東京魔人學園剣風帖
【とうきょうまじんがくえんけんぷうちょう】
ジャンル
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アドベンチャー+SRPG
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高解像度で見る 裏を見る
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対応機種
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プレイステーション
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発売元
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アスミック・エース エンタテインメント
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開発元
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シャウトデザインワークス
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発売日
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1998年6月16日
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定価
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5,800円(税抜)
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配信
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ゲームアーカイブス:2012年3月28日/600円
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判定
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良作
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東京魔人學園伝奇シリーズ
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概要
「魔人学園」と呼ばれる新宿・真神学園に転校してきた不思議な《力》を持った主人公が、同じように不思議な《力》に目覚めた仲間たちと共に東京に起こる異変や猟奇殺人事件を解決するため戦う、シミュレーションRPGパートを含んだアドベンチャーゲーム。
特徴
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テキスト形式で進める「アドベンチャー部」と、敵との戦闘をターンベースのストラテジーとしてプレイする「シミュレーション部」にわかれる。
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ゲームは23話構成の物語で、一話分の基本的な流れはドラマやアニメの構成が踏襲されている。
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「アドベンチャー→タイトルコール→アドベンチャー→(セーブ)→シミュレーション→アドベンチャー(→セーブ・幕間劇)」となっている。
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男女共に仲間になる総勢26人のキャラクターは多彩な技や術を用い、またそれぞれのキャラクターも立っており印象に残る作りになっている。
アドベンチャー部
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ストーリーは高校3年生の友人5人を中心とした、オカルト・ホラー要素が強い青春活劇物。
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神話や風水、果てはクトゥルフ神話まで内容は多岐にわたり、それらを上手く融合させている。
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ゲーム中で説明されるため、それらを知らなくても楽しめるようになっている。
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東京23区内の実在の場所が舞台であり、背景は現地取材した写真を用い、劇画調のキャラクターと共に現実感を持たせている。
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主人公の受け答えを感情入力で答えていくシステムが斬新。
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感情コマンドは8種類(+無視)があり、表示に従い賛成・肯定の意味合いを含む「友・同・愛・喜」がそれぞれ○×△□ボタンに、反対・否定などの意味合いを含む「悩・悲・怒・冷」がそれぞれ方向キー上下左右のどれかを押すか無視をする。
入力した内容により、その直後のテキストが変化する。
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受け答えしだいで新しい仲間が増えたり、クリスマスデートのフラグが立つ。
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仲間の全員加入は好感度の管理をすればそれほど難しくはないが、クリスマスフラグは非常に難解なキャラが数キャラ存在している。
そのため、攻略本・攻略サイトを使うことになるだろう。
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好感度が上がるとあだ名で呼ばれるようになる。
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性別が男性、古武術の達人、といった設定は存在するが、主人公の性格や人柄はプレイヤーの想像に委ねられている。
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主人公のセリフは基本的に存在しておらず、受け答えは感情コマンドから想像するのみである。
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後述の「予定」の「話す」ではセリフとして選択肢が表示される。
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一方、魅力的な男性キャラクターが多数存在していたことから、女性主人公でプレイしたかったという声も見受けられた。その声が届いたからなのか、このゲームと主人公が同じである『符咒封録』に女性主人公モードが収録された(あくまでも裏技扱いのおまけモードであるが)。
シミュレーション部
斜め俯瞰の正方形のマスにキャラクターが配置されたゲーム画面である。
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一般的なSRPGとは異なり"通常攻撃"は存在しない。
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本作における攻撃は全て"特殊攻撃"というべきものであり、カットシーンが挿入される「技」と、特定のキャラで敵を囲んで行う「方陣技」が存在する。
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また、いわゆる"防御"というコマンドは存在しない。
行動力
本ゲームで要となるのは、戦闘画面下に表示される「行動力」と言うパラメータである。移動、攻撃、道具使用など一連の動作には、行動力を消費する。
行動力はキャラクターごとに固有の値が設定されており(初期値で約13~18)、行動力がある限りは、キャラクターは何度でも行動できる。また、行動力はターンごとにリセットされる。
行動力は、レベルアップで変化せず、アイテムや装備、インターバルでの行動により強化する。
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移動・向きの変更
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移動で消費する行動力は地形により異なる。また、向きの変更は、横を向くごとに行動力を2使う。
