスト女性キャラのイラスト、Cはデフォルメ画像、Dはゲスト男性キャラのネタ画像となる。
    • アクションムービーは健在だが、今回は入力ポイントがある場合は「ACTION」の表示で予告されるため、不意打ちを喰らう事なく前以って備えることができる。
  • レギュラーキャラは全員続投。主役3人娘も変更は無い。
    • 今回は蘭丸(女装なし*6)や時人、美和と言った3人娘以外の立場で捜査を行ったり推理トリガーを引く場面もある。少女…探偵団?
  • なお河野氏曰く、前作が江戸川乱歩寄りなケレン味重視だったのに対し、今作は横溝正史寄りの本格推理重視とのこと。

シナリオ一覧

+ ※ネタバレを若干含みます
続・猟奇同盟 催眠術を掛けられた巴に時人は撃たれ、病院に搬送された。正気に戻った巴は失意と絶望に暮れるが、諸星警部の励ましもあって再び立ち上がり、猟奇同盟の謎を解き明かす事を決意する。
蜃気楼の一族 劇場関係者の会合に出席する事になった滋乃は、幼い頃によく遊びに行っていた子爵邸を訪れる。その夜、屋敷に泊まっていた踊り子が死体となって発見される。調査を始めた御神楽探偵事務所の面々だったが、その子爵家には驚くべき秘密が存在した。
暗闇の手触り 時人は夢男事件で死亡した兄弟の墓参りの為、蘭丸、美和と共に新潟を訪れていた。そこで、夢男事件で知り合った多岐川刑事と再会し、ある民家で起きた殺人事件の調査を依頼される。
生き人形 「母ちゃんを探してほしい」と1人の子供が御神楽探偵事務所を訪れる。その母に似ているということで子供に懐かれた千鶴は、巴、滋乃と共に母探しの調査に出るが、程なく時人の元に巴、千鶴、滋乃の死体が発見されたという知らせが入る。それは巴達そっくりの仮面を付けた別人の死体だった。
さ・よ・な・ら 最終章。時人は帝国陸軍に連行され、「怪盗に狙われた仏像を満州まで護衛してほしい」という半ば脅迫じみた依頼を受ける。仏像を積んだ船に乗り込む御神楽探偵事務所の面々だったが、船内で殺人が起き、護衛も虚しく仏像は盗まれてしまう。果たして「怪盗」の正体とは?
八角邸事件 外伝。旧友からの助けを求める手紙を受け取った時人は、単身その友の住む館へと向かう。再会した旧友は「手紙の件はもう解決した」と言うが…。

評価点(続)

