ドラえもん3 のび太と時の宝玉

【どらえもんすりー のびたとときのほうぎょく】

ジャンル アクション
対応機種 スーパーファミコン
メディア 12MbitROMカートリッジ
発売元 エポック社
開発元 エイム
発売日 1994年12月16日
定価 9,500円
書換 ニンテンドウパワー
1998年8月1日/1,000円/F×3・B×0
判定 良作
ドラえもんシリーズ


概要

SFCで展開されたエポック製ドラえもんゲーの第3弾。前作前々作とは開発元が変わっており、グラフィック、演出、システムなどが大きく異なっている。

今回のテーマは「時間」。タイムマシンで幾つもの時代を股に掛けた冒険を繰り広げる。

ストーリー

ある日、またまたドラえもんに泣きついてきたのび太。
なんでもスネ夫に恐竜の化石を自慢されていたのび太だったが、その化石をよく見せてもらおうとして、もみくちゃになった末、
落とした化石が車にひかれて粉々になってしまったのだ。
責任をとらされる事になったのび太は、「スネ夫に四次元ポケットを預ける」という条件付きでドラえもんと共に原始時代へ化石を探しに向かう。

そこで出会った未来人の青年・ジェロ。
ドラえもんとのび太は彼から、4つ集めると歴史を改変できてしまうという「時の宝玉」を未来の犯罪組織「ジョーカー団」が発掘している事を知る。
もし時の宝玉が4つ全部ジョーカー団の手に渡ってしまえば、歴史は全てジョーカー団のボス・ダウトの思いのままになってしまうという。
ジョーカー団を止めるため、ドラえもん達は時空を超えた冒険に旅立つ。

特徴

前2作に比べて大幅な変更が行われている。特にRPG要素の大幅な追加が特筆すべきポイント。

  • 今作ではタイムマシンを使って各時代を行き来しながらゲームを進めていく。
    • のび太の町(20世紀)を除く各時代は横スクロールのアクションステージになっており、ボスを探し出すのが目的となる。
    • この仕様のため、前作までと違ってキャラクターは宿屋でチェンジするように変更。また、最初から全員が使えるわけではない。
    • ライフは宿屋を訪れるか、野比家でママからおやつのどら焼きを貰う事で全回復できる。パスワードはゲームオーバー時の他、宿屋と野比家でも教えてもらえる。
    • ショップも登場し、武器やサポートアイテムの購入が可能になった。前作までのライフアップのための収集アイテムであった「ジュエル」がお金扱いとなる。
  • アクションパートの仕様
    • 前作は『スーパーマリオブラザーズ』等と同様に1-1、1-2と、ステージの中は幾つかの小ステージに分かれており、それらを順番に攻略し、最後に待ち受けるボスを倒して次のステージに進む形だった。対して今作は、一つのステージ(時代)毎に用意された町を拠点に、その周囲を探索していく形となる。
    • 一つの時代につき、4つのエリアを探索する事になる(最終ステージを除く)。町を出れば即座に入れるエリアもあれば、自分で入り口を探すエリアもあり、進入する為にはひみつ道具やキャラ毎の特殊能力が必要な場合もある。
      • 攻略に必要なひみつ道具、特殊能力の関係で、クリアする順番は大体決まっている。
    • 前作は各ステージの最後にのみボスが存在したが、今回は一つのエリアにつき一体の中ボスが待ち受ける。各時代の最後のエリアには大ボスが待ち受け、これを倒すと次の時代に移動する。
      • 時代毎の中ボスはいずれも色違いだが、攻撃方法はそれぞれ異なる。
    • クリアに必須ではないエリアもあり、ジュエルや「ハートの器(ライフアップ)」が隠されている。
  • のび太の町
    • 現代では前作までのRPGパート同様に俯瞰視点となり、ドラえもんを操作して情報収集をする。勿論、タケコプターを手に入れれば使用可能。
    • ゲームを進めるため、町を探索してスネ夫がドラえもんに無断で貸し出して散逸しまったドラえもんの道具を集める必要がある。
    • 道具以外にも、町のどこかに「ハートの器」が4つ隠されている。
  • 各キャラはそれぞれ特殊能力をもっており、特定のキャラでなければ進めないステージも用意されている。
    • 「もぐらてぶくろ」を使って特定の地面を掘り進めるドラえもん。
    • 「らくらくシャベル」で特定の地面を掘れるのび太。真下にしか掘れないというドラえもんとの決定的な違いがある。
    • アクションステージで唯一「タケコプター」を使って飛べるしずか。
    • しゃがんだまま移動でき、ツタなどに掴まることが出来るスネ夫。
    • 攻撃で音符ブロックを破壊できるジャイアン、といった具合。
  • 武器は全5種類に減ったが、店で購入できる上位レベルのものを使うとパワーアップするようになった。
    • また、各キャラは特定の「得意武器」を持っており、基本的に最初から装備されている。
    • 他の武器も使えるが、レベル1の威力しか発揮できないという制約がある。マイクに至ってはジャイアン以外はそれ未満のスズメの涙ほど。
    • また使用回数に制限のある「お助けアイテム」が登場。
    • 他にも店では、残機に相当する「おいしゃさんかばん」や防御力・移動速度を上げる防具(の効果を持つ秘密道具)、サポートアイテムの購入が可能。

