美少女戦士セーラームーンS 場外乱闘!? 主役争奪戦

【びしょうじょせんしせーらーむーんすーぱー じょうがいらんとう しゅやくそうだつせん】

ジャンル 対戦格闘アクション
対応機種 スーパーファミコン
メディア 20MbitROMカートリッジ
発売元 エンジェル
開発元 アークシステムワークス
TNS
発売日 1994年12月16日
定価 9,980円
判定 良作
美少女戦士セーラームーンシリーズリンク


概要

少女漫画及びアニメ『美少女戦士セーラームーン』のゲームの内、初となる格闘ゲーム化作品。*1
主役の座をかけてセーラー戦士同士で勝負するというストーリーで、プレイヤーキャラクターは、ムーンとちびムーン、内部戦士、サターンを除いた外部戦士の9人。

ストーリーモードと対戦モードの他に、キャラを自由に選んでCPUと対決できるモード、8キャラクターで勝ち抜きバトルするトーナメント、トレーニングモードがある。

発売当時はよくあるキャラクターゲームという評価であったが、後年研究が進むにつれて、丁寧なシステムと絶妙な対戦バランスを有する良質格闘ゲームであることが明らかになっていき、名作として注目を浴びることになった。

システム・特徴

  • キャンセル
    • 本作は全ての通常技(空中時は除く)がキャンセル可能である。
    • ガード中にもコマンドを入力することでキャンセルできる。
  • バックスキップ
    • いわゆるバックステップ。テンキー表記*2で44と入力すると発動。飛び退いているときは無敵だが着地時に隙がある。
    • (ガード)キャンセルやリバーサルでも出せる。
    • 飛び退いている最中は空中(超)必殺技を使える。
  • 超必殺技
    • HPが僅か(約20%)になるか残りカウントが9以下になると使える。
      • 超必殺技が使えるほどHPが減少すると、立ちポーズがクタクタしたモーションに変わる。
      • 後述のACSで体力を上げていても「超必殺技使用可能となるHPの低さ」は変わらず、体力のACSポイントが0の場合での20%である。
    • 発動条件を満たしていれば何度でも使用できる。
    • トレーニングモードでは自由に超必殺技が使える。
  • オートモード
    • 必殺技入力コマンドにはマニュアルモードとオートモードがあり、マニュアルは236Pといった一般的なコマンドで、オートはLかR+弱・強パンチ・キックを押すと必殺技が出て、LとRを一緒に押すと超必殺技が出せる。
      • Lは弱、Rは強の必殺技を使う。どちらの強さのパンチかキックでどの必殺技が出るかは決まっている。
    • マニュアルにするとオート時でのコマンドを、オートにするとマニュアル時でのコマンドを入力しても必殺技は使えないようになっている。
    • 同社の『ドラゴンボールZ超武闘伝』シリーズでも似たシステムがあった。
  • ACS(アビリティ・カスタマイズ・システム)
    • 攻撃・必殺技・防御・体力・?・おちゃめの6種類ある能力にポイントを振り分けることでそれらの能力を上げることができる。
      • ?は超必殺技の威力。おちゃめを上げるとランダムでバクスキの着地時に転倒して照れ笑いし、飛び道具が不発に終わって照れ笑いする(つまりハンデ要素)。
      • 初期状態ではどの能力値も0で、各能力は最高で5ポイントまで振り分けられる。ポイントは選択したゲームモードや難易度によって違い、10~20となっている。
      • 攻撃・必殺技・防御・体力は1上げるごとに約1.08倍に強化されて、最大まで上げると通常の約1.4倍の能力になる。?はキャラクターによって効力がだいぶ違う。おちゃめは1上げるごとに約10%の確率で行動をミスして照れ笑いする。
      • 攻撃・必殺技・防御・?はすべての投げ・掴み属性の技に影響しない。ウラヌスとプルートの超必も投げ・掴み属性を持つ攻撃部分は?の影響を受けない。
    • トーナメントとトレーニングでは使用不可能。ただしCPUはトーナメントでもACSを普通に使える。

