この項目ではSFC用ソフト『かまいたちの夜』と、移植版であるPS用ソフト『かまいたちの夜 特別編』に加え、GBA用ソフト『かまいたちの夜 ADVANCE』の紹介をしています(判定はいずれも「良作」です)。



かまいたちの夜

【かまいたちのよる】

ジャンル サウンドノベル
高解像度で見る
裏を見る
対応機種 スーパーファミコン
メディア 24MbitROMカートリッジ
発売元 チュンソフト
開発元 チュンソフト
アクアマリン
発売日 1994年11月25日
定価 10,800円(税別)
配信 バーチャルコンソール
【Wii】2007年2月13日/800Wiiポイント
【WiiU】2013年8月7日/800円(各税5%込)
レーティング CERO:D(17才以上対象)*1
書換 ニンテンドウパワー
1997年9月30日/1,000円(税別)/F×6・B×4
コンテンツアイコン セクシャル
判定 良作
ポイント 革新的な推理ゲーム
選択によって展開が大きく変わる
サウンドノベルの代名詞と言える傑作
チュンソフトサウンドノベルシリーズ


『こんや、12じ、だれかがしぬ』



概要

チュンソフトが『弟切草』(以下「前作」)に続いて世に出した、サウンドノベルの第2弾。
雪に閉ざされたスキー場のペンションを舞台に連続殺人が巻き起こる、という設定のミステリー作品。シナリオは人気ミステリー作家の我孫子武丸(あびこ たけまる)氏が担当している。


あらすじ

大学生の主人公・透(名前変更可能)は、同じ大学に通う真理(名前変更可能)に誘われ、彼女の叔父が経営する信州のペンション「シュプール」にスキー旅行にやってきた。
真理に好意を抱いているもののなかなか距離を縮めることのできなかった透は、真理からの泊りがけの旅行の誘いに舞い上がるが、やがて「シュプール」で起きる事件に巻き込まれていくこととなる…。


+ 登場人物(長いので折りたたみ)

登場人物

  • 透(とおる)
    • 本作の主人公。名前は変更可能。大学生で、同じ大学に通う真理に好意を寄せている。
  • 真理(まり)
    • 本作のヒロイン。名前は変更可能。透のことは憎からず思っているようだが、彼からの熱烈なアプローチを曖昧な態度で躱している。
  • 小林 二郎(こばやし じろう)
    • ペンション「シュプール」のオーナーで、真理の叔父。料理の腕は一流。
  • 小林 今日子(こばやし きょうこ)
    • 小林の妻。脱サラしてペンションを開業した小林を支える良妻だが、料理の腕は壊滅的。
  • 香山 誠一(かやま せいいち)
    • 小林の知人で、大阪から「シュプール」にやってきた会社社長。薄くなった髪と中年太りの著しい腹、コテコテの関西弁が特徴。
  • 香山 春子(かやま はるこ)
    • 香山の妻。どこか儚げな印象の婦人。
  • 渡瀬 可奈子(わたせ かなこ)
    • 「シュプール」にスキー旅行でやってきた、18歳のOL3人組の1人。若干軽薄そうな印象を受けるロングヘアの美女。
  • 北野 啓子(きたの けいこ)
    • OL3人組の1人。色気より食い気タイプのぽっちゃり体型で、いつも菓子の袋を手にしている。
  • 河村 亜希(かわむら あき)
    • OL3人組の1人。ショートヘアでメガネをかけている。
  • 美樹本 洋介(みきもと ようすけ)
    • 透たちの後に「シュプール」にやってきたフリーのカメラマン。長身で口髭を蓄えた山男のような外見だが、振る舞いは紳士的。
  • 久保田 俊夫(くぼた としお)
    • 「シュプール」で住み込みのアルバイトをしている学生。単位そっちのけでスキーとアルバイトにのめり込んでいる、自称大学6年生。
  • 篠崎 みどり(しのざき みどり)
    • 「シュプール」で住み込みのアルバイトをしている女性。透は20代と推測しているが詳しい年齢は不詳。俊夫に負けず劣らずのスポーツ好きで雪焼けしている。
  • 田中 一郎(たなか いちろう)
    • 「シュプール」の宿泊客で、室内でもトレンチコートを着込みサングラスと帽子を外さない怪しい風体の人物。
  • ジェニー
    • 「シュプール」で飼われている黒猫。

以上は「ミステリー編」での基本設定であり、サブシナリオで上記に無い新たな人物が登場したり、一部メンバーの設定が変わったり登場しないこともある。


ストーリー

  • ミステリー編:「シュプール」で起こる殺人事件を推理によって解決するメインシナリオ。推理に失敗すると皆殺しルートに進んでいく。

事件を解決するか、バッドエンドを3回見ることで新たなサブシナリオにつながる選択肢が段階的に解放されていく。

+ サブシナリオ、微ネタバレ注意
  • スパイ編:凄腕スパイ「かまいたち」を巡る謀略に巻き込まれた主人公が、戦いに身を投じることになるシナリオ。
  • 悪霊編:「シュプール」に現れた悪霊によって起こる惨劇を描いたシナリオ。
  • 雪の迷路編:スキー場から車で「シュプール」へ向かう途中に事故を起こしてしまった主人公とヒロインが、猛吹雪の中「シュプール」を目指して彷徨うシナリオ。
  • 鎌井達の夜編:「シュプール」でゲーム『かまいたちの夜』を見つけて遊ぶという、メタフィクション的な要素を含んだ短いシナリオ。

以上のバッドエンド含むエンディングを全て見ると「ピンクのしおり」が解放され、以下のシナリオが出現。

  • (オー)の喜劇編:ミステリー編のセルフパロディとなっているギャグシナリオ。
  • 暗号編:死体ではなく謎の暗号を記した紙が発見され、主人公たちは暗号解読に挑むこととなる。
  • チュンソフ党の陰謀編:隠しメッセージ。暗号編のある場所に隠された暗号を見付け、その指示に従うと見ることができる。
  • 不思議のペンション編:「チュンソフ党の陰謀編」をクリアすることでプレイ可能となるSFC版における最終シナリオであり、『不思議のダンジョン』シリーズをパロディ化したギャグシナリオ。

