本稿では、オリジナルのファミコン版及び、リメイク作品であるワンダースワンカラー版を併せて解説する。



ファイナルファンタジー

【ふぁいなるふぁんたじー】

ジャンル RPG
高解像度で見る 裏を見る
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売・開発元 スクウェア
発売日 1987年12月18日
定価 5,900円(税別)
プレイ人数 1人
セーブデータ 1個(バッテリーバックアップ)
レーティング CERO:A(全年齢対象)
※バーチャルコンソール版より付加
配信 全てバーチャルコンソール(各税別)
Wii 2009年5月26日/476Wiiポイント
Wii U 2013年11月13日/476円
3DS 2013年12月18日/476円
判定 良作
ポイント 記念すべきシリーズ1作目
この頃からビジュアル面を強く意識した作り
ファイナルファンタジーシリーズ


そして……探求の旅は始まった



概要

今や国内を代表するRPGの一つとなった『ファイナルファンタジー』シリーズの記念すべき第1作。
プレイヤーはクリスタルに導かれし光の4戦士となり、世界に平和を取り戻すべく旅に出る。


特徴・評価点

ジョブシステム、白、黒、赤魔導士のグラフィック、クリスタル、メインテーマやファンファーレといった音楽、飛空船(後の飛空艇)、SF要素等々、1作目にして後のシリーズに引き継がれるゲーム性の基礎、デザイン等の多くがこの作品の時点で確立されている。

  • この時期のRPGはコンピューター上で如何にテーブルトークRPGを再現するか模索しており、色々と実験的な試みがされている。

パーティー編成

  • 最初に、4人の主人公それぞれに6つの職業(戦士・モンク・シーフ・赤魔術士・白魔術士・黒魔術士)を選ぶことになる。
    • 編成は完全に自由。同じ職業を複数入れても良い。その組み合わせは126通りにも及ぶ。
    • 物語の途中でクラスチェンジイベントが発生、それぞれ上級職に変わる。
      クラスチェンジを行うことでキャラクターのグラフィックが大幅に変化する。その際の、頭身の上がったキャラクター達は多くのプレイヤーに(良くも悪くも)強烈な印象を与えた。
      • 以降のシリーズ作品にも上級職のネーミングが残ったものは存在するが、頭身の上がったデザイン自体は二度と使われていない。本作そのもののリメイクですら、大半の上級職はまるきり違う外見に変更されている。
    • 編成はゲーム中に変更することは一切できないため、この時の編成次第で冒険の難易度が大幅に変わる。クラス毎の使い勝手の差が激しいため相当苦戦を強いられる編成もあるが、それ故に熱くなるプレイヤーも多かった。詳細は「クラス格差」の項に譲る。
    • パラメータの成長にはランダム要素が大きく絡んでおり、同じ職業のキャラでも微妙に違った個性が分かれてくる。
    • 戦士と白・黒・赤魔術士のデザインは、微妙にリファインされつつ以降のシリーズ中でも常連となる。上級職の中では忍者のみが唯一、以降の作品中にもデザイン継承されている。

システム面

  • 魔法は自然には覚えず、魔法屋で魔法を購入して習得する。クラスによって習得可能な魔法に制限がある。
    • Wizardry』と同様の「魔法レベル別使用回数制」であり「Lv1の魔法を○回」「Lv2の魔法を○回」というように各Lv毎に完全に独立した使用回数が割り当てられている。
    • 魔法は各レベルに白黒それぞれ四種ずつ存在するが、1レベルにつき三種までしか習得できない(赤魔術士のみ白黒合わせて三種まで)。一度習得した後の変更は不可能。プレイヤーは各魔法使いにどの魔法を習得させるか選ぶ必要があり、独特のカスタマイズ性を醸し出している。
  • バッテリーバックアップ方式を導入。
    • 回復拠点である宿屋はゲームを進める上で必ず利用することになるが、その宿屋がセーブポイントを兼ねている。
    • また、フィールド上の任意の場所でもセーブが可能。ただし、その際は消耗品である寝袋・テント・コテージのいずれかを使う必要がある。
  • 高度なプログラミング技術。
    • ナーシャ・ジベリ氏のプログラムによる表現力は当時のファミコンソフトとは一線を画している。船に乗ると歩行時の2倍、飛空船では4倍の速度で移動可能になり、4方向へのなめらかな高速スクロールはプレイヤーを唸らせた。
      • 飛空船4倍速の高速スクロールに加え、浮かび上がる演出と影まで表示される*1。当時のRPGの演出としては群を抜いて優れている。
      • 他にもフィールドから街などの画面切り替えにマップを割るワイプを使ったりしている。
    • 高度かは不明だが、街の住民等のNPCを押すと、早足で居る位置から離れる。
    • 隠しミニゲームである「15パズル」は、容量の空きにこっそり仕込んだものだという裏話がある。
    • 後述するように細かいバグや設定ミスはあるが、ゲームの進行やバランスに多大な影響を及ぼすようなバグは確認されていない。

グラフィック面

  • 初代の頃からビジュアル面、演出面を強く意識している。
    • 敵味方が左右に分かれて対峙し、ちびキャラ風に描かれたキャラクターがちょこまかとアニメーションしながら攻撃などのアクションを見せるというビジュアルメインの演出は、ユーザーに驚きを与えた。味方がアニメーションをする戦闘画面を採用したゲームは本作が初となる。
      • 今日ではこの形式はサイドビューと呼ばれるようになり、様々なRPGに影響を与えている。
    • キービジュアルおよびモンスターデザインを、天野喜孝氏が担当。『ドラクエ』シリーズのコミカルで親しみ易い絵柄と対照的に、絵画的なタッチで幻想的な雰囲気の作風が持ち味である氏のイラストにより、硬派なファンタジーRPGの雰囲気を作り出している。
      • なお、天野氏は『FF6』までキャラクター及びモンスターイラストを担当し続けた。
        『FF7』以降は多忙のため前述の仕事は降板したものの、ナンバリング最新作でもメインタイトルやイメージイラストは必ず担当するなど、FFシリーズを語る上で欠かせない人物となっている。
      • ただしドッターの渋谷員子氏によると、厳密には一部のモンスターは天野氏でなく社内スタッフがデザインから描き起こしているらしい。
    • ドラクエは『II』から戦闘画面の背景が黒一色になったが、こちらはファミコン用全作で(画面上部のみではあるが)事前に踏んでいた地形に合わせた背景パターンを並べている。

サウンド面

  • のちのシリーズでも恒例となる植松伸夫氏の手による、『ドラクエ』シリーズとはまた違った方向性の雰囲気とメロディセンスによる楽曲群は、数は少ないながらも世界観や雰囲気の違いを明確に印象付けている。
    • 冒頭のアバンタイトルを終えたのち、城を出て橋を渡った瞬間に表示される1枚絵とともに流れるシリーズテーマ「ファイナルファンタジー」は特に印象深く、のちのシリーズにも引き継がれている。

以上のように、全ての要素に硬派かつマニアックな要素が取り入れられており、当時発売されたRPGの多くがドラクエのスタイルの模倣に留まっていた中で、本作は『ドラクエ』と異なる作風を強固に打ち出し、意欲的な試みに満ちた野心作として鮮烈な印象を残している。


