ケルナグール

【けるなぐーる】

ジャンル 対戦格闘ゲーム
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 1.5MbitROMカートリッジ
発売元 ナムコ
開発元 ゲームスタジオ
発売日 1989年7月21日
定価 4,900円(税抜)
判定 良作


概要

様々な技を駆使して相手を倒す「対戦格闘ゲーム」の草分け的存在。かの有名な『ストリートファイターII』より2年前の作品ではあるが、『ストリートファイター』より2年後の作品である。

TVCMのキャッピコピーは「ケルナグールで、蹴れ!殴ーれ!」

なお、タイトル画面ではタイトルの冠に「天下一武士」とついているため、正式タイトルが「天下一武士 ケルナグール」である、と誤解されやすいが、ゲーム上の正式タイトルは単に「ケルナグール」である。


システム

基本的な操作方法

  • Aボタンで攻撃、Bボタンでジャンプと、FCにおける一般的なアクションゲームとは逆のボタン配置。十字ボタンの左右で移動、下でしゃがみ。
    • 攻撃時は自身の状態(立ち/しゃがみ/ジャンプ、相手との間合いの差、レバー入れの有無など)と技の習得具合に応じて自動的に技が選択されて出る。
  • 最初からすべての技が使えるわけではない。マイキャラは後述する「修行モード」で様々なイベントをこなし、技を習得していく必要がある。
  • 対戦格闘としては以下に列挙するように珍しい特徴が多い。
    • 複雑なコマンド入力を必要とする「必殺技」や、特定の条件下でないと出せない「超必殺技」が無い。全ての攻撃はAボタンのみで出せる。よって、難しいコマンドを覚えたり入力の練習をする必要がない。
    • キャラ同士の接触判定が無い。ので、重なりあうことも可能。
    • 相手の攻撃を無効化する「ガード」が無い。
      • 相手の技は上手く間合いを調整して避けるか、もしくはそれに失敗して食らうかのどちらかになる。
      • 技のダメージは「出した技の種類」「出し手の攻撃力」「攻撃がヒットした部位」「受け手の防御力」「受け手の状態」などの要因によって変動。条件によってはダメージ0の場合もある。
      • ニュートラル状態で相手の技を受けた場合は、自動で防御のポーズを取りダメージが軽減される。技の動作中は軽減は行われない。また、頭に技がヒットすると受けるダメージが上昇する。
    • 相手を掴んでダメージを与える「投げ」がない。
    • 技がヒットしてものけぞらない。気絶もない。よって永久コンボや一方的にボコられて動けなくなる時間が一切ない。
    • タイムアウトがない。試合はどちらかの体力が0になるまで続く。ただし、セレクトボタンを押すと強制終了させることが可能。その場合は残り体力に関係なく1P側の負けとなる。

対戦モード

  • 「ふたりで たいせん」「ひとりで れんしゅう」「しあいを かんせん」の3モード。
    • 「ふたりで たいせん」は友人同士などで楽しめる2P対戦。「ひとりで れんしゅう」は対CPU戦。「しあいを かんせん」はCPU同士の対戦を見守る、いわゆるウォッチモード。いずれのモードも、あらかじめ用意された15人の拳士と、修行モード(後述)で育てた拳士が使用可能。
    • 15人の拳士はそれぞれ体力・攻撃力などの基本ステータス、および習得している技が皆異なる。これにより拳士個人個人の個性を演出している。

