ゼルダの伝説 風のタクト

【ぜるだのでんせつ かぜのたくと】

ジャンル アクションアドベンチャー
対応機種 ニンテンドーゲームキューブ
開発・発売元 任天堂
発売日 2002年12月13日
定価 6,800円
判定 良作
ポイント 時オカ』から大胆なイメージチェンジ
雰囲気含め全体的に良作だが賛否分かれる要素も強め
やり込み要素は十分
後半の「かけら集め」は問題点として無視できない
ゼルダの伝説シリーズ

プロローグ

人々の間ではこんな伝説が語り継がれている。

遠い昔、神々の力が眠ると言われた王国があったが悪しき者に目をつけられ、闇に包まれた。
王国が滅びようとする時、緑の衣をまとい、退魔の剣を装備した青年が現れ悪しき者を封印し、王国に光を取り戻した。
人々は時を越えて現れた若者を「時の勇者」と呼び、活躍は後世に語り継がれた。
しかし、時の勇者の活躍が伝説として語り継がれるようになった頃、王国に再び悪しき者が蘇り、災いをひきおこした。
人々は時の勇者が再び現れてくれることを祈っていたが、勇者が現れることはなかった。 その後、王国がどうなったのかを知る者はいない…。

国としての記憶が消えた頃でも、その伝説は未だ息づいていた。ある島では時の勇者と同じ年になったら緑の衣を着て成長を祝うという風習が残っている。
あの伝説の若者のように、勇気のある若者になれ。という願いをこめて…

概要

ゲームキューブ初のゼルダの伝説シリーズ。大海原とそこに点在する島々が舞台となる。
プロローグを読んで解る方もいるかもしれないが、ストーリーは過去作とリンクしている部分が多い*1
もちろん過去作を知らなくても楽しめるが、知っていると世界観への理解が深まり、より楽しめるかもしれない。

主人公はプロロ島に住む少年で、彼の誕生日にさらわれてしまう妹を助けに冒険へ出かける。
「言葉を喋る船」や様々な人々と出会い、主人公は大海原を渡り冒険をしていく。
そのトゥーン調のグラフィックを始め『時のオカリナ』『ムジュラの仮面』からの大きな変化が幾つか見られるものの、冒険やダンジョンの謎解き、敵をロックオンする「L注目」といった3Dゼルダの基本要素はしっかりと踏襲している。


ゲームの特徴・評価点

  • 世界観はかつてのシリーズの西洋風だったものから、東洋的な色合いが濃いものへ変わった。
  • 世界には広大な平原などは無く、広大な大海原が広がる。基本的な移動は帆船で行い、点在する島々にダンジョンや様々な種族の居住地がある。
    • 海は非常に広く、島々は遠くからはシルエットのみで表され、だんだん近づいていくと島の姿が見えてくるようになる。序盤で帆船を手に入れて初めて大海原へ出航する時は開放感にあふれている。
      • 過去作とは異なり、ロードを挟まずに別の島に移動することが可能となっており、明言こそされていないものの実質「オープンワールド」的なゲームと言える。
      • 特に、本作の象徴であるラスボス「カノンドロフ」の切ない心境を感じさせられるセリフや演出、彼自身の悲壮的な描写や末路に於いては、プレイヤー達からの高い評価を得ている。
  • グラフィックの変化
