本項ではSS用ソフト『街』と、移植版であるPS用ソフト『街 ~運命の交差点~』に加え、完全版であるPSP用ソフト『街 ~運命の交差点~ 特別篇』を紹介しています(判定はいずれも「良作」です)。



【まち】

ジャンル サウンドノベル
対応機種 セガサターン
発売・開発元 チュンソフト
発売日 1998年1月22日
定価 5,800円(税抜)
判定 良作
ポイント 8人の主人公の複雑に交差する運命を解き解す
ファミ通のTOP20に入り続けるカルト的な人気
チュンソフトサウンドノベルシリーズ

概要

弟切草』『かまいたちの夜』に続く、チュンソフト製サウンドノベルの第3作。総監督は『弟切草』の生みの親・長坂秀佳。
実写で描かれる渋谷の街を舞台に、8人の主人公の5日間*1の物語を並列して進めていく。
映像はすべて実写で描かれ、登場人物も役者が顔出しで演じていることから、前2作とは大きくイメージの異なる作品となった。


特徴・システム

8人の主人公と8つの物語

  • 本作には初期状態で8人の主人公が存在し、それぞれ同じ街の同じ日に起こる8つの物語を並列して読み進めていく。
  • 進める順番やペースはプレイヤーの自由。ただし8人全員の物語を1日分の最後まで読むことで、次の日に進むことができるという形式なので、いずれにしてもすべてのシナリオを進める必要がある。全員のシナリオを最終日のPM8:00まで終わらせるとクリアになりエンディング。
  • 主人公たちは年齢・性別・職業などバラバラで、内容も、刑事もの、ギャグ、ラブコメ、サスペンス、ハードボイルド、サイコホラーなど多彩。
    • 牛尾と馬部の2人を除き、主人公たちは基本的にほぼ面識が無い「他人」の関係。ただし脇役は複数のシナリオにまたがって登場するキャラクターも多い。

選択肢による運命の交差

  • 形式は従来のサウンドノベルと同じく、画面一杯に横書きの文字が表示され、読み進めていくと選択肢が現れ、選んだ選択肢によって物語の展開が変化するシステム。バッドエンドを回避して物語を最後まで読み進めていくのが目的となる。
  • 本作最大の特徴は、主人公たちの行動がお互いの物語に影響すること。例えば、主人公Aが取った行動によって主人公Bの物語が変化し、バッドエンドになったり逆にバッドエンドを回避することができたりする。

ザッピングシステム

  • 登場人物同士をリンクするザッピング(ZAP)システムがある。文章中には赤で書かれた文字が存在し、ZAPと呼ばれる。
  • シナリオをある程度読み進めていくと、「つづく」と表示されて、それ以上進めなくなる地点がある。その場合は他の主人公の物語のどこかにあるZAPを見つけ、そこから「つづく」で封鎖されている主人公にジャンプすることで、つづきに進むことができる。
  • ZAPは主に「人名*2」「他の主人公の状況と通じる部分がある単語」に仕込まれている。

TIPS

  • 文章中には他に「TIP」と呼ばれる青や緑で書かれた単語があり、選択するとその単語の解説を読むことができる。Wiki等における「脚注」のようなシステム。
  • 青色は一般的な熟語や語句の説明・解説、緑色は今作固有の単語や人物の解説となっており、本文中に余計な文章を挟むことなく単語の解説が可能になっている。