  • 推理ものとしてより本格的になったシナリオ。
    • 河野氏が公言している通り、『金田一耕助シリーズ』のような本格推理路線になった事で謎解きも歯応えが増し、より一筋縄では行かなくなった。
    • トリックもロジカルさが増しており、推理問題の追加によってより本格的な推理力が求められるようになった。推理トリガーを引くポイントの割り出しも、全体的に手強くなっている。
      • 一方で、クリアランクの導入の関係もあってか、推理トリガー使用回数が増えており、前作に比べて余裕が出来た。よほど無闇矢鱈と突っ込まなければゲームオーバーになることは少ない。
    • ミスリードを誘う展開も少なくなく、捜査が進むにつれて事件の背景が全く別の側面を見せたり、それまでの前提を根底から覆してしまうようなどんでん返しが待ち受けている事も多々。謎が解けて来たからと言って最後まで油断してはいけない。
      • ただの一事件と思いきや、レギュラー陣に深く関わる裏事情が存在したりと、驚きの展開も用意されている。特に「蜃気楼の一族」は河野氏が「前作のエピソードは全てこの話への布石」と語るほど、物語の根幹に関わる話となっている。
    • その一方で、暗い結末が多かった前作に比べると全体的に後味の悪さは弱まっており、殆どの事件は明るめの終わり方になっている。
      • …と思いきや、最終章には衝撃の展開が待ち受けており、エンディングは切ない結末になる。しかし暗いだけではなく、希望も感じさせるラストである。
  • 選択推理問題の追加。
    • 前作ではプレイヤーは聞き込みなどの捜査は行うものの、御神楽時人探偵が勝手に事件を解決してしまっていたが、今作のパッケージに「事件を解決するのはあなたです」と表記されている通り、今作には事件を推理する「選択推理問題」が追加された。
      • 犯行の手口、動機、犯人の指名などを選択肢から選ぶ。間違えてもゲームオーバーにはならず、クリアランクに影響するのみ。
    • また、ある事件では暗号解読の要素が盛り込まれており、これもプレイヤー自身が解く必要がある。
    • 但し、やはり主人公達は助手なので、結局おいしいところは時人がもっていく点は変わりない。
      • 主人公達でかなりいい線まで推理する場合や、時人自身の立場で事件を解き明かす場合など、その都度扱いは異なる。
  • 前作ではボイスは前説やムービーなどごく一部だけだったが、今作では捜査編を除く事件編、解決編がフルボイスとなった。前述の「猟奇同盟」の事件編もフルボイス化されている。
    • なお説明書には、本来は捜査編を含めた全編をフルボイスにする予定だったが、容量不足で不可能になったこと。インタビュー等で全編フルボイスと言っていたことへのお詫びが載っている。
  • カーソル操作の廃止。
    • マウス非対応になった代わりに、「調べる」以外ではカーソル操作でなく一般的なコマンド操作へと変更になったため、操作性が向上した。
    • チビキャラのマップ移動演出も無くなったため、テンポは良くなったが寂しくなったと思う人もいるかもしれない。
      • その代わりなのか、パート間のアイキャッチではチビキャラの小芝居が表示されるようになった。
  • 推理トリガーを間違えた際のSEが静かになった。
    • これで前作よりも躊躇せず気になる箇所に突っ込んでいける。突っ込み過ぎてのゲームオーバーも自己責任だが。
    • 正解時のSEも静かにはなったが、今回は推理トリガー時にはキャラの吹き出しが出る演出になっており、正解、不正解でそれぞれの反応がある。正解時には電球*7が光る演出と「キュピーン!」というこれまた爽快な音があるので爽快感は損なわれていない。
  • その他の改善・改良点。
    • 未読スキップが可能に。
      • スキップは遅く、下手すると読める程の速さ。しかし未読でも飛ばせるようになったのは大きな改善点である。
      • 推理トリガーのポイントでは止まってくれるので、読み飛ばす心配も無い。
    • 前作に引き続き512×480解像度の他に640x480も選択できるようになった。
    • ムービーの鑑賞にはおまけシナリオのクリアが必要だが、QTE失敗時のアクションムービーはわざわざ失敗しなくても無条件で閲覧できるようになった。
    • 前作で幾つか見られたメタ的な台詞は撤廃された。

賛否両論点(続)