賛否両論点

  • 「逃げる」を多用することを前提としたバランス調整
    • 本作は魔法使用回数の少なさや、シーフの売りが「敵から逃げやすいこと」であることからも分かるとおり、ある程度まで積極的に敵から逃げ回ることが推奨されるバランスとなっている。この調整そのものには賛否あるが、独特のゲームバランスを成立させてはいる。
    • 特にダンジョン探索時は、目的を果たすまでに非常に多くのモンスターと遭遇することになる。ジョブの選択やレベルにもよるが、全てと戦っていたらMPやアイテムはまず持たない。
    • ただし、逃走判定は各々の行動時に行われるので無傷で進めるわけではないし、雑魚戦でも絶対に逃げられない戦闘も発生するので、常に逃げ続けるのが正解というわけではない。時には積極的に戦った方が被害を減らせる場合もある。
    • 一方で「絶対に逃げられない敵(厳密には敵ではなくエンカウントパターン)」が雑魚モンスターとして頻出することについても、やはり賛否の分かれる部分ではある。どのモンスターが逃走を封じているのかといったヒントも作中にはなく、逃走不可であること自体も明確には示されず(逃走失敗のメッセージは1通りしかない)判別が困難なため、「基本的には逃げやすい」というゲームバランスに気づかないプレイヤーも出た。
  • 本作は「雑魚敵の数が多く、特技や状態異常を駆使してきて非常に強い」と通常戦闘では苦労する一方、「ボスのHPは低くその時点での最強武器でヘイストを掛けて突撃すれば数ターンで終わる」というゲームバランスである。
    • ダンジョンの構造自体は適度な難易度であり、初期のドラクエのように「ダンジョンに無限ループ箇所があって一旦引っ掛かると目的地にまでたどり着けない」ということはあまりない。
      暗闇や隠し通路といったものも一切存在しておらず、小部屋にはちゃんと扉が存在しているため、初期のDQのように壁か部屋かわかりづらい、ということは起こらない。
    • ランダムエンカウントは実質的に歩数制でかつ完全固定(マップによってエンカウント頻度が変化することはある)なので、少なくとも1~2歩歩いたら次のエンカウントが発生して…ということはほとんど起こらない。エンカウント率自体はそこそこの高さではあるものの当時としてはかなり快適な部類である。
      • ただ固定エンカウントのマスが存在しており、該当するマスに足を踏み入れると歩数に関係なくエンカウントしてしまう。多くの場合はそのダンジョンのボス的な配置か、宝箱を守るように配置されている。
      • さらに固定エンカウントであることはゲーム内で一切示されず、分かりづらい。なおかつ、罠のように多数の固定エンカウントが敷き詰められた通路まで存在する。
  • 後半は戦闘中に使うと魔法の効果を発動する装備品が登場するため、どんな編成であってもある程度ならゴリ押しがきくようになる。
    • 全体火力魔法や一撃必殺、状態異常から果ては回復魔法を発動できる武具まで存在し、これらを活用することによって戦力を温存可能となる。
      これらの装備を持ちさえすれば誰でも無制限に魔法が使えてしまうので、充実するほど本職魔法使いの肩身は狭くなっていく。
      • 効果発動の際に装備しておく必要は無い。持ってさえいれば装備できないキャラクターでも魔法を引き出せる。
      • ただし装備品は所持数制限が重く、武器・防具とも一人あたりそれぞれ四個ずつまでしか持てない。
        ことに防具は鎧・兜・小手・盾でフル装備するとそれだけで枠が埋まってしまう関係上、魔法効果の装備のための枠を割くのが悩ましいといった課題が出てくる。
    • どの装備品に魔法が込められているのかは、ネーミングから推測する以外にヒントらしいヒントが一切ない。このため、実際に使ってみないと分からないのが、ネックといえばネックではある。
      • 「いやしのかぶと」等、ある程度予想がつく物もあれば「ガントレット」や「レイズサーベル」といった初見ではまず気付かないような装備品も多い。
        一応、「ガントレット」から魔法が発動できるというのは『Wizardry』のパロディと思われるが、一般的な武具名でもあるため、これを手掛かりに気付いたなどという人はほぼいないだろう。
    • また、「魔法効果の装備がある」こと自体もほぼノーヒント。本作は「装備品が戦闘中にアイテムとして使える」仕様のため、カンの良い人は気付く可能性があるが、本当に気付かない人はそんなことには全く気付かないままゲームを終えてしまう可能性も高い。
    • 魔法使いには装備の枠を割かずに多数の魔法を所持できること、移動中にも魔法が使えること、アイテムでは再現できない魔法もあることなどが活路として残る。MP制限と購入費用の壁は高いが…。
  • 独特なセーブシステム
    • 宿屋に泊まると強制的にセーブされ、セーブせずに宿泊する事はできない。宿泊の際にセーブする事は通知され、そこで宿泊をキャンセルする事はできる。
      • 当時のFCではセーブ機能自体が珍しいものであり、セーブの意味を知らない人でもノーセーブで進めてしまう事のないように設計されている。『II』以降やリメイク版では任意セーブになった。
    • フィールド上で寝袋・テント・コテージを使った際に任意セーブができる。回復だけしてセーブしない事も可能。