シナリオ紹介

+ 通常シナリオの8本、長いため格納
  • 雨宮桂馬「オタク刑事走る!
    • 雨宮桂馬は「警視庁渋谷中央署 生活安全課少年係」の刑事。パソコンとゲームが大好きで「ゲーマー刑事」を自称する。
    • ある日、スクランブル交差点のオーロラビジョンに、謎のメッセージが表示されているのを発見した桂馬は、それを「爆破予告の暗号文」と解釈し、大惨事を阻止するべく渋谷の町を奔走することになる。
    • 渋谷爆破事件をメインにした刑事もので、毎日異なる凝った暗号が登場するなどの謎解き要素もある。
    • バッドエンドになると渋谷が爆破されてしまうため、8本のうちもっともスケールの大きい物語と言える。攻略本でも最初に紹介されるなど、全主人公のうちでいちおうメインシナリオ的な存在。
  • 牛尾政美「The wrong man 牛
    • 極道から足を洗い、カタギの道を歩き始めた牛尾政美。それは、彼の想い人に愛の告白をするためだった。しかし、牛尾が彼女の勤める宝石店を訪れた時、折悪く宝石強盗の男が現れた!
    • 男は牛尾が極道だった頃の知り合いであり、強面が災いして牛尾は共犯と勘違いされてしまう。渋谷の町を逃げ回る牛尾は、何故かTVドラマの撮影隊と合流してしまう。
  • 馬部甚太郎「The wrong man 馬
    • 長年、冴えない役者をやっている馬部甚太郎は、とある連続TVドラマで「極道の組長役」に抜擢された。しかしこの馬部、ヤクザ役としてのルックスは十分だが演技がさっぱり。
    • 度重なるミスや恋人からの叱咤に沈んでいたところ、何故か宝石強盗犯に仲間と間違えられてしまう。別人とバレたら命は無い、一世一代崖っぷちのヤクザ役は成功なるか。
    • 「牛」と「馬」の2本で一対であるシナリオ。元極道と売れない役者のおかしな入れ違い・取り違えの綱渡り模様を描き出す。
      • なお、牛尾・馬部の2人のみ他と違って3日目が最終日となっている*3
  • 篠田正志「七曜会
    • 就職を控えた大学生の篠田正志は、「日曜日」と名乗る謎の美女から、父がかつて学生運動に参加しており自身も左翼的な活動に参加した事をネタに脅迫され、「七曜会」に参加させられる。
      「金曜日」のコードネームを受けた正志は、組織の命によって他人を脅迫していくことになり、その深みと面白さに次第にハマり込んでいく。
    • 謎が謎を呼ぶ多いサスペンス的なシナリオであるが、珍妙な登場人物が多く登場するなど独特なコミカルな雰囲気も併せ持つのが魅力。
    • 文章量が多く、一日の密度が高いシナリオでもある。
  • 市川文靖「シュレディンガーの手
    • TVドラマの売れっ子プロットライターである市川文靖は、ある悩みを抱えていた。最近、彼が眠りから覚めると、全く身に覚えのない原稿が出来上がっているのである。それも、市川の忌み嫌う、安易で低俗な「作品」…。
    • 市川は無意識の中にある自分と戦い、その「作品」によって成された名声を捨てて、自らの意思による自らの最高傑作を作ろうと決意する。
    • 哲学的・内省的なテーマなだけあり、テキストも文語的な言い回しが多く含まれる。ジャンルとしてはサイコサスペンス的な要素が多く、映像表現に一部グロテスクなものもあるなどクセが強いシナリオ。
  • 飛沢陽平「で・き・ちゃっ・た
    • 飛沢陽平は緑山学院高校3年生の生徒会長であり、自他ともに認めるプレイボーイ。複数のガールフレンドと仲良く楽しく学校生活を過ごしていた。
    • ある日、陽平は1人の女の子から「赤ちゃんができました」と衝撃的な告白を受ける。これに留まらず、陽平には更なる過酷な運命が待ち受けていた。
    • 概要から推察できる通り、メインの見所は「プレイボーイの修羅場」である。キャラクター同士の運命の交差、もとい女の子たちのブッキングシーンはハラハラの連続。
  • 高峰隆士「迷える外人部隊*4
    • フランス帰りの高峰隆士は、外人部隊所属の軍人だったが、性根の優しさと戦場生活で研ぎ澄まされた闘争本能とのギャップに迷いを抱き、脱走同然の形で日本に帰国した。
    • 血と暴力にまみれた毎日の中で、彼の心境は日本にいた頃とは大きく変わり、日本もまた変わっていた。自分を見失いかけている事に戸惑いながら、彼は今、故郷の町である渋谷に立っている。
    • 特異な設定を持つ隆士の目線から渋谷の街を見つめるハードボイルドなシナリオ。隆士自身の性格や背景のせいもあって、暴力シーンが多い。またテキスト量が少なく、すぐに一日が終わる。
  • 細井美子「やせるおもい
    • 恋人から「やせなければ別れる」と宣言され、ダイエットを決意した細井美子。少しぽっちゃり、いやかなり太っていた美子に突き付けられた条件は「5日間で17キロの減量」であった。
    • 食べることが大好きで生きがいでもあった美子のダイエット、恋人のため必死になるその努力は果たして実るのか。
    • 唯一の女性主人公らしく、明るくかわいらしい雰囲気のBGMや効果が使われている。その一方で、かなり強烈で誇張されたギャグ描写はそこはかとなくブラックな狂気も感じさせる。


+ 以下、隠しシナリオ、ネタバレ注意

以下は、SS版では初期の8人の主人公全員分のシナリオを、5日目まで全て読了することが前提条件となる。
他の主人公と同じく1日目から始まるが、出現条件の関係上他のシナリオとは独立して読み進めることになる。

  • 青井則生「青ムシ抄
    • 緑山学院高校3年生、ひねくれ者で嫌われ者で、同級生からは「青ムシ」というあだ名で蔑まれていた青井則生は、ひょんなことから同じ高校に通う飛沢陽平の秘密を知る。
    • それが、美少女アニメや漫画が大好きなオタク兼エロ漫画家としてひっそり生きていた青ムシの、激動の5日間の始まりだった。
    • 本作で唯一実写でなく、アニメ絵で描かれるシナリオ。他のシナリオとは映像や内容などノリの乖離が激しく、主人公の性格やラストシーンの展開なども相まってかなり好みが分かれるシナリオになっている。
  • 高峰厚士「花火
    • 高峰厚士は、高峰隆士の父親である。このところ昔の夢ばかり見る厚士の前に、何も言わず行方をくらまし外国に行っていた隆士が突然姿を現す。その出会いは、長い時を経た父と子の関係に、何をもたらすのか。
    • SS版では、おそらく最後に見る事になるシナリオ。本作の大きな謎の1つが解明され大団円を迎える。
    • シナリオ自体は全主人公の中で最も短く、バッドエンドも1つしかない。

評価点

主人公達の運命の交差

  • 「風が吹けば桶屋が儲かる」のように、ある主人公にとって何の変哲もない些細な選択肢が、回り回って他の主人公の運命を大きく変える、場合によっては生死さえ左右してしまうと言うような運命の交差が最大の見どころであり面白さになっている。

シナリオ

  • 前述の通り、8本のシナリオはコミカルで明るいものからシリアスで重たいものまで、それぞれ異なった雰囲気でバリエーション豊か。「街」に暮らす人々にはそれぞれ異なった個性と人生が存在するという多様性が象徴されている。
    • 一般的なノベルゲームは、ホラーやミステリー、恋愛といった一部のジャンルに偏りがちであるため、様々なジャンルの人間ドラマを楽しむことができる本作は貴重な存在である。
  • 印象的なラストシーン。
+ ラストシーンについて、軽度のネタバレあり
  • 物語が終わる10月15日の午後8時は、「夜の渋谷上空に、何故か季節外れの打ち上げ花火が上がる」という全員共通のシチュエーションとなっている。
  • 各主人公がこれまでの歩みを踏まえてそれぞれのクライマックスを迎えた後、同じ空の元で思いがけず起こった最後の「運命の交差」は、別々だったシナリオの間に一体感を生み、エンディングを感慨深いものにする。
  • 何故突然花火が上がったのか。当初その理由は謎に包まれているが、実はここにも5日間の物語がある。全員分のシナリオを終えてその意味を知った時は感無量である。
  • 隠しシナリオ「青ムシ抄」
    • 隠しシナリオ「青ムシ抄」はすべてアニメで表現されている。下記のように批判点もある一方で、本編の実写映像に匹敵するぐらい手間をかけている。
    • 特にキャラクターデザインは実写俳優に極めて寄せており、また一瞬しかでないキャラも描いているという点も評価される。
      + 隠しシナリオ「青ムシ抄」について、本編のネタバレあり
      • 「迷える外人部隊」で謎だった犯人が判明されるが、後述の通りグラフィック面や主人公の行動への否定的意見はあれど、ギャグ調のシナリオで犯行を全く匂わせず、伏線(武器である拳銃と襲撃犯の動機)も組み込んで、この驚愕の展開に持ち込んだ物語構成を評価する声もある。