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攻撃方向でダメージ倍率が変化する。
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技
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技ごとに決められた行動力を消費する。なお、「方陣技」は行動力を消費しない。
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道具
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道具の行動力の消費量は、道具による効果にかかわらず、一律で5である。
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自ターンであれば行動力が残っている限りどのキャラでも行動ができ順番も決まっていないため、戦略の幅が広い。
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各キャラの攻撃技には全てどの部分を攻撃するかという「攻撃位置」と、自身の耐久部位が3*3マスの図で示されており、耐性・弱点などの表現を行っている
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特定の1マスだけに攻撃する技は、そこに耐性がないボス等への突破口となりうる等、多数のキャラが仲間になる本作において差別化を図ろうとしているのがわかる。
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攻撃した敵を指定枠分強制移動させる「吹き飛ばし」の概念があり、敵を引き離したり、反対に仲間が攻撃できる範囲に引き寄せるという作戦が取れる。
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技を選択すると敵に与えるダメージがあらかじめ表示され、行動確定前なら何度でもやり直しが可能。
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よって、キャラAがキャラBの方向へ敵を吹き飛ばし、キャラBが正面以外の方向から何度も攻撃を加えるといったキャラクター間の連携も戦闘の重要点となる。
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戦闘も特定のキャラが囲むことで発動する「方陣技」などキャラの特色を生かしたシステムがあったり、フリーバトルとアイテム稼ぎの無限ダンジョン「旧校舎」があったりと飽きさせることがない。
インターバル画面
インターバル画面は戦闘前や各話の間で表示される画面で、「予定入力」「あらすじ」「寄り道」「セーブ」「ロード」「コンフィグ」のコマンドがある。
予定入力
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各キャラクターの予定を決められる。各話の間のインターバルのみで選択可能。
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「部活」「勉強」「休息」「遊び」を選ぶと、内容により攻撃力、防御力などのパラメータが変化する。
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「話す」というコマンドもあり、これを選ぶと主人公に質問をしてくる。
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パラメータは変化しないが、返答内容(3択)により主人公に対する好感度が変化する。また、各キャラの心情にも触れられる。
あらすじ
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その時点までのあらすじを確認できる。コンフィグでオートロードの設定をしておくと、ゲーム開始時にもあらすじが流れる。
寄り道
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各話の間のインターバルのみで選択可能。
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「真神学園新聞部」
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これまでの事件や学校の出来事が記載された校内新聞を閲覧できる。
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入手は全てストーリー上であるが、分岐によって手に入らない場合もある。
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「如月骨董店」
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「真神学園旧校舎」
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地下に潜っていく無限ダンジョン。ストーリー上の戦闘と違い、キャラクターの初期配置はランダム。
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脱出には、5階分進まなければならない。脱出せずに進んだ場合、進むたびに経験値などのパラメータに乗数が掛けられる。
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階層が深くなればより強い敵が登場し、強力なアイテムが入手可能。
評価点
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アドベンチャー部での感情入力システムは選択肢による分岐とは一線を画した革新的システムであった。
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上記、感情入力システムによる多彩な分岐もまた物語を楽しませる要因に一役買っていた。
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インターバル部での「真神学園旧校舎」を利用することでレベルが低いキャラは鍛えることができ、シミュレーションが苦手な人でも安心して楽しめるようになっている。
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ゲーム自体の難易度は程ほどであり、無限ダンジョン「旧校舎」を活用しないと辛い部分も存在するが、使用しなくてもクリアは可能なレベルでレベル上げのためのザコ倒しという作業を強制される場面は少ない。
問題点
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テキストを進めるためのボタンはR1のみという特異な操作で、慣れるまでは使いにくい。
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前述の感情入力で○ボタンを使用するため、「ボタン連打で読み進めていたら選択肢が出てきてうっかり○ボタンを押してしまう」ことへの対策と思われる。
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テキスト表示時に他のボタンを押すと、小さく「R1」と表示されるため、ならば最初から○ボタンにも対応してもいいのではとの意見もある。
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解像度の問題
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PS1の低解像度における文字のフォントが優れておらず、また、画数の多い漢字が頻繁に用いられるため、読みにくさが目につく。特にルビで顕著。
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同様に、校内新聞の閲覧機能で用いられる画像は解像度が非常に低く、拡大しても判読の難しい文字がある。
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卒業式に好感度が高い女の子キャラクターから告白される特別なエンディングがあるが、そのフラグであるクリスマスデートは全員分あるにもかかわらず、特別エンディングが用意されているのはメインメンバーの二人のみ。