修行モード

  • 基本的な流れ
    • 中華的な世界観の感じられる広大なフィールドを冒険して修行を重ねて主人公を強化するRPG風モード。本作のメインとも言える。
    • 「天下一武士」の額に恥じぬ拳士になれ-。そんな母の願いを胸に、主人公が我が家から出発するところから始まる。
      主人公の初期値はHP10、使える技は「中段突き」のみ。母から渡された「おかね」を所持。
    • 世界には4つの寺、7つの城、数十にも及ぶ町や村、仙人や一般人が住む庵や洞窟などが無数に存在。これらの世界を駆け巡って修行を重ね、技を習得したり、体力などの能力値をひたすら強化する。
    • 大雑把に解説すると、 家を出て4つの寺を回って基本技を習得 → 更に高度な技を習得するために仙人の修行を行う となる。
    • 合間に敵と戦って最大HPを増やす、攻撃力などの能力値を増やすアイテムを探す、各地の城で用心棒や師範代を務める拳士を倒して称号を得る(ガード能力を強化する)、などの作業を並行させる必要がある。
  • コンティニュー
    • 12文字のパスワードでコンティニューが可能。
    • パスワードは我が家、または各町にある五重塔で聞くことができる。
    • 対戦モードでパスワードを入力することで、修行モードで育てた拳士での対戦も可能。
  • 移動
    • 移動の手段は主に徒歩。移動中にBボタンを押しっぱなしにすると高速での移動も可能。
    • 町や村にある「タイホーチェーン」でおかねを払えば、行ったことのある町(村はNG)および我が家へ一瞬で移動することも可能。
    • おかねを持たずにタイホーチェーンに行くと、「わかいもん」との対戦になる。これに勝つと、利用し放題のフリーチケットを得ることも可能。但し相手は相応に強いので、初期状態での勝利はほぼ不可能。また、フリーチケットはコンティニューで消失。
    • 世界中に伸びる道の上は完全な安全地帯で、その上を移動する限り、敵は一切出現しない。(それ以外の場所ではランダムにエンカウントが発生)
    • 敵が出現したらAボタンで戦闘開始。Bボタンで逃げることもできるが、逃げられない場合もあり、強制的に戦闘となる。敵は主人公の強さに比例して強くなる。
    • 修行を進め、HPを999まで増やすと、フィールド上で敵が出現しなくなる(一部は出現するが戦闘にならなくなる)また、地形を無視して移動可能な特別な交通手段を得ることも可能。
  • アイテム
    • 一度に所持できるアイテムは1品のみ。
    • 「おかね」に額の大小はなく、「おかね」という名前の1つのアイテムとしてカウント。別のアイテムを購入する際は「おかね」との物々交換となる。
    • 「おかね」を得る手段は、1.町のお茶屋さんで試合に勝つ、2.所持しているアイテムを町の長者に売る、3.仙人などにお遣いを頼まれた際に渡される、4.フィールドで試合に負けて実家に戻されたときに所持品が無ければ母から渡される*1、など。
    • 馬屋(タイホーチェーン)のフリーチケットはアイテムとしてカウントされない。一種のフラグ扱いである。
  • フィールドで出会う敵
  • 勝利すると最大HPが増加することもある。敗れると例外なくわがやに戻される。
    • のうふ:農夫、いわばお百姓さん。畑の上を踏み荒らすと出現。全般に攻撃力が高く、序盤ではまず勝てない。もちろん、勝てば最大HPが増えることはあるのだが…他の敵と比べて、その確率は恐ろしく低い。畑を踏み荒らしてはいけない。
    • ケンシ:拳士。主人公と同業者。草原に出現し、正々堂々と試合を申し込んでくる。概ね正統派な戦い方。
    • にせケンシ:ニセ拳士。平地に出現する。大して強くないがHPだけはバカ高い。
    • さんぞく:山賊。山でなくとも森の中で出現。勝利後に最大HPが必ず増加する反面、敗れると所持しているアイテムを奪われてしまうという鬼畜ぶり。仙人のお遣いの最中には絶対に戦いたくない相手である。しかし、実は絶対にジャンプをしないという事にさえ気付いてしまえば……。その代わり、こちらにくっつくくらいの勢いで追跡してくるので、かえってジャンプ技を当てにくい場合もある。
    • かわりもの:変わり者。砂地・砂漠で砂の中から出現。リアルに想像すると非常に怖いが、拳士としてはさほど手ごわい相手ではない。
    • じゃまもの:邪魔者。石段で出現する南林寺修行者キラー。ジャンプを多用する、文字通りの邪魔者。勝利後には最大HPが増加するが、たまに上がらないことも。もっとも、ほとんどの確率で上がるので、上がらないことの方が稀。
  • 村の施設
    • 六角堂:街・村の名前や特徴を聞くことができる。特に意味は無い。
    • 拳士の家:その村で一番の拳士が在住。戦って勝つと長者の占いを受けられる。
    • 商店:アイテムを買ったり貰ったり物々交換できる場所。村によって得られるものはバラバラ。得るためにお金以外のアイテムが必要な場合もある。
    • 長者の家:「おかね」を除く所持アイテムを買い取ってくれる。また、村の拳士か街の道場の門弟に勝つと、所持しているアイテムによって、おおよその目的地の方角を教えてくれる。
    • 民家:さまざまなヒントが得られる。たまにアイテムを得られる場合も。
    • 馬屋:タイホーチェーン。行ったことのある町、または自宅へ一瞬で連れて行ってくれる。基本有料だが、前述の通り、お金を持たずに行き馬屋の「わかいもん」に勝てばフリーチケットがもらえ、無料で利用し放題となる。
    • 井戸:ゴックン おいしくのみました。…熱中症に注意である。水筒を持っていると井戸水を汲める。汲んでも意味は無いが。
  • 町の施設
    • 拳士の道場:拳士の家に代わる施設。道場だけあって強めの門弟が属する。勝つと長者の占いを受けられる点は一緒。
    • お茶屋:気さくな看板娘がお茶を勧めてくれる。おかねがない場合、試合を斡旋される。相手はパフパフ・エキストラ・きゃく(客)・わかいしゅ・ケンシB・おしうり・ごうとう・(破壊の神の)てした、のどれかがランダムで現れる。パフパフが最弱で、あとは順番に強くなる。
    • 五重塔:パスワードを教えてくれる。また、再開もパスワードを聞いた街からになる。
    • 六角堂、商店、長者の家、民家、馬屋、井戸は村に準ずる。

