クロックタワー ゴーストヘッド

【くろっくたわー ごーすとへっど】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 プレイステーション
発売・開発元 ヒューマン
発売日 1998年3月16日
定価 5,800円
対応周辺機器 デュアルショックコントローラー
プレイステーションマウス
配信 ゲームアーカイブス
2012年5月9日/600円
判定 なし
ポイント 今までと毛色の違う『クロックタワー』
ゾンビが大量発生しシザーマンは不在
クロックタワーシリーズ
クロックタワー / 2 / ゴーストヘッド / 3



もう、逃げるだけでは生き残れない… *1



概要

ヒューマンが出していた『クロックタワー』シリーズの第3作目。
『クロックタワー』シリーズは、大鋏を持った不死身の殺人鬼”シザーマン”から逃げ回り、封鎖された空間から生還することが目的のゲーム。
主人公は全くの非力な一般人である為、殺人鬼相手には逃げ回って身を隠しやり過ごす事しか出来ないホラー映画さながらのスリルが味わえることが売りであった。
今作は、北欧を舞台にした過去作から大幅に変わり日本が舞台の完全な番外編である。

なお、シリーズの生みの親である河野一二三氏は本作には関わっていない。


ストーリー

ごく普通の女子高生、御堂島優は、心神喪失状態で起こした傷害事件が原因で転校することになり、
居候先となる父の知人、鷹野家へ向かっていた。

しかし、夕方近くにやっと到着した優を出迎えるものは静寂だけであった。
そして静まり返った家の中に怪しい物音が響く。

恐る恐る家人の姿を探して家の中を歩き回る優だったが、そこで見たものは黄色の血を流すバラバラ死体だった。
恐怖心に呼応して覚醒する謎の人格・翔……。
そして、けたたましい笑い声を上げながら狂ったように包丁を振り回して襲い掛かる鷹野家の次女・千夏……。

しかしそれは、彼女を待ち受ける残酷な事件の、ほんの序章に過ぎなかった……。


システム

前作からの基本システム

  • カーソル
    • 画面上に表示されるカーソルを動かし、画面内のキャラクターに間接的な指示を出すことでゲームを進めていく。
    • カーソルを画面内の調査可能な対象物に重ねると、カーソルの形状が変化し、決定ボタンでクリックすることで、移動、調査、人物との会話等を行う。後述のパニック状態中には激しく点滅して危機を知らせる。
      • また体力メーターも兼ねており、敵の攻撃の回避に成功すると体力の減少を色の変化で知らせる。最低値は赤で、この時にパニック状態に陥るとゲームオーバーとなる。
  • クリックポイント
    • 調査可能な対象物のこと。対象物が扉の場合は開閉して移動する。
      • カーソルをクリックポイントに重ねるとカーソルの形状が変化し、扉の場合はカーソルに矢印のマークがつく。
  • 体力
    • 主人公の体力。前述の通り、カーソルの色で判別する。満タンは白、一段階減っている場合はオレンジ、最低は赤である。パニック状態から追跡者の攻撃やトラップを回避した際に減少し、色が赤の時にパニック状態に陥るとゲームオーバーとなってしまう。
    • 前作では、減った体力は通常状態時のみ時間経過で回復したが、今作はアイテムの救急箱を取らなければ回復しない。
    • ゲームオーバー後にコンティニューを選ぶと一段階回復した状態でゲーム続行となる。
  • 通常状態
    • 敵に見つかっていない状態。常に無音でBGMはないが、特定の箇所のクリックによる敵出現、イベントでの敵出現、一度敵を撃退後に一定時間が経過する等して敵に見つかるとBGMが鳴り、逃走状態へ移行する。
      • 敵撃退後から一定時間が経過すると再び敵が出現するが、前作に比べ、再出現の頻度はかなり低い。*2
  • 逃走状態
    • 敵に発見され追われている状態。BGMが鳴り、アイテムによる撃退ないし回避ポイントを用いて敵を完全に回避するまでは逃走状態が継続する。また特定の敵に関しては、条件を満たして撃退しないと復活し続ける場合もある。逃走状態中は、ドア及び敵の撃退・回避に有効なものにしかクリックポイントが発生しない。
    • また、前作ではクリックポイントに向かって移動している最中は敵が絶対に部屋に侵入してこなかったが、本作では時間経過で問答無用で入ってくるようになった。
  • セーブ機能
    • 前作同様、3つまでセーブデータを残すことが可能で、プレイ中に任意のデータを選択して即座にロードすることができる。
    • 前作までは逃走中でもセーブが可能だったが、本作では通常状態中にしかできない。
  • 回避ポイント・撃退アイテム
    • クローゼットの中等に隠れて敵をやり過ごしたり、モップ、椅子、消火器、洗面器等の身近にある道具を使って敵を撃退できる、優専用のクリックポイント。
      • 前作まではポイントによっては隠れても発見されてしまったり、ランダムで成功の回避が決まる等の不確定要素があったが、今作では見つかる事はまず無い。
    • 撃退アイテムは一度使うと無くなってしまうもの、何度でも利用可能なものの2種類がある。
      • 中にはダメージを与えられず撃退に失敗するアイテムもあり、その場合は部屋を出て逃走状態が継続する。
        これらのアイテムや回避ポイントが全く無い部屋も多く、前作に比べると配置が疎らである。
    • また、前作では敵が部屋に侵入するとこのタイプのポイントはクリックできなくなったが、本作では撃退アイテムのみ侵入後もクリックできる。
  • RSIシステム
    • これまでのシリーズで共通して用いられていた、ボタン連打による危機回避システムの通称。RENDA・SEZUNIHA・IRARENAI(連打せずにはいられない)の略称。追跡者や即死トラップに襲われるパニック状態中にボタン連打することによって危機を一時回避し、追跡者に追われていた場合はその後、一番近い部屋に逃げ込むか、室内であれば部屋の外へ自動的に出る。
      • ただし、体力が最低値の場合はそのままゲームオーバーとなる。ゲームオーバー後はコンティニュー画面に移行し、続行するとゲームオーバーになった直後の地点から(追跡者に殺された場合は逃走状態のまま)引き続き再開となり、再開しなかった場合はタイトル画面に戻る。
  • パニック状態
    • 敵に追い詰められパニックに陥っている状態。カーソルの点滅によって危機を知らせ、RSIシステムが発動する。
      • 体力が最低値の場合はゲームオーバーが確定するため、連打しても意味はない。
  • トラップ
    • シリーズ恒例の主人公を死に至らしめる罠。発生するのは優の場合のみ。その場所をクリックする事で発動し、優を襲う。即座に殺される訳ではなく、パニック状態となって連打イベントが発生する。
      • 失敗すると死亡、あるいは体力減少であり、罠によって異なる。一部の体力減少トラップは連打に成功すれば体力が減らずに済むが、体力が最低の状態で連打に失敗するとゲームオーバーとなる。中にはパニック状態中に特定の対象物をクリックしなければ回避できないものもある。
  • ヒント機能
    • 前作同様、攻略のヒントがフィールド内に隠されており、見つけ出すことでセーブデータに登録され、オプション画面から参照が可能になる。
  • シナリオ構成とエンディング
    • 本作のシナリオは全3章構成。ダンジョン内を探索して謎解きしながら進み、章の最後に待ち受けるイベントをクリアすることで次の章へ進む。 各シナリオのフラグ立て次第でエンディングがA~Mの計13個の結末に分岐する。
      • 前作と違いストーリー自体は一本道でシナリオ分岐はなし。また、グッドエンドは1種類で、それ以外のエンディングはムービー無し。その内2種類を除いて殆どがキャラ死亡のバッドエンドとなっている。