評価点

  • ゲームバランスがとても良い。
    • 全てのキャラクターに有利な相手と不利な相手がおり、終わっている組み合わせがない。最強キャラクターのジュピターでさえ弱キャラクターのちびムーンとプルートに対して5:5と、互角に渡り合えるのである。
    • 長年、セーラーウラヌスが反則的性能を誇る最強キャラクターだとする説があったが、研究の結果、現在では最弱キャラクターとされている。
      • ウラヌスは全キャラクター最高の攻撃力+素早い歩行速度+一瞬で端から端まで移動する前後へのステップ+コマンド投げ可能+永久コンボ持ちという戦闘能力を持つ。しかし一方で、通常技の牽制力が酷い、まったりしたジャンプ、食らい判定が大きい、飛び道具が低性能、コマンド投げの間合いが狭い、超必殺技がダメダメと、バトルの主導権を維持するどころか握ることさえ大変なのである。
    • 対戦バランスの良好さは中堅以上のプレイヤー同士での対戦だけにとどまらない。初心者視点では強く見えるウラヌスや初心者から見ても弱いちびムーンさえも通常技だけでも長所と短所があるので「この技さえ連発していればいい」ということがなく、知識や経験がない人同士でもキャラクターの相性に左右されずに好きなキャラクターで対戦を楽しめる。
  • シンプルながら奥が深いシステムの数々がゲームバランスと見事に調和している。
    • 全キャラクター飛び道具持ちであるためか、飛び道具性能に一工夫がされている。弾の高低差や軌道がかなり違うため「撃ち合いになってバトルが全然進展しない」ということが少ない。飛び道具を中途半端な間合いで撃つとガーキャンで反撃されかねない。強だと弾速が速くて高威力の傾向にあるが、半端な間合いならヒットしても反撃を食らうほど隙がある。弾の判定が見た目より大きくて(四角になっている)ジャンプでかわしにくいが、これによって甘い飛び込みは潰され、全キャラクター飛び道具持ちでありながら牽制の意味を成り立たせている。これらの理由から、鳥かご戦法のバランスや地上での通常技による牽制の重要性が保たれている。
    • 本作は全体的に対空攻撃が弱いが、気軽に飛び込むことはできない。ジャンプ攻撃をガードさせてもガードキャンセルで対応されるのである。またジャンプ攻撃がヒットしたときの怯み時間は、地上での弱攻撃ヒット時と同じ短さで、飛び込みからのコンボが容易というわけではない。
    • 空中投げができるキャラクターが意外なほど多く、空中必殺技や空中特殊技もあり、空中戦もおざなりになっていない。
    • 連発可能な超必殺技も決してバランスブレイカーにはなっていない。とても高い威力だが、むやみに出すには隙が大きくて危険である。またキャラクターによっては攻めのバリエーションが一気に広がり、それまでとは打って変わったバトル展開になる。HPかタイムが残り僅かでないと発動できないという仕様も、一発逆転の可能性を秘めた超必をバランスブレイカーにさせずに済んだ要素の1つである。
      • ちびムーンとウラヌスの超必殺技が強過ぎる(ACSでウラヌスの?を5にすると、ACSで体力を1以上か防御を2以上にしないと即死する)という意見があるが、ちびムーンの超必殺技は実は見た目ほど接近や反撃をしにくいわけではなく削りダメージ量も少しなので、連発すれば良いというものではない。ウラヌスの超必殺技も最後の攻撃がヒットしない限りKOすることができない・一部のキャラクターはしゃがみ時にクリーンヒットしない・ガードされたときの削り量がすごく少ない・ガードキャンセルで反撃確定というありさまで、決して理不尽な強さではない。
    • バックスキップにより、起き攻め回避、攻撃回避後に反撃、空中必殺技でキャンセルするといった攻守両面に渡って戦略性が高まっている。
    • 本作には無敵状態でいながら攻撃判定を持つ技がほとんどない。数少ない無敵攻撃技も隙が大きくて頼り切るわけにはいかない。つまり何でもかんでもキャンセルすれば良いシステムにはなっていない。
    • しゃがむと食らい判定の横幅が広がり、被ダメージが増加(正確に言うと「頭部にヒットするとダメージが増加」であるが、しゃがむと発生するケースが多い)。攻撃中に攻撃を受けると被ダメージが増加。地上中段技がある。こういった要素もスパイスをきかせている。
    • 怯みモーションによって食らい判定が変化するため、色々なコンボをする必要がある。
    • ガードポーズによっても食らい判定が変化し、ガードをしないことで攻撃を回避してから反撃することも可能。
    • 即死コンボ・永久パターンがあるものの、コマンド入力が非常に難しかったり、相手がしゃがんでいるなどの条件が揃っていないと成功しないほど狙ってするのは難しいため、いわゆる『世紀末』にはなっていない。ウラヌスとプルートは永久コンボのおかげで終わらずに済んだ相手もいる。
  • どの必殺技にも使い道があり、格闘ゲームにありがちな「存在意義に欠ける必殺技」がない。
  • 操作性が良い。キャラクターを思い通りに動かせるだろう。必殺技入力受け付け時間が長くて失敗しにくい。キャンセルに関しても、少し練習すればコツを掴めるはずだ。
    • 操作性のおかげもあり、コンボがしやすく、様々なコンボを組み立てやすい。
  • ゲームのテンポが良い。「ちょっとバトルが長引いてるかな?」と思ったところで超必殺解放タイムになる絶妙な試合時間設定となっている。
  • オートモードとACSのおかげでプレイヤーが格闘ゲームが苦手だったり女の子でもなんとかついていける。
    • マニュアル入力の受け付け時間の長さ、連打・必殺・ガードキャンセルのしやすさも配慮になっている。
      • このため、だれが遊んでもストレスを感じることを最小限に抑えつつ、逆に爽快感を出させることに成功した。
  • 上記の評価点をまとめると、格闘ゲーム初心者にも解りやすく遊びやすく、熟練プレイヤーにも奥深さと歯ごたえを味わわせることに成功していると言えるだろう。
  • 非常に高威力の銀水晶、文字通り高火力なマーズ、パワーとスピードを兼ね備えたウラヌスなどキャラクター設定を活かしたキャラクター性能を持っている。
    • バレーボール部員設定のヴィーナスがなぜか鈍足だが、ヴィーナスはアニメでも設定と戦闘能力が噛み合っていない。
  • アニメのオープニングで使ってはいるが、アニメ本編では未使用の、原作のみの必殺技が登場している。
  • オープニングこそ突然に主役争奪戦を提案する急展開を見せるが、基本的にセリフはキャラクターのイメージに合っている。真面目な掛け合いはもちろん、おちゃらけたものから冷静なツッコミまでギャグも入れられている。
  • パンツ(正確にはレオタードだが)がチラッと見える技がある。とくにマーキュリーの超必は『サザエさん』の磯野ワカメに匹敵するほどのパンモロで、彼女の追っかけが話題にすることもある。