    • 『時のオカリナ』および『ムジュラの仮面』では高等身のキャラクターと写実的な背景美術によって世界を描いていたが、今作は雰囲気が大きく変わり、大胆にデフォルメされたキャラクターと2Dアニメを思わせる色彩豊かな背景によって絵作りを行なっている。
      • 今作の描画には「トゥーンレンダリング*2」という技法が用いられており、3DCGでありながら2Dの手描きアニメ・イラスト調の世界を実現している。
      • 特に本作で初登場した大きな黒目を持つ少年リンクは従来のリンクのイメージを大きく覆すものとなっており、ファン間および公式媒体において「猫目リンク」「トゥーンリンク」等の愛称で区別されることも多い。
    • 海を吹き抜ける風や爆発のエフェクトなど、細部に渡ってアニメ的な表現が徹底されており、「動かせるアニメ」とも言うべき独特のリアリティが生まれている。
  • 戦闘システムは基本的に従来と同じだが、攻撃が入る時の効果音や、攻撃を被弾する直前に発動させることができるカウンター攻撃なども盛り込まれている。
  • モーションも細部に凝っており、敵キャラクターは色々なアイテムを使用することで、集団戦になるとフレンドリーファイアもするなど様々な反応を示してくれる。
    • 武器を持った敵は攻撃されると武器を落とすが、他の武器を見つけて攻撃したり、無ければ素手で戦ってくる。敵の落とした武器はもちろん主人公も利用が可能。
    • 氷の矢を雑魚敵に射ち凍り漬けにしてから、ハンマーで叩いて木っ端微塵なんてことも可能。
      • 今作の開発は主人公と敵キャラの1つ、モリブリンの2体だけの世界から始まり、この2体にできることを他のキャラクターに応用していくことでゲームの基礎ができたために豊富なモーションが生まれたとのこと。
    • 特に、主人公は自ら語ることはないのだが、豊富な表情で「気持ち」が表現されている。喜んだり悲しんだり。気になる物があるとき(ダンジョンの仕掛けなど)はその方向へ表情が注目したりもする。
      • 序盤はおばあちゃんから習わしとして「勇者の服」を貰うのだが…乗り気じゃなかったのか、お決まりの掲げるポーズと共に嫌そうな顔をしているのもポイント。
      • かと言って後に島を出る際もおばあちゃんを独りにさせることに気にかけているのか船上で別れる際も寂しそうな顔をしていたりと、前作の「64」時代に比べるとかなり表情豊かになっている。
  • BGMはゼルダシリーズを通じて担当している近藤浩治氏を含め4人が担当。
    • あるときは古風に、あるとき壮大に、などBGMは場面に上手く合わせられている。全体的にオーケストラというよりは、笛や打楽器、弦楽器を中心とした民族音楽調のBGMが多い。
      過去作のBGMも適度に含まれており、一風変わった世界観でありながらシリーズの連続性をしっかりと保っている。
      特に中盤で訪れる重要なロケーションでのBGMは「おっ」と思った方もいるのではないだろうか?
      • 初代『ゼルダの伝説』から続くメインテーマは露出が少なく、OPデモの他には大海原のBGMにやや面影が残る程度だが、終盤のイベントのここぞという場面で象徴的に使用される。