今作の独自要素

  • 新システム「人格交代」
    • 本作における新しい要素の1つ。主人公である温和な性格の女子高生・優は心に残虐な男の人格「翔*3」を宿しており、身に危機が迫ると優に代わって翔が表に出現する。
      • 普段は、優が持つ「ミコシサマ」というお守りによって翔の出現は抑制されており、このミコシサマをマップ上のどこかに置いて手放した状態で敵ともみ合い、パニック状態を回避すると同時に翔の人格が出現するようになっている。この人格交代を活かしてフラグ立てを進めていくのが本作独自の謎解き要素である。
    • 優と翔の状態ではできることがそれぞれ異なり、優はモップや椅子、消火器等の日用品で、翔は銃火器で敵を撃退する。
      女性らしく気配りの利く優でないと見つけられないアイテムやその逆もあったり、同じ人物に話しかけるにしても、粗暴で短気な性格の翔で話しかけると有無を言わさずゲームオーバー(場合によってはバッドエンド)になったり、逆にあえて翔になることで切り抜けられるピンチ状態があったりと、どちらで何をするかによって、シナリオの展開に影響が及ぶようになっている。
  • 救急箱
    • 本作における体力回復手段。前作では逃走状態回避後に時間経過で自然回復したが、本作では救急箱を取らない限り体力は回復しない。置かれている場所をクリックするとその場で自動的に全回復する。
    • 携帯することは出来ず、体力が減っていなければ置かれている場所をクリックしても入手できない。
    • なお救急箱がある場所は大抵ミコシサマをおけるようになっているが、救急箱の入手地点にミコシサマを置き、体力が減った状態でクリックした場合、ミコシサマの入手が優先される。
  • 銃火器
    • 翔の唯一の攻撃手段。拳銃は5発、ショットガンは4発、マシンガンは20発。
    • 敵が近づいて来た時にアイテム欄で銃のアイコンをクリックすると、翔が銃を構え、カーソルが照準に変化する。照準を敵に重ねた状態でクリックすると発砲。敵には部位が存在し、拳銃のみ部位を選択して発砲する(他二つは全部位を攻撃)。ゾンビはランダムで選ばれる弱点の部位以外を攻撃しても倒せず、あるイベント以降はカーソルの色の変化によって弱点部位が示される。
    • 武器はマップの随所に隠されているが、優だと見つけても戻してしまうことが多く*4、基本的には翔で拾う。
      • もし武器を持たないまま翔の状態で逃走中になってしまった場合でも、これらを入手可能な場所で拾って使うことが出来るが、そうでなければ優に戻り、アイテムや回避ポイントを使っての撃退が必要となる。その為、逃走中はミコシサマを手放す事は出来ないが、翔の状態で回収して優に戻ることは可能。

本作の追跡者たち

  • 鷹野千夏
    • 第1章の舞台となる鷹野家の次女。小学1年生の少女で優に懐いていたが、鷹野家に置かれていた謎の黄金像の影響で発狂し、包丁を振り回して襲い掛かる。
    • 耐久力は低いので拳銃一発で倒せるが移動スピードが早いため、油断していると追い詰められ易い。
      • シザーマンと異なり、けたたましい笑い声と猛スピードで走って追跡してくる姿がプレイヤーのトラウマになった。
  • 鎧武者
    • 第1章である条件を満たすと登場。鷹野家にあった鎧がある理由で動き出したもの。刀を手に襲いかかって来る。
      • 動きは遅いものの一切の攻撃を受け付けない為、逃げるしかない。部屋の出入りを繰り返す度にランダムで出現するが、マップ間を越えて追って来る事は無い。
  • ゾンビ
    • 天才科学者・才堂不志人が作った細菌兵器HU599菌の実験台にされて変わり果てた人間たち。第2章の舞台となる弁天病院と、最終ダンジョンとなる弁天製薬研究所に大量に徘徊している。
    • 動きは緩慢だが、銃では弱点を攻撃しなければ倒せないため、翔で倒すには厄介な相手である。
    • 罠のクリックや撃退後の時間経過による出現の他、一部、特定の部屋に固定配置されているものもおり、配置されている部屋に入ると同時に逃走状態へ移行する。
      この場合は完全に撃退しない限り、部屋に入る度に出現を繰り返す。
  • 才堂不志人
    • 最終章の舞台となる弁天製薬研究所を徘徊する謎の殺人鬼。般若面をかぶり、大ナタを引きずって殺人を繰り返す。
      • 動きは遅いが耐久力が高く、銃で倒すには多くの弾数が必要となる。

