海腹川背

【うみはらかわせ】

ジャンル ラバーリングアクション
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対応機種 スーパーファミコン
Windows 7~10
メディア 【SFC】8MbitROMカートリッジ
【Win】ダウンロード
発売元 【SFC】TNN
【Win】Degica(当初はアガツマ・エンタテインメント)
開発元 【SFC】TNN
【Win】スタジオ最前線
発売日 【SFC】1994年12月23日
【Win】2015年11月2日
定価 【SFC】9,800円
【Win】980円
判定 良作
海腹川背シリーズリンク


概要

先端にルアーが付いたゴム紐を投げ、ルアーを壁に引っ掛けてターザンのように渡ったり敵を絡め取ったりして、複雑な構造のコースを攻略していくアクションゲーム。
プレイヤーの力量次第で自由自在なアクションが可能で、腕を磨いて極めていくタイプのやり込みゲームである。


ゲームシステム

  • 主人公の少女「海腹川背」を操作してフィールドと呼ばれる複雑な構造のコースを進み、ゴールの扉を目指す。フィールドによっては複数の扉があり、ルート分岐がある。こうして道なき道をひたすら進んで行くのがこのゲームの目的である。
    • タイトルの「海腹川背*1」とはこの少女の名前である。公式やファンからは親しみを込めて「川背さん」と呼ばれることが多い。
  • 基本的にはオーソドックスな横視点の2Dアクションである。プレイヤーができる操作は移動・ジャンプ・ルアーを投げるの3つのみだが、ルアーをうまく操ることで普通のアクションゲームではできないアクロバティックなアクションが可能になる。
    • 十字キーと投げるボタンの組み合わせで、8方向にルアーを投げることができる。
      • 全ての基本となるのが、天井にルアーを固定しジャンプの勢いで左右に揺れる振り子運動。これだけなら他のワイヤーアクションのゲームと同じだが、本作のワイヤーにはゴムのような伸縮性があり、その場で左右に揺れると自ら振り子状態を作ることができる。
    • また、ルアーを地形や敵に刺したあとにワイヤーの長さを調整することができる。これが本作の大きな特徴であり、振り子の大きさを変えたり、通常なら届かない距離を振り子ジャンプでショートカットしたりすることも可能である。
    • この他にも
      • 「天井にルアーを刺してワイヤーを縮めて上昇」「ルアーで壁に張りついたあと、勢い良く紐を縮めてゴムの勢いで壁を登る」
      • 「足元にルアーを刺すことで安全に下段に降りる」「振り子運動の真下で紐を縮め、遠心力によるゴムの伸びを縦運動へ変換し、支点よりも高く飛び上がる」
      • 「足元にルアーを刺してから歩いて伸ばし、ゴムの縮む力を利用して逆方向へダッシュ」
    • などゴムロープを活かした多様なテクニックが編み出され、これらを組み合わせることで複雑な動きを作り出していく。
  • フィールド上には魚介類をモチーフとした敵(足が生えていたりとみな変な外観である)がうろついており、触れるとミスもしくは気絶して一定時間操作不能になる。
    • 敵にルアーを当てると気絶させることができ、そのまま手繰り寄せてリュックにしまうと得点が入る。ルアーを当てても気絶しない敵は基本的に捕まえられないが、一部、普段以上の力をこめることで捕獲が可能な敵も存在する。ステージによっては、ランダムで敵が沸いて一往復して消える、バケツから一定周期で飛び出してくる小型敵などのバリエーションがある。
    • フィールドによっては「カエルを産む巨大オタマジャクシ」「編隊飛行するイシダイ」「巨大タツノオトシゴ」「カニ」などがボスとして登場。
      • ルアーによる手繰り寄せが効くものもあれば一切無効で避けていくしかないものも存在し、フィールド攻略とは一転して、敵を確実に捕まえるルアーさばきや攻撃を的確に避ける見切り能力が必要となる。
    • 「ルアーを当てても気絶しないザコ敵」に触れると川背さんが気絶してしまう。気絶は「めまいと共に後方へふらふら後退してから気絶」「その場で気絶」の2パターンが存在する。
      • 気絶の後、0.6秒経過後にルアーを投げることが可能になるため、気絶直後にルアーを投げることで助かる確率も多少なりとも上昇する。
    • 特定フィールドのボス敵は触れると即死となる。
  • 特にストーリーのようなものはなく、最終フィールドをクリアまたは特定の扉に入るとスタッフロールが流れて終了する。
    • プレイ時間が30分(裏技を使うと5分)を超えた状態でゴールすると、強制的に最終フィールドに飛ばされる。
    • リプレイ機能も搭載されており、任意にセーブすることで自由にデータを再生して閲覧できる。
  • 残機制で、「地形穴への落下」「トゲなどの即死トラップ・即死敵への接触」「動くリフトや上下する障害物と天井・足場に挟まれて圧死」「時間切れ」のいずれかで1ミス。残機0でゲームオーバー。
    • 残機の初期値は9で、特定地点に配置された1UPアイテムのリュックを取得することで残機数が増える。
      • ゲームオーバー後のコンテニューは不可で、1面からやり直しとなる。