特徴・評価点

システム

  • 基本システムは『弟切草』と同じく、画面一杯に出る文章を読み進め、途中で現れる選択肢を選んでいくシステム。
    • 前作『弟切草』は基本的に文字通りノベル(=小説、読み物)として製作されており、選択肢でシナリオの分岐こそするが、謎解きや正しい選択・誤った選択といったものも存在せず、常に何らかの結末に到達して話が終わる仕様だった。
    • それに比べると本作はプレイヤーに推理を要求するなど幾らか従来のアドベンチャーゲームに近い形に戻っており、プレイヤーは悲劇的な結末であるバッドエンドを回避し、グッドエンドのエンディングを目指してプレイするのがゲームの目的となる。
  • 画面上の背景は実写加工、登場人物は青い影のシルエットとして表現される。
    • このアイデアは我孫子氏によるもので、当時のスーパーファミコンの描画スペックで多様の人物表現を可能にしつつ、作中の文章からプレイヤーが想像したキャラ像を崩すこと無く感情移入させる効果を出している。
    • これ以降ノベルゲームにおける1つの表現技法として定着し、容量の増加でより細かい描写が可能になった昨今においても演出として度々使われている。
    • 後に同じサウンドノベルで実写での撮影となった『』では多くのプレイヤーが拒否反応が出たほどである。
    • キャラクターはOL、女子大生、スポーツマン、社長夫妻など多種多様。特徴的なキャラ付けをしており、青い影のシルエットながら女性や男性や年齢を表現しており、プレイヤーに強く印象を与えるキャラ造形となっている。
  • メインのシナリオはペンションの殺人事件をめぐるミステリーだが、クリア後の2周目以降のプレイでは選択肢次第で、スパイアクション、オカルトホラー、ギャグなどバラエティに富んだシナリオに分岐する。

プレイヤーが「解決」するミステリー

  • プレイヤーは事件の真相を推理し、真犯人とトリックを指摘することでゲームをクリアすることができる。これだけだとよくある推理アドベンチャーだが、『かまいたちの夜』が特別であり傑作とされるのは、プレイヤーの推理が、物語の結末だけではなく、その形態自体をも変化させる構成のダイナミックさにある。
  • 物語はミステリ的によくあるクローズド・サークル*2物である。
  • 最初の殺人事件が起こり、話が進むごとにさらに人々が殺されていく。連続殺人が続いた物語の中盤で、プレイヤーは犯人を推理することになり、当てられないとバッドエンドしか残っていない終盤に進まなければならない。もし犯人が当たれば、エンディングに到達する。
    • 普通の推理ゲームであればそこで終わりだが、本作ではそのエンディングもまたグッドエンドではなく、バッドエンドの一つにすぎない。
  • 実は最初の事件が起こった直後の場面で3回の選択肢を全て正解すると犯人の指摘が可能で、そこで犯人を当てることができると真のグッドエンドにたどり着くことができる。
    • 推理小説や推理ゲームというのはその性質上、事件が起こったことを前提に推理して解決しなければならないが、本作ではプレイヤーの推理によって惨劇を事前に防ぎ回避することができる点が非常に斬新で、プレイヤーが物語に介入できるゲームならではの面白さとして高く評価された。
    • またゲームとして分岐がある言う部分もゲームという媒体を上手に使っており推理マニアを魅了した。

ホラーあり・笑いありの作風

  • メインシナリオは連続殺人事件がテーマのミステリーではあるが、推理に失敗するごとに状況が悪化していき、徐々にホラー作品としての様相も強まっていく。
    • 吹雪に見舞われ外部との連絡もつかない孤立したペンションの中、殺人犯とひとつ屋根の下という状況で、恐怖や不気味さを煽る演出が多く、ミステリーとしてよりもホラーの印象が強いプレイヤーも多いだろう。
    • ペンション内の人々が次々と殺されていく通称「サバイバルゲーム」ルートでは自身が生き残るために慎重に行動を行っていく必要があり、分岐によって多くの悲劇的な死亡バッドエンドを迎えることになるが、ここからでも上手く進めれば誰が犯人かを突き止めることは可能。もちろんこうなってしまった時点で最悪の状況ではあるのだが、ここでなんとか真犯人にたどり着けば、主人公・ヒロイン・OL3人組だけは一応生存することができる。
    • 『弟切草』同様、限られた表現力でありながらプレイヤーの想像力を掻き立てる演出になっている。
  • 一方でコミカルなギャグ的文章も多く、暗さ一辺倒でない作風が作品の幅を広げている。これはふざけた描写を選択肢の一つとして入れることで、ギャグにより過ぎない適度なバランスを生み出していると言える。
    • 多数のサブシナリオの中には純粋なギャグやパロディシナリオもあれば、単にふざけたギャグかと思っていたら実はホラー要素が仕込まれていたというものもある。

演出

  • ホラーに特化した演出の数々は非常に秀逸。雪山のペンションと猛吹雪。階段のきしむ音、部屋の静寂など非常のリアル。自らが推理小説の世界に巻き込まれたような感覚に陥ることになる。
    • さらに、ドラマや映画とは違うのはプレイヤー自身も物語のキャラクターであり、自らの選択肢で命取りになることもしばしばあり、当時としては斬新なエンターテインメントであった。

音楽

  • 女性の悲鳴やインターホン・吹雪やノック音など効果音の使い方が的確。BGMも序盤は楽しいスキーリゾートを連想させる穏やかなものだが、殺人事件の発生から恐怖と不安を煽るものが中心になり、プレイヤーを引き込む。
    • 後者は報道番組やワイドショーなどでしばしば使用されており、プレイしたことが無い人でも1度は聞いた事があると思われる。
    • それ以外にも、BGMのバリエーションは豊かで演歌調の香山社長のテーマ曲を始め、隠しシナリオのBGMも各シナリオの雰囲気に合っている物が用意されている。