評価点

  • 前2作からグラフィックが変更され、よりアニメ版に近い絵柄になった。
    • とある場面ではビジュアルシーンも用意されており、アニメーションまでする。スタッフの力の入れ具合が半端ではない。
      • しずかちゃんの入浴シーンもバッチリ収録。乳首も一瞬出る(!)
    • また、大山のぶ代をはじめとするアニメ版の声優陣による音声が初めて付いた。ダメージを受けた時や特定の場面に音声が用意されており、ドラえもんに至ってはイベント用の道具を使うたびに喋ってくれる。
      • スネ夫の「ママ~!」やジャイアンの「心の友よ」と言ったお馴染みの台詞も声付きである。
      • ジャイアンのマイク攻撃も「おぉ~!」という掛け声で音声付きで表現されている。
  • 武器は店売りのアイテムで強化できるため、アクションが苦手な人でも安心。
    • 防御力や移動速度の上昇も可能。純粋な防御性能が劣る代わりに物語序盤からトゲ床を無効化できるようになるひみつ道具の購入機会もある。ただし、該当装備を購入するには入手時期の所有ジュエル量に対してかなりの額のジュエルが必要になる事が多く、ボーナスステージなどで 「金ジュエル(1つで500ジュエル相当)」 収集などの金策行為が要求される。
    • 一切購入しなくてもクリアは可能だが。全くの無強化状態では結構な難易度になる。
    • 一部を除き、サポートアイテムを駆使すれば全キャラでステージを攻略できる。
  • 原作のキャラクターを大量に散りばめるなど、ファンサービスが満載。
    • のび太のママ、先生、出木杉*1、ジャイ子などの準レギュラーから神成さん、小池さん、伊藤翼、フニャコフニャ夫などのおなじみのキャラ。果ては『ドラミちゃん』のスネ夫枠だったズル木に、1話限りのムス子さんやあばらやくん、キテレツ大百科の勉三さんなど、よほどのマニアでなければ分からないキャラまで多数。しかもこれら殆どのキャラに顔グラフィックが用意されている*2
    • 後述の賛否両論点にあるようにドラミちゃんは使用不可になったが、宿屋には登場している。更に同ポジションにはセワシやホテルつづれ屋のオーナーと言ったキャラまで。
    • ステージ4のアトランティスは大長編『ドラえもん のび太の海底鬼岩城』をモチーフとしており、同作に登場した鉄騎隊やポセイドンが敵として登場する。
      • ストーリーには関わりは無いものの、『ドラえもん のび太と鉄人兵団』の鉄人兵団と同じデザインの敵も登場する。
  • ストーリーもシリーズ屈指の出来。本作を名作たらしめているのはこの部分である。
    • 様々な時代を又にかけるタイムトラベルもののストーリーで、歴史を支配しようとする時間犯罪者集団との戦いを描くというストーリーである。前2作のようなメッセージ性こそ無いものの、その完成度は大長編シリーズにも劣らない程である。
    • ゲストキャラのジェロは『海底鬼岩城』のエル、『魔界大冒険』の美夜子のようにドラえもん達に同行するキャラクターだが、その位置付けは単なる協力者に留まらず、特に終盤の役割はどことなく『鉄人兵団』のリルルを想起させる。本作のストーリーの良さは彼の存在が大きい。
    • ラスボスを倒してめでたしめでたし。では終わらず、「時間」という題材ならではの切なくも余韻を残す結末は必見。ファンなら是非、その目で確かめて頂きたい。
  • 音楽もほとんどが新規曲。出来も良い。
    • ステージ音楽は各時代に一種類のみと前作よりバリエーションが減ったが、いずれもその時代をこの上なく表現した良曲である。
    • ステージ間のイベントシーンの曲や各時代の最後に戦う大ボスの曲などはドラえもん作品である事を忘れるほど格好良い。
  • 前2作からキャラクターの操作に慣性がなくなり、わずかな調整ミスで穴へ落下する事等が減った。
  • これまでと大きく様変わりした本作だが、ラストバトルでは全員が順番にラスボスと対決する前2作の熱い演出を受け継いでいる。
    • 勿論、トリを飾るのは主人公のドラえもんである。今回は、のび太達四人でラスボスの乗る戦車を撃破→ラスボス本体とドラえもんの直接対決、という流れになっており、最終決戦を更に盛り上げている。