  • おまけの外伝シナリオ
    • 推理トリガーはなく選択肢のみとなっており、選択肢ミスで即ゲームオーバーが存在するなど昔のアドベンチャーゲームの趣となっている。
      • しかし怪奇ものの気が強く推理はほぼ不可能である。そんな中で二択問題が10も突き付けられるので、下手をすると何度も死ぬことになる。
      • にも拘わらず途中でセーブが出来ないので、ゲームオーバー時のリトライが面倒になってしまっている。
    • このシナリオのみ、『夢幻紳士』で知られる漫画家の高橋葉介がキャラクターデザインを担当している。
      • それ故に絵柄が独特で、主人公となる時人のキャラデザが別物になっている(冒頭で実際に突っ込まれている)。他の登場人物もかなり癖が強く、同じゲームなのかと疑わしくなるほど。
    • 尚、このシナリオは「蜃気楼の一族」の前半と並行して起こっていた事件で、本編では時人はこの事件の後で「後味の悪い悲惨な事件を目の当たりにし過ぎたことによる軽い鬱状態」になっている。
      • しかしこの事件のラストシーンを鑑みると、いまいち説得力が薄い。色々と積み重なったからとも考えられるが、それでも少々唐突である。
  • シナリオ「猟奇同盟」の特異さ
    • これ以降のシナリオをプレイしているとわかるが、このシナリオのみ毛色が異なる。
    • 首謀者が超能力の持ち主であることもそうだが、組織の規模が巨大で影響が国の関係者にすら及んでおり、いち探偵事務所が相手取るには大きすぎる。
    • 敵味方ともに派手なアクションシーンも多く、例えるなら劇場版「御神楽少女探偵団」のノリとも。前作が「劇場版への引きで終わったアニメ第1期」、今作が「劇場版に続いて始まったアニメ第2期」という見方もできてしまうほど。
      • クライマックスの展開も、「敵のアジトに潜入」「大掛かりな仕掛けを解いて進む」「敵の隙を突いて拘束し、情報を聞き出す」など、明らかに探偵事務所の仕事とはかけ離れている。
      • ラストも巨大な地下空洞の中で、奇抜な衣装に身を包んで高らかに思想を語る敵ボスと対峙するという、これまた普段の御神楽少女探偵団らしからぬ映画的展開となっている。やっぱり『サクラ大戦』を意識してたのではなかろうか。
    • 前作ラストシーンの事件によって時人は身動きが取れず、クライマックスまで全く登場しない*8ため、その前に助手3人娘だけで謎を全部解き明かしてしまうというのも本作としては異例。
      • ある事情から巴は事件終盤まで外れ、それまでは千鶴、滋乃で捜査をするのだが、終盤に復帰した巴はなんと僅かな証言だけで瞬く間に謎を解き明かす脅威の推理力を発揮し、他2人が数日に渡って捜査しても辿り着けなかった(どころか推理を間違えていた)真相をたった1人で、あっと言う間に暴いてしまう。同行者の諸星警部が驚き役に徹している点もあり、時人顔負けの名探偵ぶりが際立っている。
      • 普段は3人で相談しながら少しずつ真相に迫っていくだけに、かなり特異な流れである。他のシナリオでは巴は自分で推理して謎を解く事も勿論あるが、飛び抜けて優秀という訳ではなく、寧ろ3人で最も鈍かったり、他2人に指摘される事も少なくない。
        選択推理問題が初めて登場する事件でもあるのだが、これも以降の事件と違って巴の推理ショー的な扱いになっている*9
      • 終盤に再登場する時人も普段のイメージとはまるで違う衝撃的な登場の仕方をする。 本人は「一度こういうのをやってみたかった」と語るが、これには巴も再会を喜ぶ前に困惑顔をするハメに。
    • また、巴が終盤まで外れるのは他2人と顔を合わせづらいという事情もあり、事件に関係ありそうな人間の地元を探るという理由で諸星警部と共に東京を離れる為なのだが、いかにも重要そうに出発した割に何の手掛かりも得ること無く戻ってくる。そして戻ったら戻ったであっさり真相を暴くという、強引さが否めない展開になってしまっている。
  • 暗号問題
    • プレイヤーに頭を使わせる暗号問題が追加されたのは良いのだが、推理問題と違ってこちらは自力で解かなければ進めないので苦手な人には厳しい。
    • 失敗するとヒントが出るので、プレイヤーを突き放している訳ではない。
    • しかし、読解力に加えて発想力も必要な場面も。
      + ネタバレ
      • 金庫の番号として「演劇の台本に仕込まれた数字」を導き出すシーンがあり、その暗号を解くための手掛かりは作中で提示される。問題は暗号から割り出した文字をどう捉えるかである。
      • その台本の役名にはいずれも「小姓一」「小姓二」「小杉四十朗」などと漢数字が含まれており、この中から適切な数字を5桁分選ぶのだが、その中の「千々岩小兵衛」を「千が入ってるから1」と捉えられるか否かで全く難易度が変わってしまう。
      • 捉えられればすぐにクリアできるのだが捉えられなかった場合、役名ではなく台詞の中の数字に目を向けたり、せっかく解いた暗号の解き方を変えてしまったりと見当違いの方向に考えて正解から遠のく可能性がある。
      • 何度も失敗していると劇団員から暗号の解き方についてのヒントは貰えるのだが、数字の捉え方は完全にプレイヤーの発想力任せ。しかも一度ヒントが貰えるようになると、失敗する度に劇団員が現れて同じ会話が繰り返されるのでテンポが悪化してしまう。
      • また、暗号の書かれた台本はその場で参照は出来ないので、いちいち探偵事務所に帰らなければならない。写真かメモでも取っておかなければ、金庫に入力→失敗→事務所で台本を見る→金庫の部屋へ、を繰り返す羽目になる。
        理由としては、事務所で千鶴が台本を調べている最中に巴と滋乃が調査している為なのだが、ヒントの劇団員との会話では明らかに台本を見せている。どこから出した*10
  • おまけ要素が薄くなった。
    • 前作と違って4枚のディスクをほぼ全て本編に費やしただけあり、ボイス量の増加やシナリオのボリュームアップは出来ている。二作目の方が長いのも『トワイライトシンドローム』と同じ。
    • ただ、それと引き換えにインターミッションディスクが無くなったため、主人公達の日常描写が薄くなってしまった。
      • 前作では「探偵の休日」でキャラの以外な一面が除けたり、解決済み事件の関係者との再会が描かれていたのだが、今回はそう言った要素が廃されてしまった。
      • 特に事件関係者で再登場するのは伊庭浩三や河村須美子と言った前作キャラだけ。今作でも様々なキャラが登場するのだが、いずれも事件が終わったら再登場すること無くフェードアウトしてしまう。
    • 通常の推理ADVなら贅沢な悩みだが、前作が非常に充実していただけに寂しさが否めなくなってしまった。