    BADエンド

    • 豊富でバラエティー豊かなBADエンドが用意されている。
      • 通常のゲームと違いペナルティではなく、むしろたくさん読みたいと思わせる内容である。BADが苦にならないというのも本作の魅力の1つである。
      • ギャグ的な展開が多く、「宇宙人に襲われる」「ロボットになる」「みかんに囲まれる」など、結末も突飛で笑えるものが多い。
      • 長いルートもあり、隠しシナリオまたは裏設定・裏エピソード的な意味も含まれている。
      • 隠しシナリオの2本にもBADエンドが用意されている。通常の8シナリオを阻害しない選択肢と思わせながら、意外な運命の交差を見せる。

    TIPS

    • 一言で言えば笑える用語辞典のようなものであり、本編において「固有名詞」や「専門用語」の解説をしてくれる。これにより、登場人物達の説明口調が少なくなり、非常にスムーズでテンポの良い文章に仕上がっている。
    • ただの辞典的で無機質な語句解説に甘んじることなく、「読んで楽しめる文章」として書かれており質が高い。
    • 笑えるコミカルなもの、考えさせられる詩的なものまで様々な種類があり、個々は読み応えがある。
      • 作中では語られない登場人物たちのバックボーンや脇役のサイドストーリーなども豊富に語られるため、「もう1つの本編」と読んで良いほどのボリュームである。

    実写映像

    • 実写映像をゲームに取り入れる演出は当時はユーザーの間に不評が多かったが、本作は成功例の1つとして評価されている。
    • 役者は有名どころの起用は少ないが、「独特の味がある」「一枚絵として雰囲気が出ている」と、基本的に好評。
      • どのキャラクターも、いわゆる「顔芸」と呼ぶべき表情の豊かさと、表現力の高さがコミカルな雰囲気を上手く出している。
      • 有名どころとしては、『太陽にほえろ!』のゴリさん役で知られる竜雷太氏や、『帰ってきたウルトラマン』の郷秀樹役でおなじみの団時朗氏、たけし軍団の芸人であるダンカン氏、初代いいとも青年隊の久保田篤氏などが出演している。
      • 後に有名になる役者としては、『池袋ウエストゲートパーク』や『GO』などで高い評価を得た窪塚洋介氏(当時は「ヨースケ」名義)、本業は役者ではないが、お笑いコンビ・北陽の伊藤さおり氏が出演している。
      • また、桂馬編のヒロインを演じているのは声優のゆきのさつき氏(当時は「雪乃五月」名義)。本作には音声がないため、純粋に女優としての顔出し出演となっている。声優ではほかにも平松晶子氏や当時新人の谷山紀章氏、声優業が中心になるのは本作の後だが楠見尚己氏なども出演している。
      • 他にベテラン俳優の金井大氏や十勝花子氏、バラエティ番組のレポーター等でおなじみの雨宮朋絵氏、任侠系Vシネマによく出ていた松田勝氏、現在でもテレビCMやドラマの端役でよく見る増田雄一氏や諏訪太朗氏、有名映画に脇役で出演経験のある役者など、人によって刺さる役者もわりといる。
      • 顔なじみの女優・俳優も個性的な台詞回しの為か、劇中のキャラとして受けられるようになっている。

    サブキャラ

    • 主人公だけでなく脇役も魅力。元々20人主人公を目指してだけに脇役たちも個性的で深く設定が掘り下げている。
      • ある主人公の肉親がある主人公の重要人物などこれまた意外な交差を見ることができる。彼らには彼らなりの5日間の物語が存在し、その一部をゲーム中の描写やTIPなどで確認できる。

    BGM

    • すべてが流れるシーンにマッチしており、クオリティも高い。また、シナリオごとのカラーの違いもはっきりしている。
    • 曲目は非常に多く、主人公の8人以外にも専用テーマ曲を持つ脇役が大勢いる。
      • 使いまわしの程度も低めに抑えられていて、ゲーム中1箇所でしか使用されないような地味な存在の曲も手抜かりなく作りこまれている。

    ED

    • エンディングの評価も高く、「泣けるゲームのエンディング」として名前がよく挙がる定番作品となっている。
    + エンディングについての軽度のネタバレ
    • エンディングテーマは鈴木結女氏の歌う『One and Only』だが、これはメインテーマのボーカルバージョン。
      • 本作をクリアしたプレイヤーが、作中でもっとも多く聴くことになるであろう、キャラクター選択画面に流れる印象的なメインテーマがボーカル付きで流れる瞬間は極めて感動的である。
    • さらに映像は撮影のメイキング映像が動画で流れる。作中ずっと静止画で眺めてきたキャラクターたちが、実際に動き、楽しそうに撮影をしていたり、話し合ったりする姿を移した映像は、最後までこの『街』の世界を堪能したプレイヤーに対する暖かいご褒美となる。
    • 作中では絡まない主人公同士が会話していたり、またシリアスなキャラがお茶目な表情を見せたりと楽屋裏的な楽しみもある。
  • 小ネタの多さ
    • シナリオや選択肢次第で多くの小ネタが仕込まれている。シナリオの良い塩梅となっている。
    • ファンサービスとして『かまいたちの夜』の香山社長が登場する展開もある*5

