火の鳥 鳳凰編 我王の冒険
【ひのとり ほうおうへん がおうのぼうけん】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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メディア
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1Mbit+64kRAMROMカートリッジ
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発売元
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コナミ
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発売日
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1987年1月4日
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定価
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5,300円
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判定
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良作
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ポイント
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原作を踏まえるとカオス
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手塚治虫関連作品シリーズ
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概要
故・手塚治虫の手がけた大長編漫画『火の鳥』の内、1986年に劇場版アニメが公開された「鳳凰編」を題材としたアクションゲーム。
「帝の命を受けて我王が火の鳥の彫刻を造ったが、それがバラバラになったため、時を越えて探しに出かける」というストーリーになっている。
特徴
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横スクロールのライフ制アクションゲームで、同社の『コナミワイワイワールド』同様、探索要素の強いアクションゲームとなっている。各ステージに散らばる彫刻の欠片を全て集めればゲームクリアとなる。
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3つの時代を行き交う
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ステージは全部で16。全8ステージの「大和」、全5ステージの「来世」、全3ステージの「太古」の3つの時代があり、ステージはそれぞれにおいてループ構成になっている。
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ワープゾーン
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異なる時代のステージに行くためにはあちこちに隠されているワープゾーンを使うことになる。ワープゾーンのヒントはなく全て地形に隠されているので自力で発見していく事になる。
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行先も完全固定ではあるが一方通行なので入って覚えるしかない。
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大和のステージ8も存在するが、ステージ7をクリアしてもステージ1に戻る仕様であり、どこかにあるワープゾーンから来るしかない。(大和8面は最後のピースである火の鳥の顔が有る特別な面の扱い。早い段階で大和8面に向かう事も出来るが、大和8面をクリアすると大和1面に行く仕様)。
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ボス
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多くのステージの最後には彫刻を守る形でボスが待ち受けている事が多いが、ステージによってはザコ敵が配置されているだけだったり、上から何かが適当に降って来るだけだったりもある。
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制限時間
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残り時間が0になるとミス扱いだが、とても長いので時間切れに陥るという事はまずない。
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飛び道具のノミ(工具)
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我王が使う唯一の攻撃手段である。左右と真上の3方向に投げる事が出来て連射も効くが射程は短い。
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ザコ敵は全て1撃で倒せて、更には鬼瓦に変化させるという特質がある。
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鬼瓦はそのままとれば補充も出来る。また、横に進んで行き地形に当たるとライトグレーの鬼瓦になってその場に固定される仕様である。
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鬼瓦
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我王を語る上で欠かせないのが鬼瓦。↓+攻撃ボタンで我王の目の前(空中では真下)にライトグレーの鬼瓦を置くことができるのだが、このシステムがなかなか面白く、ボスの周りを鬼瓦で囲んで封殺したり、ジャンプで越えられない溝に鬼瓦で橋を架けて渡る、といった芸当が可能。
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空中で設置した直後にジャンプできるので、うまく操作すれば多段ジャンプのような動きもできる。
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鬼瓦は最大99個まで持てる。敵を倒すとその敵が鬼瓦に変わるので、それを手に入れて使用回数を確保(最大99個)する必要がある。なお鬼瓦は一定時間経つと設置した物と同じライトグレーに色が変わりその状態になると固定され取る事は出来なくなる。
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アイテム
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ステージに配置されている宝箱を破壊するとアイテムが出現する。尚、特定のブロックに隠されている宝箱も用意されている。また、敵から出た鬼瓦が固定される前に攻撃し続けるとランダムなアイテムに変化する事がある。