修行

寺での修行

  • フィールドの東西南北に位置する4つの寺で、各3名の門弟と対戦。一人勝つ毎に新たな基本技を習得できる。
  • 北林寺は中段攻撃の技、南林寺はジャンプ系の技、という具合に、寺によって習得できる技の系統が異なっている。
  • 前述のように、主人公が初期状態で使えるのは中段突きと前後への移動のみ。上段や下段への攻撃はもとより、「ジャンプ」や「しゃがみ」といった基本動作さえも寺で修行しないと使えない。

仙人の修行

  • 各地に点在する仙人が、対応する寺の修業を終えた後それぞれ欲するアイテムを持参することで技を習得できる。たとえば、中段技を覚えられる北林寺での修行を終えていれば、中段技を伝承する仙人の修行が受けられるようになる、という具合である。
    • 対応する寺の修行を終えていれば、他の寺攻略より先に仙人の下で強力な技を習得することも可能だが、すべての寺の修行を終えることで得られる特典もあり、どういう順序で攻略を進めるかはプレイヤーの自由となる。
  • 技を習得する順番に制約はない。ただし、同時に複数のアイテムを所持できないという仕様上、ある仙人の修行の途中で別の仙人の修行をはじめるような真似は当然ながら大きなロスとなる。

城での対戦

  • 各地の城で指南役と対戦し、勝利することで「拳士の位」を得ることができる。位を得るごとに防御力がアップする。また、「あいことば」を教えてもらえる。7つの城全てであいことば入手し、それをパスワード入力画面で正しい順番に入力すると…?
  • 城に入るには、特定のアイテムを持参したり、特定のフラグを立てる必要がある。城を攻略する順番は決まっており、いきなり最後の城での対戦を行うことはできない。ただし、寺や仙人の修行の合間に城の対戦を挟むことも可能*2
  • 対戦に勝利した城は以後フリーパスとなり自由に出入りが可能となる(指南役の拳士は復活しないため、再戦は不可能)。

その他の修行

  • タオの実:力、すなわち攻撃力を強化するアイテム。発見と同時に攻撃力がアップ。合計7つ手に入る*3
  • スピードの種:スピードを強化するアイテム。発見と同時にすばやさがアップ。合計3つ手に入る。
  • ジャンプ力アップの修行:ジャンプ力を強化する修行。木に実った梨を取ったり、雲めがけてジャンプするなど3段階(まず南林寺で最初の弟子に勝って「ジャンプ」を習得する必要あり)。
  • これらの修行は、各地の寺を巡回する段階からでも可能なため、先に済ませておけば寺での修行段階から非常に大きな恩恵を得られる。