賛否両論点

実写映像

  • 上記の通り評価される実写映像であるが『かまいたちの夜』などのサウンドノベルに慣れたユーザーにとっては拒否反応が出た。
    • また、俳優の演技でゲームが深みが出る一方で、ゲームのキャラクター像を想像するという楽しみの1つが失ったという賛否点もある。

問題点

シナリオ

  • 個々のシナリオを単独で見た場合の完成度は、それほど高いとは言えない。消化不良、強引な設定やオチ、超展開など、どのシナリオも少なくない突っ込みどころがある。
    • それに加えて日常、ラブコメ、刑事、サイコホラー、ハードボイルドなどの様々なジャンルのシナリオであり、人によっては「シナリオに興味を惹かれない」「ノリや世界観にクセがある」という意見もある。
    • ギャグ的なフィクションだと割り切ってしまえばいいのだが、本作の舞台が実在する渋谷の町中であることや、生身の人間が演じる実写作品であることから、現実的な観点とのギャップを感じてしまうことも。特に「絶世の美女」や「絶世の美少年」などの漫画的表現は実写だと違和感を覚えやすい。
    • 加えて無論人にもよるが、好みというのはありミスキャストと言われるキャラもなくはない。
+ シナリオの問題点に関するネタバレ
  • 「七曜会」シナリオの終盤が尻切れトンボ。
    • 最終日に「七曜会」の実態を暴き「日曜日」の思想を否定。ケンカ別れに終わったような所で想いを寄せる「水曜日」と再会するのだが、告知されていた「罰ゲーム」を唐突に執行。夜空に花火が上がる中、渋谷のど真ん中で磔にされて終了というシュールな終わり方をする。なぜそのタイミングで水曜日が現れたのかも謎。
    • 「七曜会の行く末」「就職を含めた正志の今後」など重要な点が言及・解決のされないまま幕を閉じる。
      • 前者については正志に七曜会の実態を暴かれるくだりでいずれは破綻するであろう将来を匂わせてはいるが、明言はされていない。
      • 後者に至っては、組織に入る発端であった脅迫材料*6を日曜日に握られたままであり問題が解決していない。
  • 市川文靖シナリオのラストシーン。
    • 自分なりに自分自身との戦いに決着をつけようとした市川だが、そうした流れと深い関係はなく唐突な悲劇に見舞われ、また報われない結末となっている。
  • 高峰隆士シナリオのラストシーン。
    • 隆士は結局己の闘争本能を克服できず、自分が平和な渋谷の街には溶け込めないことを悟って、遠い国への旅立ちを決意する。
    • しかし、その直後に何者かの銃撃を受け、渋谷の街に突如上がり始めた花火を見ながら力尽きる。
    • 主人公で唯一、正規のエンディングで死亡する。明確に悲劇的な結末となっており、これも賛否がある。
  • 上記以外のキャラの結末も、「実は提示された目的を達成する意味がなかった」「目的を達成するどころか状況が悪化して終わり」というもので、ゲームとして一応すっきり終わるのは桂馬、牛尾、馬部の3人だけ。
    • ゲームというものは提示された目標(=勝利条件)を達成するためにプレイヤーが行動するのが普通で、ストーリーも基本的にそれに沿う内容であることが多い*7。だが、本作は提示された勝利条件を達成できないまま終わるストーリーが半分を占めており、ゲームとしては違和感が強い*8
      • これが用意されたストーリーを読んでいくだけの、もっとゲーム性の低いシステムであれば違和感は軽減されたのだろうが、あいにく本作はサウンドノベルの中でもトップクラスにゲーム性が高いので…。
  • 極めてクセの強い隠しシナリオ「青ムシ抄」
    + 「青ムシ抄」の内容に関するネタバレ
  • この隠しシナリオのみ、実写ではなくアニメ映像で描かれる。そのため雰囲気は他のシナリオとかなり異なり、またアニメ絵も当時としても古めなタイプの絵柄で、漫画・アニメ・特撮関係といったオタク系のパロディも多く、人によってはそれだけで生理的に受け付けられないと感じることもある。
    • 内容もさらにクセが強い。主人公青ムシは飛沢陽平の同級生で、篠田正志の脅迫相手であり、他の主人公のシナリオにも登場する脇役なのだが、ステレオタイプなオタクの外見でエロ漫画の執筆者、趣味は盗撮で性格も陰湿なキャラクターとして描かれているため、受け入れ難い人にとっては苦痛である。しかし青ムシにもこういう性格になった経緯や、学校では孤立しているなど同情できる点もある。
    • もう一本の隠しシナリオは短いため気にならないが、このシナリオは5日分あるたっぷりのボリュームなので読み進めるのがキツくなってくる。
    • 中盤・後半では、ホームレス狩りというさらに不快感の強い犯罪行為に手を染めることになる。
    + 「青ムシ抄」ラストに関するさらなるネタバレ
    • 青ムシが高峰隆士を殺害した真犯人である。
      • ホームレス狩りなどをしていた青ムシたち*9は、その行動とミリタリールックが「高峰隆士」を刺激してしまい暴行を受けてしまう。
      • 渋谷で隆士に復讐しようとするが失敗、青ムシは隆士のとっさの行動によって利き手を折られ、ますます傷を拡げるだけの結果に終わる。
      • 前述の利き手骨折に加え、ホームレス狩りへの参加が知れ渡ったことでエロ漫画業界を追放され自暴自棄になった青ムシは、偶然手に入れた拳銃で、道端で発見した隆士を撃ってしまう*10
      • 後述のPS版でもあることだが、「花火」で大団円となった後で隆士殺害犯が明らかになる流れの結末を迎えると青ムシに対する憎悪(ゲーム全体の後味が悪くなることも)が増してしまうことがある。
    • 結末はぼかされているが人を殺してしまった以上、青ムシが幸せな生涯を送れるとは想像できないだろう。
      • 単なる小悪党であり、エロ漫画業界追放もくらっている「青ムシ」にここまでの仕打ちをするのは、残酷すぎるのではという意見もある。
      • 一応後日談があり、拘置所で漫画を描く意欲を示しナレーションに「懲りない男」と茶化されるという多少のフォローがある。
      • 一方で、「高峰隆士」も「青ムシ」もどっちも人の道を踏み外している側面があるのは事実なので、因果応報という指摘もある。
        • また殺意がないとはいえ、モデルガンを人に撃てば傷害罪である。
  • 牛尾と馬部のシナリオが3日間しかない
    • 唯一他の主人公と深く物語が関わり合う牛尾と馬部のシナリオは、取り違えものとして出来が良く、人気も高いのだが、内容の都合からか3日で終わってしまう。
    • また短さもネックとなり、他のシナリオほどには登場人物の深い掘り下げがなされない。
    • この空白の2日間については、ゲーム中のTIPや攻略本にて一般からシナリオを募集していたことが窺えるが、結局は実現しなかった*11
      • 一応、牛尾は桂馬編・高峰編、馬部は陽平編の最終話でそれぞれ登場するが、顔見せ程度。