賛否両論点

  • 屈指の出来栄えのストーリーだが、全体的に重く、暗い点は賛否両論といったところか。
    • 「時間」がテーマの話よろしく存在が消えたりするキャラがいる。また、絶命の瞬間や死体の描写こそ無いものの明らかに死亡しているキャラも。
  • 難易度が低い。前2作が高難易度だったため、肩透かしを食らったプレイヤーもいただろう。
    • 一応、装備品を強化しない、(かなり限定的だが)ステージに性能が向かないキャラで攻略する、と言った縛りは可能。
      • ただし後半になると厄介なボスも出てくるようになる。特に終盤にドラえもん固定で戦うとあるボスはそれまでの低い難易度と比較して異常に強く、アクションゲーム初心者泣かせの複雑な行動パターンを持っている。あまりの強さにラスボスよりも強いのではないかと言われる事もしばしば。
    • また、武器を全く強化しないと敵に与えるダメージが低く、体力ゲージが最大のボスは64回も攻撃しなければ倒せない。しかも形態変化するボスや連戦*3もあるので、難しいと言うよりは面倒。
      • かと言って、強化し過ぎると異様に強くなり、ゲーマーならあっさりクリアできてしまう。強化は自分のプレイスキルに合わせて計画的に。
  • 前作でプレイヤーキャラに昇格したドラミちゃんが使えなくなった。
    • ただし、ストーリー的には特に出てこなくとも問題はない。原始時代の宿屋でちゃんと登場している。
    • 次回作では再び使用可能になった。

