ドラえもん2 のび太と光の神殿

【どらえもんつー のびたとひかりのしんでん】

ジャンル アクション
対応機種 ニンテンドウ64
メディア 96MbitROMカートリッジ
発売元 エポック社
開発元 ブレインスミス
発売日 1998年12月11日
定価 7,140円
判定 なし
ポイント テンポ悪め
ゲーム部分の説明不足
アドベンチャー要素多め
キャラゲーとしての完成度は高い
ドラえもんシリーズ


概要

64版ドラえもん3部作の2作目。
ドラえもん達がタイムマシンで旅行に行った帰り道、のび太が旅先から拾ってきたクリスタル(正式名称:光のクリスタル、以後「水晶」と表記)が突然光輝く。気が付くとのび太は見知らぬ場所に飛ばされていた。
のび太は離れ離れになった仲間と、失くしてしまった秘密道具を探しながら、元の世界に戻る方法を探す…というストーリー。
前作『3つの精霊石』と比較するとシナリオ上のイベントを1つ1つこなしていくことが多く、アドベンチャー要素が強め。


評価点

  • 当時としては平均を上回る大量のボイス。N64でこれだけのボイス収録はかなり凄い。
    • 前作同様のアクション時のボイスに加え、イベントムービーもフルボイスで進行する。当時のアニメそのままの雰囲気が再現されている。
  • アドベンチャーとしての親切設計
    • 適当に村の住民に話しかければ、おおよそ次の目的地が分かる。プレイヤー層に配慮してか、シナリオを進めるためにフィールドを彷徨う状況に陥ることはまずない。
  • アクションとしての難易度
    • 複雑なギミックを踏破したりすることはなく、敵の強さもターゲット層相応といったところ。ただ、操作や距離感に慣れていないとクリアできない程度には収まっている。
    • そのなかでも例外となっているのがラスボス戦。素の状態では攻撃の密度と耐久力が高く、他とは別格の難易度。各地で「宝石」を入手しておくことで救済や弱体化させられるのだが、こちらについては後述。
  • 動作は軽快
    • 3Dゲーにありがちなもっさり感はなく、ハードのお陰もあってロード待ちは体感上無いと言い切って差し支えないレベル。この点でストレスを感じることはないだろう。
  • 各地で手に入る水晶はそれぞれラスボスを弱体化させる力があるのだが、ストーリー上で取らなければいけないものを除けば、一切取らなくてもラスボスに挑戦できる。
  • マップ間でのBGMの重複が殆どない。印象に残る曲も多く、特にラスボスBGMは人気が高い。

賛否両論点

  • キャラクターごとの特徴がなく全て同じ性能。ものすごく大胆な調整である。
    • 「個性がなくてつまらない」とも「いらない子やバランスブレイカーが存在しない」ともいえる。
  • NPCの時間別会話テキスト内容の変化
    • ゲーム内のNPCは曜日別の会話内容以外にも大体ゲーム内時間で2時間間隔で話題を変える傾向にあるのだが、それらを聞くための手段がその曜日かつその時間帯に直接そのキャラクターに話を聞くしかないという当然ではあるが時間を加速する要素がないので彼らの話を聞くには非常に時間がかかる。ドラえもんの道具には「狂時機」や「タイムワープリール」といった加速や時間スキップが容易にできる道具もあるのでそれらを設定として活かす手段もあっただろうに…
    • また彼らはその場で棒立ちしているわけではなく時間帯ごとに移動するので彼らの生活を描写するという演出面では上手に働いているのだが特定の人物を探す際には不親切である。彼らの話の多くは取るにならない日常会話がほとんどであるが、一部人物の会話テキストは曜日や宝石の隠し要素の説明、世界観の裏設定になっているものもあり日の目を見ることがないままゲーム進行してしまう点はとても残念である。