最強のラスボス・タオタイラー

  • 最大HPを上限である999まで増やすと、特別な移動手段「筋斗雲」をもらうことができる。その状態だと雑魚敵は恐れをなして?戦いを挑まなくなるのだが、その状態で水の上を飛んでいると、時々元祖天下一武士であるタオ老師(タオタイラー)が声をかけてくる。彼に勝つことで名実ともに「天下一武士」の称号を得ることができるのである。
    • タオ老師は「後ろ下段蹴り」以外のすべての技を使い、ステータスも最大。最大HPに至ってはプレイヤー側の3倍超の3000という桁外れのHPを持っている。*4修行の総仕上げに相応しい、まさに最強の存在である。
+ タオ老師との戦闘


評価点

先見の明ばかりのシステム

  • 例えば、「修行で技を身に付けていく必要がある」というシステムは後に『龍虎の拳』や『ウォーザード』が、「特定の部位で技を受けるとダメージ増加」は『ファイターズヒストリー』が…といった風に、後発の格闘ゲームが採用したシステムの数々はこの時点ですでに実装されている。
  • 対戦モードで用意されている拳士は「スピードは速いが非力」「パワー、スピードとも平均的だが技が使いやすい」といった特徴があるため、キャラの能力や技ごとの特性を把握し、どのように戦っていくかという戦術を考える必要がある。これは格ゲーの基礎中の基礎なのだが、「ストIIの前にすでに確立されていた」と考えるとこれも恐ろしく先見の明があると言わざるを得ない。

シンプル極まりないシステムが生み出す対戦の楽しさ

  • まず、このゲームにはいわゆる「ハメ」がない。これだけでも特筆に値する。理由は先述したとおり、のけぞり・ガード硬直・気絶がないため。
  • すべての技はガード不能(ダメージ軽減ではなく、格ゲー一般におけるそれ)なのでなるべく避けたいが、技を出す側・出された側双方で読み合いが発生する。
    • 例えば顔や頭を狙う上段技は決まれば強力だが、下段攻撃との相性が非常に悪い。ならば下段攻撃でカウンターを…とすると、そこを読まれて中段攻撃→頭にヒットしてダメージ増加という結果に終わることもある。
  • 修行モードで育てた拳士を対戦で使用できることはすでに述べたが、ここでもレギュレーション設定ができるようになっていたり、駆け引き要素が生まれたりしている。
    • 基本技以外の習得は任意なので、「○○は強すぎるから使用禁止」といったバランス調整を任意で行ったり、「頭突きは当たれば大ダメージを与えられるけど、頭に攻撃を受けて大ダメージを受けやすくもなるから習得しない」という風に、自分の好みで技を取捨選択したりできる。
      • 当然ながらモーションの長い技は扱いにくく、コンパクトな技は射程が短く当てにくい…といった技事の個性も見受けられる。
    • なお、裏ワザではあるが、15人の拳士+育てた拳士以外にも、修行モードで登場した拳士達(総勢61人)が使えるようにもなっている。
      • 対戦モードの15人+修行モードの61人で総勢76人、さらにマイ拳士のパラメータ調整次第では実質無制限となり、『MARVEL VS. CAPCOM2』をもぶっちぎるプレイアブルキャラ数となる。
        もっとも修行モードのキャラはストーリーに応じた強さが設定されているので性能差は極端、マイ拳士に至っては対戦モードのキャラを遥かに上回る性能に育てられる。故にこれらをキャラとして数えるのは少々反則気味ではあるが。
      • 実はタオ老師を出すことも可能。ただし、CPU専用で、プレイヤーキャラとして使うことはできない。
  • こだわり派のガチ対戦に使える対戦ツールとして機能し得る一方で、深く考えずにフィーリングのみでプレイしたり、レバガチャプレイでもそれなりに楽しめるようになっている。ハメが一切なく、よほどのことが無い限りは「負けたら自分が100%悪い」ので、本作はある意味最もバランスの良い格闘ゲームなのかもしれない。