問題点

システム面

  • セーブ可能なデータは1個のみ。
    • せっかくパーティー編成や育成・探索の自由度が高いにもかかわらず、データが一つきりしか残せないため他のパターンを模索しづらい。
      • 加えて初期のバッテリーバックアップ機能ということでデータが消えやすいため、1個しかデータ保持できないのはそのことに関しても難点である。
    • ちなみに本作と発売予定時期が同じだったライバルソフト『ドラゴンクエストIII』のセーブ個数は3つである。
  • 電源投入の時点でメッセージ表示速度がデフォルトで最も遅い設定になっている上に、ゲーム中の変更は不可。コンティニューするたびに変更する必要がある。
    • 戦闘中のメッセージ速度に影響するが、ボタンを押しても送ることが出来ない。速度変更に気付かないと非常にテンポの悪いゲームに思えてしまう。
    • 街での会話などのウインドウ開閉も遅い。2作目からはある程度改善。シリーズが進むにつれて瞬時に開く様になる。
  • 戦闘のコマンドが紛らわしい。
    • 「もちもの」といえば普通はポーションや毒消しなどの所持アイテムを想像するだろうが、本作の「もちもの」コマンドは装備品を指す。
      • その上、選択肢としては武具が表示されるにもかかわらず、戦闘中の持ち替えを想定したコマンドでもない*2。武具に込められた魔法効果を引き出すためのものである。
      • ポーション・毒消しは「くすり」コマンドから使う。ただし、このコマンドではそれら以外のアイテムを使えないため、中盤以降はほぼ無意味となる。
  • 一部の設定ミス・バグ
    • プレイヤーに不利なもの
      • 対象の攻撃力や命中率を高める「ストライ」「セーバー」が効果無し。
      • 敵の回避率を下げる「シェイプ」系の魔法が設定ミスで「敵の回避率を上げる」というマイナス効果に反転している。
      • 耐性を打ち消す「デスペル」は、モンスターが使った場合のみ機能する。味方がモンスターに対して唱えても何の効果もない。
      • モンク(スーパーモンク)はレベルが上がるたびに、防具の有無に関わらず防御力が無装備相当になる。
        詳細を述べると、モンク(及びスーパーモンク)は防具を装備していない状態だと、レベルの値がそのまま防御力になる。防具を1つでも装備している場合は防具の防御力のみによって決まる仕様。
        それ故に、やりこみの域の高レベル帯を除けば、大抵の場合は防具装備時の本来の値より低くなってしまう。
        もっとも、防具メニューを開くことで再計算されて元に戻るため、これに関しては回避可能ではある。
      • 「知性」のパラメータが無意味。
        ただし、本来はどういう効果があったのかは説明書を読んでも不明であるため、これに関してはバグではなく本当に無意味なパラメータとして設定していたのかもしれないが。
      • コテージを使用してセーブし、電源を切ると再開時にMPが回復していない。魔法使用回数が回復した状態でフィールド上でのセーブをしたければ、コテージでMP回復後にもう1回寝袋などを使ってセーブする必要がある。
    • プレイヤーに有利なもの
      • モンスターに弱点属性がある場合、物理攻撃による追加効果の属性に上書きされる。例えば炎に弱いグール等の麻痺効果は、炎耐性のアイスシールド等で防げる。
        ほとんどのケースでは上記のように精神属性が炎属性などに上書きされるので、より早い段階から多くの防具で防げるのでプレイヤー有利と言える。
      • 武器のクリティカル率が、本来の値ではなく武器の通し番号に依存する。ごく初期の武器を除くと本来の設定値より大幅に高くなり、(おそらく本来の意図よりも)高いダメージを出しやすい反面、高クリティカル率が売りであるはずの武器の価値が失われている。
      • 「バファイ」等の耐性を付加する魔法は敵側が使っても機能しない。前述の「デスペル(耐性消去)」は逆に敵側が味方に対して使った場合のみ機能することを踏まえると、つまりモンスター側の耐性は戦闘中に変化しないようだ。
    • その他、特定の階段の昇降を繰り返すことでフリーズの可能性があるバグが存在するが、通常プレイではまず行わない操作であるため、そこまで心配はいらない。
  • 買い物のテンポが悪い。
    • 店ではアイテムを1つずつしか購入できず、おまけに一つ購入するたび複数回の選択が求められる。このため特定の商品を大量購入しようとすると、時間も手間もかかってストレスがたまる。
    • 大量購入したい商品といったらポーションくらいのものではあるが、本作はこのポーションを買えるだけ買い込むことが大前提に近いゲームバランス。頻繁に数十個単位での補充が必要となり、購入処理に煩わされる。
    • 武器は武器屋でしか売れず、防具は防具屋でしか売れない。さらにポーション等の消費アイテムは売却自体が不可能である。
      • そのジョブで装備できない武具でも買えてしまうので、購入の時点では誰がどれを装備できるのか、全くわからない。
    • 魔法を購入する際、魔法を覚える人を選ぶ⇒魔法を選ぶ⇒習得できない場合、「その魔法は覚えられないようだ」と断られる…という手順になっているのも不便。
  • 装備品の管理がやや不自由。
    • 本作では所持品が「アイテム」「武器」「防具」の三分類に分かれ、それぞれ完全に独立した管理が求められる。
    • 「アイテム」は後発シリーズで一般的にみられる、パーティー共有資産扱いの一括管理。ここにはイベントアイテムと消耗品のみが入る。次作以降と違い、武器や防具はアイテム欄に入らない。
      • 消費アイテムは、それぞれ99個まで所持可能。ただし本作中の消耗品は「ポーション」「毒消し」「金の針」「寝袋」「テント」「コテージ」の6種のみ。
      • ちなみにアイテム分類枠からは、ポーションと毒消しのみが戦闘中にも使用できる。
    • 「武器」と「防具」は個人管理。どちらも各人それぞれ四個まで持てる。ただ問題は装備するかどうかを問わず、この四枠内でやりくりしなければならないということ。
      • 武器については各人一つしか装備できないので、さほど不自由することもない。一人あたり三つまで予備を持ち歩ける。なお、装備していなければ素手で殴る。
      • 問題は防具で、明らかに枠が不足している。頭・体・腕・盾で四種類まで装備できるが、裏を返すと四種揃えたら、それだけで所持欄がすべて埋まってしまう。フル装備状態のキャラは新たな装備を手に入れた時、いちいち別の仲間に預けた上で交換するか、あるいは一つを捨てるか売るかしなければならない。
  • ちなみに武器・防具とも、装備できないものでも持ち歩くことはできる。装備は更に装備欄の中で個別に行う。武器を四つ持っているけど装備はせずに素手のままとか、防具を四つ持っているけど身につけずに裸、なんて状態も維持可能。
    この仕様には利点もいくつかあるのだが、分かりにくいという意味からは、ささやかながら難点の一つともなっている。
  • パーティ全員の武器または防具を一画面で一括表示しつつ、装備や交換をスムーズに行えるインターフェイス自体は優れている。
  • また、装備画面では、何を装備してもいくつ数値が上がったかは一切わからず、いちいち戻ってステータスを確認しなければならないので面倒。
  • 状態異常への対抗手段が少ない。
    • 序盤から毒を受ける機会が多いにもかかわらず、75ギルもする「毒消し」を使わないと解除できない。宿屋では回復しない。
    • 毒消しの魔法「ポイゾナ」ならMPがある限り何度でも使えるが、なんと4000ギルもする。MP自体も限られる中、元を取れるのはいつになるのか…。
    • また、比較的序盤から麻痺を使うモンスターが大量に出現する。こちらは戦闘後に自然回復するが、戦闘中は一定確率で復帰するまでは一切の行動が不可能になる。
    • いずれも耐性を付ければ高確率で防げるが、耐性を持った装備は終盤にしか登場しない。それまではレベルを上げて隠しパラメータである魔法防御力を高める以外に、防ぐ手段が存在しない。
    • さらに中盤以降には打撃の追加効果で『即死』させる「マインドフレイア」という雑魚敵が出現する。それが発動するとメッセージにダメージ表示がなく「いのちをうばわれた……」と出て死亡する。初見では何が起こったか理解できず大抵の人はわけもわからない絶望感に襲われた。
      • この即死攻撃は防具の即死耐性が通じない。しかも「マインドブラスト(全体を麻痺)」まで使うので、こちらを動けなくしてから即死の可能性がある打撃をジワジワ繰り出してくるという超凶悪コンボとなる。おまけにそのモンスターはサイズが一番小さいクラスで大量に現れる(最大9体)。
      • ただし先に登場する色違いの「ピスコディーモン」と違い普通に逃亡できるので逃走により戦闘は回避可能。また内部レベルが低めであり、こちらがLv30付近になると自分から逃げるようになる。
    • 上記に比べると、多少脅威では劣るが同時期に即死呪文「デス」をバシバシ使いまくる雑魚敵も出現する。こちらは出現数が少なめなのが救い。
    • 1では戦闘不能の回復手段はレイズ系魔法だけで、しかも戦闘中には使えないため、余計に即死攻撃が恐ろしい。
  • 戦闘で、複数のキャラで同じ敵を攻撃した場合、早い番のキャラで倒してしまうと、他のキャラの攻撃は他の敵に振り替えられず、無駄攻撃で「こうかがなかった」になってしまう。
    • いわゆるオートターゲットが存在しない。もっともこれ自体は当時のRPGでは珍しいものではない。
  • 回復しない状態異常にかかると戦闘後に隊列順が変わる。
    • 治療した上でいちいちまた戻すのが面倒。しかも押し出し式でなく、先頭がかかるとなぜか4人目と入れ替わる。最後尾のキャラが最前列になってしまうため、戻し忘れて再び戦闘に入るとエラい目に遭うことに。
  • いくつかの宝箱は中身を共有していて、特定の場所の宝箱を開けると別の宝箱の中身がカラになる。
    • 中身は同じためどこの場所を開けようとプレイヤーに損はないのだが、この仕様について全く説明がない。
  • 中には扉が封印されていて、カギ入手後でないと開けられない部屋もあるのだが、いざ開けてみると、宝箱の中身は安いギルだったり店でも買えるアイテムだったりすることがある。それらはわざわざ封印した部屋に置くには見合わない。
  • 宝箱は開封しても見た目が変わらないので、ダンジョンを複数回に分けて探索する場合は記憶やメモが必要。
    • 上述の中身を共有している宝箱はかなり紛らわしい。
  • ある程度進むと武器も防具も買う必要が無くなる。
    • ダンジョンの宝箱で武器も防具もラストまで順々に賄えてしまう。探索の褒美としては良いかもしれないが、買い物が中盤以降は殆ど魔法とポーションだけとなる。
  • 戦闘時のBGMは1曲のみ。
    • さらにはザコからラスボスまで一貫して同じBGMであるため、ボス戦やラスボス戦でも緊迫感や盛り上がりに欠けてしまう。FC版『ドラクエ』の『I』と『II』でもラスボス戦には専用曲が存在し、本作発売時点でも既にRPGでは「ラスボス=ラスボス専用曲が流れる」演出はお約束となっていたため、初見ではラスボスを倒した後にEDが唐突に始まる印象さえあった。
    • 一応MSX2版でも裏技のサウンドテストでラスボス曲らしき未使用曲を聴く事はできる(実際に使用されているわけではないため推測でしかないが)。なお、リメイク版ではさすがに戦闘時のBGMは追加されている。

ゲームバランス面
『FF』シリーズで比較しても、比較的難易度は高め。

  • 『D&D』や『Wizardry』を意識してか魔法は1レベルにつき9回までしか使えず、さらにダンジョン内で使用できるMP回復アイテムが存在しない。
    • また、これら2作のように戦闘を積極的に回避する手段も存在せず、ダンジョン探索では大量のランダムエンカウントを避けられない。
      ゆえに、「白魔術士がいても結局大量のポーションが必要になる」「黒魔術士のMPがすぐに枯渇しお荷物になる」といった問題が発生する。
  • 一部の敵が強力。
    • 絶対に逃げられなかったり、麻痺付与の物理攻撃で延々と殴ってきたり、強力な全体攻撃魔法を連発してあっという間に全滅に追い込んだり、全体へ麻痺の特殊攻撃→即死効果が付与された物理攻撃の凶悪コンボを行ってきたり…。
      • おまけに上記に当て嵌まる雑魚敵に限って、小型で複数体出るケースが多い。大量出現時に先手を取られると悲惨な事になる事もしばしば。
    • 終盤は魔法アイテムや強力な武具でゴリ押しが効く、というよりも、ゴリ押ししなければやってられない難度となってくる。

他社製品からの流用問題
かなり多数(というよりほぼ全て)のモンスターの能力設定とデザイン、アイテム、システムの根幹部分がテーブルトークRPGの有名作『ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)』『アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ(AD&D)』*3からの模倣となっている。
しかし、発売当初は全てオリジナルと発言するなど、著作権などの扱いが緩かった時代の作品ならではの現象ではある。