賛否両論点

終盤の隠しシナリオの出現方法の難易度

  • 出すためのヒントがごく僅かな手がかりのみであり、非常に難易度が高い。自力で発見したプレイヤーはどれ位いるだろうか。
    • 直接的ではないものの劇中にヒントはあるが、「そのシナリオで登場した暗号の解き方と同じの物がここより前にある」と匂わせる程度。
    • また、翌月発売のドラマCDの劇中にもさりげないヒントが仕込まれている(後述)。
  • その出現手段も他の作品に類を見ない極めて斬新なものとなっている。遊び心があって面白い要素ではあるが、斬新過ぎて戸惑ってしまうほど。
    • シナリオ自体の内容も他のシナリオと全く雰囲気が異なるリアルに接したものであるため、ネットがあまり普及していなかった当時からすればまるで本当のことのように思える程の怖さがあった。

問題点

ミステリー面のツッコミどころ

+ 犯人の行動についての指摘、ネタバレ要注意
  • 冷静に考えると、第2の殺人以降の真犯人の行動がおかしい。物語的に破綻が起こるわけではないが、疑問が残る。
  • あるエンディングでのみ明かされる犯人の動機は金銭絡みで、犯人の計画は「邪魔者である最初の被害者を始末した上で「犯人は既に逃走した」「自分にはアリバイがある」と偽装し、何食わぬ顔で検問避けのために宅配でペンションに送った大金の到着を待つ」というものであった。
    最初の犠牲者は犯人が過去に犯した犯罪の「その場限りの協力者」で、欲をかいてより多くの分け前を要求した為に殺された。
    2人目(ペンションのアルバイト)は状況から分かる通り、最初に犯人に気づいてしまったが為に殺された。
    ここまでは、劇中のある人物の発言の通り「殺す必要」のあった人間だけを殺している。状況的に言ってもそれ以上殺す必要性はないのである。しかし…。
  • 最有力容疑者の1人が地下室に閉じ込められる展開になるが、何故か真犯人はわざわざ地下に侵入してまでその人物を殺害している…わざわざ最有力容疑者を殺して「犯人は別にいますよ」アピールをする意味は?
    • 侵入に必要な鍵を管理している人物2人やもう1人の最有力容疑者も当然のように殺害。
    • さらに、脇に物を挟んで脈を止める小細工までして死体を演じて主人公らを欺きつつ、隙をみて器用に3人を殺害…そこまでする意味は?しかもやっていることが妙にまわりくどい。
  • 犯人はその場の人間を憎悪しているわけでもなく、犯行がバレかかって錯乱しているわけでもないのに、ペンションにいた人間を皆殺しにしようとしている。
    • 犯行を見破られない限り善人の演技を最後まで貫き通しており、見破られても取り乱すどころか、あるエンディングでは「大量殺人は趣味じゃない」と嘯いている。そんな人物が敢えて皆殺しに至った思考が不明瞭である。
      • ただしこの発言については、直後に他の人物から嘘である可能性も指摘されており、実際には大量殺人に全く抵抗が無かった(すなわちサイコパスだった)可能性もある。
    • 2人以上の犠牲を出す惨劇の末に犯人が判明するルートでは、犯人はなにやら悟りを開いたように開き直るだけで詳しい動機を語らず、直後ヒロインが主人公を助けるためにやむなく犯人を殺してしまったため真相は闇に葬られる。
  • こうした流れの異様さについては「第2の殺人の時点で計画が破綻しているため仕方ない」という見方もあるようだが、その時点で(かなり怪しい)容疑者が数名存在している為、余計なことはせずだんまりを決め込んでいればよかったはず。
    • あるいは第2の殺人で計画が破綻した時点で全てを諦めて自暴自棄になっていたのかもしれないが、それにしては犯人は恐ろしく冷静に淡々と殺し続けている。
    • 仮に殺人を続けることに必要性があったとしても、何故真っ先に容疑者を始末したのかそこが謎。
  • ついでに言うと、殺人現場に宅配便で金など送ったら警察に中身を調べられてしまうのでは?
  • 死体が発見されなければミステリのゲームにならないが、現実的にはわざわざトリックを使ってアリバイを確保しつつ第一の被害者を発見させる必要すらない。「シュプール」までの道中から外れた森や沢にでも遺体を捨てれば数日の間、あるいは春の雪解けまで発見される可能性は低いのだから。
    • 犯人は「死体を完全に消すにはけっこう手間だし警察から逃げているから自由に動けない」と語るが、道中で始末しなかった説明にはならない。
    • 動機が判明するエンディングでは「相棒は前科持ちだが、自分は前科持ちではないため警察が自分と相棒の接点に気付く可能性は低い」と犯人自ら語っている。
  • ちなみに、下の項で触れている2人目の犠牲者が出た直後のバッドエンドは明らかに「そんなことをしたら他の人間にも誰が犯人か一発で知れてしまう」というようなもの。
  • 加えて、プレイヤーに「犯人はヒロインではないか」と疑わせるためなのだろうが、ヒロインも不可解な行動ばかり取っている。
    • 階下で物音が聞こえたからと、同室で寝ているはずの主人公を起こさず1人で調べに行く。
      • 主人公を危険に巻き込みたくないからか…と思いきや、後に別の人間が殺されると「調べて来てよ!」と主人公を1人で調べに行かせる。
    • 特に必要でもなさそうなものを取りに、1人だけ自室に戻る。
+ 2人目の犠牲者が出た直後のバッドエンドの問題点について、中程度のネタバレ注意
  • 普通に進めると出てくる2択の内の1つでバッド直行なのだが、「現場を調べに行く主人公とヒロインにある人物が同行する流れで、ヒロインとその人物が何故か部屋に入って来ず、先に部屋の中に入っていた主人公が異変を感じ廊下へ戻った所を襲われる」というもの。
    • 二者択一で、もう一方の選択肢を選んだルートでは「特に襲われることもなく捜査続行」という展開になるため、テキスト中で言及こそされないが、状況的に容疑者がほぼ確定されてしまう。最早推理も何もない。
    • 公式ファンブックでもここでの選択肢について触れており、「間違った選択をすれば、犯人の見当は付くだろう」と明確に記述されている。
  • これが終盤とかならまだしも、「2人目の」と書いたように結構早い段階である。しかもこのバッドの到達が2択な為にかなり容易なのも問題。
    • さらに言えば、状況の所為で心理的にそのアウトの方の選択肢を選んでしまう可能性も高い。
  • ただし序盤はトリック自体が分からなければ犯人当てパートまでは辿りつけないため、誰が犯人なのかの目星をわざと付けさせる救済措置とも考えられる。
  • 展開があまりにも露骨にあからさますぎることや、このパートの直前までの主人公の推理では該当の人物はアリバイがあり、さらに殺人を起こすのは無理な状態にも見える*3上に、廊下に出る直前に主人公が「いやそんなはずはない、同行者が犯人だとしてもヒロインを襲う必要がないはずだ」と否定する推理をしているため、「同行者=犯人」説を除外して実は「犯人の狙いは同行者だった」「同行者とヒロインも先に殺害されてしまった」ミスリードなのではないかと深読みすることも一応可能な状況ではあった。
  • プレイヤーが犯人とトリックを分かっていれば、後はそれを主人公に発言させるよう誘導するだけなのだが、一見突拍子も無い発言から展開するので事件を解決しづらい。
    • もっともこれは難易度を上げるためのトラップとしても機能しており、サウンドノベルならではの表現でもあるため、単に不親切な問題点というわけではない。