秀逸な技モーション

  • 非常になめらかで美しいモーションで繰り出される美しい技の数々も本作の魅力の一つである。
    • 接近戦から相手の顔めがけて脚を振り上げる「ハイレンキャク」、片足で勢いを付けて背後へ反対の脚で上段蹴りを入れる「センプウキャク」、空中で連続蹴りを繰り出す「ニキキャク」、(実用性はともかく)回転蹴りを繰り出しながら進む「レンキャク」など、これらの「美しい技」を「美しいモーション」で描ききった点は、今日の格闘ゲームと比較しても決して見劣りすることがなく、FCの表現力で実現させたことを含め賞賛に値する。

シンプルでテンポの良い修行モード

  • RPGとしては「アイテムを1個しか持てない」「メニュー画面が無い」など極めてシンプルでありながら、成長や探索を楽しめる。
  • 当時としては珍しいフィールド移動中のダッシュを始め、馬による瞬間移動が可能、道の上ではエンカウント無しなどテンポが非常に良い。
    メッセージ送りも軽快であり、現在プレイしても基本部分でストレスは感じにくい。
  • パラメータや覚えた技などはステータス画面で一目で見られる*5ので、コンプリートの楽しみをシンプルに実感しやすい作りになっている。

フィールドにちりばめられた製作者の遊び心

  • まずゲームの名前からして「ケルナグール」というダジャレ
    • これはTVアニメ『戦国魔神ゴーショーグン』の登場人物「ヤッター・ラ・ケルナグール」および「蹴る・殴る」に由来する。*6
  • 修行モードで登場する人物達にはちょっとヘンな人が多い。遠藤氏を含め開発者も登場している。実装し忘れた技をプログラミングし直すというメタなネタもある。
  • フィールド上にはさまざまな場所でちょっとしたメッセージを読むことができる。それらはゲームのヒントのほか、「たちいりきんし」などのユーモアに富んだものも。
  • エンディングを見るための方法が一風変わっている。さらにエンディングではゲームスタジオのお家芸なのか、裏ワザまで披露している。
  • また、フィールド上には、他のゲームからのオマージュと思われる要素が多数見受けられる。元ネタを知っているプレイヤーなら、これらの要素を探していくだけでも思わずニヤリとしてしまうこと請け合いだ。
+ 他ゲームのパロディネタ各種
  • 「ほのおのラケット」と「てつのラケット」
    • 『プロテニスワールドコート』のクエストモードのオマージュ。もちろん「熱すぎて」「重すぎて」、どちらも装備できない。『ワールドコート』自体も、PCエンジンとセットのアイテム(アイテム名「ワールドコートとピーシー」)として登場している。ちなみに、それの入手に必要な交換アイテムは『パックマンのカセット』。
  • フリオニールの墓
    • ファイナルファンタジーII』の主人公の墓。当時は『リンクの冒険』に勇者ロトの墓、『ファイナルファンタジー』にリンクの墓が登場するなど、こうしたオマージュを挟むことが流行っていた。
    • 「ゆうしゃのはかは めぐりめぐる リンクしかり ロトしかり」というメッセージも登場しているので、上記の2作品を知ったうえでパロっているのは明らかであろう。
  • じゃしんのぞう
    • ドラゴンクエストII』に登場するアイテム。アイテムなので長者に買い取らせることも可能だが、拾ったその場で掲げてみることもできたりする…。(拾える場所は北の海の十字型の砂浜の中心)
  • ヘンゲのツエ~ガイアのつるぎ
    • ドラゴンクエストIII』のオマージュ。「レンダ(連打)」を習得するための仙人修行中に登場。
    • ヘンゲのツエ→ふなのりのホネ→アイのおもいで→ナントカのつるぎ(ガイアのなんとか)と物々交換を進める必要があるのだが、これはドラゴンクエストIIIで実際に収集する重要アイテムと名前・順番が一緒。さすがに最後だけは「ナントカのつるぎ」とぼかしているかと思いきや、求めている人のところへ持っていくと「これはまさしくガイアのなんとか」とバラしてくれる。さらに、剣を持っている人物の名前は、本家で持っていた人物と同じサイモン。
    • ついでに「ちいさなメダル」まで登場する。当時DQ4は未発売だが、DQ3の没アイテムとして名前は知られていた。