問題点

一部の仕様に不親切なところがある

  • CPUが強い
    • さまざまなシステムを駆使し、トーナメントで当たり前かのようにACSポイントを振り分けている。高難易度設定だと少女にはかなり難しい。
      • 救済措置としてか、CPUの飛び道具の撃ち合い技術は大したことがなく、硬直が短いorダウン効果を持つ飛び道具を連射するだけで簡単にボコボコにできる。ストーリーモードクリア時の成績発表(AからEで評価)も飛び道具連射戦法をすればAを取りやすい。最低難易度なら少女でもクリアできるほど簡単で、難易度が最高レベルでないならCOMもおちゃめが発動し、最高レベルでもそこまで理不尽な強さではないように設定されている。
  • ストーリーモードで外部戦士が使用不可能。
  • トレーニングモードが、オート不可、体力バーと超必とオートコマンドが非表示で不便。
    • コマンド表記が見れること自体は便利ではある。練習相手キャラクターも2Pコントローラで動かせるので、2人一緒に練習する分には使い勝手は良い。
  • 対戦でのACSポイントが15しかない。少女にはハンデが必要と思われるのに15だけではハンデとして物足りない。
    • この問題は本作のマイナーチェンジ作で払拭された。

演出が全体的にイマイチ

  • ムーンでクリアしなければスタッフロール付きエンディングが見れず、他のキャラクターは試合を制した喜びのコメントとOPとタイトルがクリアしたキャラクターのものに変わるだけ。
  • 時間帯(ステージの明暗)を変えただけのステージが4種類あり、背景のキャラクターはレイの祖父、熊田雄一郎、フォボス&ディモス、古幡兄妹、大阪なると海野ぐりお、隠しステージの編集部員7名。その中で動くのは雄一郎とフォボスとディモスと部員4名。
  • BGMがステージとキャラクターのイメージと噛み合ってない。BGM自体、特に印象に残るほどのものでもない。
    • テレビアニメ版で音楽を担当した有澤孝紀が本作の曲を担当しているのは嬉しいことではある。
  • ボイスが少なく、一部のボイスが『R』の流用である。また、必殺技の名称を言うボイスは各キャラクターに1つだけ。ムーンの代名詞とも言える必殺技「ムーン・ティアラ・アクション」のボイスが「それっ」。
    • ムーンとヴィーナスのカラーチェンジ色が『R』と同じになっている。
  • ゲームに合わせたので仕方ないが、必殺技名ボイスがめちゃくちゃ早口。