評価点

  • 洋画ホラーをモチーフにした従来作と異なり、Jホラー的な雰囲気が前面に押し出されている。
    • 舞台が日本で主人公が女子高生、とある家系の怨念、呪いで狂ってしまった知人、呪いのアイテム等、いかにもJホラー的な雰囲気が一風変わっていて新鮮。
  • ストーリー性が増している。
    • 従来作ではストーリーの詳細がゲーム内でハッキリと描かれることがなく言ってしまえば「説明不足」で、ストーリーを語ることよりも「殺人鬼から逃げる」というゲーム性の方がメインとなっていた感があったが、本作では「主人公の出生の秘密」がシナリオの主軸となっており、サブキャラとの会話シーンも増えてよりドラマチックになっている。
  • BGMの種類が増えた。
    • 旧作同様、通常状態中は無音状態だが、本作ではBGMが流れるエリアや特定の地点を調べるとBGMが流れる箇所もある他、会話イベント時にもBGMが流れるようになっているので映画的な臨場感がある。旧作のシリーズが実在のホラー映画を意識していたことを考えると感慨深い。
    • BGMの担当は前二作を担当した新倉浩司氏に変わり、サウンドディレクター兼効果音制作担当者だった高添香織氏が担当。
      メロディアスかつミステリアスな楽曲や、ドラム等の打楽器を用いたパーカッシヴでスリリングな曲調の楽曲が多い。
      氏曰く「ストーリー性が増えたので映画音楽的な志向性で作曲した」とのことである。
      • 特に有名なのが、才堂不志人のテーマである「Shiver-Saidow」。曲の途中で「HEY!HEY!」という合いの手が入るなど、敵に追跡されているとは思えないほどノリがよく、ネタ的な意味での人気も高い。
    • バッドエンド時のBGM「SADNESS」は、バッドエンドらしく重々しく後味の悪い曲調ながら荘厳なコーラスで徐々に盛り上がっていく印象的な曲となっている。  
  • フルボイス化された。
    • 前作『2』ではイベントシーンやムービーでしか声が入らなかったが、本作では全編に渡ってフルボイス化され、調べる為にオブジェをクリックした後の主人公の反応のセリフまで声が入っている。
    • 第1章の殺人鬼「鷹野千夏」の狂気に満ちたけたたましい笑い声は最もプレイヤーの印象に残っているボイスだろう。
    • 声優も主人公2人を演じる荒木香恵氏と瀧本富士子氏を筆頭に、二又一成氏や大塚明夫氏と言った有名所が起用されている。
  • イベントスキップ機能が追加された。
    • オプションでONに設定すると、ゲーム中の特定のモーションをカットできるようになる*5。これによりゲームスピードがテンポよくなった。
  • スタッフロールをスキップできるようになった。
  • キャラクターの移動がスムーズになった。
    • 本作では主人公が移動する方向に向かって少しずつカーソルをずらしながら連続でクリックすることでスムーズに移動できるようになっており、前作より操作性が上がっている。
  • 即死トラップは相変わらず健在。
    • 剣が刺さる、内臓が貼りついてくるといったエグいものや、食器棚から皿が飛んでくるというようなシュールなもの等様々。
  • 逃走時の仕様の変更により逃走劇がよりリアルとなった。
    • 特に回避ポイントをクリックしての移動中、もしくは回避ポイントをクリックする前に敵が主人公に追いついてきてしまうと、ポインターが消滅してクリックできなくなってしまう、撃退ポイントのみ引き続きクリック可能で追いつかれてもポイントがある場所まで粘るという形で、緊迫感とリアリティがより増した逃走劇が繰り広げられるようになった。
    • 追跡者に殺されてゲームオーバーになった場合、再会時も逃走状態から始まるので状況を解決するまで気を抜けなくなった点も緊迫感の上昇に寄与している。
  • ヒント機能
    • 攻略に関する具体的なヒントが増えた。
  • おまけ要素としてコスチュームチェンジ、隠し武器、サウンドテストが用意されている。
    • 隠し武器「イノリサマ」はミコシサマの色違いだが、その実態は三段階チャージの光線を放つ最強の武器である。もちろん、ストーリーには関係ない。
    • コスチュームは2種類。制服の夏服と猿の着ぐるみである。
    • これらの解禁コマンドはクリア後に確認できるが、内容さえ知っていればクリア前でも使用可能。

問題点

作風、ゲーム性の変化による恐怖感の減少

  • 「積極的に攻撃する」という要素を取り入れたため、シリーズの独自性である「無力な主人公が逃げる必要性・恐怖感」が減少した。
    • 独特な雰囲気や無音の恐怖感と逃走中の緊迫感の対比などは旧作譲りではある。また、銃による能動的な攻撃についてもクリックによる対象指定と言う形で旧作のシステムをきちんと踏まえたものになっており、銃の仕様上の制限からくるもどかしさによる焦燥感という新たなスパイスが加わっている。
  • 第2章における「天才科学者が生み出した細菌兵器によりゾンビ化した患者が蠢く病院で、銃や周囲のオブジェクトを利用して戦う」という、別作品を意識したような展開についても否定的な意見が多い。
    第1章では「黄金像にまつわる才堂家の呪いと心霊現象」を前面に押し出しているため、なおさらギャップが大きい。
    • しかも、その細菌兵器自体はシナリオの根幹には殆ど絡んでこない。
    • 作中の事件自体は計り知れない数の犠牲者を出した非常に凄惨なものなのだが、こう言った点や後述するシナリオ構成からその事に関する恐怖感・悲壮感はさほど強くない。