耳に残る中華風のBGM

  • オープニングのキャッチーなイントロや軽快でノリがよいフィールドの曲など、ゲームの雰囲気を印象づけるのに一役買っている。
    • サウンド担当は大野木宣幸氏。ナムコでは『ニューラリーX』『マッピー』など多くの作品を手がけ、遠藤氏がゲームスタジオを設立する際にはこれに参加している。
      • ちなみにタイトル画面のBGMは1985年発売のアルバム『ザ・リターン・オブ・ビデオ・ゲーム・ミュージック』に収録されたゲームとは無関係のオリジナル楽曲のアレンジ流用である(作曲は同氏)
    • BGMはタイトル画面、フィールド、戦闘、スタッフロールのたったの4曲しか無い。タイトル画面とスタッフロールは普段は聴かないので、ゲーム中で流れる曲は戦闘時と非戦闘時の二つだけ。これは曲数が少ないという欠点では無く、聴き心地の良い曲でずっと飽きが来ないため、曲数の少なさが全く気にならない良い点なのである。
      • 効果音も、ありとあらゆる攻撃の音声「ポゥ」と、ありとあらゆる攻撃ヒット時の「ガッ」の2つだけ。最低限の容量・最少の曲数で、見事にゲームを作り上げた手腕は素晴らしい。

問題点

キャラクターメイク段階での制約

  • 修行開始の段階で主人公となるキャラクターを命名するのだが、他のRPGのように名前を自由に入力することができない。
    • あらかじめ用意された64種の名前の中から、主人公の名前を選択・決定しなければならない。
    • このため、主人公キャラに対する感情移入が深まりづらくなると共に、後述のようにキャラクターの外観が皆一律に等しいため、主人公を含めたキャラクターの没個性ぶりに拍車がかかることとなる。
    • パスワード入力画面でわかるように、ゲーム内ではほとんどのひらがなが網羅されているため、ひらがなのみであれば自由な名前設定ができる仕様にすることは可能だった筈である。にもかかわらずこのような設定を採用したのは、パスワードの文字数を極力減らすための措置と思われる。(先述のとおり、修行モードのパスワードは僅か12文字)
    • なお、64種の名前の中には、世界観に沿った趣のある「ゲックウ」「ビャクレン」、どこかで聞いたような「レンホウ」、ナムコブランドに由来する「ゼビウス」「ドルアーガ」といったものも含まれている。

仙人の修行

  • 修行と銘打ってはいるが、拳士を倒すわけでも、技の特訓を受けるわけでもない。修行とは名ばかりの、完全なパシリである。いやむしろ精神修行かもしれない。
    • 華麗で豪快な技を教えてくれる仙人だが、どの仙人も一筋縄では技を教えてくれない。「○○をもって来い」で済めばいいのだが、フィールドを縦断した先でアイテムを手に入れる必要があったり、手に入れたアイテムを別の箇所でわらしべ長者的に別のアイテムに変えてもらう必要があったり、「仙人も暇じゃのう(「だから暇つぶしできる物を持ってきてくれ」という暗に示している)」などという無茶振りを言い渡されたり、挙句「歯を磨きたい」といわれた正解が近所に落ちている「石」*7だったりと、むちゃくちゃもいいところである。
    • 一部のフィールド上ではアイテムを強奪する山賊とエンカウントする可能性があるため、幾度かの物々交換を経て手に入れた最終アイテムを仙人に届ける目前で山賊に敗れてアイテムを失う、といった悲劇も決して珍しくはない。その場合、最初のアイテムから収集し直さなければいけない。
    • また、そもそも広大なフィールドに町や村や庵やアイテムスポットが点在しており、何がどこにあるのか、そもそも仙人がどこに住んでいるのか、を把握することが非常に困難である。総括すると…
      • 1.アイテムの入手に非常に手間がかかるケースが多い
      • 2.何を要求されているのかがわかりづらいケースもある
      • 3.苦労して入手したアイテムを奪われるリスクがある
      • 4.どこでアイテムを入手すればいいのか、どこに行けばいいのかが非常にわかりづらい…となる。
    • 結果としてではあるが、攻略本/攻略サイトなしで独力ですべての技を習得することは、不可能ではないが困難を極める。
      • ただし、HP999になればタオ老師以外のエンカウントは発生しなくなり、ほとんどのアイテムは長者の占いに沿って持って行けばイベントが進む為、自力コンプリートも不可能では無い。あとは無茶な要求にどう答えるかというインスピレーションの問題だろうか?
  • 何らかのイベントに関わるポイントは怪しい地形になっていることが多く、調べればイベント進行中でなくとも特殊なメッセージが出るようになっている。こまめに調べたりメモを取るようにしておけば正攻法で突破できる部分は多い。