  • 大半のモンスターは「D&D」の名称がそのまま用いられている。当時の日本では馴染みの薄いものも多く、能力や弱点をイメージしづらかった。
    • 特に有名なのはビホルダーで、その特徴的なデザインと能力から他の作品でも引用が激しかったうえに、漫画『BASTARD!』の「鈴木土下座ェ門事件*4」で有名になったためか特に問題視された。そしてFC版『I&II』以降は、本作でもビホルダーのみ名前とグラフィックが変更されている。
      • ただし「ビホルダー」とは「見つめる者」と言う意味の一般名詞でしかないので、名前だけの使用なら問題はなく、続編でも全く姿形の違う「ビホルダー」が登場している*5
    • なお近年のリメイク作でさえビホルダー以外はそのまま。ビホルダーだけが問題なわけではないのだが…。
      • 一方で海外移植版での英語表記に関しては、ビホルダー以外の危険そうな名前もこっそり変更されていたりする。見た目は変わっていないのだが、名前が違えば言い訳としては立つのだろう。
  • 「体防具扱いの腕輪」「ドラゴン全般に特効するウィルム(翼竜)キラー」「使うとレイズではなくクラウダが発動するレイズサーベル」などもこれらの元ネタを再現したものである。非常に紛らわしい。
  • こういった要因により、大きな声では言えないが、一部には、本作のことを「D&Dを再現したコンピュータRPGとしての傑作」として、『Wizardry』に並ぶか次ぐなどと評価する声もある。

クラス格差

  • クラスの能力格差がかなり激しいうえ、別クラスには転職できないため、初期編成が攻略難易度に直結する。
    前述のようにセーブデータは1つだけなので、複数のデータで特性を試しながら使い分けることもできない。
    • とはいえ「シーフ×4」や「黒魔術士×4」といった極端すぎる編成でもなければ普通にクリアは可能であるし、最強武器「マサムネ」が全クラス装備可能であったりといった救済措置も存在する。
      普通に進めるならば「戦士、(前衛)、白魔、魔術士系」または「戦士、(前衛×2)、赤魔or白魔」あたりが無難な編成か。
    • FC版の場合、ゲーム開始時のデフォルト設定は「戦士、シーフ、モンク、赤魔術士」となっている。
      それなりにバランスのとれた編成だが、序盤は赤魔術士を2番手に配置したほうが安定感が増す。
    • 一方でWSC等のリメイク版では「戦士、シーフ、白魔術士、黒魔術士」となっている。
      使い勝手の悪いシーフと黒魔術士の二人が揃ってしまっているため、このまま始めてしまうとかなり苦労する。
      最低でもどちらか一人をもう一人の戦士か、赤魔術士と入れ替えたほうがいい。
    • なお、「テレポ」か「ダテレポ」を使えるジョブを入れておかないとラストダンジョンから帰れなくなってしまうので、全員戦士系といったパーティの場合は大変な事になる。
+ 各クラスの使い勝手・簡単な評価など

戦士→ナイト

  • HPの伸びがよく、装備が充実しているため攻守に渡り最後まで活躍が見込める。ナイトにクラスチェンジすると低Lvの白魔法も使えるようになる。
    • 最序盤だけは全員がどんぐりの背比べ状態だが、戦士はそこから真っ先に頭一つ抜けて実力を発揮してくれる。攻撃力だけは終盤以降(リメイク等では中盤より)モンクのチートぶり(後述)に追い抜かれるが、それでも十分に一線級。そして防御面は最後まで優秀で、安心感がある。
  • 序盤は装備品購入のための費用がかさむのが欠点。鉄鎧とブロードソードを揃えるまでは鉄板か? それ以降では宝箱から入手出来る装備で二人分ほどはカバー可能。もっとも、装備すら出来ない他のジョブからすれば贅沢な悩みと言える。
  • クラスチェンジで装備はさらに充実する。低Lvの白魔法も習得可能になるので「ブリンク」で回避率を上げてさらなる鉄壁化も可能。回復魔法も移動中であればポーションの節約になる。
    • そもそも防具の都合上、最低でも1人はナイトがいないと最終的にPTメンバーで主要な耐性を揃えることができず、難易度が大きく変わる。
  • 耐久面が最も安定しているため、魔法アイテムを最も活用できるのも結局は本職となる。
    • ただし戦士は普通に殴っているだけでも強い。他ジョブの仲間がいて欠点を補えるなら、そちらに持たせておいた方がいい。
  • 力や体力は無論のこと幸運の成長率も高く、遅くともLv18になるころには後述の「シーフ並の逃走率」を確保できる。
  • 隠しパラメータである魔法防御力の成長度もモンクに次いで高い。クラスチェンジで鈍ることもなく、ゲーム全般通して状態異常に強いのも頼もしい。

シーフ→忍者

  • 前衛内では恐らく最弱。というのも装備面での貧弱さゆえに戦闘能力は(魔法抜きですら)赤魔を大きく下回る。もちろん魔法も使えない。素早さも高いように見えて、実は他のジョブと変わらない。
    • 特に序盤で活躍出来る要となる「ミスリルソード」は装備不可。赤魔は装備可能であり、一気に水をあけられてしまう。クラスチェンジすると装備可能となるが、この頃になるともっと強い武器が手に入るのでほとんど意味がない。
  • 「アイテムを盗む」「罠を見破る」「宝箱や扉を開錠する」などのシーフらしい特技は一切持っていない。
  • 数少ない強みは「運が良くて逃げやすい」こと…なのだが、実は「幸運が16以上、かつ隊列の二番目まで」であればどのジョブでも高確率で(というか100%確実に)逃げられる
    要は他のジョブの幸運が16以上になればこの長所は意味があまりなくなってしまう。
    • 一応シーフはLv2で必ず16になる強みはあるが、防具の貧弱さから三番目以下に下げられてしまうことも多いので、前情報無しの通常プレイではあまり活かせないことが多い。
      また、逃げられないように設定されている敵からはたとえシーフがいても逃げられない。
  • 忍者にクラスチェンジ後は装備可能品が増加し、低Lvの黒魔法も使えるようになる。攻撃回数を増やす「ヘイスト」が有用なのはもちろん、中位止まりとはいえ任意の属性の全体攻撃魔法を使えるので、味方との連携で殲滅を狙えるのは強み。
    • しかしクラスチェンジの前後くらいから魔法アイテムが充実しだし、結果的にジョブ間の格差が緩和されるため、この時期になってからテコ入れされても手遅れ感が強い。そして初期ほど辛くはなくなるだけで、やっぱり相対的な評価は低めのまま。
    • 忍者になって装備可能となる武具の中には、「登場時点で装備できていたなら強かっただろうが、今更?」と言いたくなるものも多い。その筆頭例が前述の「ミスリルソード」。
  • 肉弾戦ではナイトに劣り、魔法では赤魔導士に劣る。最終的には両者を足して2で割ったような性能に落ち着く。

モンク→スーパーモンク

  • 序盤は武器も防具もパッとしない。HPも中盤までは決して高いわけではない。ただし「レベルアップに応じて素手時の攻撃力、及び防具を全て外した時の防御力が上昇する」という仕様があるので、終盤では(リメイク等では中盤からは)拳一つで戦士を凌駕するダメージを叩き出すようになる。
    • 極まったモンクはラスボスすら一撃の下に葬り去れる。ただしそこまで達する頃には、モンク抜きでも余裕でゲームを終わらせられるというのが残念なところ。
    • 武器はヌンチャク2種と杖系を装備可能なのだが、これらを装備してしまうと絶対的な破壊力を発揮できずに弱いジョブになってしまう。しかし序盤は素手も弱いので、貧弱なこれらの武器に頼るほかない。素手の特性は説明書には書かれていないために、プレイヤーが気付けなければ地雷ジョブになる事も。
    • また防御力を高めるために「防具を全て外す」ということは、防具由来の属性耐性を得られなくなることも意味する。
      • 本作では状態異常を回避するのにも属性耐性がかかわり、また終盤ほど防具による耐性の恩恵が大きくなるため、これを活用できないのは痛い。身に着けられる防具は最後まで最弱クラスだが、それでも装備しておくことが推奨されている。
      • ただし耐性を諦めるなら防具も着なくてよくなるので、開き直って装備はせずに、身に着けられない魔法効果の防具をかき集めるということも可能。またこの場合、仲間の防具スロットの調整役としても働ける。ただし素手の攻撃力と違い、素肌防御は群を抜いて高いわけではないので物理面でもやや危険だが。
    • 最終的には「高HP、単体高威力、高被弾」というピーキーな性能と化す。敵の数の多いFF1ではこの消耗の大きさも難点ではある。
    • 結論として『序盤は弱め、中盤は戦士とトントン、後半で爆発!』といったところ。防御面で不安、終盤はバランスブレイカーすれすれだがそこまで行くと何をやっても余裕…となる点を考えると、「大器晩成」「ロマンを追及する」「貧弱な子がジワジワ強くなる姿を愛でる」やり込みクラスと言える。
  • なお、モンクのみクラスチェンジのメリットが一切無く、それどころか魔法防御力の成長度が下がるという不可解な仕様がある。
    • 設定ミスなのか意図的な仕様なのかどうかは不明だが、WSC版・PS版でもそのままで、GBA版でようやくクラスチェンジ後の方が魔法防御がより成長するように変更された。