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アイテムはストックする事は出来ず、効果はその場で発揮。
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アイテムの種類
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鬼瓦(赤色):鬼瓦の所持数が10増える。最大99個まで。
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主に足場を作ったりする事に使うが、敵の動きを制限するという遊び方も可能。
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貝殻:ライフの上限が1増える(初期5→最大8)。ただし上限が伸びた部分はその場では回復しないので、おにぎりを取ってHP満タンにするまで実質的な効果は得られない。
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効果はステージをまたいでも持続するが、ミスをすると貝殻の効果は失われる。
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おにぎり:ライフが全回復する。
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鏡:一定時間透明状態(キャラ自体は白一色になる)になり、敵や壁をすり抜けることができる。壁の中で効果が切れた際はそのまま右へ押し出される形で地形から出る仕様。このあたりはスクロール仕様で遊べたりもする。
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財布:赤い袋のようなアイテム。500点獲得。
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羽根:一定時間我王の服の色が変わって無敵状態になり、触れるだけで敵を倒すことができる。触れて倒すと同時に鬼瓦も獲得できる。
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ちなみに、羽の近くで敵が鏡を落とした際もしくはその逆になるが、鏡と羽の効果は重複したりできる。
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数珠:取った瞬間の画面内の敵を全滅させる、倒された敵は鬼瓦となって降ってくるが取りそこなった物が障害物になる事もある。
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勾玉:一定時間敵の動きや物の落下などを止める。
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ただし当たり判定は残っており止まっていても敵や敵の弾に触れるとダメージは喰らう。また、鬼瓦の状態にしてもその場所にとどまっている効果もみられる。
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我王人形:1UPアイテム。
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ブーツ:太古の氷地形の上でも滑らなくなるようになる。一か所のみ存在。
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コナミマン:ライフの上限が最高値になりかつライフが全回復し、鬼瓦のストックが限界値の99個になる。
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効果は非常に強力だがその分数も少なく全編を通して各時代に1つずつ合わせて三か所に存在するのみである。また、手に入れるのは危険を伴ったり素早い操作を求められるので、これが本作で最も難しい難所とまで言われている。
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評価点
アクション面
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鬼瓦を利用して地形や敵を乗り越えて進んでいくシステムが独創的。
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ボスもまた多様であり色々な動きを見せる。使い回しも一切ない。とはいえ、接近して打ち込めば簡単に倒せるのでそこは単調である。
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難易度はファミコン全体から見てもかなり抑えられており遊びやすい。
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コンティニューも無制限で、ルートも最適解を辿れば20分かからずにエンディングまで到達出来たりもする。
豊富な探索要素と自由度の高いルート攻略
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アイテムの種類こそそれほど多くはないが、隠しアイテムや取得に工夫が必要なアイテムが多数存在し、それらを見つけることで大幅に攻略を有利にできる。
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各時代へワープするポイントも多数隠されており、自分なりの最適ルートを探す楽しみもある。
高品質な素材
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敵キャラや背景などのグラフィックは、ファミコンとしては描き込まれている。
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特にエンディングの火口から火の鳥が飛び立つシーンは、映画版のテーマ曲を再現したBGMとあわせて必見。
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ステージも多彩で、一部氷のステージで滑りやすい事を除けばギミックの類は無いのだが色々な場所を回っている実感をさせてくれる。
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BGM
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大和、来世、太古ごとに専用の曲が用意されており印象的なものが多い。ボス戦のBGMも高品質。
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効果音も品質と量ともに高品質。
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最初にフクロウが登場する際はその声を表現。そして、ノミを撃つ、宝箱を開ける、ブロック破壊、ジャンプする、被弾、鬼瓦設置、アイテムの取得の際は種類に応じて異なるものが用意されている。
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大和8面は同じ「大和」という括りでも他の7面とは違う専用のBGMが使われており、全16ステージ中でも唯一地震が起きているという別格な感じが出せている。
賛否両論点