問題点

  • 水晶のパワー
    • 今作のキーアイテムとなっている「光のクリスタル」は、フィールドでの時間経過とともにパワーが減少しそれに伴い夜時間が増加、そのままパワーゲージが0になるとゲームオーバーとなってしまう。
      これを補うために「光の日」だけ各地に出現する欠片状の「光の欠片」を使い、パワー切れを遅らせる必要がある。この状況はゲーム開始直後からクリアまでずっと続く。
      • 実は夜時間が増加するというのは嘘であり、クリスタルのパワーがいくら減っても夜時間は変わらない。
    • しかし、水晶のパワー消費速度がどの程度なのかは説明書に一切書かれていない。そればかりかストーリー上でも説明がほとんどない。
    • こうしたシステムのため寄り道をしづらく、攻略順が固定されていることと相まって必然的に自由度が低くなる。
  • カメラワーク
    • 上下調整が角度、位置ともに出来ないので、場所によってはかなり見づらい。フィールドでは開けた地形でも見下ろしのため現在地が分かりにくく、遺跡では逆にキャラクターの位置に近い高さのためジャンプアクションで距離感を測りづらい。段差ではカメラが大きく動き、かなり画面が揺れる。
  • 前作や次回作とは違い、敵を倒していくアクションステージの数が少なく、ラスボス戦(ダンジョンなし)を含めても4つしかない。一応ステージの長さはそれなりだが、アクション目当てで買うのはお勧めできない。
    • 本来ラストステージはアクションステージとする予定だったが、テンポが悪くなるからという理由で削除されたという。それを削るより後述するような仕様上のテンポの方を改善して欲しかった所だが。
  • 探索の難易度
    • シナリオ通りに歩を進めてラスボスに挑むまではさしたる問題にならないのだが、全アイテムを揃えるのは低年齢層どころか大人でも少々面倒。
      • 序盤から様々な場所でひみつ道具の姿が確認できるが、これらの多くは事実上のラストダンジョンで入手する道具がないと回収できない。ラスボスの弱体化に必要な水晶に関しても同様。入り組んだ地形の奥にあるなど発見そのものが面倒な場合も多く、ラスボス直前になって全マップをもう1周させられるに等しい。
  • 散見されるテンポの悪さ
    • 今作では、外にいる間は自動的に時間が進む。また昼夜と曜日が存在する。
    • 夜は体力(ハート)が急速に減るなど行動に支障が大きいため、特定の場所に戻るか「キャンピングカプセル」を使って休む必要がある。一気に攻略しようとしてもこれによって確実に足止めをくらい、3歩進んで2歩下がっている気分にさせられることも。
      • ちなみにハートが減る理由として夜はとても寒い設定で、警告代わりにキャラが寒さを訴え、BGMも不穏になる。夜通し活動することは出来ず23時になると画面が暗転し、その場で強制的に次の日に切り替わる
    • 一週間はそれぞれ「光」「炎」「水」「木」「風」「岩」「闇」の7つの曜日に分かれている。意識する場面はほとんどないのだが、数少ない機会に「木の日にしか入れない場所の後、いくつかのイベントを経て風の日にしか入れない場所を攻略」というものがある。木の日の間にイベントをこなし切るのは初見ではまず無理で、数日の連泊を余儀なくされる。
    • イベントムービーにおけるキャラクターの動作の間が妙に長いことが多々ある。オープニング以外スキップ不可なのでテンポをかなり損ねている。
  • キャラクターそれぞれにステータス(機嫌)があるが、これの回復方法がかなり少ない。表示は「勇ましい」「ご機嫌」「普通」「憂鬱」「泣きたい」の5種類。回復には
  1. プレイヤー操作キャラに選ばれる(ストーリー進行上で行われる交代に限定、遺跡ステージでの交代は含まれない)。
  2. シナリオ進行で適切なひみつ道具を使用する。
  3. キャンピングカプセルや特定の場所で休んで「光の日」になると自動的に回復(少量)。