白魔術士→白魔導士

  • 回復の専門家という触れ込みなのだが、肝心の回復魔法があまりあてにならないのがネック。
    • 魔法抜きだと基礎能力は貧弱で、戦力として期待できない。
  • 魔術士系全般に言えることだが、Lvを上げても魔法の使用回数は各Lv毎に9回が限度。おまけに回復魔法の回復量も異様に少ない。白魔がいても結局、大量のポーションを準備しておく必要がある。
    • とはいえ蘇生魔法「レイズ」をクラスチェンジ前に使えるといった白魔術士のみの強みもあるので、黒魔術士と比べたらはるかにマシとは言える。
    • 厄介なアンデッドを一掃できる「ディア」系統の魔法も、こと序盤から中盤においてかなり活躍する。ただしどういうモンスターが「アンデッド」なのか、作中に一切説明はないのが問題ではある。
    • 回復魔法中では最上級の「ケアルガ」のみ、一発でHPを完全回復でき、おまけに状態異常も治療するため実用レベル。ただし高レベルゆえ使用回数の伸びが悪く、購入可能になるのも遅めで使える機会が限られる。
  • 同じく魔術士系全般に言える事だが、魔法の価格が中盤・後半とどんどんインフレしていき、装備品のコストパフォーマンスも悪いので、実際には戦士よりもはるかに金食い虫である。

黒魔術士→黒魔導士

  • 乏しい魔法使用回数制の被害を最も大きくこうむっている苦難のジョブ。序盤はほんの数回で打ち止めとなる魔法が貴重な命綱、中盤以降もMPの伸びより戦闘回数が増える負担増の方が激しく、魔法の使いどころが難しい。
    • 後半は魔法効果の発動できるアイテムがばら撒かれ、誰でも中級クラスの全体攻撃魔法が使い放題となる。このため黒魔の取り柄は上級魔法くらいとなるが、ゲームが進行するほど敵の魔法回避が高くなり、魔法の効き目が鈍くなるため活用しにくい。
  • HPが絶望的に低く、最後列へ配置していても、事故的に飛んできた軽い被弾で簡単に沈む。ボスどころか、ザコに殴られ即死することも珍しくない。中盤以降は全体攻撃に晒されることも増えるため、HP・防御力に欠ける黒魔はなおのこと死にやすくなる。
  • 中盤以降は魔法の価格が暴騰し始め、パーティーの財政事情まで圧迫するのも問題点である。
  • 後半戦では大量の雑魚掃除に「フレアー」を撃つ、「ヘイスト」を前衛にかけて支援するくらいしか活躍の場がない。ただし「ヘイスト」は忍者と赤魔も使える。そして彼らと違い魔法使用回数が無くなると途端にお荷物と化す。
  • 「知性」のパラメータが非常に高いのが特徴だが、実は本作の知性は何の効果も無い。攻撃魔法の威力は完全に使用した魔法と相手の耐性に依存しており、同じ魔法なら他のジョブがアイテム使用で発動させた場合も効果は全く変わらない。
  • 一応、序盤から中盤におけるピンポイントの切り札としてならば黒魔術士にも活路はある。序盤の攻撃魔法はそこそこ頼りになるし、全体攻撃魔法が早いうちから扱えるのも便利。中盤以降に期待されるのは、ほとんど「ヘイスト」役となってしまうが。
  • また、強力な魔法アイテムを装備欄を圧迫することなく持てるのは黒魔術士のみである。

赤魔術士→赤魔導士

  • 「白魔法と黒魔法を両方使えるが、中には使えない魔法もある」という触れ込みなのだが…。実は魔法ばかりでなく、物理面もかなりのハイスペックという優遇クラス。
  • 特にクラスチェンジ前においては、戦士に次ぐ防御力を誇る堂々の前衛クラスである。攻撃力もシーフやモンクより高い。
    • さすがに中盤以降は専門クラスに追いつかれ、やがて抜かれる。
    • 魔法を使わなくても普段は打撃でそこそこ戦える。こと前半は物理面でもシーフやモンクより強く、戦士に準ずる優秀な戦力となる。その上で必要に応じ魔法も使えるのだから超強力。
  • 黒魔術士と同様、かなり早めの時点から、全体攻撃魔法で敵を一掃可能となる点も魅力の一つ。使用回数こそやや劣るが、いざというとき用の切り札や、金稼ぎの効率を高めるための手段としてならさほど問題ない。
    • また白魔導師や黒魔導士より魔法使用回数が少ないと言っても、そもそも彼らでさえ前述した通り使用回数は9回で頭打ちなので、さほど気にならない。
    • 一方でレベル8の魔法は一切覚えられない(何故か使用回数はレベルに伴い増加する)。レベル7の魔法も「ブリザガ」「バマジク」を除いては覚えられないため、魔法欄に空欄が出来てしまう。
      • しかしながら、全体攻撃魔法・テレポ系・蘇生魔法のレイズと、クリアするために最低限必要な魔法はすべて揃っているため、一人いれば攻略上はぐっと楽になる。
  • 弱点は魔法も武器も防具も揃えなくてはならないためトップクラスの金食い虫であることと、HPが黒魔の次に低いこと。後半に入ってからは装備可能な防具が他の魔法使いと大差なくなることも重なり、耐久面に不安が出てくる。
    • とはいえ、中盤までは戦士のお下がり装備がそのまま流用出来る事も多く、一人居ればPTの戦力が一回り上がるお手軽感は非常に便利。ジョブ間の戦力差が際立つ難所は前半に集中しているため、この時期を支えてくれる赤魔は極めて頼もしい。

総評

前年発売された『ドラゴンクエスト』に端を発するRPGブームの中で制作された作品ではあるが、『ドラクエ』の模倣に終始せず様々な実験的な試みが盛り込まれているため、趣きは大きく異なる。「RPGブームを作ったドラクエの後を追う形で発売された」という意味ではドラクエフォロワーと言えるが、実際のところは様々な要素を『ダンジョンズ&ドラゴンズ』シリーズから取り入れているため、言ってみれば「D&Dフォロワー」に近い。

シリーズ初作ゆえにいろいろと粗も目立つが、多作品の模倣には賛否はあれど様々な意欲的かつ大胆な新機軸を取り入れた結果、単なる亜流作品に留まらない独自のカラーを第1作目にして確立し、後のシリーズの礎を作り上げたことは特筆すべき点であろう。