グラフィック・音質周りに進歩がない

  • 『R』からグラフィックが変わり映えせず、音質が劣化した。
    • 『R』はSFC版セラムンシリーズでトップの質であるため『R』の後続作品すべてに言える。本作単体で見れば、SFCゲームとしては中々の出来栄えではある。

総評

本作の魅力は対戦バランスの良さと格闘ゲーム初心者への心配りにある。
地味ながらも奥深いシステムの数々は、格ゲーの素人も気軽に遊べるだけでなく格ゲーの玄人も納得する出来。
一部の演出と仕様に今一つの面はあるが、グラフィック・音質・必殺技演出は悪いものではなく、原作漫画要素をきちんと取り入れている。
キャラクター能力や必殺技などを『セーラームーン』の要素で彩りながらも、キャラクターゲームということに甘んじることなく、格闘ゲームの面白さや楽しさを引き出している。
一見しただけでは単なるキャラクターゲームに見えるかもしれないが、中身はしっかりとした良質格闘ゲームである。

余談

  • 初回特典で、隠しステージ「なかよし編集部」が出現する隠しコマンドが記載されたスペシャルカードが付属された。
  • 本作発売後も同ジャンル作が3DO、PS、SFC、SSの順に4作品発売された。いずれもセーラー戦士同士で勝負して主役を決めるストーリーとなっている。
    • 3DO『美少女戦士セーラームーンS』はゲームシステムが本作と異なっている。隠しキャラクターでスーパーセーラームーンが登場。
      • OPムービーのCGはさすがに当時の技術ではクオリティが低くネタにされることもあるが、実際のゲーム中のグラフィックはセル画を取り入れているのでキレイ。留守番電話などのボイスが聴けるオマケコーナーもあり、キャラクターゲームとしては割と良い感じ。操作性もそこそこ良い。
      • 一方で格闘ゲームとして見ると、キャンセルシステムが存在せず、飛び道具技がボイスに合わせる演出となっていて隙だらけで、超必殺技の威力がやけに高いなど、ゲームバランスが大味過ぎてイマイチである。
    • PS『美少女戦士セーラームーンSuperS 真・主役争奪戦』は3DO版をベースにしたフルモデルチェンジ移植作で、さらにタイトルに見れる通り『場外乱闘』のシステムも掛け合わせている。プレイヤーキャラクターにサターンが追加された。初回特典はピクチャーレーベル。
      • しかし何故かグラフィックが不気味なプリレンダ3DCG+モーションキャプチャに変更されてしまい、操作性やゲームバランスも3DO版に輪を掛けて最悪という有様である。
    • SFC『美少女戦士セーラームーンSuperS 全員参加!!主役争奪戦』は本作のマイナーチェンジ版。ムーンがスーパーセーラームーンになり、新たにサターンが参戦した。ちなみにPS版からたった3週間後の発売である。
      • 様々な部分に変更点があり、演出力が向上。一方でゲームバランスが悪くなったため多少は劣化した点もあるものの、本作の味は残っている。少なくともサターンを操作したいなら上記のPS版よりこちらの方が遥かに良い。
    • SS『美少女戦士セーラームーン SuperS - Various Emotion』はPS版のマイナーチェンジ移植となっている。
      • PS版から改善点もあるが改悪点も酷く、格ゲーとしてのバランスはやはり最悪である。サターンの変身をはじめとしたゲーム描き下ろしアニメーションがある。
      • こちらも『真・主役争奪戦』と同じく笑えるクソゲーとなっている。ネタで買ってみてはいかが?
  • このゲームは本来女児をターゲットとした作品であり、また主役同士が戦うというニッチなコンセプトから、そのままキャラクターゲームのひとつとして埋もれて終わってしまう可能性が非常に高かった。それが名作の地位にまで高まったのは、このゲームを真面目に研究したゲーマーたちがいたからこそである。本作は様々な資質と偶然と運とが見事にマッチングして結果的に良作になったという、なんとも珍しい例である。
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最終更新:2019年07月12日 12:14

*1 SFC版『美少女戦士セーラームーンR』の対戦モードを除く

*2 格闘ゲーム用語。レバーの方向を電卓型キーボードの数字で表すこと。例えば「右向き時に下、右下、右。左向き時は下、左下、左」は「右向き時に236。左向き時は214」となる。