細かな特徴

  • 「風のタクト」の名が示すように、主人公はタクト(指揮棒)を利用して旅をする。タクトは『時のオカリナ』や『ムジュラの仮面』でいうオカリナであり、昼夜を変えたり、ダンジョンの謎解きなど様々な場面で使うこととなる。
  • 序盤で主人公は喋る船「赤獅子の王」と出会い、彼を案内人として冒険をする。船に帆をつけ、風が吹く方向へ船を動かしていく。風を操るのはもちろんタクト。
    • ストーリー中盤までは行動が制限されているが、2番目のダンジョン攻略後にほぼ自由に動けるようになる。大海原は49の領域に分かれており、各領域に島や建造物が存在する。大抵は無人島なのだが、それぞれイベントやアイテムなどがあり、やりこみ要素が非常に多い
    • 人の住む島でミニゲームしたり、別荘の島を手に入れパズルに興じたり、潜水艦の中で雑魚敵と戯れたり、ミニ戦艦のいる要塞を破壊したり。場所によって特徴がかなり様々であり、楽しめる。
  • 海でのお宝探し
    • 宝のマップという物があり、それを利用して海底からお宝を引き揚げるというもの。お宝は1ルピーから色々。
  • チンクル。35歳。独身。
    • 妖精さんを探し続けて35歳になってしまったオジサン。いつもは弟2人と赤の他人1人で同じ格好で暮らしている。
    • 今作ではストーリーに関わる上に、ゲームボーイアドバンスとゲームキューブを繋ぐことで一緒に旅をすることもできる。
      • 初登場は『ムジュラの仮面』であるが、今作で可愛らしくなった彼はスピンオフ作にて2作品も主演を務める程にまで出世することとなる。ただしこちらは可愛らしいというかやっぱりというかどう見ても変質(ry。 誰か企画を止める者はいなかったのか。
  • やりこみ要素として、「フィギュア」というものがある。
    • これはゲーム中に手に入る「写し絵の箱DX」というカメラのような物でゲーム内キャラクターを撮影し、ある所へ持って行くと、そのキャラクターのフィギュアを作ってもらえるというもの。
    • ゲーム内のほぼ全てのキャラクター*3をフィギュアにできる。すなわち、主人公から雑魚敵、果ては妖精(回復アイテム)や海辺にいるカニまで。もちろん、ボスも対象である。ゼルダシリーズ中でも最大級の平均ボスサイズである今作で、巨大なボス相手にシャッターチャンスを求めてカメラを片手に走る主人公とはいかがなものか。なかなかシュールな図である。
      • ゲームクリア後にセーブするとフィギュアのデータと写し絵の箱を引き継ぐことができる。
      • イベントの都合で撮影できないキャラクターは、そのキャラクターが写った「伝説の写し絵」を購入できるという形でフォローされている。ただし伝説の写し絵が購入できない(1周目から引き継いだ写し絵の箱が必要になる)キャラクターが1体いるため、全てを揃えられるのは最低2周目になる。
      • ニテンドウ店主は白黒写真ではフィギュアを作ってくれないが、最終ダンジョンで再戦することになる白黒になったダンジョンボス(のカラー写真)では問題なくフィギュアを作ってくれる。
  • 2周目について少し触れたが、他にも2周目プレイでは1周目と少し異なる部分が用意されており、十分楽しめる。