人格交代の不自由さ

  • フラグ立てのためにあえて敵に襲われなければならないにもかかわらず、敵キャラ撃退後の時間経過による再出現の頻度が旧作と比較しかなり低くなっている。
    • そのため、肝心な時に延々と待たされがち。敵が滅多にでてこないため、回復アイテムを取らない限り体力が回復できないという上述の制限も緊張感として作用していない。

登場する敵のバランスの悪さ

  • 本作では敵が複数登場するが第2章以降はほぼ対処が特殊なゾンビにばかり追われることになり、全体的なバランスが良くない。
    時間経過による敵の再出現の頻度が低いため、本作のシンボル的存在の鉈男・才堂不志人は非常に出番が少なくなっている。
    • 1章の千夏や一部のゾンビは罠のクリックポイントを調べることで出現することもあり、プレイヤーを驚かせる恐怖感を演出できているが、肝心の才堂だけはストーリー上で必ず2回追われる以外は時間経過でしか出現しない。
      3章の罠は2章と同じくゾンビが現れるので、余計に才堂の印象が薄くなっている。突然扉を開けて襲撃してくるシチュエーションがあるのに活用ができていない。

旧作と比較して非常に複雑なフラグ構成

  • フラグ立てが従来作以上に複雑で詰まり易く、事前情報がないと回避困難なバッドエンドルートが多い。
    • 特に問題なのが、第1章の鷹野家における要必須のフラグ立て。
      + ネタバレ注意
    • 「2階にある鎧武者をクリックすると突然動き出して襲い掛かってくる」というイベントで、これをやっておかないと最終章でバッドエンドが確定して詰み状態となり、最初からやり直すハメになる。
      • イベント自体、ある程度フラグ立てを進めてからでないと発生しないためイベントの起きるタイミングがわかり難い上に、イベントを起こせるタイミング自体が限定されているため、見逃したまま進めると取り返しがつかなくなる。
        さらに、優でのみ起きるイベントである上に、発生自体がランダムである*6ため対象を何度もクリックする必要があるので、ほぼ隠しイベントに近い。演出的にも他のホラー演出と大差ない内容のため、重要なフラグであることがわかり難い。
        • そのバッドエンドの内容は「製薬研究所の中庭の天窓を突き破って落ちてきた武者鎧に激突し死亡」というもの。普通の死亡イベントと大差ない上、内容的にも意味がわからず理不尽である*7
        • ストーリー上、鎧武者が動かないルートでは正体に該当する人物が死んでいるという状況に遭遇し鎧武者が動きだす要素が一切ないにもかかわらずこのバッドエンドになるので、ますます理不尽で意味不明なものとなっている。
  • 第2章においてはある発狂した人物に襲われるイベントがあるが、優の状態で遭遇するとフラグ立てが充分でない場合は連打イベントが発生せず、ミコシサマを持っていない状態でも翔に人格交代すらできないのでそのまま問答無用で殺されてしまう。
    • その条件は実に4つにもなり、しかもそれらのイベントとの関連性が極めて薄いのでとても気づき難い。
      • また、優と翔とで遭遇した時の相手の反応がまったく同じで、一度翔で遭遇してから再度優で遭遇しても変わらないのでとても不自然。
    • 鍵の掛かった扉を開けるのが「鍵を手に入れること」ではなく「イベントフラグを立てること」だったりなど、謎解きとしても不自然且つ不親切な例が散見される。また、たった今自分を殺そうとした相手の元に戻ったり、敵を閉じ込めた部屋にわざわざ自分で立ち入ったりなど、普通ならやるはずもない事をさせられたりと可笑しな流れも多々。
      • 「プレイヤーがどこに行って何をすべきかを正確に知っていることを想定して作ったかのようだ」と海外ファンのWikiで評されており、実際にプレイしてみると本当にそう思えてくる(参照)。
  • 最終盤では一つのイベントの度に優と翔を入れ替えなければ進めない箇所すらあり、分かり難い上に非常にテンポが悪い。
  • この他にも見落とし易い条件や気づき難い条件が多く、事前情報無しで自力でグッドエンドにたどり着くのはまず不可能といっていい。そんな時こそヒント機能が役に立つ…と言いたい所だが、バッドエンドルートに入らないと回収できないヒントが多い。また上記の鎧武者に関するヒントも最終章にならなければ見つからないので、既に手遅れになって最初からやり直す破目になりかねない。
    • 前作でも前の章でフラグ立てをしなければグッドエンドには辿り着けなかったが、そのヒントは前章で手に入れることができたので今作の仕様はかなり不親切。
      • フラグ立てが複雑で難解にもかかわらず前作に比べるとヒントの数は8個と少なく、しかも最後のヒントの内容は「最終章はノーヒントだからがんばってね」というヒントの体をなしていない手抜き同然の代物。
    • もっとも従来作からして攻略本前提の複雑さではあったのだが、今作では理不尽な側面が強過ぎるのが問題で、人格切り替えの不自由さも相まって周回プレイの負担がかなり大きい。