余談

  • 先述の「マヒした」→「いのちをうばわれた……」の超凶悪コンボは、全体マヒ技の名前が「ブラスター」になっただけで次作でも引き継がれる。
    • ただ「そのモンスターはだいぶ終盤にならないと出ない」「出現数も少なくなり最大で6体(タフさでは増しているのであまり意味はないかも知れないが)」「魔法防御をとことん鍛えまくることで対処可能」と、その脅威はだいぶ軽減されている。
    • また同名の「マインドブラスト」は『III』で復活するが、それの使い手はボス1体のみで、死の追加効果も持っていないのでそれほど脅威ではない。また一応こちらも多少運に左右されるが使用可能。
      一方で「ブラスター」は『IV』で再度復活した際、そのものに即死効果が加わり「マヒまたは即死*6」となった。何故か「打撃追加効果での死」の要素が混じった形になった。
  • 本作の白魔法「デスペル」は本来の意味は「デ スペル」であって「デス ペル」ではないのだが当時のRPGの代表格『ドラゴンクエストシリーズ』では、下位の名前に何かを付加するのが恒例だったことで説明書のない中古購入者などは黒魔法「デス」の強化版という誤解した人もいた。
    • 『II』でも存在するため同様のケースで同様の誤解を生じさせたことがあった。
    • 文字数の有効範囲が広がった『IV』で「ディスペル」と誤解のない名前になった。
    • 『III』では似た位置付けの魔法は黒魔法として「イレース」がある。
  • 当時としては画期的な要素を多く取り込んだ意欲作ではあったが、発売前はあまり評判になっていなかった。
    • ドラクエとはまた異なる幻想的かつリアルなファンタジー世界がパソコンマニア層のRPGファンをひきつけたことで徐々に知名度と売り上げを伸ばしていったという。
  • 週刊少年ジャンプの当時のゲームコーナー「ファミコン神拳」におけるレビューではかなりの低評価であったが、発売後にその際の記述がおかしいとして問題視された。
    • ちなみにコーナー担当の1人が堀井雄二であったため、ライバル的存在への攻撃と目された。ファミコン神拳によるこきおろしは続編でも展開されるが、ファミコン神拳の後継企画である『芸魔団』では新作情報(『V』『VI』)を取り上げたり開発陣へインタビューしたりと、ファイナルファンタジーシリーズへの歩み寄りを見せている。
    • 後に「日本初のネガキャン」と揶揄される程の酷さで、ジャンプ以外でもコーナー担当者達はファイナルファンタジーをこき下ろす批評をおこなっている。
      • 特にキム皇に関しては、他紙ファミリーコンピュータマガジンですら『II』までこき下ろしで、しかも、このゲームカタログに書かれている様な問題点を掲げずに「嫌い」という一点でのレビューはかなりの不評であった。
  • ドラクエIII』の発売延期に救われたタイトルとしても有名。
    • あちらの当初の発売予定とほぼ同時期に重なっていたため、『ドラクエ』側が延期しなかったなら『FF』は本当に幻想のまま隠れた名作として終わっていたかもしれない。実際にはあちらが延期してくれたおかげで、RPGというジャンルへ興味を示した一部のマニアを余分に呼び込む結果となった。
      • クリスマス直前という絶好の商機を、同ジャンル最大のライバル抜き、かつ話題性だけは急騰中という好条件で迎えられたことも大きい。結果として『FF』は日本が世界に誇るRPGシリーズとなった。
  • この頃のスクウェアは経営が非常に苦しく倒産寸前の状態で、「本作がヒットしなかったら会社を畳む」という話が出ていたほどだったという。まさに『ファイナルファンタジー』というタイトルにふさわしく土壇場でスクウェアを救ったソフトと言えよう。
    • ただし、製作者の坂口氏は「会社が当時苦しかったのは事実だが、Fで始まる単語ならなんでもよかった」と命名に直接関連はないとして否定するコメントを出している。
    • 命名を「最後の夢を託すー」としたにしては、音楽以外が外注多めである。
  • 「デスマシーン」というレアモンスターが存在する。
    • エンカウントは終盤のダンジョンの短い一本道のみ、しかも電源を入れてから100回以上戦闘しないと遭遇すら出来ないが、その強さはそのダンジョンのボス以上で、運悪く先制攻撃を仕掛けられたら一瞬で壊滅状態になることも。
    • 魔界塔士Sa・Ga』及び『Sa・Ga2 秘宝伝説』では全く同名で容姿も類似したボスキャラが登場している。
  • 船で上陸できるのは本来なら港に限られるが、船とカヌーを所持していてかつ川と海が繋がっている箇所ならば、海上の船から川のカヌーに直接乗り移って移動できる。つまり河口が港の代わりになる。
    • バグのようにも見えるがストーリー進行が破綻する箇所はなく、そもそも説明書の乗り物紹介にも河口からカヌーに乗って移動している写真が使われているのでれっきとした仕様である模様。後の移植版でも再現されている。
  • 『Sa・Ga』2作も後述の版権問題となった上記の「ビホルダー」が「ビホールダー」と呼称が若干違うだけで登場しているため影響を受けている。
    • 本作では「ビホルダー」が「イビルアイ」で、「デスビホルダー」が「デスアイ」だが『Sa・Ga』では「イビルアイ」は「イーブルアイ」と呼称が微妙に違う形で既存だったため「ビホールダー」が「デスアイ」となった。
  • III』以降の後年作品ではいずれも「飛空艇」で呼称が統一されているが、実は本作と次作の時点では「飛空船」であった。
    • ただ本作の攻略書籍では一部「飛空艇」表記が使われているものもある。
  • また上記飛空船入手に必要なアイテム「浮遊石」に関しても、前年公開されたスタジオジブリのアニメ映画『天空の城ラピュタ』でヒロインのシーダが持っていた「飛行石」と似たようなニュアンスとして被っていることもあり、これに関してもごっちゃにした名称を誤認されがち。

移植

2000年代に入ってから多くの機種に移植されるようになったが、同時代の他機種移植はMSX2版(1989年12月22日発売)だけである。
しかもスクウェア自身の手による移植ではなく、他社(マイクロキャビン)によるものであった。

なお、オリジナル版(厳密には下にも書く通り『I・II』版)はWii/WiiU/3DSのバーチャルコンソールで、PSリメイク版はPS3/PSPのゲームアーカイブスで配信されてもいる。

MSX2版

  • 1989年12月22日発売。サウンドはFM音源対応で強化されたが、スクロールが劣化していたりROMカセットでなかったりのため、ゲームとしてやり辛いモノに。
  • ゲームを起動するとウィンドウのベースカラー(最初のメッセージの背景色)が何故か水色。同時発色数がファミコンより多めなのでBGキャラクタパターンがアレンジされ綺麗になっている。
  • 一方でスクロールはガクガク*7であり、戦闘ごとに長いディスクアクセスのある仕様(ファンファーレを鳴らすのにもアクセスあり)で快適とは言いがたいものだった。
  • セーブ用に空きディスクを1枚使う。これについてはディスクの所持数が許す限りバックアップ用や別パーティー用にセーブデータを増やせる利点になったが、1枚に複数セーブは出来ない。
  • モンクの性質が全く異なる。素手の攻撃力が成長しない代わりに武器装備時でも攻撃回数が倍増する。装備制限は同様なので、序盤と最終盤に特化した癖の強いジョブに。

FC版『ファイナルファンタジーI・II』

  • 1994年2月27日発売。ニューファミコンに合わせて発売された、FC版I・IIを1本のソフトに収めたカップリング作品。簡易的な攻略本も付属。
    • 同時期にSFCリメイク版『ドラゴンクエストI・II』が発売されていたこともあり、本作もそのタイトルからリメイクと勘違いされることもあったが、実際はバンドルにした復刻版である。
  • タイトル画面で両タイトルを選択する方式で、内容はオリジナルであるFC版から基本的に変わらないものの、Iは諸事情(版権問題)によりビホルダーとデスビホルダーのグラフィックのみが差し替えられた。ゲーム中のモンスター名は変わっていないが、ソフト付属の攻略本では名前も変わっている。
  • 余談だが『II』のほうでもオープニングの脱字が修正されている。バグは修正されていないが、付属の攻略本で注意を促している。
  • バーチャルコンソール版はこちらの移植が準拠となっている。
  • 既存作のカップリング版ながらテレビでのCMも行われた。ただしゲーム画面は一切出てこないものだった。また、これは全てのファミコンソフトで最後のCMとなった。

WSC版

  • 2000年12月9日発売。『FF』初のリメイクである。グラフィックは完全に描き直され、より遊びやすい仕様に変更されている。WSCのキラータイトルとなった。
  • 詳しくは本項内で後述。

PS版

  • 2002年10月31日発売。前述のように一部の仕様はFC版に逆戻りしている。
  • WSC版をベースにグラフィックやBGMを強化。オープニングムービーやモンスター図鑑、ギャラリーモードも追加された。
  • メモファイルによるクイックセーブ&ロードに対応。移動中ならどこでもセーブでき、電源を落とさない限り何度でもロードできるので難易度は低下。
  • レベルアップが早く魔法の使用回数が大幅に増えたイージーモードも搭載。

ケータイアプリ(imode・EZアプリ)版

  • 2004年3月1日発売。同じくWSC版がベースだが、グラフィックやBGMは一部FC版のものを流用している。

GBA版『ファイナルファンタジーI・II アドバンス』

  • 2004年7月29日発売。テキストやゲームシステムに大きく手が加えられ、オリジナルとはかなり異なる内容になっている。以降のリメイクは基本的にこちらに準拠している。
  • 詳しくは個別項目を参照。

PSP版

iPhone / iPod touch版

  • 上記PSP版とほぼ同一の内容。

Android版

  • システムやゲームバランスはPSP版がベースだが、追加ダンジョンなどがオミットされている。

3DS版

  • 2015年1月21日発売。3DSの立体視表示に合わせてグラフィックが若干作り直されている程度で、基本的にはPSP版とほぼ同様。
  • ファイナルファンタジー エクスプローラーズ』(パッケージ版)の早期購入特典として無料で先行配信された後、単体で1,100円(税10%込)で販売されている。

ピクセルリマスター版(Steam/iOS/Android)

その他
本作が発売されてから年月がかかり、コミック版が発売されたり、ゲームブック版が発売されたりした。

  • コミック
    • ゲームのストーリーをベースに予め用意されたオリジナルキャラクター「パフィ・トルテ」という女性戦士を主人公としたコミック版。作者は海明寺裕。原作では非戦闘NPCのマトーヤが最初から仲間にいる上、セーラやビッケ、さらにはバハムートまでもがパーティーメンバーに加入するなどのオリジナル要素が満載。
  • ゲームブック
    • 双葉社刊『ファミコン冒険ブック ファイナルファンタジー 勇者に光あれ!』と剄文社刊『アドベンチャーヒーローブックス ファイナルファンタジー クリスタル継承伝説』の2冊が出ている。
    • 双葉社版
      • 冒険の舞台は本作の大陸が湖、海が陸地になっている水陸が入れ替わった別世界。主人公はトーイ(戦士)、ロム(シーフ)、マレク(モンク)、ギア(赤魔術士)の4人。エンディングで役目を終えたクリスタルの光が消え、倒すべき闇が別の世界へ逃げ去った事、本作のOPで流れる光の戦士の言い伝えの一説が語られるなど本作への繋がりを想起させるストーリーとなっている。
    • 剄文社版
      • 本作の約200年前、オンラクの海底神殿で目覚めた水のカオスクラーケンを倒すため、謎の少女ティアに導かれ水のクリスタルを捜す旅に出た少年アレフが主人公。エンディングでクラーケンを深手を負わせ一時の平和を取り戻すが、完全に倒す事は出来ず、後世に水のクリスタルを受け継いでいくという本作へ続く内容になっている。