賛否両論点

  • グラフィックの変化
    • トゥーン調のグラフィックは当時としては先進的な表現でありながら高いクオリティで作りこまれており、評価が高い。
      だが、良くも悪くも『時のオカリナ』『ムジュラの仮面』から大きく雰囲気が変化しており、64時代の写実路線『ゼルダ』からの純粋な進化を期待していたファンからは相応の批判意見も噴出した。
      • 特にリアルゼルダ志向の強い海外では、当時はトゥーン調の絵はゼルダの伝説に合わないとして批判的に視ているプレイヤーが 非常に 多かった。
        ファンの反応は賛否真っ二つに分かれ、海外で行われた本シリーズの嫌いなキャラランキングにおいて本作の主人公の猫目リンクが同じく海外で嫌われているチンクルと共に上位にランクインするなど、風当たりが強かった。
      • 本作の発売前、展示会でゲームキューブを発表する際に『時のオカリナ』を基にグラフィックを強化したデモ映像が公開されていた事も、本作への批判が大きくなる原因となった。
      • しかし時を経た現在、海外では本作のグラフィックを再評価する傾向も一部で見られる。写実路線はハードの性能に依存することから時間の経過によってどうしても隔世の色が強くなってしまうのに対し、このような独自色の強い表現は時代を跨いでも大きく色あせないためである。
      • 余談の項目でも触れているが、後年の作品で写実的なリンクとトゥーン調のリンクが明確に区別され、『スマブラ』でもそれぞれ別キャラクターとして収録されるなど「あくまで別物」という風潮が強くなったことも、再評価の要因になった。
      • ちなみにデフォルメ色の強いキャラデザになったのは、キャラクターの視線がゲームヒントになっているのを子供にもわかりやすく伝える為でもある。写実路線だと眼球の動きがわかりにくいため、猫目にしたんだとか。
  • 最初のダンジョン「魔獣島」の難易度
+ ダンジョン攻略について、割と具体的なネタバレをしています。閲覧注意
  • 最初に攻略することになるダンジョン「魔獣島」には、海賊船のカタパルトを使い侵入する事になる…のだが、撃ち出され壁に激突した際の衝撃で剣をダンジョンのどこかに落としてしまう。落とした剣を拾うまでは、丸腰の状態でダンジョンを進んでいかなければならない。
    • ダンジョン内の敵からは基本的にタルを被って身を隠さねばならず、見つかれば即牢屋行き*4。敵に感づかれた際のドデカい太鼓のような音や、見つかってしまった際のサイレン音がトラウマになってしまったというプレイヤーは地味に多い。
  • ダンジョン内にはネズミのような敵「グース」が出没する部屋があるのだが、こいつがまた曲者。他の敵に見つからないようタルを被って隠れている所に攻撃を加えてくるのである。当然攻撃を喰らえばタルを失ってしまい、そのまま発見→牢屋行きというコンボ成立。これに関しては攻撃してくる位置を予測することは不可能という嫌がらせ仕様である。
  • 屋外のエリアではサーチライトが3つ稼動しており、これに引っかかってしまうと問答無用で即牢屋行き。しかもダンジョン構成の都合上、1つのサーチライトは稼働しているとゴールには辿り着けないので、まずはこれを止める必要がある。
    • サーチライトを操作している雑魚敵とは、壺の中にある棒切れを使って戦う事が可能。盾で雑魚敵の攻撃を弾き、敵が手放した棒切れを奪って戦うこともできる。但し棒切れの攻撃モーションは剣と比べて遅く、慣れないうちはてこずる可能性が高い。棒切れがあれば室内の敵とも戦えるのではと思うかもしれないが、なぜか室内に入ろうとする時に棒切れを落として行くので、巡視をしている敵はやり過ごすしかない。
  • 敵をやり過ごしながら進むダンジョンでありながら、地形がかなり複雑になっている。2階建ての円形状で、ある場所から一度外に出ないとゴールに辿り着けないようになっているため、道に迷って同じところをグルグル回る羽目になりやすい。
    • 一応ところどころに梯子があり、上から木箱を落とせばそこがショートカットとして使えるようにはなっている。
  • やっと剣を入手出来てもそこから引き返すことは不可能なので、それまで隠れるしかなかった憎たらしい敵を攻撃して憂さ晴らしすることも出来ない。
  • プレイヤーの中には「風のタクト最難関ダンジョンは最初の魔獣島」と断言するユーザーまで居る程である。そんなダンジョンを、よりにもよって最初に攻略する破目になるのだからたまったものではない。案の定各所のコミュニティでは悲鳴が木霊したという…。
    • ちなみにこの魔獣島、ストーリー進行でもう1回訪れる機会がある。その時は剣を無くす事もなくフル装備で乗り込めるので、思う存分鬱憤を晴らしてやろう。
      • ただし、この時に新しく登場するフロアマスターに捕まると牢屋行きになるので、その点は注意しなければならない。