撃退アイテムや回避ポイントのバランスがあまり良くない

  • バランス良く配置されていた前作に比べると疎らであり、逃げ込んだ先の部屋でクリックできるオブジェクトが何もなかったなんて事はざらである。
    • 翔の敵撃退手段は銃しかないため、弾が尽きると敵を倒せなくなる。武器の場所が判らなければ優に戻って、何度も利用出来て確実に撃退可能なポイントを使うか、隠れるしか手段が無くなる。そして撃退可能なポイントであればゾンビだろうと才堂だろうと弱点や耐久力に関係なしで一撃で倒せてしまう。
      • 結果、銃を携行した男性人格の翔よりも、丸腰の女性人格の優の方がかなり有利という不自然な状況になっている。
        また、翔は回避アクションや特定のイベントシーンで敵を蹴り倒しての回避行動を取っているため、ゲーム上は銃しか使えないというのも少々不自然に感じられる。

回避ポイント・撃退アイテムの問題点

  • 前作で存在したランダム要素(「回避の成功がランダムで決まる」「場所によっては発見されやすい」「何度も同じ場所に隠れていると見つかる確率が高くなる」等)や罠(隠れても問答無用で殺されてしまう)が本作では無く、隠れることができればまず見つかることがないので緊張感が削がれる*8
    • 撃退アイテムは基本的に使い切りだが2章以降はゾンビが出現する都合上、何度でも使用可能なポイントがあるのでそれを覚えてしまうと、同様に緊迫感が薄れてしまう。
      • また、前作では撃退アイテムによってはRSIシステムの成否で結果が変わる要素もあったが、本作では無いのでやはり単調気味。

ゾンビが非常に鬱陶しい

  • 他の追跡者と違って第2章以降、ほぼ全ての部屋に固定敵として配置されており、そのマップに入った途端、逃走状態に移行し倒せばそのゾンビがいた部屋には出現しなくなる。追われている最中は他のゾンビには遭遇しないが、この仕様の所為で探索の前に建物内のゾンビ掃除をさせられる。
    • 優で撃退する場合、いちいち撃退ポイントのある場所まで行かなければならない。これが数回なら問題無いが、全フロア分だと相当な労力が必要である。特にマップが最も広大になる第3章が顕著。
    • 優で探索を始める前に予め翔でゾンビを倒せば幾分か楽になるため、ゾンビの固定配置自体がそれを見越した仕様であるともとれる。が、攻撃時の仕様上数発打ち込めば倒れるというものではないため、やはり手間はかかる。
      • 上述の通り、拳銃で倒すためにはランダムで決まる弱点を狙い打たねばならない。敵との距離が詰まっている状態だと弱点を探す間もなくパニック状態に陥ってしまうため、余裕をもって迎撃するには広い廊下や長い通路への誘導が必須。マシンガンやショットガンを持っていれば弱点無視で一撃で倒せるが、希少品であり滅多に手に入らない。
      • さらに部屋のカメラ視点や距離とゾンビの向きによっては、弱点とそれ以外の部位のターゲットが重なってしまうことがある。そのため、弱点にカーソルを合わせても違う部位をロックオンしてしまい正確に狙えないという問題も発生する。
    • そうしてゾンビを倒し尽くした後に人格交代を行いたい場合、上述の通り延々と再出現を待たねばならなくなる……と、敵出現のバランスが非常に悪い。

第1章に逃走状態でハマりやすい地形が存在する

  • 2階のトイレに逃げ込むと、そのまま待っていても千夏が侵入してこない代わりに、トイレの外に出るとすぐに千夏が近寄ってくる。
    • 廊下が狭くすり抜けて避けることができない上に、運が悪いと千夏が目の前に出現するため、近くのドアを早急かつ確実にクリックしなければならない。間に合わなかった場合は連打に成功してもトイレに引き返してしまうので、ループによるゲームオーバーも起こり得る。
      • 翔の状態で拳銃を使う場合、トイレから出るモーション中に拳銃を選んでおけば最速で構え始めるため、発射までの猶予が延びる。ただし、千夏が目の前に出現した時はやはりシビア*9
    • 千夏でなく鎧武者(撃退不可)が廊下を塞ぐこともあるが、そちらは移動速度の遅さからドアクリックまでのの猶予が長く、トイレに戻って暫く待つだけでも別マップに移動してくれる。