その後の展開

  • 2021年6月に『NINJA GAIDEN』や『仁王』で知られるTeam NINJAとスクウェア・エニックスが共同開発するアクションRPG『STRANGER OF PARADISE FINAL FANTASY ORIGIN』が発表された。
    • 同作には「光の戦士」や「カオス」と言ったワードやタイトルの「ORIGIN (起源)」等、シリーズ第1作である本作を連想させる要素がある。対応機種はPS5/XSX/PS4/One/Winで、2022年の発売が予定されている。

ファイナルファンタジー (WSC版)

【ふぁいなるふぁんたじー】

対応機種 ワンダースワンカラー
発売 スクウェア
開発元 KAN NAVI
発売日 2000年12月9日
定価 4,800円(税別)
プレイ人数 1人
セーブデータ 8個(バッテリーバックアップ)
備考 WSC同梱版:2000年12月9日/9,999円(税別)
判定 良作
ポイント FF初のリメイク作品
ワンダースワンのキラータイトル

概要(WSC)

『ファイナルファンタジー』のワンダースワンカラーによるリメイク。

当時、『FF』シリーズは既に『ドラクエシリーズ』と並ぶ大作シリーズであったが、ドラクエシリーズでは原点となる『I・II』がSFCでリメイクされていたために触れやすかったのに対し、『FF』シリーズで『I』を遊ぶにはFC版のオリジナル、またはカップリング移植の『I・II』をプレイするしかなかった。
これはスクウェアの「作品をリメイクするぐらいならば、そのリソースを使って新作を作った方がよい」という方針*8により、リメイクそのものに消極的だったためであるが、2000年に入るとFC(及びニューファミコン)は完全に旧式のハードとなってしまい、プレイするハードルが高くなっていた。
そんな中、新たに発売された携帯機のワンダースワンカラーにて『ファイナルファンタジー』『II』『III』のリメイクが発表され、『I』から順に発売される事となった。

それまでの移植とは異なり、シリーズで初めて大々的なリメイクを行ったものであり、グラフィックをはじめ、ゲームバランスやインターフェースがSFCシリーズ(『IV』~『V』付近)に近い物へと改良されている。


特徴(WSC)

  • グラフィックを刷新
    • グラフィック全般を刷新。各ジョブのグラフィックはオリジナル版ではなく、現行のシリーズにおけるイメージに沿った物へと描きかえられている。
      • たとえばFC版の「シーフ」は水色の髪をした厳つい雰囲気の男で、後に『II』のガイへと流用されているが、WSC版ではバンダナを巻いた身軽そうな若者風で、『V』のシーフ(バッツ)に近い姿になっている。
      • 上級職になった際も頭身が上がるのではなく、服装や外見が大きく変わるようになった。ゴリマッチョなFC版のグラを懐かしむプレイヤーもいるとか…。
    • モンスターのグラフィックも描きなおされており、概ねは原作の構図と同じだが、中ボスのアストスが雑魚敵のダークエルフの色違いではなく、巨大なボスとして描かれている等の違いがある。
      • 特にエレメントカオス等の巨大ボスは面影を残しつつも、より詳細に迫力のあるドット絵に描きなおされている。
  • BGMの追加
    • イベントシーンのBGMや教会BGMなど新規BGMが追加。ボス戦BGMは全てFC版戦闘BGMのアレンジで4曲追加されている。
      • 後のPS版以降のリメイク作品ではBGMにイントロが加わるといった大きくアレンジが施されたが、本作のBGMは譜面的にはFC版に近い物となっている。
  • インターフェースの改善
    • 素早く移動する「ダッシュ」と、ターゲットが死んだり逃げた際に別の敵を攻撃する「オートターゲット」を実装。
    • オリジナルでは効果がなかった、戦闘中の「レイズ」「アレイズ」「ストナ」「きんのはり」を有効にする事も可能。
      • 上の機能は、使用の可否を任意に切り替えることが可能。オリジナルの仕様に近づけたければ切ることも出来る。
    • ショップの内部の追加、および仕様の改善。特にアイテムのまとめ買いが出来るようになったのでポーションや毒消しを揃えやすくなった。
      • また、購入処理のテンポの悪さも解消された。
    • セーブデータの増加。8つのファイルを自由に選んでセーブが可能。
      • セーブの手段自体はFC版と同様。宿に泊まるか、フィールド上で宿泊アイテムを使用することにより記録できる。
  • 演出の強化
    • 一部のテキストの変更。
      • 基本的にテキストはFC版に忠実ではあるが、ボス戦前等の重要イベントはテキストが変更されていることが多い。
        …と、いうのも、FC版はメッセージウィンドウがスクロールしないため、どうしてもセリフを1ウィンドウ内で収める必要があり、駆け足気味でストーリーの背景がつかみにくかった*9
        これにより、一部のボスが喋るようになったり、より詳細な背景が描かれるようになった。
    • イベントの強化
      • コーネリア王に橋を作ってもらうなどのシーン等の追加イベントに加え、ムービー風のイベントシーンが追加された。
      • リュートを使用すると先頭のキャラが奏でるなど、キャラクターのアニメーションも行われるようになった。
    • エフェクトの強化
      • 各武器の太刀筋や魔法のエフェクトにも専用のものが用意され、全体的に見栄えが良くなった。
  • 初心者へのフォローの追加
    • FC版では開始時にイベントを無視していきなり最初のボスであるガーランドに挑む事が出来たが、WSC版ではコーネリアの街に入った時点で入り口に兵士が配置されてコーネリア王の下へ連れていかれるイベントが追加された。
      • 加えてコーネリア王からガーランド討伐を依頼されるまではカオス神殿の扉が通れなくなり、ストーリーが全くわからないまま進むという事が無くなった。
    • 追加された宿の内部マップにはシリーズお馴染みの「初心者の館」に相当する施設があり、システムやモンスターの詳しい解説を聞く事が出来る。
    • アイテムや装備品等を使用した際の効果がヘルプメッセージで表示されるようになったため、攻略情報なしでも魔法アイテムの存在がわかるようになった。
  • バランスの調整
    • 装備品が「武器防具をそれぞれ一人4つずつ」という個人管理ではなくなり、共通でかつ無限に所持できるようになった。魔法アイテムを保持しやすくなり、難易度の低下に一役買っている。
    • 覚えた魔法を忘れることが可能になったため、不要な魔法を消して別の魔法を買い直すことができるようになった。
    • FC版ではバグにより動作していなかった魔法が一部修正され、正常に動作するようになった。
      • これにより空気魔法だった「ストライ」で攻撃力の底上げを図れるようになり、一気に主力魔法に転じる事になった。
      • 自身の命中率と攻撃力を底上げする「セーバー」も効果が発揮できるようになり、使うとセーバーが発動する「きょじんのこて」もアイテム管理の仕様変更により保持しやすく、「ナイト」等の主力をお手軽に底上げする事が可能。本来の使用者である黒魔導士ではやっぱり使わない魔法だが…
      • また、FC版では効果が全く無かった「シェイプ」は正常に敵単体の回避率を下げるようになった。一方でバグにより、敵全体の回避率を上げる「シェイラ」には修正が入っておらず、全てのバグが取りきれたわけではない。
        もっともストライやセーバーと違い、そもそも本作には回避率の高いモンスターがほとんどおらずシェイプ・シェイラ共に使い道が薄いものであったため、重大視されることはなかった*10
    • 一部のモンスターの行動パターンの変更。
      大量に出現して絶えず全体魔法の「ファイラ」を使う難敵だった「ラクシャーサ」の使用魔法が単体攻撃の「ファイア」に弱体化する等、一部のモンスターの行動パターンが緩和されている。
    • 一部のボスのHPが増加。
      • FC版に比べ、HPが倍増しているためにボスの手ごわさが増した。それでもスーパーモンクの一撃で沈む点はあまり変わっていないが。
    • クリティカル率や属性にまつわる一部のバグや設定ミスがきちんと修正されている。
      • 「シャープソード」は能力が低い代わりにクリティカル率が高いという設定だったため、これで初めて光を見た。後の移植版では、(おそらく意図的に)FC版と同様の設定に戻されてしまいガッカリ武器に舞い戻っていたが、ピクセルリマスター版では再び正しく設定されている。
      • ただし、この修正により、ほとんどの武器のクリティカル率はFC版と比べて低下し、しかも後半の武器ほど低下幅は大きくなってしまっている。この修正で強化されたのはほぼ「レイピア」と「ヌンチャク」だけと言っていい。
        クリティカルヒットは防御力無視の追加ダメージなので、敵の防御力が高くなる後半ほど重要度は高くなるのだが、この修正のせいで目に見えて中盤以降の武器火力は低下してしまっている。終盤の武器で言えばエクスカリバーは約8分の1、マサムネでも約4分の1の発生率に…。
    • 逃走判定の計算式の仕様変更。
      • 「隊列の1番目か2番目のキャラの幸運が16以上あれば(逃げられる敵構成であれば)100%確実に逃走可能」であったFC版と異なり、確実に逃走可能な手段はなくなってしまったものの、17以上の幸運の数値や3番目&4番目のキャラの幸運にもちゃんと意味が出てきた他、FC版で完全なる死にステータスであった知性が逃走率に関係するように。
        これにより、黒魔の無意味に高かった知性にも(他ステータスに比べると有用性の低さは否めないものの)一応意味が出てきた。
  • その他の変更点
    • ビホルダーとデスビホルダーの完全差し替え
      • 版権的に問題があった2体だが、本作では「イビルアイ」「デスアイ」に改称され、グラフィックも含めて完全に差し替えられた。
    • 15パズルのクリアタイムが記録され、更新するたびに多額の賞金を得られるようになった。
    • 毒を受けた際などに順番が強制変更されるような事は無くなり、煩雑さが改善されている。