問題点

  • カメラ操作がリバース固定。
    • 後発のアクションゲームやFPSでいうところのリバース操作(スティックを右に倒すとカメラアングルは左に動く)に固定されており、最近のアクションゲームに慣れた人にはストレスを感じる操作となる場合がある。
  • 幸せのペンダントの存在価値が薄い。
    • 幸せのペンダントはドラゴンクエストシリーズで言う「小さなメダル」に相当する収集アイテムであり、各ダンジョンの宝箱の中などに潜んでいる。
    • ところが「小さなメダル」と大きく異なるのは、出現率の高い雑魚敵から簡単に強奪が可能であり、フィールドやダンジョンをくまなく探索してまで集めるほどのアイテムではないということである。
      • 一応シナリオクリアには20枚必要なのだが、60枚集めてようやくもう1つのアイテムが手に入るくらいで、後は集めても何もないと言って良い。よって、仕掛けを解いて宝箱を開けたら幸せのペンダントでガッカリさせられるだけのアイテムとなっている。
  • 冗長な移動。
    • 大海原での移動は最初こそ冒険感とワクワク感にあふれているが、慣れてくると長い移動時間に冗長さを感じやすくなる。
    • 海上での移動方法は「タクトを振って風の唄を使用→目的地の方向に風向きを変える→船に乗って移動」という手順になる。しかし船は追い風ならそこそこ快速だが、向かい風だとほとんど進まないため、逆風だと少しの距離を移動するのにもいちいちタクトを振るわなければならない。宝のマップを目印にサルベージするときや、島の周囲を船で調べる時などにこういった事態が頻発するのでイライラがつのる。
    • ワープ機能なる物があるのだが、このワープができるのは49島の中の主要な9島(その内1つは移動用ではない為、実質8つ)であり、そうではない島々には船で移動するしかない。
      • ワープできる場所のうち、プロロ島だけは何故か島から妙に離れた位置に到着する。このため、風向きが悪いと上陸するまでに「風の唄」を振る必要が出て来るのも不親切な点である。
    • 移動中のお遊び的要素として、航海中にもルピー(お金)の乗ったタルが浮かんだり敵が出てきたりするギミックがあるが、移動中は暇になる事に大して変わりは無い。
      • 敵のバリエーションとしては、グヨーグ(サメ)やオクタロック(巨大なタコ)やシーハット(飛行するピーハットの亜種)が出てくるのだが、例えばシーハットは集団でかなりの数が登場する。ダメージを受けると船からたたき落とされるため、数が多いと移動するにせよサルベージするにせよ非常に鬱陶しい。倒すときも過去のシリーズの騎乗から弓を射つように移動しながら攻撃もできず、攻撃の度に航行を止められる。
    • 禁断の森をクリア後に、枯れかかった森の樹を蘇らせるイベントが出るのだが、これはリアルタイムで20分間以内に8ヶ所全ての島にある樹に森の水を与えなくてはならない。うち1ヶ所はダンジョンを進まなければならないため、嫌がらせの領域に達している*5
      • 前述の移動用ではないワープ先の島にも森の樹が植えられているので、初見ではそこに移動しようと無意味なワープをして、時間をロスする可能性が非常に高い。
    • 移動の手間を省くためには最短ルートを通るのが筋なのだが、それを読んだかのように移動を邪魔するトラップが仕掛けられている場合がある。
      • 森の島から魚の島に行くには北西に進んでから西に行くのが最短ルートだが、このルートだとダレの島にいるダイオクタ*6に遭遇する危険性が高い。この時点だとブーメランしか持っておらず、倒し切るのが非常に難しい。
      • 三角島3か所にオーブを捧げるイベントでも、最短ルートを進めば2回も竜巻に巻き込まれる危険性が待っている。この時点で竜巻に巻き込まれれば逃れる方法はなく、あらぬ場所まで吹き飛ばされてしまう。
  • 「操りの唄」を使う攻略が面倒。
    • ゲーム中盤のダンジョンで覚える唄で、特定の物や人物に乗り移って操ることで移動や固有のアクションをさせてギミックを解くというものだが、とにかく何度も使わされ、そのたびにタクトを振るう演出が加わるのでこれまた面倒極まりない。
      • 操られている対象がダメージを受けると操り状態は強制的に解除される。操られる人物はリンクのような攻撃手段を持たず敵がいたら避けるしかないため、敵が多い場所だと無駄に緊張を強いられる。
    • 上記以外に利用方法があるわけでもなく、覚えたことでこれまでの移動や攻略が簡略化できることもない。本当にダンジョン攻略だけの代物であり、「使わされている」感が強い。
      • 物体はともかく、人物にわざわざ操りの唄を使う必然性も乏しい。操られるキャラはリンクに友好的で言葉も通じるので、 普通に指示すれば済む話である。 「リンクが操ることで何か特別な力が発揮できる」といったこともなく、理由付けが存在しない。
  • 青いクスリの存在価値が薄い。
    • 『時のオカリナ』『ムジュラの仮面』と同様に、本作でもイベントをクリアすることで体力と魔力を全回復させる青いクスリが手に入るのだが、本作のイベントはかなり面倒である。
    • 本作では青チュチュを倒すことで得られる青チュチュゼリーを15個集めてクスリ屋に渡すと青いクスリを作ってもらえるのだが、 青チュチュは島に1匹しか生息しておらず、一度ゼリーを手に入れたチュチュからは二度とゼリーを獲得できない (1ヶ所だけ例外で2匹いる島もある)。
