バイオレントストーム
【ばいおれんとすとーむ】
ジャンル
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ベルトスクロールアクション
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対応機種
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アーケード
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発売・開発元
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コナミ
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稼働開始日
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1993年
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判定
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良作
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ポイント
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所々がFFそっくり アメコミ調のキャラ 時代に埋もれてしまった不遇の作品
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概要
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荒廃した世界を舞台に、ストレイカーという街を支配する「ゲルド」に率いられた暴力集団「グロス」は近隣を荒らし回っていた。ゲルドは側近の「レッドフレディ」に命じて、美女の「シーナ」を誘拐させた。そのシーナを救出すべく、仲間のウェイド、ボリス、カイルが戦いを挑むという設定のベルトスクロールアクションゲーム。
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インストカードに「俺たちのマドンナがさらわれた!今、助けにいくぜ!」と書かれているが、要するにそういう事である。
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世界観やキャラクターは某世紀末救世主伝説を連想させる物になっているが、当時のコナミ作品同様、海外のユーザにターゲットを絞っているのか、グラフィックがアメコミ調でSEや演出が全体的にポップになっている。
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本作は明記されていないが同社『クライムファイターズ』シリーズの第3作目に位置しており、コナミ製最後のベルトアクションでもある。
操作方法
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8方向レバー+2ボタン(攻撃、ジャンプ)で操作。筐体の設定により、最大3Pまで協力プレイ可能。
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基本的な操作体系はファイナルファイト系列のベルトアクションに準ずるが、ダブルドラゴンを踏襲したクライムファイターズから派生した作品らしく、アッパー、百列キック、ローリングタックル、振り向き攻撃とFFと比べて出せる技が非常に多い。
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本作では当時のベルトアクションに倣ってダッシュ攻撃も導入されているが、一般的な前方×2+攻撃とは違ってレバー斜め下+ジャンプのコマンドで出せる。
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更に本作では同社の他のベルトアクション同様、ダウンした敵を攻撃を加えることが可能だが、従来作の踏みつけ攻撃に加えてダウンした敵を引き起こしてつかみ技に移行できるプロレスさながらの戦術も行う事が出来る。
FFと似ている所
本作はベルトアクションの金字塔『ファイナルファイト』に酷似した作品という事で一部のプレイヤーから有名である。
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プレイヤーはウェイド(バランス型)、ボリス(パワー型)、カイル(スピード型)から一人選択してプレイする。
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操作方法は前述の通りレバー+2ボタンとFFと同様。1面は駅、2面は貨物列車、3面は下町→酒場→地下プロレスリング、4面は工場(製鉄所)、5面は公園、6面は港、最終面は博物館となっている。全7面。
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『ファイナルファイト』のパクリと言われれば確かにそうである。ストーリーからしてさらわれたヒロインを助け出す点が同じだし、プレイヤーのタイプやザコのバリエーション、武器の種類及び使い方、デカキャラが動き回るゲーム画面といったあらゆる部分がFFと酷似している。
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ステージ構成もソックリ。
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『ファイナルファイト』のステージには電車、地下プロレスリング、酒場、工場、海沿いの歩道、像が建ち並ぶ通路が登場するが、本作のステージもこれと似た場所が多々ある。