評価点(WSC)

  • オリジナルを尊重しつつも非常に快適。
    • 様々な改善によってプレイしやすくなったものの、必要以上に易しくはなっておらずにFC版譲りの骨太なバランスを楽しむ事が出来る。
    • バグや設定ミスの大半が修正され、それでいて基本的な仕様や設定面は概ねそのまま維持されている。おそらくはこのWSC版が、FC版の本来目指していたバランスに最も近いFF1だろう。

問題点(WSC)

  • 一部のバランスの悪化
    • 一部の敵はFC版よりも強化されており、特に最難関のダンジョンである「氷の洞窟」に登場する「ダークウィザード」の行動パターンが「1ターン目にデス」から「1ターン目にファイガ」に変更されており、凶悪さが増した。
      FC版ならば一人に対する即死魔法で済んでいたのが、食らったら即全滅級の全体魔法に変更されており、ただでさえ難しい「氷の洞窟」の難易度が跳ね上がった。
      • もっとも、既にFC版の時点でダークウィザードは2ターン目にファイガと同じく強力な全体攻撃魔法であるサンガーを使ってくる非常に危険な敵であったため、正直なところそこまで大きく変わりはないのだが。
    • ランダムエンカウントの確率が全体的に引き上げられた。これは以降のリメイク版にも引き継がれている。
      • FC版の歩数エンカウントが廃止され、完全なランダムエンカウントになった。しかもそのエンカウント率がFC版と比較して顕著に高く、エンカウントしない最低保障歩数も一切存在していないため、数歩歩くだけで次のエンカウントが発生するなんて事態が起こるようになってしまっている。
      • 更に原作では敵パーティのエンカウントパターンもマップによって固定であったため、上級テクニックではあるが危険な敵を意図的に回避して攻略することも可能な仕様だったのだが、こちらも修正されて完全にランダムになっている。
    • 前述したボスのHP倍増により味方側にも耐久力が求められ、結果としてジョブ格差がさらに広がってしまった。特に選択肢の限られる序盤において顕著である。
    • 逃走判定において「幸運」パラメータの比重が減り、「敵から逃げやすい」というシーフ本来の特性がほとんど実感できなくなった。
      • ただし、比重が減ったとはいえ逃走判定には今までと変わらず幸運も関係している他、幸運が16以上に達すれば別にシーフでなくともよかった幸運にちゃんと意味も出てきていると、一概に悪い事ばかりではないのだが。
    • 回復アイテム「ポーション」のメニュー画面での使用時の回復量がFC版の固定30から16~32に変更されており、期待値にして2割ほど減少してしまっている。長期戦になるダンジョン攻略ではかなり響く。
    • 魔法アイテムが持ち放題になったことで、白魔導士と黒魔導士の立場がより悪くなってしまっている。
    • 上記のエンカウント率上昇やボスのHP上昇、クリティカルバグ修正に伴う火力の低下により、システムに慣れたプレイヤーからすると全体的な難易度はFC版よりやや高い。
  • 良くも悪くも忠実な点
    • 魔法の使用回数の最大は9のままであったり、シーフの弱さも据え置き(それどころか、前述のように変更点の多くが結果としてシーフに対して不利に働いている)であったり。追加シナリオや周回プレイ等のおまけ要素も、特に追加はされていない。
    • 内容面がFC版ほぼ据え置きのままで、なまじ操作性が快適になったため、WSC時代のゲームとしてはボリューム不足が感じられる。初見であっても、よほど苦しい編成にしない限り、30時間前後くらいでクリアできる。
      • 本作に慣れたプレイヤーなら、レベルを最大まで育てるようなプレイをしても十数時間で攻略しきれる。
  • 個性的なメッセージの削除
    • アイテムや魔法を使用する際の「どくだなんてかっこわるいですよ!」「げげっしんでしまった!」といった妙なテンションのナレーションが悉くシリアスなものに差し替えられてしまった。
    • 店のメッセージもウィンドウの仕様が変わった事により変更された。オリジナルと同じく軽いメッセージではあるが、簡素なものとなっている。
    • おもしろいメッセージだったために差し替えられた事を惜しむユーザーが多数いた。一応、噴水や井戸等を調べた時のメッセージなどは変更されていないため、名残はある。

総評(WSC)

待ち望まれていた原点のリメイクであり、クオリティも高く、また久々の2Dドット絵のFFシリーズでもあった事もあいまってこぞって売れた。
結果的にワンダースワンカラーの最高売り上げを記録し、見事にハードのキラータイトルとなった。


余談(WSC)

  • PS版や携帯電話(フィーチャーフォン)版は本作がベースであり、以後の『FFI』のリメイクの基礎となった作品でもある。
    • ただし、後にゲームボーイアドバンスで発売された『ファイナルファンタジーI・II アドバンス』は演出やグラフィックこそこれが基準となっているものの、システムが一新されており、メッセージの大規模な改変が行われているためかなり別物となっている。
      以降GBA版を境に、後の『I』のリメイクは新システムおよび新テキストに準拠しているため、元祖に近いリメイクは実質的にWSC・PS・携帯電話版までとなる。
  • 本作と『II』は無事にワンダースワンカラーにてリメイクが発売されたが、WSCの不振から『III』だけは発売されずに終わり、後にDSで内容が大幅にアレンジされ3Dグラフィック化したリメイクが発売された。
    • この未発売に終わった『III』は本作と同様にFC版の色を強く残したリメイクであり、3D化とともに主人公たちも個性化されたDSリメイク版とは明らかに異なる。戦闘画面のスクリーンショット等も公開されていた。
    • ちなみに、WSCには『IV』も移植という形で発売されている。

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最終更新:2024年01月28日 17:25

*1 「飛空船に影を入れる仕様」は開発者の坂口氏をして無理と言わしめたものの、ナーシャ・ジベリ氏は相談を受けてから1日で作り上げた上に4倍速まで実現させたという逸話がある

*2 もっとも、持ち替えに対応し始めたのも後に出た『III』辺りからではあるが。

*3 2000年以降は、旧AD&Dが現D&Dを名乗っており、旧D&Dは『クラシック・ダンジョンズ&ドラゴンズ(CD&D)』と呼ばれている。

*4 D&D日本版の版権元から抗議を受けた事で単行本では手足を生やしたうえで「鈴木土下座ェ門」と言う名前に変更されたという騒動。

*5 2010年のアメリカ小説『ニンジャスレイヤー』にも、ビホルダーという名前のニンジャ(人間)が登場している。

*6 つまり、マヒならラッキーということ。範囲は単体対象に弱体化。

*7 通常移動時は8ドット単位、飛空船使用時は16ドット単位。

*8 FFの生みの親である坂口氏談。

*9 多数の台詞を喋らざるを得ないラスボスは一度話すごとに一歩ずつ後ろに下がるという苦肉の策で実現していたほど。

*10 実際、せっかくバグの直ったシェイプを有効活用できる場面はほぼ無い。