ザッピング

  • 作中で頻繁に行う必要があるザッピングだが、単に画面が暗転して切り替わるだけで演出がほとんどない。
  • 単に同じ時間帯の他の主人公からジャンプするだけなので、ゲーム性や推理の楽しみも少ない。

クリアキャンペーン

  • チュンソフト恒例クリアキャンペーンが、本作でも行われた。内容は早解きキャンペーン。
    • しかし、本作は唯一の攻略要素と言っていいザッピングシステムが、謎解きやテクニックが必要というものでは全くないため、早くクリアしたいならば「文章など読まずにひたすらにボタンを連打してシナリオを進めてしまう」が最適な方法となり、ノベルゲームを楽しんでもらうという趣旨に対して本末転倒な事態を引き起こした。
    • ED後に表示される謎の数字は本キャンペーン応募用のパスコードであるためゲーム上における意味はない。

その他

  • 回収されていない伏線がいくつかある。
    • 5日間に渡って各所に現れるパチンコ男、コンビニ店員、宝くじ男など。これは続編を制作しようとしていた名残と言える。
    • SS版の人物TIPS内の一部には「彼の物語は、またの機会に」などと続編の存在が匂わされているが、前述の通り実現せず。また移植版では続編を匂わすような記述は全削除されている。
    • また上記牛尾と馬部の空白の二日間や、拳銃が何故タクシーにあったかなど、重要であるのに明らかにされてないものもある。
  • 雨宮桂馬シナリオの暗号解読の選択肢には、爆弾解除に失敗して渋谷が爆発するBADエンドが多く含まれる。しかし渋谷が爆発したはずなのに他主人公のシナリオには影響がないという矛盾点がある。
    • 他の主人公の爆発エンドが全てあったとしても、あまり変わり映えせず似たようなものになる可能性が高く、また全体のテンポが非常に悪くなるため、ゲーム的な都合といえば仕方ない部分でもあるが。
    • なお正規ルートでは爆弾が偽物だったりなどで実際には爆発しないパターンが続くため、上記の巻き込み無しも合わせて数々のBADエンドの渋谷爆発は桂馬の妄想なのではと揶揄されることも*12
  • TIPはシリアスな場面でギャグ調の解説文がでてくることもあり、「雰囲気に合わない」という声も少なからずある。
  • シナリオの特定の時間からプレイするための時計機能がついているが、視認性と使い勝手に難がある。このため、バッドエンド条件を絞り込む事がやや難しい。
  • 画面のフラッシュ演出(パカパカ)が結構多い。要注意ポイントは桂馬編の爆発寸前のシーンや牛尾編のラスト直前など。画面から離れてのプレイを推奨。
    • 後の移植版では改善されている。
  • 最後の隠しシナリオ「花火」の出現条件が裏技に近い隠しコマンドであり、出現方法を知らなければ出すことが非常に難しい。
    • その方法とは、8人のシナリオをクリアした後に、キャラクター選択画面左側にいる高峰隆士にカーソルを合わせてしばらく止め、約5秒経った後に左を押す、というもの。
  • エフェクト
    • ある人物のシナリオで雨が降るシーンがあるのだが、実写の上に雨のアニメーションを載せているためどうしても『重ねただけ』という感じが出てしまっている。
    • かまいたちの夜』では雪のエフェクトが自然だったが、実写であったが故の問題だった。

総評

「選択肢によって登場人物の運命が変わる」というサウンドノベルの本質部分を大きくブラッシュアップし、8人の主人公の選択肢を巧みに操作することによって物語を進めていく、サウンドノベルの「ゲーム」としての面白さと快感を追求した傑作である。
人は誰でも“自分の人生”というシナリオの主人公であると同時に、見ず知らずの他人のシナリオにおける脇役でもある」という大切なテーマをテキストアドベンチャーの形式に落とし込み、斬新で完成度の高いエンターテイメントの形に仕立て上げている。
ただし、本作の醍醐味でもある「ごった煮感」からくる統一感のなさ、せっかく興味を引かれたシナリオでも先を読むためには必ずどこかで中断させられる仕様、当時は珍しかった実写ゲーム、全体に溢れる少々古風なユーモアセンスなど、チュンソフトのサウンドノベルの中ではひときわ個性が強く、人を選ぶ印象も与えてしまっている。
しかしその分ファンからはカルト的な人気を誇り、『週刊ファミ通』の「読者が選ぶTOP20」ランキングに、最新ゲームや有名ゲームに混じって発売から10年以上に渡り毎週ランクインし続けていた事実は有名である。
知名度や売上を遥かに上回った、強烈な印象と思い入れをプレイしたユーザーに与えた作品と言えるだろう。