問題点(続)

  • 前作未プレイ者への配慮はほぼ皆無。
    • 前作のような練習シナリオも無ければ、前作のあらすじ、舞台・登場人物の紹介すら無い。完全にと言ってもいいほど前作プレイヤー向けである。
    • 一応、ゲーム開始時に「前作をクリアしましたか?」と聞かれるが、これは「猟奇同盟」の最初からプレイするか否かが選べるかの違いしか無い。
      • クリアしたと答えると、「前作の続きからプレイできるが、もし内容を忘れたなら最初から」という選択肢が現れ、クリアしていないと答えると無条件で最初からというだけ。後者だからと言って前作紹介が入る訳ではない。
      • 本作第一話となる「猟奇同盟」も、言ってしまえば前作最終話なので、初心者向けの内容ではない。とても難しいというほどではないにしても、前作のノウハウが無いプレイヤーでは高確率で躓く。
    • 前作同様にオープニングムービーも収録されているが、前作と違ってタイトル画面で待たないと始まらない。
  • 本編へのミニゲームの組込み。
    • 前作ではファンディスクに、おまけ的にミニゲームが収録されていたが、本作では本編のストーリー内で強制的にミニゲームをプレイさせられる構成となった。ミニゲームをクリアするまでシナリオを進められない。
    • それは良いのだが、今作のミニゲームの組込み箇所はシナリオの流れに対して強引な盛り込み方になっている。
      • 「5つのスイッチのうち3つを踏んで正しく箱を動かせ」「パニックを起こして走り回る巴を出口に誘導しろ」というものであり、自然とは言い難い。また、前者は法則性を見出す以前に箱の動きが早いので目で追うのも大変なのに、3回失敗する度に中断してリトライのやりとりを見せられる。
      • しかもミニゲームはこの2つで全部である。どちらもほぼ同時期に発生するので、取って付けた感が否めない。
  • クリアランクの判定がシビア。
    • 1つでも選択肢ミスやフェイクに引っかかるとSランクを取れない。初見でノーミスクリアは難しいので、自力で特典が欲しければ再プレイは必須。
      • 名探偵宛らの推理力でも無い限りはSランクを取るために「まず普通にチャプターをクリアして正解を覚える」→「ロードしてやり直し、正解のみを選び直す」をセーブポイント毎に行う三歩進んで二歩下がるようなプレイになりがち。
    • そもそも前作は「選択ミスを規定回数以内に収めつつ情報を集める」のであって、ノーミスクリアを目指すようなゲームデザインではなかった。
      • プレイ成績に判定と特典を付ける事自体はプレイ意欲の向上にも繋がるので決して間違いではないのだが、その判定が厳し過ぎた。更に本作は事件1つ1つがボリューミーであるため、かなりの手間が掛かってしまうという点もある。
    • ミニゲームの成績やアクションムービーのリトライ回数が評価に含まれないのは救いではある。
  • 既読スキップ以外のシステムの不便さはそのまま
    • 機能ウインドウにアクセスする機会は限定されている、バックログが無いと言った点は前作と同じである。
    • メッセージウインドウがコンパクトになった関係か、前作と違って漢字にルビが振れなくなった。
      • 舞台設定故に現代からすると一般的ではない漢字の使われ方や読み方がいくつかある上、名前の読み方が難しいキャラが多い。初登場時に関係者の名前の読みも教えて貰えないので、理解を妨げることも。
    • また、今回は振動機能を使いすぎるきらいがある。

総評(続)

おまけ要素は薄くなったものの、メインであるADVとしては十分なシナリオであり、『御神楽少女探偵団』と合わせ、本作込みで1つのゲームと言える完結編ゲームとなっている。
一作目・二作目というより前編・後編と言える作品なので、プレイするなら前作とセットでの購入が推奨される。


余談(続)