システム面

  • リトライ地点は章ごとにしか選べないので、選択肢まで進むのが面倒。
    • 分岐を選び直して別のシナリオに行きたい場合は、該当の章まで戻ってから地道に読み直していく必要がある。当然文章の早送りなどもないため連打が必須。
    • サウンドノベルがジャンルとして成熟していなかったことと、時代を考えると致し方ないことではあるが、システム面は不便な点が多い。移植版では様々な便利機能が追加され、プレイしやすくなっている。
  • ピンクのしおりにしてしまうと、その時点から主人公とヒロインの名前が変更できなくなってしまう。
    • それまでは名前変更が何度でもできるため、うっかり変な名前にした状態でピンクのしおりの条件を満たしてしまうともう戻せなくなる。名前を変えたい場合は新規にやり直すしかない。
    • ピンク以降で名前を変更不可にしなければならないストーリー上の必然性も特になく、単純にプレイヤー側に不便を押し付けられるのみである。これについての警告なども出ない。
      • なお、発売当時ピンクのしおりを出した画面写真をチュンソフトに送ると先着3000名に限定オリジナルドラマCD『ちょっとエッチなかまいたちの夜』がもらえるという早解きキャンペーンも行われていたため、「主人公とヒロインの名前を変えることで別のデータ(別の応募者)のふりをして応募されることを防ぐため」だった可能性がある。
    • 後の移植版ではピンクのしおり後も名前変更に制限がなくなった。
  • ゲームコンプの証である金のしおりの条件が「ゲーム中の全てのテキストを見る*4」という非常に困難な条件となっている。
    • これを達成してもゲーム内ではしおりの色が変わるのみで追加シナリオなどの特典は無く、当時行われていたキャンペーンに応募できるというだけだった。
      • 画面写真を撮影してチュンソフトに応募すると先着50名にゲームの舞台となった「クヌルプ」の宿泊券をプレゼントというものだったが、当然のように達成者はほとんどおらず、定員が埋まるまでに発売から7か月以上も掛かったという情報がある。
      • もっとも上記の条件を達成する前提として、まずは前述した高難易度の隠しシナリオを(当時の情報環境ではほぼ自力で)出現させなければならない。
      • ゲーム内に金のしおりを達成したことによる解禁要素が一切無いことから顧みても、様々な困難を乗り越えて本作を遊び尽くしてくれたプレイヤーを称える証としてのオマケ要素として配置されていたと思われる。
    • こちらもPS版以降では条件が緩和され、ゲーム内の要素として別の特典が用意された。

総評

プレイヤーの推理によって、単に事件が解決するだけではなく、物語全体の展開が根本から大きく変化するという斬新な発想と完成度の高い構成は非常に高く評価され、今なお推理ゲームの傑作と名高い。
プレイヤーは物語上の同じ時間を何度も繰り返し行き来し、推理の情報を集めて事件を解決しようとする、さながら「ループもの」作品の主人公であるかのような冒険を体験する。
何度もバッドエンドを繰り返し、惨劇を経験した末に苦労してグッドエンドにたどり着いた際の喜びは、用意された物語を読むだけの推理小説では決して味わうことができない、ゲームというインタラクティブなメディアでしか味わえない感動である。


かまいたちの夜 特別篇(PS版)

【かまいたちのよる とくべつへん】

ジャンル サウンドノベル
高解像度で見る
対応機種 プレイステーション
発売元 チュンソフト
開発元 アストロール
発売日 1998年12月3日
定価 4,800円(税別)
廉価版 PlayStation the Best
1999年12月2日/2,800円(税別)
配信 ゲームアーカイブス
2011年8月24日/800円(税5%込)
レーティング CERO:D(17才以上対象)*5
コンテンツアイコン セクシャル
判定 良作

概要(PS)

チュンソフト製のサウンドノベル3作をPSソフトとしてリメイクする『サウンドノベル・エボリューション』シリーズの第2弾として作られたリメイク版。
ただし、第1弾であるはずの『弟切草 蘇生篇』の発売が遅れることになったため、「2」と銘打ちながらも実際に発売されたのは3作の中で最初だった(参照)。


変更点(PS)