その他の問題点

  • 操作性は随分改善されているが、相変わらずポインタを合わせにくい箇所は存在している。
    しかもそういう箇所に限ってリアルタイムイベントだったりするため、ゲームの難易度を理不尽に上昇させてしまっている。
    • 特に顕著なのが第2章のラストシーン。優ではなくショットガンを持ったサブキャラを操作して群がる敵ゾンビを全滅させるというミニゲーム風のパートになっているが、通常とルールが異なり、射撃が有効なポイントが照準を合わせるまで視覚化されない*10。ショットガンなので弱点を探す必要こそ無いが、そもそも撃つべき場所が見えないので結局手探りで弱点を探さなくてはならない。しかも、1体でも射撃が遅れて食いつかれてしまうと問答無用でゲームオーバーになる上、実に30体ものゾンビを倒さなければならない。
      • また、至近距離で戦わなければならず、通常と異なり斜め後ろ視点で固定となる。ゾンビ達はフィールド内をウロウロするが攻撃が可能なのは部屋に入ってきた順番であるため、慣れるまではランダム性の強い動きも相まって弱点の狙い撃ちが難しい。これも難易度の上昇に拍車をかけてしまっている。
    • この点は、ゲームシステム自体がマウス操作前提ともとれる作りゆえ、専用マウスを使えば幾分か改善はされる。
  • 調べても何も無い場所が多い。
    • クリックしても主人公が「何もないみたいね」と言うだけで終わるポイントが非常に多い。あるいは似たような事を言ったり、「特に気になるものは~」といったナレーションが入るだけの場合もしばしば。
    • これらの多くはミコシサマを置けるポイントだったり、ランダムで怪奇現象が起きるのだが、それにしても多過ぎである。
    • そのくせ、いかにも調べられそうな雰囲気を醸しつつクリック自体が不可な場所もある。人格によってクリックできる場所が変化するので、人によっては歯痒い思いをさせられるだろう。
  • バッドエンドが全体的に投げやり。ただのゲームオーバーと大差無いエンディングが多いため上述の詰み状態に気づき難く、水増し感も強い。
    • 特に第1章では「真正面から突っ込んできた千夏を避ける素振りも見せないまま刺されて終わり」という展開が多い。
      • 第1章ラストの千夏との対決では、正解のアクションを取らないと即死という選択を連続で迫られる。この際、優の時に失敗するとゲームオーバーになるのだが、途中で翔に切り替わった時に失敗すると何故かバッドエンドで終わってしまう。
        正解も初見ではすぐには気付きにくい上、優で死んだ時と違ってやり直しにも手間が掛かる。また、翔の殺され方も後述する「無抵抗での死亡」に該当する。
    • 優の状態でのバッドエンドの大半は「真相究明を諦めて脱出」「ピンチの際にミコシサマを持っていた所為で翔になれず殺されてしまう」など、まだ納得できる範囲である。
      しかし翔の状態でのバッドエンドの場合、残虐非道な性格とされている割に反撃の素振りも見せないまま殺されてしまう展開が散見され、優と比べて不自然さが目に付く。
      • 特に第1章の「成人男性に首を絞められる」というシーンでは、優はRSIシステムに成功すると振りほどいて逃げるが、翔はRSIシステムすら発生せず殺されてしまう。「相手が優だと分かっていて無意識に加減した」「翔が油断し過ぎていた」などと強引に解釈するしかない。
      • 翔の粗野で冷酷な性格という設定をイベント分岐に反映しているとはいえ、「自信ありげな態度で不用意に相手を刺激した結果、あっさり殺されてしまう」という展開も多く、襲いかかられる直前まで棒立ちというシーンがほとんど。
        しかも一部の「先にあの世へ送ってやるよ!」⇒撃たれる。「答えたくねえなら答えさせてやるよ!」⇒斬られる。などと威勢に反してのあまりの呆気ないやられぶりは最早コントレベルであり、優の方が敵を撃退しやすいゲームバランスもあって、彼が情けなく見えてしまう。
      • 「優では問答無用で殺されるが、翔では相手を返り討ちにする」、「優が殺されかけた瞬間、翔に交代して切り抜ける」「優がやりたがらない過激な事でも翔は平然とやってのけ、それが道を切り開く鍵になる」といったように、彼の設定を活かしたシチュエーションもあるため、これらのシーンの不自然さが余計に際立ってしまっている。
  • 従来作に輪をかけて説明不足なシナリオ。
    • ストーリー性重視のシナリオにもかかわらず、前作までにも顕著であった「ゲーム内で語られるストーリー要素の薄さ」という点が継承されてしまっており、内容が漠然としている。
      • 「才堂家の一族について」「翔の正体」など劇中で明確に明かされなかった点についてはクリア特典の設定資料で補完されているが、そこでの説明も曖昧に終始しており、結局、事件の真相に関する事柄についてはハッキリしない。その上、投げやりだったり少々強引な記述も散見される*11
        好意的に考えれば考察や想像の余地が残されているともとれるが、それでも分かりにくい部分が多く、練り込み不足の感は否めない。
        ファミ通から出た公式攻略本のコラムでゲーム内の事柄に関する解説が載せられているが、これはあくまで編集スタッフによる独自考察による掘り下げに過ぎず、公式設定ではない*12
    • また、不可解な行動をとったりバックボーンの語られないキャラが多く、彼らが優(翔)に同行するシーンも皆無。正当な理由なく何度も置き去りにされる事もあって感情移入しにくい。
  • 全体的に不自然さが目に付くシナリオの細部。