前作に相当する『クライムファイターズ2』の時点でストーリーやアイテムに『ファイナルファイト』との類似が指摘されているが、本作は操作性からキャラのタイプ、ステージ構成やステージの順番…と前作に輪を掛けて『ファイナルファイト』そっくりどころか、それを通り越して『ファイナルファイト』そのものになってしまったという事である。
評価等
しかしながらゲームとしての完成度は決して本家と引けを取らない。
良好なゲームバランス
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操作性は非常にスムーズ。キャラが大きく、キャラパターンも多い。特に「スピード感」に関しては『ファイナルファイト』を超えていると言ってよい。慣れればテンポよく雑魚を処理していけ、その快感はなかなかのもの。
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コナミ製のベルトアクションにありがちな操作のクセも無く、コマンド技を覚える必要があるが、初心者にも安心してプレイできる取っつきやすさも持っている。
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ザコ敵の耐久力もそれほど高く無く、理不尽な攻撃を仕掛けてくる敵も少なく、難易度も手頃である。体力回復アイテムやボーナス得点アイテムの種類も非常に多く、見た目も楽しい。
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コナミ製のベルトアクションの大半では敵の体力ゲージが存在せず視認性に難があるが、本作は『ファイナルファイト』同様に敵の体力が表示される仕組みになっている為、コナミ製ベルトアクションの最大の課題が最後の最後でようやく改善されたとも言える。
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コナミ製ベルトアクションの多くに漏れず、各種ステージのボス戦では基本的にプレイヤーとの1対1の真剣勝負で構成されていて、「お供の雑魚による横槍が鬱陶しくて、折角構築したパターンが崩れてしまうからボス戦は苦手」という意見のプレイヤーに対しても良心的。
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一応、雑魚を召喚してくるボスも存在するが、同ボスは雑魚が登場した際にはステージ外に飛び出して待機する形になり、登場した雑魚の体力かなり低めかつボスの妨害攻撃も飛んでこないな為か、脅威的では無い。
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但しボス戦に関しては序盤はともかく、中盤以降はまともに殴りに行こうとすると無敵つきの反撃技でほぼ返されてしまう為、一工夫必要になる。またその仕様上、投げの掴み間合い・威力が大きいボリスが優遇されており、打撃中心で戦うことの多いカイルは冷遇されがち。もっとも、誰を選んでもやりこみ次第でクリアできる。
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基板の設定が工場出荷状態でエブリエクステンドなため、点数を稼げば稼ぐほど1UPが近くなり、有利になる。
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クリアしようとするとどうしても意識しなければならない点であり、そのためにプレイの幅を狭めてしまっている面もある…が、「上手くなればなるほど長持ちできる」という実感もあり、やりこみに対する確かな手ごたえを感じさせてくれる。
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ちなみに、3人の中で最も点数が稼ぎ易いのは意外にもボリス(掴み特殊投げの点数が非常に高い)。上記の通りボス戦時も優遇されているため、キャラの格差が開いている難点はある。
大迫力のBGM
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他のコナミ作品同様、高性能な基板の性能を生かしているのかBGMも気合いが入っている。
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繁華街のステージではサンプリングによるラップが流れて危険な町に来た気分を味わえたり、港のステージではロック風の曲調と挿入されるコーラスにより港町なのに50年代のアメリカを思わせるような雰囲気があったり、ボス戦では『タートルズ・イン・タイム』同様ギター全開のメタルで戦いを盛り上げる。暗めな曲がほぼ無く、全体的にファンキーなテイストが特徴。
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BGM作曲は深見誠一氏、福井健一郎氏、岸本洋平氏の3人が手掛けている。
その他小ネタ群
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豪快なグラフィックやゲームバランス、BGMに騙されてしまいがちだが、本作は小ネタも非常に豊富。
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敵のやられモーションについては、吹き飛ばされてダウンといったありがちな物に加えて、フィールド上端で敵を倒すとステージ2では敵が列車の外に流されたりステージ6の港では海に落とす事が出来る、ステージ4の工場内にあるプレス機で敵を倒すと敵がぺしゃんこに潰れる等々、たかがやられモーションとはいえ、見ているだけでも楽しい物が揃っているのが実に魅力的。