  • フローチャート機能、エンディングリスト、登場人物紹介が追加。
    • これに伴いSFC版の章選択は廃止。以前の章タイトルは、フローチャート内の特定ブロックのシーンタイトルとして残されている。
  • 新規シナリオが2本追加。
    + 新規シナリオ
    • 真理の探偵物語編:ヒロインが事件を解決するグッドエンドから4年後の後日談となる、書き下ろし番外編。探偵事務所を開いた真理の元へ、知り合いの刑事が難事件の相談に来る。該当のグッドエンドを見ると解放。
    • ちょっとエッチなかまいたちの夜:音声のみで展開されるシナリオ。透は淡い期待を抱いて、真理の部屋に遊びに行こうとするが…。元はSFC版のピンクのしおりの応募プレゼント特典だったドラマCD。本作では金のしおりの特典シナリオ。
  • 金のしおりの条件が「全エンディングを見る」のみと大幅に緩和され、専用特典が追加。
  • 新規オープニングムービーが追加。BGMも全曲アレンジされ、「ペンション・シュプール」には新たなフレーズが加わった。
    • 「真理の探偵物語編」では新規撮影された画像*6や、新たなBGM*7も使われている。
  • ストーリー自体は選択肢も含めほぼそのまま移植されているが、時代背景等に合わせ、ドラマの名前などのテキストの一部が改稿されている。
    • 特定の箇所で必要となる暗号も、機種の仕様上から旧来の方法では不可能となったためやはり変更されており、増補改訂されたファンブックにもヒントが載っている。
    • これはGBA版以降の移植版でも同様で、移植される度に変わっていくこととなった。

評価点(PS)

  • フローチャートの搭載
    • 一度見たシーンが選択肢を含めブロック状で記録され、重要な分岐点まで簡単に戻ることができ、シナリオのやり直しが容易になった。
      • ルート分岐もラインでわかりやすく示されており、合流する箇所なども一目で確認できる。SFC版よりプレイしやすさは格段に上がっている。
      • 新たな選択肢が増えた場合もすぐチャート上に反映されるため、わざわざ最初から読み進めなくても追加された分岐に飛んで埋めていくというのが容易になっている。
  • グラフィックはSFC版よりクリアなものになり、よりリアルになった。
    • SFC版で文章と矛盾のあった一部の画像も修正されている。
  • 振動機能が追加。緊迫した場面で効果的に使われている。

賛否両論点(PS)

  • フローチャートの導入による一部フラグの立てづらさ
    • チャート上からは確認できないフラグも一部存在するため、チャートから特定の箇所へ直接飛んで開始すると、そこまでに発生するフラグ等は全てデフォルトの状態に戻されて始まってしまう。このため、一部のシナリオは該当箇所からチャートに頼らずに普通に読み進めてフラグを立てる必要がある。
      • 例えば「スパイ編」というシナリオは、ある選択肢を選んでフラグを立てている状態でチャート移動を使わずに特定の場所まで読み進めないと入れないので、「選択肢を選んでチャート上にラインを出現させる → 分岐点に戻って別の選択肢を選ぶ」という行動を繰り返していると、決して辿り着けない。
      • もっとも、フラグ関係で引っかかる箇所はそれほど多くなく、チャート移動を使わずに最初から読み進めてもすぐにたどり着ける範囲である。要はチャートが便利だからとそれに頼りすぎてしまうと落とし穴がある、程度。
    • 隠し操作による出現シナリオもフローチャートに「ゲーム内に用意されたシナリオの1つ」として掲載されてしまうため、原作よりも隠されたメッセージのリアル感は薄くなっている。
  • 文字のフォントがSS版『街』のようなくっきりとしたゴシックに近い黒縁の白抜き文字になり、読みやすくなった。
    • 反面、SFC版の独特のフォントの怖さが薄れたという声もある。
  • 「真理の探偵物語編」では「選択肢の選び方によって事件の概要や犯人が変わる」という、特殊なシステムを搭載している。
    • このため、シナリオの流れこそ同じながらも選択肢を変えていくことで異なる事件を推理することができる。
    • しかしこのシステムの仕様上、フローチャートや読み返し機能が使用できない
      • 厳密にはチャート内に編の配置こそされるのだが、選択肢の個別ブロックが存在せず編全体で一塊になっている。
      • このため、セーブ場所を考えないとプレイするたびに冒頭の長い前振りから読み直さなければならない。
    • また、このシナリオのみ容疑者4人は、シルエットではなくイラストとして出てくるため、他の話と比べると浮いてしまいやすく、人によってより好みが分かれるだろう。
  • SFC版では被害者2人で事件を解決したエンディングがグッドエンド扱い(完)だったが、PS版ではバッドエンド(終)に変更されている。それに伴い、このED専用だったスタッフロール演出も同時に削除。
    • エンディングの内容的にはバッドでも頷ける変更ではあるのだが、全ルートにおいて犯人の目的と最初の被害者の詳しい素性が唯一明かされるエンディングであった事と、それまでの展開に無理がない事、他のグッドEDとは違って哀愁感のあるスタッフロールだったものが削除された事もあって賛否両論でもある。
      • 開発スタッフは後に「SFC版でこのエンディングを完全解決だと誤解してしまった人があまりにも多かったので変更した」ということを語っている。
    • なお、到達すると事件解決扱いとなり新シナリオが解放される点はSFC版と変わらず。
  • 前述の通りBGMが全曲アレンジされたが、「俊夫の怒り」のようにかなり雰囲気が変わったものも少なくなく、SFC版経験者には好みが分かれやすい。

問題点(PS)

  • オートセーブ機能は失われており、途中で中断したい場合は任意にセーブする必要があり、シナリオクリア時はスタッフロールを最後まで見終わってからでないとセーブできない。
    • SFC版では自動で進行状況がオートセーブされる仕様であり、エンディングに辿り着くとその瞬間に記録され、スタッフロールはリセットを押せばカットできたため、劣化と取られることもある。
  • 音声出力の切り替えと振動機能のON/OFFもあるが、何故かこの2つは切り替えがセーブされず、再開するとデフォルトのステレオ・振動ONに戻っている。
  • バグ
    • 「暗号編」では、ある選択肢からバッドエンドに続くチャートのラインが消えてしまうというバグがある。その選択肢を再び選び、もう一度バッドエンドを見直せばラインは復活する。実害は無いが、なぜここにだけそんなバグが有るのかは謎。GBA版では修正された。
    • エンディングリストにもミスがあり、実際に見たエンディングと登録されるエンディングが入れ替わっている例がある。こちらもGBA版で修正。
  • 「ちょっとエッチなかまいたちの夜」では早送り・巻き戻し・スキップといった機能がなく、聴きたい場合は毎回最初からになる。