+ ネタバレ注意
  • 設定の雑さや不自然さ
    • 本作の真相を一言でいうと「正体不明の不死身の殺人鬼ではなく、ごく普通の理性ある人間が意図的に引き起こした事件」であり、「第1章及び終章で登場する殺人鬼は、事件の真犯人がとある理由から送り付けた幻覚剤入りの黄金像の影響で発狂した」という設定である。
      • しかしながら「どのような方法で像に仕込まれ、どのような形で人体に作用するのかが不明」「16年間も成分が保たれている」「像を燃やした際の化学反応で狂った人間が正気に戻る」など、設定が雑で、不自然な部分が目立つ。
      • また、優が家の中に入り込んだとたん幻覚を発症するほどに強い薬効と即効性があるが、千夏以外の鷹野家の人間は優が訪れるまでの間、全くと言っていい程影響を受けていない*13
        また、弱点を狙えばゾンビを一撃で倒せる一方で、幻覚剤で狂っただけの普通の人間である千夏や才堂は何度物理的攻撃を食らっても死ぬことなく立ち上がってくるなど、現実的に考えておかしいところもある(薬の影響によって極度の興奮状態に陥り痛覚もマヒしていた、とするにしてもさすがに不自然)。
      • 特に、千夏に至っては銃撃や物での殴打を散々食らっている上、第1章ラストで「翔に包丁を取り上げられて胸のど真ん中を串刺しにされるも、自分自身で包丁を抜き取って起き上がり再び襲ってくる」という、正常な人間なら確実に死ぬであろう描写がある。にもかかわらずストーリー上は病院に運び込まれた末に「重傷だが無事」の一言で済まされている。
    • 優が自身の些細なことを心霊現象と結びつけて考えがちな性格と幻覚剤の作用の結びつきによって幻を見ていたということが設定資料集で言及されているが、これについては1章のラストイベント終了時に千夏から悪霊のようなものが抜け出ていくシーンのことを指しているのみであり、その他の怪現象*14についてはどうなのかは特に言及されていない。
      • 「オカルトホラーに見えて実はそうではなかった」という結末の一方で「そうとも否定しきれない要素が残されている」という構図で「怪奇現象の多くは事件によって死んだ人の怨念が本当に引き起こしたものだった」とも解釈できるが、結局のところプレイヤーの想像の域を出ない。
      • 優が見た幻についても「プレイヤー自身に主人公にしか見えていないはずの幻が見えるのはおかしい」というツッコミどころになっている(一応、そのシーンは主観視点で描写されるので、あくまで優の視点から見たシーンだと解釈することもできるが)。
  • 主要キャラの扱い
    • 翔は最後まで正体が明確でない上、そもそもストーリーの根幹には関わっておらず、最終盤は完全に蚊帳の外と、主人公の一人にして本作のキーパーソンでありながらあまりに軽い扱いである。
      また先述した通り、「躊躇なく人を殺傷できる」という狂暴性の強い性格付けをされておきながらイベント上であっさりとやられてしまうことが多いため、設定倒れ感も否めなくなっている。
    • 第2章から最終章にかけて登場する剛元亘(新聞記者)と礎等(刑事)もストーリーへの絡みが極めて希薄であり、肩書を活かした見せ場も殆どない。役割としてはシナリオ分岐の流れを作るためといった程度。
      • また、共に異変に巻き込まれているにもかかわらず、敵が蔓延る建物の中に優を放置し先行してしまうなど、職業柄、不自然に思える行動をとる。
        特に礎は刑事として事件の当事者である優の保護を優先すべきはずなのだが、容疑者の確保を優先して優を放ったらかしにした結果、かえって危険に晒している。
      • 分岐次第では3章にも登場する婦長も同様にストーリーに関わることもなく、武器や弾を渡してくれるだけの役目しかない。
        しかも翔で話しかけた時でなければならず、優で話しかけても何もしてくれずそのまま放置されてしまう。
    • 尤も、サブキャラが主人公に同行しないこと自体は前作にも言える*15ことであり、ゲームシステム的に仕方ない面もある。
      • ただ、前作ではシナリオ開始時に主人公が孤立する理由付け*16はきちんとなされていたが、本作はそれもほぼ無い*17ため、この不自然さが際立ってしまっているとも言える。
      • 一応、礎は第2章ラストとグッドエンド直前で優を守るシーンがあり、エンディングでもそれなりに決めてくれる。
        第2章ラストでも彼を操作するミニゲームが入る。「刑事が普段からショットガンを携行している」「病院の規模の割にゾンビの中に医者が多過ぎる」などのツッコミ所も生じているが。
    • 先述の設定資料によると、初期シナリオでは優、礎、剛元のトリプル主人公制で、才堂の正体や黒幕の設定も全く異なっていたらしい。礎と剛元の空気キャラ化や全体的な不自然さは設定変更の煽りを受けたものと思われる。
  • この他にもフィクションだと看過するには目立つツッコミ所が多く、海外ファンWikiでも「プロットの穴」として列挙されている程である(参照)。
  • ムービーが少ない。
    • 前作ではオープニングの他、10種類あるエンディングのうち8種類に個別のムービーが用意されていたが今作ではオープニングとベストエンドにしか無い。ベストエンド以外はムービーを用意する余地が無いほど薄い内容というシナリオの方の問題でもあるが、どちらにせよ寂しい。
    • また、オープニングで映した謎のシーンの種明かしをエンディングで行う形になっているため、二つのムービーの半分近くが同じ映像である。