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難易度は控えめ
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ザコ敵は全てノミ1撃で倒せるし、敵からの攻撃も全て1ダメージで危険度は高くない。地形的にも大きな難所はなく鬼瓦で簡単に越せてしまうし、ボス戦も撃ち込めば簡単に倒せてしまうなど、上級者からすると物足りないかも知れない。
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また、ラスボスもいない。
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2周目もあるが、敵の動きが速くなったというだけで特に張り合いはない。
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我王はしゃがみ攻撃ができず、下方向への攻撃手段もない。
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我王のノミ攻撃は、上半身(地面から1ブロック分上方)から発射される。
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しゃがむことはできるのだが、↓+攻撃ボタンが鬼瓦設置に割り当てられている為、下向きへの攻撃やしゃがみ攻撃は用意されていない。
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そのため、背の低い敵にはノミが当たらず、当てるためにはより低い位置から攻撃する必要がある。
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地面に落ちている宝箱についても同様で、同じ高さからでは中身を取り出す事が出来ない。
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こうして見ると、ゲームを始めたばかりのプレイヤーにとっては理不尽なストレス要因に思えるが、この仕様を逆手に取った敵やアイテムの配置が多数見られ、その意図が徐々にわかるようになっている。
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地面を這う背の低い敵は倒さずにジャンプで避けるといった、攻撃一辺倒にさせないバランスになっている。ただ、集団で足元をうろつかれるとダメージを避けられなくなる場面も。
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段差のない地面に落ちている宝箱は一見すると取得できないように見えるが、必ず何らかの取得方法があるためプレイヤーに攻略を考えさせる要素になっている。例えば、太古時代のステージ1にはちょっと難しい方法で下段へ回り、そこからノミを当てるという宝箱もあるのが面白い。中身はかなり良いものが入っている。
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他にも、地面に隠された破壊可能ブロックを掘って下段からノミを当てたり、わざと穴に落下し、死亡寸前で鬼瓦を出して踏みとどまり、そこから攻撃するなど、高度なテクニックによりゲームを有利にできる場面も。
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2ボタンのゲーム機では仕方のないところではあるのだが、『ロックマン』にしゃがみ動作がないことと同様、攻略に選択肢を持たせるための意図的な仕様であると思われる。
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大和ステージ8の扱い
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前述の通り、大和時代のステージ8は通常の方法では到達することができない、特別な隠しステージとして扱われる。
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そして、そこに進入するためのワープゾーンはゲームを通して一箇所しか存在しない。
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アクションの難易度は控えめのため、多くのプレイヤーにとってクリアのための最大最後の障壁はこのワープゾーン探しになりがち。
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ノーヒントで全15ステージしらみつぶしにワープゾーンを探す作業は大変な労力を要する反面、見つけたときの達成感もひとしお。さらに、大和のステージ8は先述の通り特別な演出を有しているので、自力で発見できた人にとっては特に印象に残りやすい。
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あくまでも「初見の人にとっての」最後のステージになりやすいだけであり、最初からワープゾーンを知っていればルートの途中に組み込むこともできるため、それを踏まえた最適ルートを構築することもできる。
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ザコ敵の高速反転
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左右に動くだけのザコ敵は1マスだけの地形では高速で左右に反転する。見ていて面白いか変だと取るかはプレイヤー次第。
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こういうのは意図的に鬼瓦で誘導すると思った人もいるが、普通にプレイしていてもよく見かける光景である。
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我王のアクション
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原作には無かったアイテムと挙動であるが、これらを面白いと取るか、違和感と取るかはプレイヤーにおまかせしよう。原作とかけ離れた要素ばかり目立つのは仕方のないところである。
問題点
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重要なアクションにもかかわらず操作が特殊で気づきにくいものがある
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真下のブロックや鬼瓦など壊せるオブジェクトを壊すためには「上に乗って素早くしゃがみジャンプ3回」という変則的な操作が必要。もちろん説明書には書いてあるが、他のゲームでは見られない操作なので戸惑ったプレイヤーもいる。
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アクション面においては、下方向に移動し攻撃しなければ致命的となる状況はほぼ無い。
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ワープゾーンはほぼ全て破壊可能ブロックに隠されている(例外あり)のだが、この操作を使わないと見つけられない箇所が多数あり、しかもクリアに必須なワープゾーンもその中に含まれる。つまり、この操作を知らなければクリアできない。