総評(PS)

内容自体はSFC版の移植であるが、フローチャート機能の追加により圧倒的に遊びやすく進化している。
グラフィックも進化しており、新規シナリオの追加など充実した出来となっている。
セーブ関連の問題やバグ等も一部あるものの、内容としては十分に及第点であり、『かまいたちの夜』の決定版とも言える出来になっている。


かまいたちの夜 ADVANCE(GBA版)

【かまいたちのよる あどばんす】

ジャンル サウンドノベル
対応機種 ゲームボーイアドバンス
メディア 128MbitROMカートリッジ
発売元 チュンソフト
開発元 サン・テック / ピカイチ
発売日 2002年6月28日
定価 4,800円(税別)
判定 良作

概要(GBA)

PS版をベースとした移植作品。ただし、追加シナリオは削られている。


主な変更点(GBA)

  • PS版にあった「真理の探偵物語編」とドラマCD、オープニングムービーは容量の関係で残念ながら削除されている。
  • 独自の追加要素として、ミステリー編で一度事件を解決すれば、タイトル画面から『我孫子氏からの挑戦状』と称した本作限定の追加テキストを見ることができる。
    • しかし内容は短く、実質的に本作から1ヶ月後に発売を控えた『かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄』の宣伝となっている。
  • 設定上の話だけではあるが、主人公の透とヒロインの真理に『2』同様の苗字が追加された。
    • 本作発売当時、『かまいたちの夜2』の発売が近いためと思われる。
    • ただし、実際のゲーム上では従来通り名前のみのまま。さらに、透の苗字である「矢島」は実際のゲームでは名前入力画面に「島」が用意されていないため付けられない。
  • スタッフロールが、スクロール形式ではなくなった。

評価点(GBA)

  • 主なシステムは便利なPS版のものをそのまま継承しており、フローチャートのバグが修正されている。
  • 小さめの画面であるが、文字も縁取られたくっきりしたものを採用しており読みやすい。
    • さらに、オプションで画面の明るさも細かく変更が可能で、当時画面が暗めだった初代GBAには実に嬉しい機能と言える。

問題点(GBA)

  • カートリッジでの移植にも拘らずオートセーブ機能は無い。
    • セーブ方式がフラッシュメモリだからか、セーブの際は若干時間が掛かるためと思われる。
  • 機種性能の問題であるが、サウンドや画質はSFC版やPS版と比べると劣る。
    • ただし、あくまで他機種版から見た時の劣化点であり、GBAのソフトとしては充分に及第点ではある。
    • BGMは主にSFC版を準拠にしているが、「ペンション・シュプール」にPS版で追加されたフレーズが入っていたりする。
  • 追加シナリオが削られているため、「金のしおり」の特典要素は再び何も無くなっている。

総評(GBA)

機種性能の関係でサウンドや画質はややチープになり、追加シナリオなども削除されるなど、本機種ならではという点が薄いのは残念。
だが、画面サイズに対して文字は読みやすいうえ、PS版で高評価だった便利なフローチャート機能も搭載されているのはやはり嬉しい。
ゲーム自体は目立った問題点こそなく、良質な移植作品である。


その他

上記以外の移植版(参考記述)

インターネットブラウザ版、携帯電話アプリ版、スマートフォンアプリ版なども存在していたが、現在はいずれも実質プレー不可となっている。

  • 2002年配信のインターネットブラウザ版(現在はサービス終了)は、半年分の利用権を購入してオンラインでIDとパスワードを入力してログインする形式になり、セーブデータがサーバーに保存されるというものだった。
    • SFC版がベースの移植のため追加シナリオはないが、前述の犠牲者2人の解決エンディングにもスタッフロールが存在する。さらにPC用のため画質も向上。
  • 2002年以降配信の携帯電話アプリ版や、2010年配信の初期のAndroid版(配信終了済)は、各シナリオがそれぞれ別アプリで独立した切り売りスタイル。
    • 例えば「スパイ編」のアプリはスパイ編の分岐のみが収録となっている。PSで追加された「真理の探偵物語編」や、小説版をゲーム化した「A Novel」も配信。
    • 選択肢やテキストは原作から一部削減されており、エンディングが減少したシナリオもある。
  • 2013年にリニューアル配信されたiOS/Android版『かまいたちの夜 Smart Sound Novel』では家庭用機のように1本で全シナリオが内包。ただしシナリオ数はSFC版に準じ、「探偵物語」や「A Novel」は未収録。
    • 背景画像とBGMが一新され、電子書籍のように文章が画面に一気に表示される形式となっており、スワイプで読み進めていく。
    • 本作の特徴であった青いシルエットが一切無くなってしまい背景のみになったことや、文章が一気に出るため効果音が連動しない事には批判が多い。
    • 時節も2010年代に合わせたためにテキストの変更が特に多くなっている。スキーではなくスノーボード、透が契約社員、俊夫が留年生ではなくスノーボードのインストラクター、客がほぼ全員スマホを持っているがシュプールに電波が入らない(小林さん曰く「それがウリでして…」)、等。選択肢もやはり一部減っているが、エンディング数はSFC版と同数収録。
      • さらに、iOS版はiOS11以降非対応を理由に配信終了、Android版も4.3以降は動作対象外で選択肢が選べないなどの不具合が報告されているなど、現在の環境ではまともに遊べない状況となっている。
    • なお、iOS版は英訳版『Banshee's Last Cry (バンシーの最後の叫び)』としても配信され、唯一の英語版になっている。
      • ベースは『Smart Sound Novel』だが、設定が英語圏に準じたものに全て変更されており、ペンションの所在地が日本からカナダになり画像も変更*8、かまいたちの伝承がバンシー*9に置き換えられている。
      • また真理が金髪の「Grace (グレース)」に、香山がテキサス訛りの「Mr. Buchanan (ミスター・ブキャナン)」となっており専用BGMも変更されている等、登場人物も全て欧米人に変更されている。
  • PS2で発売された第3作『かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相』には、本作の「ミステリー編」本編のみが「ペンション"シュプール"編」として再録されている。あくまでオマケ的な収録のため、他のサブシナリオにつながる分岐などは未収録。
    • シルエットは平面的なままだが画質が向上し、『2』以降に準じたふりがな表記などが採用されている。フローチャートは無く章仕立てになっている。
    • 一方で、ミステリー編内でも一部の選択肢がカットされている、一部の演出が簡素化されているなどの違いもある。