問題点

  • アクションゲームとしての出来は微妙。地形や敵配置などはあまり練られておらず、ゲーム慣れしている人にとっては退屈かもしれない。
    • 体力が無くなっても残機(おいしゃさんかばん)が残っていればその場で即復活。穴に落ちてもそのマップに入った地点からペナルティ無しで復帰。と言ったように、システム面でも難易度を下げる要因が多い。
    • 多くのボスにもダメージ時の硬直時間があるので、割とハメ殺しやすい。
      • 原始時代のボス「キカイクーモ」は的が大きい、動きが遅い、ダメージで硬直する、と三拍子が揃っており、大ボスにもかかわらず非常に弱い。寧ろ、落下による戦闘の仕切り直しの方が厄介である。
  • 前述の通り、通常武器が5種類しかなくなったため、前作までのような戦闘の多様性は薄れている。
    • さらに得意武器以外はパワーダウン等ペナルティがある為、実質一人一武器。最も性能の悪い武器を持つジャイアンは別だが。
  • キャラ間の性能差が激しい。そのキャラでないと進めない専用ステージがある為全員に見せ場はあるが、共通ステージではやや優遇不遇の差が大きい。
    • しずかはジャンプ力が高くスピードと防御力が低いというキャラだが、「タケコプター」を手に入れた後は天井のないステージでは大抵敵や地形をパンチラしまくりながらガン無視して飛行できるので便利過ぎる。得意武器のスモールライトも攻撃範囲が大きくて扱いやすい。
      • そのタケコプターもしずかが仲間に出来る頃には入手可能になるので、最早しずかの標準装備も同然である。
    • 逆に天井のある狭い道を進んでいくタイプのステージは、素早くてツタ上りやしゃがみ移動ができるスネ夫一択。共通ステージでも彼専用のショートカットがあるステージもあるなど優遇気味。得意武器のコエカタマリンは弾速は遅いが狭い場所だと反射して攻撃範囲が広がる。
    • ドラえもんも悪くない。スネ夫同様スピードが早く、空気砲は弾速が早くクセのない安定した性能。
    • 逆にのび太はスピード・ジャンプ力ともに低く、スピードを上げる「イナズマソックス」や「たいふうのよろい」等を常に装備していないとまともに運用できない。
      • 得意武器も原作と縁のないブーメランで、戻ってくる時にも攻撃判定があるものの、初期性能が非常に低い(射程が約3キャラ分しかない上に連射不可)。のび太自身の機動力も低いため、空振ると非常に危険。
      • ただし、レベル3のブーメランは射程が大きく伸びる上に3連射可能なので、終盤のボス戦などに強い。
    • 一番悲惨なのがジャイアン。防御力は最も高いが、ジャンプ力・スピードがのび太同様に低い。得意武器のマイクはあまりにも扱いづらく、当てること自体が難しい上に反撃を受けやすい。
      • マイクは自分の周囲をエフェクトで攻撃するのだが、放射状ではなくプロペラが回るような軌道、射程が約2キャラ分しかない、地上で発動すると動けない、動作時間約1秒でキャンセル不可、と欠点が多すぎる。
      • そのため、ジャイアンだけはデメリット覚悟で不得意武器を使う意義がある。
  • セーブ機能がなくパスワード制を採用しているが、そのパスワードが5・7・5・7・7のひらがな31文字(現代和歌のスタイル)。10文字だった前作の三倍以上であり、メモするのも、間違えないように気を付けるのも一苦労である。
  • 中盤の未来世界までは自由に時代を行き来出来るのだが、後半のアトランティスにまで行くと他の時代に一切行けなくなる。
    • さらにその次の最終ステージには宿屋しか無く、アイテム・武器・防具の購入が一切できず「おいしゃさんかばん」等の補給ができない。装備品のコンプリートを目指す際は気をつけたい。*4
  • 恐竜の「化石」を取るためにわざわざ「恐竜の生きていた時代」に行ったり、そこで恐竜時代にはいないはずの「人間(原始人)」が暮らしてたりなど矛盾がある。あくまで子供向けのゲームなので細かいことは目をつむるべきか。 『復元光線かタイムふろしきで化石を直せばいいのに』とか言わない。
    • 他にも、『ひみつ道具はスネ夫が「友達に貸した」と言っている割には有り得ないような人物の手に渡っていたりする(「拾った」と言う人も結構いる)』『西部開拓時代なのに町名が日本語で書かれてたり敵のアジトが雲の上にある』 『しずかちゃんの家に入るといきなり浴室に出る』 など、細かいツッコミ所は多々ある。
      • 特にアトランティスは特殊な舞台にもかかわらず説明が全くと言っていいほど無い。敵に転移させられたと思ったら何の説明も無く放り出され*5、ただ散り散りになった仲間と合流していくだけでストーリーらしいストーリーも無く、最後は唐突にボスのポセイドンが襲って来たので撃破、という超展開。『海底鬼岩城』を観ていないプレイヤーには謎のステージでしか無いし、視聴済みのプレイヤーもあまりに説明不足過ぎて置いてきぼりを喰らう。
    • ちなみに攻略本巻末に記載されている漫画では「既に恐竜が絶滅した時代」に行ったところ何故か本物の恐竜がおり、後にそれらがジョーカー団の仕業であることがわかるという展開になっている。
    • 本作のキーアイテムである「時の宝玉」の設定とそれを巡る戦いは既視感の強い……もっと忌憚なく言ってしまうと某7つの球を集めると龍が出るアレまんまそのものである。
      • もっともタイムマシンによる時間移動を絡める事でドラえもんらしさはしっかりと出来ているし、設定を利用したラストのホロリとさせられる展開は大長編っぽくて好評である。この点は「有名設定をドラえもん風に上手く料理した」と好意的に見るべきだろう。
  • しずかのボイスが少ない
    • ひみつ道具を出す度に喋るドラえもん、オープニングとエンディングで叫ぶのび太、お馴染みの台詞を発したり得意武器で声が出るジャイアンとスネ夫に対し、しずかのボイスは被ダメージ時(と、お風呂で)の「キャア!」、エンディング中での一言だけ*6である。細かい点ではあるが、しずかちゃんファンにとっては寂しいかも。

総評

SFCドラえもんシリーズ屈指の名作。ドラえもんファンなら、まず持っていて損はない。
惜しむらくはキャラゲーゆえ、VCなどでの配信も絶望的なところか。

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最終更新:2024年01月03日 21:20

*1 今回は珍しく仲間になりたがるが、塾があるという事でやはり大長編同様、参加はせず。

*2 但し屋外のキャラは顔グラフィックを表示させないらしく、ジャイ子も準レギュラーながら顔グラフィックが無い。

*3 終盤では全キャラが中ボスと対峙する5連戦+さらに全キャラで戦うラスボス5連戦の合計10連戦が控えている。但し、ラスボス戦に入るまでは戻って回復が可能。

*4 見落としがちなのは原始時代限定販売品の「水加工ふりかけ(ゲーム内ではスチロールふりかけ、鉄ふりかけと呼称される2種類がある)」2種と西部開拓時代限定販売品の「はがねのくつ」。

*5 しかもここのショップの店員は全て墓石(ロボット)。それが当たり前のように出てきて口を利くのだから混乱しか無い。

*6 ラスボスが転落する際に「あぶなーい!」と叫ぶというもの。しずかの性格からしたら違和感こそ無いが他に比べると必然性に乏しく、イベントボイスを入れられる場所が無いからと無理矢理入れ込んだ印象がある。