評価点

  • ワイヤーアクションの自由度の高さ
    • アルマナの奇跡』『ヒットラーの復活 TOP SECRET』など、ワイヤーを用いたアクションゲームは既に存在していたが、これらのゲームではワイヤーの向きは変えられても長さや勢いまでは変えることができなかった。これに対して本作では「ワイヤーの長さやぶら下がった際の振り子運動の勢いを手動で微調整する」という要素が加わったことで、より自由度の高いワイヤーアクションが実現された。
    • ワイヤーの伸縮や振り子の揺れの表現も不自然なく、指先の微細な感覚がダイレクトにキャラクターの動きに反映されるようになっており、プログラミング技術の高さが窺える。
  • 初心者から上級者まで楽しめる懐の深さ
    • 直感的に分かりやすいボタン配置になっており、操作性は良好である。
    • 各フィールドにはいくつかのルートがあり、初心者は道なりに、上級者はアクションを駆使した大胆なショートカットでクリアすることができる。
    • 新しいテクニックが必要なフィールドでは、フィールド開始前にデモが挿入されて川背さんの動かし方を教えてくれる。
  • アクションゲームとしての配慮
    • 画面スクロールは常に川背さんが画面中央寄りに移動した際に発生するのでキャラクターを見失うことは少ない。また、LRボタンで画面をスクロールさせてフィールド全体を確認することもできる。さりげないところだが、アクションゲームとしては嬉しい配慮である。
    • グラフィックやアニメーションはなめらかで、キャラクターの生き生きとした個性が出ている。キャラクターと背景のメリハリもはっきりしているので、どこに何があるかがすぐに分かるようになっている。
  • 独特の世界観
    • 海・川を背景にしたフィールドには交通標識やガードレール、巨大な野菜、醤油のボトル、文房具と変なものが目白押し。足の生えた魚たちが歩き回る奇天烈な光景*2は、本作に独特の魅力をもたらしている。
    • BGMはいずれも牧歌的な雰囲気で統一されており、ストイックなゲーム性の本作における癒し要素となっている。シュールな世界観もBGMが程よく中和してくれている。
  • 海原川背の謎めいたキャラクター性
    • アクションゲームとしては非常にストイックかつ、ストーリーも無く、演出も素っ気ない作品であるだけに、却ってプレイアブルキャラの川背さんの印象が際立っている。
    • 元々パッケージや説明書に描かれた数点のイラスト以外にキャラクター性が不明だったが、その割にゲーム内でのアニメーションがそれなりに細やかだったり、何より「ショートヘアで幼い顔立ちなのに巨乳」という見た目にインパクトがあったことからユーザの記憶に残りやすいキャラクターとなっていた。

賛否両論点

  • 自由度の高いアクションを使いこなすためにはゴムの張力の微細な調整が必須であるため、慣れるまでは操作に苦労することになる。
    • ダッシュや大ジャンプといった普通のアクションゲームならボタン一つで実行できるアクションでもゴムの力を利用しなければならないため、コツがつかめないとなかなか先に進めずもどかしく感じられてしまう。
    • 基本的なアクションについては説明書に記載されているが、張力を利用したダッシュやジャンプなどの細かなテクニックについてはほぼノーヒント。やりこみの中で自力でテクニックを見つけ、磨き、体得しなくてはいけない。
      • 総じて難易度は高く、かわいらしいキャラクターやほのぼのした雰囲気と裏腹にプレイヤーを選ぶ。