リメイク

  • 2017年2月16日には5pb.からPSVでのリメイク『かまいたちの夜 輪廻彩声』が発売された。詳細は別項を参照。
    • スパイク・チュンソフトは監修のみで本作の販売には携わっておらず、公式サイトも5pb.側のみに存在する。
    • 追加シナリオとしてモバイルアプリ版からの移植である「A Novel」と、『なく頃に』シリーズ等で知られる竜騎士07氏執筆による完全新規書き下ろしシナリオ「辺獄の真理編」がある。
    • キャラクターデザインが原作のシルエットではなく、いわゆるギャルゲータッチのビジュアルノベルAVGとなった。
    • キャラクターの台詞がフルボイスで再生される。
  • 2018年2月23日にWin移植版『輪廻彩声』が発売された。

続編においての扱い

  • SFC版発売から8年後、シリーズの第2作『かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄』が発売されたが、その中で本作は「『2』の登場人物をモデルにしたゲームの中の出来事」ということになっている。
    • つまり作中作ということにされてしまっており、『2』の出来に色々と問題点があったこともあり本作のファンの中にはこの設定変更にがっかりした人も多い。
    • このため、『1』の中で起こった出来事は後続のシリーズ本編では単に「作中作の設定に過ぎなかった」という、架空の扱いで確定してしまった形となる。
    • 『1』本編の未来を描いたPS版の「真理の探偵物語」では次回作への伏線らしきものが張られていたのだが、世界観が変わってしまったのでこちらの伏線は回収されなかった形になる。
    • この公式での『1』否定とも取れる行為に反発したファン達により、『2』発売当時には「『1』の殺人事件が本当にあった出来事とした上での "続編"」等が独自にフリーソフトで配信されたりもしていた。
      • なお、上記の二次創作ゲームは現在でもダウンロードして無料で遊ぶことが出来る。ダウンロードはこちら。

関連作品

  • 公式ファンブックでは、原作の我孫子武丸氏による短編小説版『かまいたちの夜 A Novel』が掲載。犯人やトリックが異なる別のシナリオとなっている。
    • このファンブックでは『A Novel』に分岐を付け加えてオリジナルの展開をファンから募集する企画が行われたのだが、予想以上にクオリティの高い応募が集まったため、後に優秀作をまとめて本にした『あなただけのかまいたちの夜』が発売された。
    • 中には本格的なゲームブック風の作品もあり、ファン作品ながら評価も高い。この企画は続編『2』の方でも同様のものが行われた。
    • 小説版『A Novel』については後にモバイルアプリ版及び『輪廻彩声』にてゲーム化されている。原作通り選択肢は無しで読み進めるのみのシナリオとなっており、「問題編」と「解決編」に分かれた形式となっている。
    • ファンブックは後にPS版発売に合わせて内容をリニューアルした『改訂版』が発売された。
  • SFC版発売の翌月に、サウンドトラックCDと、ドラマCDが発売された。
    • サントラCDはSFC版で使われたBGM38曲を収録。ただし、最後の隠しシナリオのBGMは入っていない。
      • また、楽曲の1つ『遠い日の幻影』はゲーム中だと3分30秒ほどでフェードアウトしきってしまい1ループするまで聞けないのだが、このCDにはフェードアウトなしで1ループ分収録されている。
    • ドラマCDはゲームとは異なる独自のストーリーであり、声優も棒読みは存在しない。
      • しかし、肝心のストーリーがご都合主義かつ超展開で、唖然とすること必至である。
      • また構成や尺の取り方もおかしく、殺人事件が起きたばかりなのに何事も無かったかのように雑談をして楽しげに笑うシーンが有ったりする。
      • 設定も一部変更されており、例えば透は原作ではスキー下手だがドラマCDではスキー上手なイケメン、OL三人組は原作では18歳だったがドラマCDでは22~23歳で透達より年上になっている、みどりが「みどりちゃん」と呼ばれている等。
      • なお、原作ゲームでのバッドエンド時のBGMをただ何分も流し、その後に何の音も入っていないパートがこれまた何分も続いたりした後、謎のBGMが流れ出す隠しトラックが存在するが、実はこれはゲーム版の隠しシナリオを示すヒントになっている*10。また、序盤にゲームソフトについて主人公が触れたセリフもさりげないヒントとなっている。
    • 原作ゲームでは主人公とヒロインの苗字が不明だったが、このドラマCDでは「矢嶋透」「小林真理」と設定された。
      • この名前は、後に主人公のみ一字変更した「矢島透」「小林真理」として『2』『×3』等に逆輸入された。
    • なお、上述したSFCピンクのしおりプレゼントキャンペーンの非売品CDの『ちょっとエッチなかまいたちの夜』(=PS版おまけシナリオ)もこちらのドラマCDと同じキャストである。
  • 1996年に『月の氷柱 もうひとつのかまいたちの夜』という題名で舞台演劇化されたのだが、映像ソフト化はされていない。
    • なおこちらでは、主人公とヒロインの名前は「村上透」「遠藤真理」になっている。
  • 1999年にPS版のアレンジトラック『かまいたちの夜 特別篇 スペシャルアレンジパック』が発売。
    • 新規にアレンジしたバージョンを16曲収録したCDになっている。
  • 2002年に『完全攻略本』が発売。SFC版から8年の歳月を経て登場となったが、本書は発売を控えていた次回作『2』の宣伝も兼ねている。
    • 攻略内容はPS版がメインだが、オリジナルのSFC版や、GBA版、携帯電話版、インターネット版についても併せて紹介されている。
    • ペンション「クヌルプ」のオーナーと我孫子武丸による対談も掲載。
  • 2002年7月3日、次回作『2』の発売に先駆けタイアップも兼ねてTBSで実写ドラマ化され、放映された。
    • 「ゲーム『かまいたちの夜』のファン達がオフ会を決行し、ペンションでゲームを元にした自主映画を撮影しようとするが…」というもので、ゲームとは違う世界観となっている。
    • しかし「本格的恐怖ミステリー」「推理しろ!でなきゃ、みんな殺される」という煽り文句とは裏腹に、「イマジナリーコンパニオン(イマジナリ―フレンド)」という『心理学・精神医学用語』が中心となる展開で、ほぼ全滅状態で終わるサイコホラー要素が強く出ており、賛否両論が激しい。
      • 脚本担当である伴一彦は「最初からホラーサスペンスのつもりで書いた」と発言しているため、これは意図的なものである。
    • 同ドラマは『2』の初回限定特別版の特典DVDに収録されている。
  • 推理小説系の少女漫画雑誌『サスペリアミステリー』の2002年8月号にて、読み切り漫画『かまいたちの夜』が掲載された。
    • 作者は『弟切草』のコミカライズ版も手掛けた服部あゆみ。なお、彼女は翌年にも同誌で『2』の読み切り漫画を発表している。
  • 2006年7月10日から2015年2月28日までニワンゴにてメールゲーム『かまいたちの夜 ニワンゴ版』が配信されていた。
    • タイトルこそ『かまいたちの夜』だが原作とは全く異なり登場人物が一新された新規のストーリーとなっており、プレイヤー(男女選択可能)のもとに雪に包まれた山小屋の中にいる人物からメールが送られてくるという設定。
    • メールのやりとりによって読み進めていき、山小屋に閉じ込められた人々の状況を限られた情報だけで推理しながら真犯人に迫っていくという内容となっている。シナリオは我孫子武丸監修、打越鋼太郎執筆。
  • 2016年4月28日から2017年3月31日までの期間限定で、謎解きエンターテインメント施設「なぞともカフェ」にて『かまいたちの夜 ~こんや、ふたたび、だれかがしぬ~』が開催。
    • 初代の殺人事件から1年後の設定で、「シュプール」を訪れた透と真理が再び事件に巻き込まれるというストーリーの参加型謎解きイベント。
    • 最大4人まで登場人物の名前が設定できるシステムとなっている。
    • 好評だったため、2019年4月5日~4月21日に再開催された。
  • 2021年にパチスロ化がオーイズミより発表された(参照)。キャラクターデザインはシルエットではなく、『輪廻彩声』と同様にギャルゲータッチのビジュアルとなっているが、同作とはまた別のデザインに一新されている。