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とはいえ、操作が分かっていればとりわけ高度な入力を求められるわけでもないので慣れたらかなり楽しいゲーム性が理解できると思われる。
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「破壊できる壁にワープゾーンやアイテムがあり、しゃがんで3回ジャンプで壊せる」ということは説明書に明記されている。当時のFCゲームでは説明書を読んでいる前提で遊んでもらうゲームは珍しくなかった。
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目に悪い表現
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来世のボス戦では背景やブロックの色が激しく変わったり、大和の8面は地震で揺れているため目が疲れやすい。
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大和8へのルートが少し面倒
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入り口の場所がステージクリアの手前にあるので、そのステージをクリアしてから同じ世界をもう1周して戻ってくるのは手間と言える。
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ボスが何度でも復活する
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すでに倒して彫刻の一部を取り戻していたとしても再度登場する。こう言うと厄介そうだが、一度クリアしたとこは再訪する事はないしどのボスも簡単に倒せてしまうので大きな問題にはならない。
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とはいえ、大和8に行く際はどうしても、骨のボスを2回倒すのは少し面倒。
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ちなみに、彫刻を既に持っている場合はザコ敵よろしく鬼瓦を出すのはシュールである。
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また、彫刻の一部が置いてあるだけのステージでは取得した際の演出が再度入る。
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ボスのいない面が後半になるほど多くなる。また16面中4面も同じパターンのラストがある。
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普通に進めると「8面を除く大和→来世→太古→大和8面」という流れになるが8面を除く大和は7面中は6面にボスがいるのに、来世は5面中2面、太古は3面中1面しかボスがいない。大和8面はボス不在と、ラストがヌルく感じてしまいがちになる。
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来世2面、太古1面、太古3面、大和8面の最後が「上からブロックを破壊する敵が降ってくる」というパターンになっている。
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厳密には太古3面、大和8面はそれぞれ地形の特徴があり太古3面はそれが降ってくる区間が長いなど多少は差別化されているものの、ざっくりプレイした感覚では同じようにしか感じられない。
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設定の大幅改変
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このゲームの元ネタとなった「火の鳥 鳳凰編」は、生まれの不幸と世の理不尽への怒りを仏像に彫り込む元大悪党の「我王」と、仕事を認められて政府お抱えとなった「茜丸」という2人の彫師の物語を軸に、命の尊さ、信仰のあり方を描くものであった。
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だがこのゲームでは「帝の命を受けて我王が火の鳥の彫刻を造ったが、それがバラバラになったため、時を越えて探しに出かける」というストーリーになっており、原作とは全く違った話になっている。原作に登場する茜丸やはぐれ者の少女「ブチ」、我王の妻であったが彼の誤解を受けて殺されてしまった「速魚」などの姿がカセットラベルにて確認できるが、ゲームには全く出てこない。我王自身も原作では隻腕だが、ゲーム中では両腕がある。
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この時代によくあった版権作品のアクションゲーム化のための改変と言ってしまえばそれまでだが、悟りを開き生けるものを平気で殺めるそれまでの人生から解脱したはずの我王が小動物や人間にノミ(工具)を投げつけて倒してしまうというのはいただけない改変だろう。さらには亡霊やらミサイルやらスライムやらエイリアンやら恐竜までノミで殺していくというのはもはや原作からかけ離れ過ぎている。
総評
操作性は良好で、鬼瓦を上手く使ったシステムも工夫されている。ヒントが欠けているなど探索において少々不親切だが、ゲーム全体としての出来は決して悪くない。
原作ファンからすれば設定面の改変は賛否両論であろうが、アクションゲームとしては間違いなく良作である。
余談
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ソフトに合わせて食玩が発売されており、我王と中ボス3体がミニプラモ化されていた。
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同年にコナミから『火の鳥 鳳凰編』のゲームが出ている。機種はMSX2。
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主人公は同じく我王。こちらはトップビュー&強制縦スクロールのアクションシューティングとなっており、ストーリー自体もFC版とは別物。
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破壊不可能なブロックに閉じ込められた時や、鬼瓦が無い状態で「ジャンプで脱出できず、敵が来ない窪地」にハマった時などのために時間切れを待つまでもなくセレクトボタンが自殺ボタンになっている。コナミ製のFCソフトには『じゃりン子チエ ばくだん娘の幸せさがし』や『モアイくん』など、セレクトボタンでいつでも自殺(リタイア)できるゲームがいくつかある。
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ステージ開始時には、なぜか、地上ではなく画面上から落下しながら登場するという形で始まる。
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キャラゲーであることを考えると妙な仕様だが、各ステージ地形が様々なので、開始直後から地形に埋まらないようにするための配慮だと思われる。
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原作劇場版の同時上映は『時空の旅人』。こちらも映画公開後にFCソフトとしてゲーム化されたが…詳細は当該記事を参照されたし。
最終更新:2024年01月22日 18:40