    • よって、青チュチュが生息している島を探して最低でも14か所も回らないとならない。前述の通り、大海原では冗長な移動を要するので、面倒なことこの上ない。
      • 更に青チュチュは49か所ある島のうち全部で20か所しか生息していない。それでいて、イカマップ(ダイオクタのいるエリアを示すマップ)のような青チュチュ用のマップが存在しないため、攻略本抜きでは手当たり次第探すしかないのも不親切である。
    • ぶっちゃけ森のクスリ屋にボコババのタネを4つ渡した方が遥かに楽に入手できるので、ゼリー集めは苦労の割に合わない。こちらはクスリ屋に行くまでが面倒なのと、クスリを貰うのに冗長な調合シーンを挟む欠点があるが、比較すれば些細な方である。
    • 極めつきがプロロ島に帰還してから入手できるリンクのおばあちゃんの「特製スープ」の存在。体力・魔力共に全回復するうえに、ダメージを受けるまでは攻撃力が2倍になる効果まである。こちらは空き瓶1本にしか入れられないが、その分2回使うことができ、空になったらいつでも無料で補充可能。入手に必要なイベントもリンクのおばあちゃんを妖精の力で治すだけでクリアなので、これさえあれば青いクスリに頼る必要性すらなくなる。故に青チュチュゼリー集めは完全にイベントのコンプリートを目指す人の趣味の範疇と化している。
  • 密度のバラつきが目立つステージ構成。
    • 本作の大きな欠点のひとつ。前半から中盤まではイベントやダンジョンなどが密度高く配置されているのだが、終盤はスカスカさが目立っている。ストーリーだけ追うと短いと感じる人もいる。
  • これは、制作期間の都合で終盤のダンジョンがカットされ、代わりに「トライフォースのかけら集め」という、言ってみれば「大海原全体での宝探し」という内容になったためである。
    • 密度の薄さでは序盤でも気になるところがあり、最初は3つある神珠を集めるのが旅の目的なのだが、3つ目の神珠のみダンジョン攻略は一切なく、謎解きとシューティングゲームだけで終わってしまう。人によっては物足りなさを感じる部分である。
  • 面倒極まりない「トライフォースのかけら集め」
    • 文字通り「かけら」を探すのだが、これがまた面倒で本作最大の汚点と言われている部分である。
    • 「かけら」は全部で8つあるのだが、大海原のどこかの島×8にそのかけらのある地図が隠されていて、その8つの島々に移動して、内部を攻略することで入手できる。
    • 「針岩の島」のみは例外で、この島のそばにいる黄金の戦艦を倒して得られるのは普通の宝の地図で、これを頼りに「さめ島→再び針岩の島→東の妖精島→大地の島」と宝の地図のイタチゴッコが続いて、ようやくトライフォースのかけらの地図が手に入る。マップ自体は普通の宝の地図と変わりが無いせいで、途中でどのマップがそれに該当するか分からなくなると悲惨なことになる。
    • 更に手に入れたトライフォースのかけらの地図は、ある人物に解読して貰わないと使用が不可。その解読には398ルピー×8が掛かり、解読された地図を見て8箇所にある「かけら」を入手するという流れ。当然解読された場所がわからないと虱潰しに探すことに。これが海での移動の長さも相まって、非常に面倒である。ちなみに初期の財布で持てるルピーは200しかないので、財布のグレードを上げないと解読依頼をすることもできない。
      • 幸い財布をグレードアップしてくれる妖精はストーリー上必ず再訪するプロロ島にもいるため、おばあちゃんを回復させるのに必要な妖精を手に入れるのと同時に行うことが多く、グレードアップし忘れるという事はほぼ起こりえないようになっている。
      • トライフォースのマップがある場所を示すマップもシナリオ上、見逃すことがほとんどないようになっている(ただ嫌がらせの如く手数料に201ルピーかかるので、やはり財布のグレードアップは必要だが)。また、チンクルの救出が速いとあまりにも早く手に入ってしまうので、初見ではこれが何のためのマップなのか分からないことがある。
    • なおこのトライフォースのかけら集め、本作プレイヤーの間ではNPCのセリフから「タライとホース」と呼ばれている。その作業感から定着した言葉であることは言うまでもない。
    • そもそもシナリオ上でトライフォースを集めるのは、閉じられてしまったとある場所へ続く道を再度開くためなのだが、その道が勝手に閉じられる理由・トライフォースによって開く仕組みが十分に説明されないのも気になる点である*7
  • 連動機能に関する不備
    • ゲームボーイアドバンスとの連動機能を利用することで「ナックル」というキャラクターが出現するのだが、このキャラクターがフィギュアのコンプリート条件に含まれていない。
    • それ自体は連動機能が使えないプレイヤーへの配慮と受け取れるのだが、問題はコンプリートしてから出現させた場合。フィギュアをコンプリートするとニテン堂の店主が居なくなってしまうため、ナックルのフィギュアが作れなくなってしまうのである。
  • 「フィギュア」について
    • 「写し絵の箱DX」で保存できるのはたったの3枚。登場人物の多いタウラ島では何度も往復しなくてはならない*8
    • しかも1つのフィギュアの作成に1日かかるので、いちいち「昼夜の唄」を2回も奏でなければならないのも面倒な要素である。
    • コログは先述した森の樹を植えるイベントで8か所の島に移動してしまうため、1周目では写し絵を集め切るのも一苦労となる。