城の修行

  • 基本的には仙人の修行に準じ、門番を突破するためのアイテムを求めてパシリ行為に奔走することになる。
    • 城の門番の趣味嗜好に合わせたアイテムを要求されるため、性格の捻じ曲がった仙人どもよりは、若干与し易い傾向ではあるが。
    • また、1箇所ではあるが、先にとある仙人の修行を終えておかなければならないケースが存在する。そのことに気づかず、各地を回ってアイテムを収集し、いざ勝負といった段階で突如場外へワープさせられたプレイヤーも決して少なくはないだろう。
    • この場合、入手した最終アイテムを泣く泣く諦め、仙人修行を済ませてから1からアイテム収集をやり直すことになる…と思いきや、修行を済ませた時に仙人から最後のアイテムがもらえる。

修行すると敵も強くなる

  • 寺や城の敵は強さが固定されている。そのため、タオの実やスピードの種を手に入れてしまえば俄然有利となる。
    • しかし、フィールドで会う敵は主人公の修行の度合いに応じて最大HPや習得した技、攻撃力などが変化するのだ。端的に言ってしまえば、「主人公が強くなれば比例的にフィールドの敵も強くなる」のである。
      • ゲームとしてのやりがいを考えるとこの点は寧ろ当然と言えるのだが、前述したように「お遣いの途中で山賊にアイテムを奪われる」リスクを考えると、常に負けが許されないという緊張感を味わうこととなる。

最大HPを増やす作業

  • 最大HPは山賊などの敵に勝つことで伸ばすことができるが、最初のうちは敵を倒すことも困難なため、なかなか最大HPが伸びず、思わぬ苦戦を強いられることがある。
  • また、寺の修行を終えたあとでも最終的には上限となる999まで成長させねばならず、少々手間がかかる。
    • ただし、寺の修行を終えた後ではあるが250までは一気に上げられる救済策が存在するし、最大HPの上昇に応じて戦闘勝利後のHP増加量も伸びるようになっているので、「苦行」と呼ぶほどの作業を強いられるわけではない。

会話時の注意点

  • 登場人物との会話は一般的なRPGやアドベンチャーゲームのようにウインドウに文章が表示され、ボタンでページを送っていくのだが、この時Aボタンは全て「はい」Bボタンは「いいえ」と答えながら進めていくという特徴がある。選択を問う文章が表示されたときも「はい/いいえ」を選ぶ小ウインドウが出るのではなく、Aボタンでページを送るかBボタンでページを送るかで決めていく。
    • 多くの場合は、普段はAボタンで進めていき問いかけられた時に注意していればいいのだが、たまに質問なのかどうか分からないのにBボタンでページ送りをしないと正解にならない場合がある。ゲームの仕様であり謎解きに類する部分だが、おそらく知らないと詰む。インターフェースが洗練された現代のゲームに慣れた人がプレイしたら、この仕様に全く気づく事が出来ないだろう。昔のゲームなので、ゲーム中の操作説明やチュートリアルは無い。
      • これは当時でも見ない選択肢方式であったので、単純に気づきの問題だろう。開発陣の遊び心? だと思われるが、気が付かない人から見れば「わかるかい!」となるのは仕方が無い。
  • 選択肢が出てくる場合は十字ボタンの各方向が対応しているのだが、ここで十字ボタンではなくBボタンを押すことが正解という場面がある。