街 ~運命の交差点~(PS版)

【まち うんめいのこうさてん】

対応機種 プレイステーション
発売・開発元 チュンソフト
発売日 1999年1月28日
定価 5,800円(税抜)
廉価版 PS one Books
2002年4月4日/2,800円(税抜)
判定 良作

概要(PS)

SSソフト『街』のリメイク版。
チュンソフト開発のサウンドノベル作品『弟切草』『かまいたちの夜』『街』をそれぞれリメイクする「サウンドノベルエボリューション」シリーズの1つである。
なお、「3」というナンバリングとは裏腹に2番目に発売された為、同シリーズは「2」→「3」→「1」の順に出たことになる。
元々のハードがSFCであった前2作ほどの変更点はなく、「リメイク版」というよりは「移植版」に近い内容だが、SS版と比べてプレイしやすくなるよう様々な機能が追加されている。


主な変更点(PS)

  • 移動マップが追加された。各主人公のタイムテーブルがチャート化され、分岐やZAPの場所も視覚化されている。
  • バッドエンドリストが追加された。
    • これによりバッドエンドの回避・回収がしやすくなった。
    • 本作のバッドエンドは全部で121個もあり、内容も『街』のゲームシステムの醍醐味が表れたものなので、コンプリートしやすくなった新仕様は好評。
      • 消化したエンディング数によって解放される隠しシナリオもあるため、親切である。
  • シルエットモードが追加された。
    • 人物のグラフィックを2色(基本色+影)ベタ塗りのシルエット表示に変更できるようになった。このモードではムービーなどの一部演出がカットされたり簡略化されたりする。
    • 『かまいたちの夜』では好評だったシルエット演出だが、本作では「実写の熱演が見られなくなる」といまいち不評。
      • 実写が敬遠されていたSS版発売当時の評判とは真逆で、オリジナル版の実写映像のクオリティが大方の第一印象に反して高かったことの表れでもあると言える。
    • また、仮にずっとシルエットモードで最後までプレイしたとしても、全編アニメ絵の「青ムシ抄」だけは強制的にシルエットが解除されてしっかりと顔が描写されるため、実写モードでのプレイ以上にギャップが大きい。
  • その日付を遊ぶ際、難易度を「EASY / NORMAL / HARD」から選択できる。
    • HARDではすべての分岐フラグのデフォルトがOFF(バッドエンド側に向いている)だが、EASYは逆にすべて正しい方向にONになっていて、バッドエンドにたどり着きにくい。
    • バッドエンドの数自体も減っており、一部見られないバッドエンドもある(EASYではバッドエンドがかなり少ない)。
      すべてのバッドエンドを埋めるには開始時にHARDを選ばなくてはならないが、一度選んだ難易度は変更できないので注意。ただし、バッドエンドをコンプリートしなくても全てのシナリオを見ることはできるのであくまで遊び尽くした人向けのおまけのようなものなので全てのシナリオを見たいだけならNORMALでも問題ない。
      • よく「青ムシ抄」のシナリオはHARDでないと見ることが出来ないと言われることがあるが、NORMALでも「青ムシ抄」の出現条件であるバッドエンドを100以上回収するという条件は満たすことができるので、これは間違いである。ただしEASYではバッドエンドが少なすぎるため不可。
    • EASY・NORMALでは、たどり着ける全てのバッドエンド画面にヒントが表示される(HARDでは1日目の前半のみヒントあり)。
      また、EASYのヒントは「主人公○○の何時何分の選択肢を変えろ」といった調子の、とても具体的な内容である。
    • SS版の難易度はHARDにあたる。
      • HARDではSS版のクリア後に追加される選択肢が最初から解放されている。
  • SS版にあった「プリクラキャンペーン」関連のおまけ要素は全てカットされている。
  • 隠しシナリオ2本の出現条件が変わった。
    • SS版では隠しコマンドに近い手続きを踏まないと出現しなかった隠しシナリオ「花火」は、最初の8人全員分のシナリオをクリアすると選択画面に直接出現する仕様に変わった*13
      • SS版では「隠しシナリオ(花火)の存在は分かるが、入口が見つからない」という声が多かったが、移植版ではそういった人はほぼいなくなった。
    • 前述のように、「青ムシ抄」は、他のシナリオのクリア状況に関わらず、バッドエンドを100個以上集めると出現するようになった。
      • 桂馬シナリオ爆弾解除シーンの選択肢ミスも全て踏破した上で、難易度NORMAL以上を選んでいないと達成できない*14ため、こちらは少々面倒になった。
    • 意図的にバッドエンドを逐一回収していくプレイをしない限り、難易度的に「青ムシ抄」が最後に見るシナリオになる可能性が高くなったため、前述のラストシーンの後味の問題はさらに大きくなってしまった。
  • 本作よりソフトのパッケージもやや地味だったSS版に比べて目を引きやすいデザインとなり、より購入意欲を喚起させやすくなった。
  • SS版からテキストが一部修正されており、表現がややマイルドになった。
    • セガサターン版の青井則生のシナリオでホームレス狩りをする展開があったが、倫理上問題があるということでカップル狩り*15に変更されたり、性的描写を減少させたことなど。また、市川編におけるグロテスクな画像がカットされている。
    • この表現差し替えの影響で、シナリオに一部矛盾が発生してしまったものがある。
    • SS版では桂馬編に登場するセガのゲームは実名で記載されていたが、本作では全て架空の名前に変わっている*16

街 ~運命の交差点~ 特別篇(PSP版)

【まち うんめいのこうさてん とくべつへん】

対応機種 プレイステーション・ポータブル
発売元 セガ*17
開発元 チュンソフト
発売日 2006年4月27日
定価 4,800円(税抜)
廉価版 SEGA THE BEST
2007年8月30日/2,500円(税抜)
レーティング CERO:18歳以上対象*18
配信 2012年3月27日/1,980円(税10%込)
判定 良作