総評

トゥーンレンダリングによるグラフィック、大海原を中心とした舞台、世界観の変更などこれまでのゼルダシリーズとは一線を画す仕上がりとなっている作品。
発売前は新たなゼルダの幕開けとしてかなり注目されており、ゲーム雑誌などでも連日一面を飾るなど非常に力を入れていた作品であった事が窺える。
実際にグラフィックの独特の表現、作りこみの細かさは素晴らしいものがあり、勿論やりこみ要素も従来作に負けず劣らずの多彩さを誇る。

『時のオカリナ』の後継作としてリアル路線を期待されていた事、アニメ調のグラフィックやコミカルな世界観がゼルダらしくないと評価されてしまった事などから否定意見も根強いものの、本作からシリーズを始めたプレイヤーからは概ね高評価を得ている。

ゲーム単体としては尻窄み気味の後半パートや、かけら集め等の作業感の強い要素といった見逃せない問題点が散見され、新システムも粗の多い部分が目立つ。
全体的な出来は良作と呼んでも差し支えないクオリティなだけに、痒い所にしっかりと手が届くように作りこんでいれば…或いは「路線変更による不評を完全に覆してみせた不朽の名作」としての評価もありえたかもしれない。


余談

  • このソフトの発売時、予約特典として非売品ディスク『ゼルダの伝説 時のオカリナGC』が配布された。このディスクにはバージョンの異なる2つの『時のオカリナ』とその他当時の新作GC・GBAソフトの宣伝映像が収録されている。
    • この異なるバージョンのうち、片方はN64版そのままの内容だが、もう片方は元々64DDで出す予定だったがお蔵入りした「裏ゼルダ」とでも言うべき高難易度バージョンとなっている。通称『時のオカリナ裏』。
    • これが原因となり、数量の限られた特典を是が非でも手に入れたいとするファンから任天堂や販売店への問い合わせが殺到したという*9
      • また、特典の無い通常版の『風のタクト』が投げ売りされている光景も見られたという。ゼルダシリーズファンの業は深い。
    • なおソフトはケースではなく、説明書のポケットにディスクが仕舞われていた。これが原因かどうかは分からないが、後々クラブニンテンドーにてポイント交換で配布されたゼルダコレクションはディスク1枚にもかかわらず、ディスク2枚用のゲームと同じケースが使われていた。
  • 本作の路線変更に対する賛否両論を受けてか、本作の次に発売された据置作品『トワイライトプリンセス』は再びリアル路線へ回帰した。
    • ただしトゥーンレンダリングによる表現そのものは模索が続けられ、続く据置作品『スカイウォードソード』では写実とトゥーンの中間であるハーフトゥーンという技術でキャラクターが描かれたほか、『ブレス オブ ザ ワイルド』では再び全面的にトゥーンレンダリングが用いられている。
  • シリーズで何度か登場している騎士型モンスター『タートナック』は本作では大幅な仕様変更が行われ、 装備を全て剥ぎ取る事が可能となった
    • 従来作タートナックは鎧を装備しているのにもかかわらず、攻撃が通る等の矛盾感があったが、本作ではハードスペックの向上により仕様が複雑になり、対峙するだけでもスリティングな駆け引きを楽しむ事ができるが、裏を返せば装備を全て身に纏った状態ではかなりの強敵なので『リンクが勝利する為には戦略的に攻めて装備を剥ぎ取らないといけない』と言う事である。
    • 字面で表すと大それた事の無いように見えるが、鎧で覆われたタートナックの正体は アヌビスの姿をした獣人戦士 であり、俊足だが生身の戦闘力はかなり低く、装備を剥ぎ取る度に弱体化していくと言う事である。とは言っても、どんな状況に陥っても攻撃を休める事はなく、例え武器である大剣が奪われても格闘技で攻めると言う闘争心の塊である。そんな容姿も相まってリンクと彼(?)との戦いはある意味シュールであり、本作の芸の高さがうかがえる。なお、据え置き機での次作にあたる『トワイライトプリンセス』でも続投されているが、アクションが大幅に減り、剥ぎ取る装備の数も限られてしまったので本作の様な駆け引きを楽しむ事は出来なくなった。
  • 本作の「猫目リンク」を始めとする独特なアートワークは、携帯機でのゼルダシリーズにおける標準のデザインとなった。
  • 本作のコミカルな物語が子供達に受けたのか、少年誌で冒険漫画やギャグ漫画などが連載されるようになった。
    • 否定的な意見もある本作の世界観ではあるが、結果的により多くの年齢層のファンを獲得し、ゼルダシリーズの間口を広げる事に成功したという点は素直に評価して然るべきだろう。
  • 大乱闘スマッシュブラザーズシリーズでは『X』以降、『DX』で参戦していた「こどもリンク」と入れ替わる形で本作のリンクがプレイアブルキャラクターとして参戦するようになった。通常のリンクと区別する関係で名前は「トゥーンリンク」となっている。
  • 本作の特徴として「島移動の際にロードを挟んだりマップの切り替わりが起こったりしない」という点が上げられるが、この特徴は後に『ブレス オブ ザ ワイルド』にて、より発展した「オープンエア」という形となって引き継がれた。
  • 劇中で海賊の合言葉を盗み聞きし、それを答える問題が存在するが、この合言葉はセーブデータごとに毎回異なるようになっている。これにより、攻略サイトなどで予め答えを知ることで盗み聞きするイベントをカットされるのを防いでいる。

ゼルダの伝説 風のタクト HD

【ぜるだのでんせつ かぜのたくと えいちでぃー】

※オリジナル版と違う部分のみ記載

対応機種 Wii U
開発・発売元 任天堂
発売日 2013年9月26日
定価 5,700円(税別)
判定 良作

概要(HD)

Wii Uに移り、フルHD(1080p)で描画されたリメイク版。アスペクト比も16:9に変更されている。
画質だけではなく、ゲームキューブ版が持つ問題点の多くに改善・修正がなされており、痒いところに手が届くリメイクとなっている。


主な追加要素と変更点・評価点(HD)