  4. 遺跡最奥のボス撃破で最大値の「勇ましい」にまで回復。の4つだけで道具での回復手段がない。まあ、人の機嫌を道具で回復できたら、それはそれで生々しいのだが…。また、憂鬱、泣きたいの状態は被ダメージ量が多くなるので難易度が上がるだけでなく、コンティニューすると機嫌が悪くなっていくので負の連鎖になりやすい。
    • 高所からの落下や水に落ちる事でも機嫌が悪くなる。カメラワークの悪さで頻繁に落ちやすく、回復機会が少ない事で簡単に悪くなっていく。
  • シナリオや雰囲気の問題
    • 上記の通り、今作の事件の発端は「のび太が無断で光の水晶を持ち出したこと」なのだが、「タイムマシンで出かけた先に異世界の秘宝がなぜ落ちていたのか?」という疑問が残る。この程度のルーズさは原作にもあるので、突っ込むのは野暮ともいえるが。
    • ダンジョンBGMや地形、敵の造形(例:肌色の球体に目と嘴が付いただけ)など、やたら不気味で怖い表現が多い。前作のライトなファンタジー風の世界との差別化を計った可能性もあるが「対象年齢層に受け入れられるか?」という視点で見ると厳しいものがある。
    • エンディングも簡素。タイムマシンで飛び立つまでは良いのだが、その後は真っ暗な背景で一行がポーズを取った後、「ムードもりあげ楽団」とENDの文字が出るだけというムードももりあげも無い寂しいもの。
      • 前作同様、スタッフロールすらも無い。何の演出も無いぶつ切り同然で終わった前作よりはマシとも言えるが、やはり寂しい。
  • ボスの数が少ない。またボス戦の難易度にムラがある。
    • ラスボスと中ボスを含めても5体しかいない。ボス戦の曲はどれも名曲なだけに残念である。
    • 先述のとおり探索の難易度は高めだが、ボスの強い弱いは結構極端。ディオニース遺跡のボスに至っては、動かずに衝撃波ピストルを連射するだけで完勝という有様。ボスの攻撃は自分から当たりに行かないと被弾しない。
      • 一方で、ヘパイース遺跡のボスとラスボスはかなりの強敵。特にラスボスの最終モードは攻撃が苛烈で、無敵アイテムを使用しないと勝利が難しい程。
  • 隠し要素がない
    • ゲームをクリアしてもブラーニの村の風車小屋に入れるだけ。入っても中に特典がある訳でもない。
    • 前作ではゲストキャラを操作可能になる要素があったが、今作はそもそもそれが可能なキャラがいないのでやりようが無かったか*1
    • せめてひみつ道具図鑑をコンプリートしたファイルがあればゲームレベルの設定に「むずかしい」が追加されるようにしてほしかった...

総評

ドラえもんゲーとして見るなら、多少粗があるもののその出来栄えは決して悪くない。一ゲームとしてみると、前作からは意欲的に変更を加えた独特の作品として仕上がった。
しかし前述のテンポの悪さや雰囲気などの問題を含め、楽しめた人と楽しめない人がはっきり分かれる結果となった。
ドラえもんのアクションを期待する人にはガッカリゲーと受け取られてしまいがちだが、ドラえもんのキャラゲーを期待する人にとっては十分に楽しめる出来になっていると評価できるだろう。

ちなみに本作は前作、次回作と共にマイナーなゲームとしてその名を挙げられることが多い。


余談

  • 発売当時、別冊コロコロコミックにて漫画化された。
    • 前後編の二話のみで駆け足ではあるが本筋の展開は網羅している。また、エンディングはオリジナルキャラとの別れも少し描かれており、あっさり流れたゲームよりはムードが出ている。
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  • ACT
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  • ドラえもん

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最終更新:2024年03月20日 19:12

*1 本筋に関わる人間ゲストキャラは4人中2人は一般人。2人は敵側である。