概要(PSP)

PS版をベースに追加要素を載せたPSP移植版のタイトル。 大概はPS版をそのままベタ移植+αしただけなので、チュンソフトのロゴ画面が古いものだったりする。


主な変更点(PSP)

  • 画面サイズを4:3と16:9(実写背景の上下をトリミングしたもの)のどちらかに変更可能。
    • ただし、全編アニメ絵の「青ムシ抄」では変化は適用されない。
  • 新機能「サウンドプレイヤー」が追加されている。
    • 100曲以上から自由に聴くことが出来、BGMも人気がある本作としては嬉しいサービス。
    • 楽曲が主人公別にカテゴリ分けされている。この際に主人公選択がSS版のようになっているのも嬉しい点。
    • だが、なぜか音がSS版より低くなっていたり、好評なエンディングテーマの『One and Only』が選べない、一部の曲が1ループする前にフェードアウトしてしまう、本編では「のんきなのりぴー」が前半のフレーズだけでループを繰り返す*19など、問題点もある。
    • 既存作品によく似たパロディ楽曲も再生対象から外されている(『フランダースの犬』っぽい曲など)。
  • 本編で脇役として登場していた「サギ山」と「パトリック・ダンディ」の5日間のシナリオが、秘蔵シナリオとして追加された。
    • 出現条件はPS版の「花火」と同様、最初の8人全員分のシナリオをクリアすること。
    • この2本のシナリオには選択肢やTIP・ZAPは一切無く、言わば普通の小説のような形式である。また、静止画の背景CGはあるがほぼ本編の流用であり、音響・文字効果による演出の類も一切ない。
      • 原作の発売から何年も経過しており、背景CGの撮り直しは実質的に不可能。またオマケと考えればTIP/ZAPが無いのは仕方ないところ。
      • なお、パトリック・ダンディのシナリオは先に発売されたドラマCD版(後述)をベースにしたノベライズゲーム化にあたる。
  • 隠しシナリオの出現方法が簡単になった。
    • ただし5日目の開始までに難易度HARDを選択しないと、全てのバッドエンドを見ることができない。
    • 他にもテキストを読む上でのシステム周りの不便さがあまり改善されていないなど、二度目の移植にしては残念な箇所がいくつか存在する。
  • シルエットモードが削除された。
    • 前述の通りこれが導入されていたPS版ではあまり評価が良くなかったため、削除もやむを得ないものと思われる。
  • 篠田正志編の「ハシシ…って笑うかと思った」が「クスリ…って笑うかと思った」や青ムシ抄の水曜日のパンチラが削除されているなど、レーティングに引っかかる一部テキスト等が変更、削除されている。
    • また、続編の発売を匂わせる文章も削除・変更されている。

関連作品・商品

  • 発売当初は続編の構想があり、作中にもそれを匂わせる表現が多いが、前述の売上の問題もあり実現しなかった。
    • その後もファンの間では長らく続編・新作が待望されていたが、発売から10年後の2008年、ついに「渋谷を舞台とした複数主人公による実写サウンドノベル」である『428 ~封鎖された渋谷で~』が発売された。
      • なお、『街』と『428』の世界観は繋がっており(発売年通り約10年後という設定)、実際『428』には『街』での出来事や人物を彷彿とさせる記述が多い。また当初は私立探偵となった桂馬が登場する案もあったそうだが、残念ながら没になった。
    • さらに、『428』のメインスタッフが制作し2012年に発売された『TIME TRAVELERS』の舞台は「『428』から約20年後」という設定になっているため、直接的な繋がりこそ無いものの事実上『街』とも同一の世界線になっている。
  • 公式攻略本「ZAP'S」が発売されており、後にPS版発売に合わせて内容が追加された「増補版」も登場している。
    • これには、ゲームに登場したとあるキャラクターの視点から描かれたもう1つの物語が、小説形式で掲載されている。ゲームでは語られなかった意外な事実や裏設定等もあるので、ストーリーによりのめり込みたい人は一読の価値あり。綴じ込み方の違いにより、増補版では一気に読めるようになっている。
    • 主人公を演じた役者のインタビューもある。
      • 牛尾・馬部の両者を演じた松田勝*20氏は本作に相当の思い入れがあり、「2」が出るなら続けて出演したいと語っている。
      • 篠田正志を演じた草野康太氏は、そのシナリオのラストシーンについて「通行規制のできるような大規模の撮影ではなかったため、何も知らない通行人からの好奇の視線を集めてしまい、演じるのがかなり辛かった」とか。
    • SS版と共に発売された初期版にはシナリオ公募企画と続編の登場人物の募集企画が掲載されていたが、売上が乏しかったため優秀作品がチュンソフトのサイトで一部の作品のみ公開されただけに留まり、増補版ではこの企画自体が削られている。
  • PSP版に先駆け、2005年に携帯電話アプリ版も登場している。
    • こちらはシナリオが減少しており、「雨宮桂馬」「牛尾政美」「馬場甚太郎」「高峰隆士」「細井美子」「篠田正志」の6人のみである。
    • アプリ切り替え機能を使用しているため、5日目をクリアするためには全部で1つのシステムアプリと33のゲームアプリが必要と、ガラケーアプリにしては大容量が必要になっている。
  • サブキャラクター「パトリック・ダンディ」が主人公のラジオドラマも当時放送され、後にCDドラマ『街 第Qの男 QはquestionのQ』として全3巻発売された。
    • CD版ではオープニング・エンディングを歌った鈴木結女氏がドラマCDのメインキャラの小糸亜弓とパトリック・ダンディと絡むというスペシャル収録パートがある。
      • このパートで、鈴木結女氏はオープニング、「夜明けのうた」の冒頭部分の生歌を披露している。
    • ちなみに、CDドラマの中には雨宮桂馬や麻生しおり等、多数の人物が出演しているが、小糸亜弓の平松晶子以外は別人物が演じている。
    • また、他のスペシャルパートではドラマCDの主役と「街」製作の中村光一氏がセガサターンで「街」を遊んだり、中村氏と脚本の長坂秀佳氏の掛け合いもあった。
      • 中村氏と長坂氏の掛け合いのパートでは「街2の脚本書いてくださーい」「え!?2が出るの!?」というようなセリフがあり、こちらでも「2」を発売する予定だったと言う事が窺える。
  • TIPSの中には「実はそこには透明な少女が…」といった記述がいくつか見られるが、これは本作のライターである長坂秀佳氏が後に脚本を担当した深夜ドラマ『透明少女エア』に関するもの。
    • 前述の頓挫した続編『街2』に当ドラマの主人公であるエアが登場する予定だったものの名残であり、その先行ドラマ化という位置づけだった。しかし実際のゲーム本編とのリンクはほとんど無い。
  • 「長坂秀佳 術」という自伝が発売されている。
    • 「術」と言う字が「街」と言う字に似せている。
      • この書籍の中では『街』だけでなく『彼岸花』などについても語られている。