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アイテム類の置かれ方や取得方法に関しても工夫されている物がある。一般的なベルトアクションでお馴染みのオブジェクトを壊したり道に落ちてたりする物を拾う物をはじめ、3面の市街地では背景のNPCが運んでいるピザを拾う事で体力を回復させる事が出来たり、、4面の工場の背景のフェンスに掛けてあるラジオを直接取得してボーナス点にする、プレイヤーに付いてくるNPCの子豚を拾うと何故か武器アイテムのフットボールに変化したりと芸が細かい。
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そして、バイオレントラウンドこと地獄の2周目(後述)では、1周目では出現しなかった新オブジェクトのマネキンが配置されたり、特定のボスの名前が製作スタッフの名前に変わったりと、普段は敵配置など手を抜きがちなアーケードゲームの2周目にしてはかなり手が込んだ物になっていると言えるだろう。
地獄の2周目
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本作は基板設定で周回数(1~エンドレス)を選べるが、1周目をノーコンティニューでクリアすると1周エンドにもかかわらず2周目がスタートする仕様になっている。
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こちらの2周目は『バイオレントラウンド』と呼ばれており、1面冒頭から中ボスクラスの非常に強い敵が複数配置されたり、新たな攻撃パターンが追加されたりと1周目と比べて難易度が上昇している。またとあるエリアでは、なんと制限時間がたったの40秒しかなく、ひたすらダッシュしなければ間に合わないエリアも登場している。
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ちなみに本作は設定で残虐描写をOFFにすること出来るのだが、バイオレントラウンドに突入すると強制的に残虐描写がONになる仕様も存在。
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一方、通常の2周以降はスタート地点の敵配置が異なる以外は全て1周目とほぼ同じパターンになっているためか上級者には手応えが無く、エブリエクステンドと相まって場合にも寄るが簡単にカンストが達成される事も。
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このため、周回数をエンドレスに設定している台では上達したプレイヤーに居座られてインカムが稼げずオペレーターが非常に困るという難点がある。
賛否両論点
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コナミのベルトアクションにしては最大プレイヤー人数が少ない。
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同社からリリースされたベルトアクションゲームは、主に海外をメインターゲットに絞っていた事から最大プレイヤー数が4人に設定されている物が大半を占めているが、本作の場合はキャラクターを大きく描き過ぎた事による影響なのか3人と少なめ。
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最大プレイヤー数が3人に減少しているとはいえ、これでもまだプレイヤー数が多い部類。画面全体にはびこるデカキャラ群の存在も相まってか、本作の協力プレーはこれまでのコナミ製ゲーム以上に盛り上がる事も間違いないだろう。
問題点
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世界観が意味不明
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4面まではパッと見タイトル通りバイオレンスで硬派な世界観を連想させる物になっているが、5面のボス辺りからオカルト要素が登場し、プレイヤーは置いてけぼりになりやすい。
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また、本作は全編英語音声で進行することに加えて、他の海外向けコナミアーケード作品とは異なり日本語字幕スーパーすら存在していない。このため、まさに「本当に国内で売る気があるのか?」と思わせる仕様になっている為、全体的に説明不足気味。
総評
コナミのベルトスクロールアクションゲームにおける技術を結集させた結果、有終の美を飾る・・・筈だったが、出回りが悪く、ファイナルファイトそっくりな見た目も批判されて格ゲー真っ盛りの時代に埋もれてしまった不遇な作品。
とはいえ、ゲーム自体の完成度はファイナルファイトと引けを取らないどころか当時のベルトスクロールアクションの中でも非常に高い。難易度も丁度良いレベルなので、運良くゲーセンで稼働している所を見かけたら是非プレイしてみるべし。
余談
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知名度が低い
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本作は同基板の他のコナミ製のアーケード作品同様に出回りが絶望的に低く、かと思えば登場キャラの一人が他のコナミ作品でゲスト出演した『ミスティックウォーリアーズ 怒りの忍者』『ガイアポリス 黄金鷹の剣』やBGMが後にBEMANIシリーズにてアレンジ収録された『メタモルフィックフォース』とは異なり移植はおろか外部出演にすら恵まれなかった為か、リアルタイムではゲーメスト等の雑誌で取り上げられていた事しか記憶の無いプレイヤーも多く、2000年代後半で台頭したYouTube等動画サイトでのプレー動画で初めて知名度を得たとも言える。
最終更新:2019年04月18日 10:04