余談

  • 作中の背景写真の撮影に使われたペンション「クヌルプ」は、今で言う「聖地巡礼」に行くファンまで出た程である。
    • ただし、一部の写真はミニチュアを作って撮影されたものであり、実際の設計とは異なる部分がある。
    • 前述の通りSFC版当時は金のしおりを写真に撮って送ると、先着でこのペンションへの招待券がプレゼントされるというキャンペーンが行われていた。
    • 現在も長野県白馬村にて営業中であり、今なお「聖地巡礼」の宿泊客は途絶えていない模様。
  • ミステリー編の犯人名入力画面は基本的に登場人物の苗字や名前をひらがなで入力するのだが、SFC版では香山誠一の下の名前の「せいいち」と入力しても名指しできず、「せいいちって誰よ」と言われてしまう。
    • 実は内部データでは何故か名前が「香山」と誤って登録されているらしく、「まこと」「かやままこと」と入力した場合は名指しできることが発売から25年後の2019年に発見された(参照)。
      • PS版以降は「せいいち」「かやませいい」で通るように修正されている。もちろん「まこと」の方は通らなくなった。
      • なお作中に香山のフルネームはほぼ登場せず、苗字の「かやま」の方は普通に名前入力が通るため、当時問題視されることはほとんどなかった。
    • その他にも「かんさいじん」「おおさかべん」「しゃちょう」「かめらまん」「おーなー」といった人物の特徴を表す語を入力することで指名することが可能となっている。
      また、「みどりさん」「けいこちゃん」など名前に敬称をつけても通るようになっていたりする。
      • ただしこちらの設定にもミスがあり、本来は通るはずの「おじさん」「おばさん」が内部的に敬称の「さん」と分離されて「おじ」「おば」と判定され弾かれてしまう模様。
      • PS版以降は修正されたが、逆に敬称系は固定されたごく一部しか通らなくなった。
  • 高校時代に柔道をやっていたという香山の「わしの燕返しをおみまいするさかい」という台詞に対して、主人公が「燕返しは柔道の技じゃなかったと思うが……?」と訝しむが、実際には柔道にも同名の技は存在する。
    • 本作は何度も移植やローカライズが行われているが、このくだりはまったく訂正されなかった。
    • もっともこれは主人公の独白であるため、単純に作中の主人公が知識不足だったと言えるかもしれない。
    • また、柔道の燕返は「足払いをカウンターで払い返す技」であるため、相手が足技を繰り出してくれないと無意味な技でもある。
    • 続編では技が変更されて地獄車となっている。梶原一騎原作の漫画『柔道一直線』に登場する技で実在するものではないが一応柔道の技ではある。
    • 3作目ではパワーアップして高速地獄車となっているが、実際に披露するシーンは無い。
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最終更新:2023年11月28日 19:09

*1 バーチャルコンソールで付与されたレーティングを記載。

*2 島や館など外部への連絡が断絶した状態を表したミステリ用語。主人公が自然と探偵役となるため多く用いられる。アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」などが有名。

*3 同行者に選ばれた理由もそこからである。

*4 全選択肢を余すこと無く選び、犯人入力も全パターン必要。

*5 ゲームアーカイブスで付与されたレーティングを記載。

*6 当時のチュンソフト社内と思われる。

*7 「ペンション・シュプール」をゆったりとした曲調にアレンジしたもの。

*8 モデルのペンションもカナダで撮影されている。

*9 アイルランドの伝承に登場する妖精。

*10 謎の隠しBGMはサントラ未収録曲であり、「このBGMをまだ聞いていない=ゲームでまだ出していないシナリオがある」ということを示している。