余談

  • SS版発売当時は「実写映像のゲーム」の印象が悪かった時期であり、消費者に購入を敬遠させてしまう要因の一つとなった。
    • またシリーズの熱狂的なファンであっても、実写に抵抗を示して購入を見送ったり、実写化を強く批判する者もいた。
    • パッケージ画像の地味さもあってか、当時は売り上げが芳しくなく、「実写物は出来が良くても売れない」というジンクスを体現してしまった。
  • たびたび書かれているが、本来続編を制作する予定があった。
    • これはもともと初期に20人の主人公のシナリオのプロットを作っていて、本作はその中から10人を選抜してゲーム化したためであり、続編では残りの10人の物語が本作と同様の形でゲーム化されるはずだった。
    • 製作陣も続編に意欲的であったが、思ったより売り上げが乏しかったことや、予想より開発費が膨らんでしまったことで、続編制作の許可が下りなかったそうな。
      • なお、移植版2作の売り上げを加算して、ようやく黒字になったそうである。
  • PSP版に追加された2本のシナリオは、続編用に書かれたものの中でほぼ決定稿まで仕上がっていたため、オマケで収録されたそうである。
    • また他の主人公のシナリオもそれなりに仕上がっていたものがあるそうだが、公開はされていない。
  • SS版ではゲーム発売前に行われた「プリクラキャンペーン」という一般参加企画があった。
    • 金のしおりを出現させると、公募したメッセージ付きプリクラを観賞したり、ゲーム中の映像の一部が変化*21したりといったお遊び要素が解放される。
    • また、一部シナリオの犯人選択で特定の採用者の名前を入れるとそのプリクラが登場するというものも。
      • この名前入力は現在では有名な裏技であるが、一般人の名前を使っているためか雑誌や攻略本でも伏せられおり(ドリームキャストマガジンにて一度だけ掲載されたのみだそうな)、まったく知られていなかった。また採用者にも通知等は行わなかったそうである。
    • この公募に漫画家の柴田亜美氏が応募しており、そのことが切っ掛けになっているのかあるキャラのシナリオの登場人物の一人として出演している。
    • PS版以降ではこれらのキャンペーンに絡む要素がカットされている。
  • PS版のパッケージ裏で、「バッドエンディング」を「バッエンディング」と3回も誤表記している。
  • 「七曜会」の「曜日の名前がコードネームの秘密結社」というアイデアの元ネタは、イギリスの作家ギルバート・ケイス・チェスタートンの『木曜日だった男』という小説(1905年刊)。
    • ただしストーリー等はほぼ無関係な別物なので、オマージュの領域である。
  • Nintendo Switchソフト『超探偵事件簿 レインコード』の作中で、本作のパロディ「マーチ~宿命の十字路~」が小ネタとして登場している。
+ タグ編集
  • タグ:
  • 1998年
  • SS
  • ADV
  • サウンドノベル
  • チュンソフト

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年01月23日 18:54

*1 「牛尾政美」「馬部甚太郎」の2人は3日間。

*2 他の主人公や、他の主人公の物語に登場する人物。

*3 そのため、4日目以降は残り6人で進行することになる。

*4 PSP版の解説書では「迷える外国人部隊」と表記されている。

*5 劇中では名乗っていないが、台詞が『かまいたちの夜』で主人公に就職を誘う時の台詞そのままである。

*6 就職に影響するであろう「過去に父親が学生運動に参加していた・自身が左翼運動に参加していた」こと。

*7 勝利条件を探すこと自体が目的というパターンもある。

*8 ゲームではなく小説や映画的なオチとも言える。

*9 主犯格である編集者に媚びを売るため参加していた。

*10 ただし、実際に発砲するまで自分が拾った銃がモデルガンだと思い込んでおり、殺意は全くなかった。

*11 続編に採用したり専用の本を出す予定だと語られていたが、一部のみが当時の公式ホームページに掲載されたのみだった。

*12 単純に考えれば渋谷を爆破できる時限爆弾なんて不可能であるため、やはりこの説が有効か。

*13 元々はSS版における「青ムシ抄」の解禁条件。

*14 前述通り難易度選択は取り返しがつかない。

*15 劇中では『バカップル狩り』と呼称している。しかし青ムシ達が主に襲っているのは、SS版同様ホームレスなのでやっている事は変わっていない。

*16 セガ以外のメーカーがモデルと思われるゲームはSS版でも架空の名前。

*17 ダウンロード版はスパイク・チュンソフト。

*18 廉価版でのレーティングはCERO:D(17歳以上対象)となっている。

*19 サウンドプレイヤーでは後半のフレーズも流れるため、プログラムミスと思われる。

*20 現:松田優。読み方は新旧とも「まつだまさる」である。

*21 人物の顔など、映像の一部がプリクラ画像にすげ変わる。