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後に発売されたファンディスク『朧綺譚』にて、男女含めて全員の告白シーンが用意された。
戦闘
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方陣技の演出が冗長で、設定でカットできない。
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これは当時のSRPGでは良くあったことであった。使用すると仲間の好感度が上がるというシステム上、積極的に使いたいのだが。
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戦闘で使いやすいキャラとそうでないキャラの差が大きい。
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ドッペルゲンガーを操る紫暮は、一人分の出撃枠で2ユニット出撃できる。
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醍醐・アラン・マリィ・如月が覚える「四神覚醒」は特定のパラメーターを最大値まで上げる効果にもかかわらず消費行動力1で使用可能。
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コスモレンジャーの三人は明らかに他のキャラに比べて弱い。しかし彼らは設定上「個人の力は弱い」とされるキャラであり、そのかわり方陣技が豊富かつ強力という特徴がある。
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舞園・比良坂の二人は「歌」で攻撃するキャラなのだが「8つの音階を3つ組み合わせて効果が決定される」ので、実質的に512種類の技を持っており、その中から手作業で「使える」技を探し出さなければならず、非常に面倒くさい。
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それでも比良坂は技の基本攻撃力・範囲が非常に強力なため、適当に設定しても強い。しかしそれは事実上舞園が比良坂の下位互換だということでもある。
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また、好感度の高低で参加するターンが変わるなど不便な点がある。
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幸い、旧校舎でいくらでもレベル上げが可能で、キャラ性能差もパラメータ上昇アイテムである程度は埋めることができるので、お気に入りのキャラが全く役立たずになるというようなことはない。
イラスト
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劇画的なキャラクターデザイン
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キャラクターデザインの小林美智の本来の絵柄はアニメ的だが、あえて劇画調のデザインに変更、塗りもイラスト的なものとされた。
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しかし、デザイナーが劇画調の塗りに慣れていないからか、立ち絵のイラストの色合いは暗いあるいは色が濃すぎる印象を受ける人もいた。
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戦闘デモのキャラクターの斜め後ろからのイラストが立ち絵と印象が異なるとの意見もある。
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如月というキャラの腕を組む立ち絵に違和感がある。
総評
感情システムなどの斬新な内容や必要最低限の戦闘でクリアできる手軽さが評価された。
ニッチなジャンルを扱いながらも、凝りに凝った内容でその手のジャンルが好きな人を満足させた。
また、それ以上に特定の雑誌の後押し(後述)とキャラクターの魅力で固定ファン(特に女性)を拡大した異例の作品である。
その後の展開
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発売後「電撃プレイステーション」が熱烈にプッシュし、同誌の読者層とも合致していたため絶大な人気を誇った。
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1年以上も宣伝記事や宣伝マンガと攻略記事の連載、果ては付録のCD-ROMで改造セーブデータの配布まで行い、イラスト投稿ページの大半が本作のキャラで埋め尽くされ、ファンページが出来るほど。
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そのため、ゲーム販売史上異例のスロースタートのジワ売れ人気作となった。
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本作から数年後を描いた小説・ドラマCD・マンガ化・スピンオフ作・登場した場所の観光ガイド本・イラスト集が発売され多彩なメディアミックスで商品展開した。
またリメイク版発売前後もアニメ化・ラーメン店とのコラボレーション・コンサートが行われた。
ゲーム
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1999年4月12日に上記のエンディングを補完し、前日譚である第零話に7編の外伝と、CG鑑賞モードに音楽鑑賞モード、『剣風帖』クイズ、"詰め魔人學園"とも呼べるミニゲーム「螺旋洞」を収録したファンディスク『東京魔人學園朧綺譚』が発売。「螺旋洞」の難易度が高くやりがいがあり、また、攻略後に全員の好感度をいじって全員のエンディングを簡単に見られるなど、ただのファンディスクの域を超えている。
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さらに最大の隠し要素として『外法帖』の予告ムービーが収録されている。当時続編についてはまったくアナウンスされていなかったため、この不意打ちはファンにすさまじい衝撃を与えた。
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2000年7月13日に『剣風帖』と『朧綺譚』をセットにした事実上の廉価版である『東京魔人學園剣風帖繪巻』が発売される。内容についてはパッケージイラスト以外の変更点はない。
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2000年10月12日にWSでカードゲーム+アドベンチャーゲームの『東京魔人學園符咒封録』が発売。物語上外伝的な扱いになる。こちらは2004年にGBAでシリーズ5周年記念作の一つとしてリメイクされた。
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2002年に続編『外法帖』が発売される。幕末を舞台とした作品となったが、細かい部分が当初の設定と食い違うこともあり、やや期待はずれな感もいなめなかった。
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リメイクもされ、発売元がアスミック・エースからマーベラスインタラクティブ(後のマーベラスAQL)に移り、外法帖はPS2で、剣風帖はDSでそれぞれ発売された。
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魔人學園シリーズは三部作で、三作目『帝戰帖』のDSでの製作が発表されていたが、2010年7月に発売中止が決定した。
余談
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菊池秀行作品(特に「魔界都市」シリーズ)へのオマージュを多く含む。
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例えば仲間の1人・蓬莱寺京一は十六夜京也そのままで、ドクター・メフィストの病院の如く常識では治療すら出来ない奇病や重傷も拭った様に治す産婦人科があるなど。
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二次創作では主人公の緋勇をオリジナル女性キャラに置き換える手法が一時期流行した。
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声優に、無名時代の堀江由衣や田村ゆかりが出演していた点で声優ファンのポイントは高い。
最終更新:2021年05月16日 17:03