問題点

  • ゲーム内チュートリアルや練習用モードが存在しない
    • 基本的な動かし方は説明書に記載されており、特定のステージでは開始前にそのステージで活用すべきアクションをデモで見せてくれるが具体的な操作方法の解説がない。
      • ステージを進める中で制限時間内に試行錯誤していかなくてはならず、落ち着いてプレイしにくい。
  • コンティニューやステージセレクトが存在しない。
    • 操作自体の難易度が高い上にゲームオーバーになると最初のステージからやり直しである。その分クリアの達成感は大きいが、心が折れ易い作りでもある。
      • 残機を増やす手段も特定のステージで手に入るリュックのみで、無限1UPなどの抜け道も存在しない。
    • プレイ開始から一定時間たつと強制的に最終ステージに飛ばされてしまうのも不自由さを助長している。
  • リプレイデータが消えやすい。

総評

『ヒットラーの復活』『アルマナの奇跡』の系譜を継いだワイヤーアクションゲームの逸品。
プレイヤーの力量がそのまま結果に表れるストイックさを持ちながら、初心者から上級者までそれぞれの楽しみ方ができる。「シンプルだが奥が深い」を体現するゲームの一つである。

その後の展開

  • 宣伝の規模の小ささから知名度はいまひとつであったが、プレイヤーからの支持を受けて隠れた名作タイトルとして知られるようになり、開発元・販売元を変えつつ多数の続編がリリースされている。詳細はこちらを参照。

余談

  • フィールドは57面まで存在するが、データが存在しない欠番フィールドがいくつか存在する。
    • ただし、これらはバグや不具合などではなく意図的に作られていないためで、「ゲームを全面クリアしてもそれが『海腹川背』のすべてではない」という意味合いが込められているという。*3
      • こうした作りは続編の『旬』まで続き、DS版以降は「ネット上での情報伝達が発達した今となってはあえて欠番を作る意義がなくなった」という理由で欠番フィールドはなくなった。
  • 真のエンディングの噂
    • 本作のエンディング画面があまりにもそっけないことや、プレイ時間が30分以上経過すると強制的に最終ステージに飛ばされてエンディングに移行することなどから、「30分以内にラストステージまで自力で辿り着いてクリアすれば真のエンディングが見られる」という噂が流れていた。
    • しかし実際にはこの条件を満たしてもエンディングは同じである。攻略や解析が進んだ現在でもネット上に真のエンディングとされる動画や画像は上がっていない。攻略本のほうには真のエンディングがあると書かれているらしいのだが…。
      • 『ゲームセンターCX』では、この情報を元に検証が行われ実際に30分以内にクリアすることに成功したがエンディングは変わらなかった。「虚しい結果に終わったが、この事実を実証できただけでよかった」と締めくくられている。
    • なお、制作者の酒井潔氏は30分エンディングの仕様について「難しいゲームに我慢して付き合ってくれたユーザーへの配慮」と語っている。
  • 本作発売前にスコラ社の月刊コミックバーガー(現・幻冬舎の月刊バーズ)で漫画家の山吹ショウマによるコミカライズ作品が連載された。内容はゲームとは殆ど関係の無いオリジナルな展開で、キャラクター名も海原川瀬となっている。
    • 同誌が休刊した為、「第一部完」という形ではあるが、まとまった形で終了したものの、単行本は1巻しか刊行されずに後半の二話分が未収録のままである。
    • こういう経緯があってか、SFC版の攻略本は珍しくスコラ社から刊行されている。巻末には氏による描き下ろしの外伝が収録されているが、「どうせなら連載時の未収録話の方も収録してほしかった」という不満も聞かれる。
  • キャラクターデザイン担当の近藤敏信氏は上記のコミカライズとほぼ同時期に徳間書店の月刊少年キャプテンで『ブラディコネクション』を連載しており、川背さんが客演している回も存在する。
    • 無名時代ゆえに川背さんのデザイン担当ということを知らない読者が多かったのか、「近藤先生は海腹川背が好きらしい」という読者からのコメントが寄せられて落ち込んだらしい。
  • テーマソングについて
    • 本作には『藍より碧いうみ』というテーマソングが存在し、PVなどで用いられたが、ゲーム内で流れることはない。
    • ゲーム本編のBGMとは作曲者も異なるためか音源化もされていない。後に発売されたサウンドトラックにも未収録である。

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最終更新:2023年11月22日 20:30

*1 「海の魚は腹に、川の魚は背に脂が乗っているという意味の板前用語」とのことだが、実際の意味については諸説ある。

*2 裏設定によれば、川背さんの心象風景であるらしい。

*3 出典:『アクションゲームサイド』VOL.02、p.52