総評

過去2作と比べるとかなりの異色作でところどころ粗も多いため過去作のファンからはやや敬遠されがちだが、それでもこの作風を好意的に見ているファンが古参・新参問わず存在する事もまた事実。
説明不足感は相変わらずながら前作より深まったストーリー性、多様化したBGMや演出により増した臨場感、そして従来と違ったJホラー的な作風は新鮮であり、従来の作風に捕らわれないという点では評価できるだろう。


メディアミックス

  • 漫画
    • 月刊誌『Gファンタジー』にて、高河ゆん氏がコミカライズした。1998年9月号、10月号連載。
    • 上下編とも30ページ前後の短編で単行本は出ていない(事情不明)。
  • ドラマCD
    • 1998年7月23日発売。キャラクターの一部設定、優以外の声優と、一部のキャラ設定、物語の結末がゲーム本編と異なる。

余談

  • 第1章のある部屋には前作『2』のポスターが貼ってある。また、メモリーカード管理画面で本作のセーブデータのアイコンにカーソルを合わせると、世界観の違い故に出演できなかったシザーマンの愚痴が垣間見れる
    • これは、ヒューマン製のソフトによく見られたお遊び要素である。
  • 全エンディングを制覇すると、翔を操作し研究所内部でゾンビを銃で倒すミニゲームが追加される。
    • ゾンビを全滅させるまでの時間を競う「タイムアタック」と、制限時間内にゾンビを倒して稼いだスコア数を競う「スコアアタック」の2種類。
    • 因みに、プレイ開始時には盛大なファンファーレと供に「ショータイムの始まりだ」と、翔のナレーションが入る。
      • 動画サイトなどでは「翔とショーをかけたギャグ」「翔タイム」としてネタにされている。
  • 『クロックタワー』シリーズは海外でも発売されており、本作もアスキーから発売されているが、舞台は日本からカリフォルニア州に変更されており、キャラクター名も西洋圏の人名に置き換えられて発売されている。
    • 一例を挙げると、主人公・優はアリッサ、鷹野初はフィリップ、鷹野千夏はステファニーという名前に。物語の核となる才堂家はマクスウェルという姓に置き換わっている。
      翔は「ベイツ」となっており、男性人格と言う設定に合わせ交代すると声も渋めの男性に切り替わるという演出がなされている。おそらくベイツという名前の元ネタはヒッチコック監督の映画『サイコ』からだと思われる。
      • しかし変わっているのは台詞の上でだけで、鷹野家では普通に靴を脱ぐし、病院に書かれた「受付」の文字、鎧武者、才堂の般若面など数多く存在する日本要素はそのままなのでかなり違和感が強くなってしまっている。その為、海外ファンによる日本版に忠実な再翻訳もされているほど。
        そもそもOPムービーからしてそのままであり、優が出てきた駅にはっきり「葛沢弁天駅」と書かれている。風景もどう見ても日本の田舎町であり、神社まである。そして最後のタイトルロゴが出るところは誤魔化せなかったらしく、強引に区切っている。
    • なお、日本での『2』が初代と同名の『CLOCK TOWER』名義で発売された関係で本作は『CLOCK TOWER II』として発売されており*18、少々ややこしい事になっている。初代は日本国外ではリリースされておらず、海外のファンによる非公式の翻訳が存在するに留まっている。
  • 河野氏は本作に携わっていないのは前述の通りだが、氏は本作を「タイプの異なるゲームだが、なかなか面白い」と海外のフォーラムにおいて評しており、本作を好意的に見ている模様(参照)。
  • レトロゲーム専門サントラレーベル「クラリスディスク」より、シリーズ初期3作品のサウンドトラックが発売された。
    • 河野氏はライナーノーツ内で「シリーズは『2』までで全てやりきったので自分で作るつもりがなかったため、後続で入ってきた新人に任せた」と述べている。

その後の展開

  • この後、ヒューマンは倒産し『クロックタワー』シリーズも終わりを迎えたものと思われたが、版権を継承したサンソフトとカプコンの共同開発により、正式なナンバリングタイトル『クロックタワー3』が2002年に発売された。
    • しかし、本作含む旧作のスタッフは関わっておらず、世界観・ゲーム性共に過去シリーズとは全くの別物と化した作品となっている。詳細は当該記事を参照。
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最終更新:2024年02月01日 12:59

*1 販促チラシのキャッチコピーより。

*2 一度撃退した際、ランダムでタイマーが設定されてそのタイマーがゼロになると出現するという仕組みになっている。

*3 残虐な人格と形容されてはいるが、率先して残虐な行為に手を染めるシーンはゲーム中ではほとんどなく、鷹野家の亭主の妻である弥生に「逃げろ」と促す等、他人の事を気遣う側面もないわけではない。第1章の終盤で追跡者を凶器で串刺しにしたり、最終章にて重要人物との会話中に逆上して相手を殺してしまったりもするが、むしろ短気、粗暴、直情型と言った方が当てはまるだろう。CDドラマ版では優の通う学校の生徒を翔が意図的に惨殺した為に優が事件に巻き込まれる羽目になっており、残虐さが強調されている(公式攻略本に掲載された短編漫画では男子生徒2人組による優への暴行が原因とされている)。

*4 たとえ入手しても使い方が判らないので使用出来ない。

*5 会話イベント、死亡トラップ発生時のRSIシステム発動前の演出、敵撃退時のアクション、ドアの開閉やエレベーター移動時のアクション等。

*6 調べる度に鎧武者を無言でのぞき込むが、イベントが発生すると気味悪がってその場から立ち去り、それと同時に鎧武者が動き出すという流れ。

*7 なお、この鎧武者のイベントはグッドエンドルートでも発生するがそちらでは回避することができ、さらに武者の正体も判明する。

*8 シナリオ3のシャワー室のみ失敗するが、それは急にシャワーが出てきて驚いた主人公がつい飛び出してしまう、というもの。

*9 上記の最速構えでギリギリ間に合うレベル。しかも、照準が出る前にクリックすると歩き出す仕様のせいで連打不可。

*10 通常は敵に照準を当てた時点で各部位ごとに撃てるポイントが表示される。

*11 中には「シナリオ作者も知らない」という一文すらある。

*12 前作『2』の攻略本も同様の作りになっている。

*13 厳密には彼女の兄の雅春もルート次第で黄金像とは別の経路で幻覚剤に侵され殺人鬼と化す。また、初も黄金像を手にもって立ちつくしているシーンがあるため、発狂したのはその際に影響を受けたから、ともとれる。その一方、一家の母親である弥生に関しては影響を受けた様子が一切ない。

*14 前述した武者鎧の落下の他、第1章で鷹野家宅の電話が鳴り応答すると「殺す・・・」という声が聞こえてくる、和室に飾られた日本人形が空中浮遊して襲ってくる、大広間に飾られたレイピアが宙に浮かんで串刺しにしようとしてくる、研究所の実験室に放置された臓物が動いて襲ってくる、トイレの扉を開けて中をのぞきこんだら急に中に引きずり込まれて揉みあいになる等、幻覚では片づけられない物理的な現象が多く起きている。

*15 前作『2』の最終章でも、生存者と会話しても同行させることなく調査を続行し、部屋に戻ると生存者の姿が消えてしまうという不自然な状況になる。

*16 「主人公が誘拐される」「意識を失って気が付いたら誰もいなかった」「仲間達が敵の奇襲を受けてバラバラになった」等。

*17 第2章、第3章共に礎が優を置いて調査に行き、残された優も独断で行動を始めるという流れになっている。第3章に至っては礎の「待ってろ」という指示を無言で無視する。

*18 副題に『The Struggle Within』(内なる闘争)とつけられている。