  • 発売直後にヒューマンがゲーム事業から撤退したため、出回った本数は少なく入手は難しかった。
    • その後、VR1(ヴィアール・ワン)から2000年9月21日に同価格で発売された(前述の通り、現在の版権はハムスターとヌードメーカーが保有)。
  • 今作では事件編と解決編に声が付いたが、絵から想像される声や話し方との乖離が大きい女性キャラが増えたと感じる人もいたようだ。
    • こちらも、本編である捜査中は無声だったのが、解決編で急にフルボイス化するという設計が一因であろう。
  • オープニングムービーは一見すると前作と同じだが、細かな部分が書き直されており、より洗練された内容になっている。それだけに、タイトル画面で待たないと観られなくなったのは勿体ない…。
    + 比較動画
  • 二作共に登場人物がやたら相手の発言に「はぁ」と返す事が多い。
    • 曖昧な返答をせざるを得ない状況のみならず、普通の会話でもかなりの確率で登場する。多い時は一つの会話で数回出る事もある。
    • しかし別のライターが担当している「生き人形」では登場頻度がかなり低い。やはり河野氏の当時の癖だったのだろうか。
  • 2003年に発売されたアダルトゲーム『新・御神楽少女探偵団』(発売:エルフ/開発:ヌードメーカー)は公式続編であり、『御神楽少女探偵団』と続編の『続・御神楽少女探偵団』のWin移植版も同時収録している。脚本・監督・ゲームデザインは、同様に河野氏。
    • アニメの廃止、フルボイス化、エンディング分岐、キャラデザイン・キャストの変更と、抜かりの無い18禁作品への最適化が行われている。また、原作では3人娘で18歳以上なのは滋乃だけなので、作中で2年を経過させている。
    • 18禁でないものを18禁作品にしたこと、それに伴う諸々の変更、主人公3人娘の改変*11、かなりのグロ描写の存在*12などから、賛否両論が激しく黒歴史とするファンも多い。
      • 「アダルト描写がアダルトゲームというより小説の濡れ場みたいだしシナリオと自然に繋がっていない」とか、「愛着のあるキャラクターが汚された気分になる」など。
      • アダルトシーンは凌辱が基本。主人公3人娘がよくわからないおっさんに襲われる「愛のない」展開が含まれる。
      • また、それでいて大した尺を割くわけでもないため、『新』からプレイした人でも「エロはいらなかった」という感想は多い。
    • 導入部にしても、『続』では最後は辛い結末ながらも希望を感じさせる演出があったのだが、『新』ではそれを見事にぶち壊した開幕となっている。
    • このWin移植版は一作目の既読スキップの追加やQTEを自動進行可能にするオプションの追加などが行われ『御神楽少女探偵団』と続編の『続・御神楽少女探偵団』の移植としては評価されている。
      • ただし、BGMの大半が削られており、一作目のインターミッションディスクや『続』の外伝シナリオも未収録。
    • 後にこの作品を18禁OVA化した『御神楽探偵団 活動写真』*13が発売。ビデ倫の倫理規定に合わせた為だが、タイトルから「少女」が取られるという事態に。
      • 当然ながら主役3人娘の凌辱シーン満載なので、原作ファンは要注意。
  • 後の河野作品には本作を彷彿させる要素が出る事もある。
    • 御神楽探偵事務所で飼われている猫の「十兵衛」は『猫侍』の主人公のモデルとなっている。
    • 『戦律のストラタス』ではヒロインが通う学校の生徒として、本作の主役達らしき名前が出てくる。ちなみにその学校は直後の戦いで水没する。

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最終更新:2024年01月24日 13:43

*1 時人役の津田氏とは夫婦であり、本作の収録が馴れ初めであったと言う。

*2 ディスク交換時にも表示される。

*3 そもそも『サクラ大戦』も『はいからさんが通る』の影響が見られる。

*4 尤も少年探偵団自体も『シャーロック・ホームズ』シリーズでホームズが情報収集の為に雇う「ベイカー・ストリーツ・イレギュラーズ」(ベイカー街不正規(浮浪児)隊)が元だが。

*5 河野氏がヒューマン退社後に立ち上げたゲーム制作会社

*6 捜査時は無いが、終盤でまたメイド姿になる。

*7 漫画で閃きの演出などに使われる昔ながらの漫符。

*8 終盤まであまり登場しないのはいつも通りだが、他の事件では巴達とは別の場所で事件について推理し、解決のために動いている。

*9 他事件では他の2人や時人の立場でも問題に答える。

*10 また、失敗すると巴が「この金庫壊れてんじゃないの!?」と喚くのだが、成功すると予め事務所で正解を導き出して、最初からそれをメモしてきていた事になる。勿論、劇団員との会話も噛み合わない。

*11 特に千鶴は、彼女自身の根幹を覆しかねない設定が明かされる為、今作が受け入れられる人でも違和感を覚えてしまうことは珍しくないと思われる。

*12 エルフはエロゲーメーカーとして知られているが、実はそれと同時にグロ描写にも昔から定評のあるメーカーである。過去作を見ても、耐性の無い人には結構厳しいCGが多い。

*13 「活動写真」とは明治・大正の頃の映画の呼称。ちなみに『サクラ大戦』も『サクラ大戦 活動写真』という劇場版が存在しており、こちらでも被る結果に。