ゲーム全般での問題点

技の「かぶり」が生じる

  • たとえば修行によって「テンシンキャク」が使えるようになったとする。テンシンキャクは中段でリーチが長く、出も速いことから非常に使える中段技なのだが、レンキャクなど別の技を習得してしまうと、テンシンキャクを出そうとしてもレンキャクが出てしまう、といったケースが頻発する。
    • これはそれぞれの技がそれぞれ有効な間合いが決まっているためであり、正しい間合いで技を出せば正しい技が出る仕様なのだが、使い慣れた強力な技が(結果として)修行を進めたことで出しづらく感じてしまう点は賛否が分かれるところである。
      • とはいえ、Aボタン1つで攻撃する以上、仕方ないとは思われるし、逆に「やみくもに全ての技を習得するよりも、自分の使いやすい技だけを覚える」というカスタマイズ性も魅力のひとつとなった。
        当時の攻略でも「レンダとレンキャク以外を覚えた状態が最強」と言われたりしている。

キャラグラフィックが使いまわし

  • すべての拳士は同じ容姿。体のサイズや体型、顔まですべて一緒。違うのは服の色だけ。登場する拳士のキャラクターは非常に多いのだが、拳士個人の個性がないので少々味気ない。
    • また、ブーム到来以降の格闘ゲームでは、キャラの性能を外観で分かりやすくする(投げ技主体のキャラは大柄で筋肉質等)というのがセオリーなので、キャラ性能の把握の意味でも少々難がある。
    • ただし、こうすることでグラフィック容量を切り詰め、その分を滑らかなアニメーションの実現に費やしている。容量不足に悩まされたFC時代ならではの工夫と言える。ゲーム中にもこれに関するメタ発言をする人物がいる。

総評

問題点として列挙されたとおり、『ケルナグール』は(主に修行モードにおいて)さまざまな問題点を有する。
AとBを使い分ける独特の会話や命名方法などのシステム面もさることながら、強力な大技や拳士の位を得るためのアイテム探しに至っては、難しいというよりは面倒さが目立つという点で、良くも悪くも作業的な面は否めない。

だが、それを補って余りある魅力がこの『ケルナグール』には満ちている。
遊び心に満ち溢れた広大なフィールドを探求し、キャラクターを成長させる楽しさ。スムーズかつ美麗なモーションで繰り出される技の数々。シンプルながら奥深い格闘シーンで、多くのプレイヤーを虜にした2P対戦。

後に登場する『ストリートファイターII』の爆発的なヒットにより、対戦格闘というジャンルは一躍時代の寵児となった。
しかし、それより以前にこの『ケルナグール』にて、対戦格闘はその完成形の一例を示されていた。そして本作は後に「対戦格闘の草分けにして稀代の名作」と評されたのである。

とまあ色々小難しい理屈を並べてはみたが、ごちゃごちゃ言うよりも百聞は一見に如かずである。
ルールはただ一つ。ケルナグールで、蹴れ、殴ーれ!


余談

2020年6月18日に発売されたNintendo Switch用ゲームソフト『ナムコットコレクション』の有料追加DLC第2弾として2020年8月20日から配信開始。

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最終更新:2023年02月09日 11:27

*1 山賊に負けた場合は所持品を奪われるので必ずもらえる

*2 ただ、仙人の修行の真っ最中に城を目指して重要アイテムを失うようなことは決してせず、実行中の修行があるなら必ず終えてから行うこと。

*3 実は8つ目もあるのだが、ただ持ち歩けるだけの無駄アイテムになっている。もっとも、普通は気づかないと思われるが

*4 内部データより。画面上はHP1000以上は「999」と表示されるので、無限のHPを持つと誤解した人も多いのではないだろうか。

*5 ただし、見られるのはパスワード再開時だけで、プレイ中に見ることはできない

*6 ゲーム誌『Beep』での遠藤氏の発言より。

*7 これは「漱石枕流」の故事が元ネタなのだろう。