  • タイトル通りのHD化及び、Wii Uへの対応。
    • 元々は「Wii UのHD画質はどんな感じか」ということでシリーズ作品をHDで描写してみたところ、『風のタクト』が圧倒的な存在感を放った*10映像となったところから始まっている。
      • その言葉に嘘はなく、空や海の美しさはGC版をはるかに上回っている。光と影の明暗がはっきりしたり、海の波の様子が変わるなど、現代の水準でも魅力的といえる映像を実現している。
    • Wii U GamePadにより実質的な2画面プレイやTVを使わずGamePadだけでのプレイが可能
    • 2画面を活用し歩きながらアイテムを持ち替えたり、航海を続けながら海図を見たり、Padを傾けることで直感的に弓矢などの狙いを定める操作が可能になった。従来通りポーズもできる。
  • BGMも曲そのものはGC版と同じだが、WiiUにあわせて音を始めとして全て打ち込み直されており、透明度と迫力が増している。
    • 原典から大きくイメージが変わった曲こそ無いが、比べて聴けば一発で分かるレベルで音が綺麗になっている。
  • Miiverseとの連携。
    • GBAとの連動であった「チンクルシーバー」に代わり、「チンクルボトル」が登場。メッセージを自由に書き、ゲーム中で撮影した写し絵と共にボトルメールの感覚で海に流せる。流されたボトルは、他のユーザーのゲームに登場し、海に浮かんでいたり砂浜に打ち上げられていたりする。
    • これだけでは効率重視のプレイヤーには無視されがちな要素に見えるが、「写し絵を付けられる」という点が重要である。この写し絵は前述のフィギュア製作に利用できるため、倒すともう撮影できないボスや、多額のルピーを払わないと手に入らない写し絵を受け取れる可能性もあるので、見かけたら拾っておいて損はない。
    • 他人のプレイや攻略情報を読んでいるだけで楽しい、という人もいるだろう。
  • 航海スピード及び後半の展開の改善。
    • 船のスピードが2倍になる上、常に追い風が吹くようになる「快速の帆」が追加。
      • 普通の帆のほうが小回りが利き、任意に切り替え可能。
      • サブイベントで入手できるため、そのイベントの存在を知らない人は入手せずクリアしてしまう可能性はある。
    • また、航海中は爆弾樽以外で船から振り落とされることがなくなった。
    • 「トライフォースのマップ」が8枚から3枚に減少。残り5つはかけらが直接手に入る上、マップを見つけてサルベージしたらまたマップ……というたらい回しもなくなっている。
  • 各種演出の簡略化や仕様変更。
    • タクトを振る演出や、かぎづめロープを引っ掛ける演出など、細かな部分が簡略化されており、テンポの向上につながっている。
    • 写し絵の箱に保存できる枚数が3枚から12枚に増加した上、キャラクターを撮影した際にフィギュア化の可否がその場でわかるようになった。
    • さらに、ニテン堂店主は最大12個のフィギュアを一度に作ってくれるようになった。
      • これらにより、ニテン堂への往復回数が大幅に減った。
    • ムービーは海外版風タクのものを元にしているため、一部演出が国内GC版と異なる。
    • ダメージ2倍&回復ハート出現なしの辛口モードが追加。1周目から任意で切り替えることができる。同データでも途中で切り替え可。
  • バグの修正。とはいえ元から致命的なバグはない。
    • 一部のバグ技はやり方は変わったがHD版でもできるものもある。ただし実行してもゲーム上特に利点はない。

問題点(HD)

  • チンクルシーバーの削除。
    • GC版では各地のダンジョンにてアイテム「チンクルシーバー」によって得たヒントを基に、何もないくぼみなど怪しい場所で爆弾を使うと「チンクル像」が手に入り、5つ全てを集めるとチンクルの弟「ナックル」が出現するというイベントがある。
    • このイベントはHD版でもあるのだが、GC版ではチンクルシーバーによってヒントが得られたのに対し、HD版では全くのノーヒントである。
    • これだけならまだいいのだが、ナックルのフィギュアはフィギュアコンプに必須となったため、攻略情報がなければ完全な収集プレイはほぼ不可能といえるだろう。
    • チンクル像の位置はGC版から変更されていないため、代わりの機能であるチンクルボトルで情報を交換してくれということなのだろうかと思われるが、Miiverseのサービスが終了した現在では厳しい。
  • ダンジョン等の大きな追加要素はなし。
    • 本作そのものの問題点ではないが、GC版で入れることができなかった2つのダンジョンが本作で収録されるのでは? と期待されていただけに残念がる声は少なくなかった。
    • 没ダンジョンの仕掛けをシリーズの後発作品で既に使用している為、改めて拾う必要性がなくなったというのが理由とのこと。

総評(HD)

総合的には、GC版の問題点の多くを解消した良リメイクであると評価できるだろう。
ただしボリューム面では大きな追加要素はないので、クリア済みの人にもう一度同じ作品を買わせる程のパワーがあるかは微妙な所。
風のタクトをプレイしたことがない人、或いはGC版を途中で諦めてしまった人には迷わずお勧めできる一作である。

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  • GC
  • AADV
  • 任天堂
  • ゼルダの伝説

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最終更新:2024年03月28日 21:27

*1 本作は時のオカリナのエンディングにおいて時の勇者が姿を消してから数百年余りが経過した未来のハイラルが舞台である。

*2 3DCGの表現方法のひとつで、3次元のデータをもとに漫画やイラスト風にレンダリング(出力)する技術。セルルックとも呼ばれる。

*3 ビーモス、大砲船はフィギュア化できない。

*4 牢屋自体は脱出できるようになっており、特定の位置に戻される以外のデメリットはない。

*5 流石に厳しかったのか、WiiU版では30分に変更されている。

*6 イカのようなモンスターで、コイツのテリトリーに近づくと強制的に戦闘になり、倒すか時間切れになるまで抜け出せない。

*7 実際その道は閉じられる前に2度も開かれている。

*8 27種類もいるので最低でも9回も行き来する必要がある。

*9 この問い合わせの影響か、当初は「数量限定の早期予約特典」であったのが「予約購入者全員への購入特典」に変更された。

*10 「社長が訊く『ゼルダの伝説風のタクトHD』 4.考古学」より