本項ではアーケード用ゲーム『平安京エイリアン』と、そのゲームボーイ移植版の紹介をしています。
平安京エイリアン
【へいあんきょうえいりあん】
ジャンル
|
アクション
|
|
対応機種
|
アーケード
|
販売元
|
電気音響
|
開発元
|
東京大学理論科学グループ
|
稼働開始日
|
1980年
|
判定
|
良作
|
概要
「東大生が作ったゲーム」という触れ込みでリリースされたアクションゲーム。
「検非違使が平安京の都を恐怖に陥れ始めたエイリアンに、スコップを駆使した穴掘りで立ち向かう」という、B級映画のような設定と世界観を持つ珍妙な内容だが、シンプルながら奥が深いゲーム性でヒットした。
システム
-
碁盤目状の通路で構成されたフィールド上にて、敵であるエイリアン数体と、プレイヤーキャラクターである検非違使(けびいし)が配置される。プレイヤーは4方向レバーで検非違使を操作する。
-
検非違使はエイリアンと接触すると、捕食されて天に召され、ミスになり残機を1失う。
-
エイリアンを全て倒すとステージクリアになる。
-
攻撃方法は「穴を掘る」と「穴を埋める」。エイリアンを掘った穴に落し、落ちたエイリアンを埋めると倒した事になる。
-
穴は5段階掘る事でエイリアンを落せるようになる。ボタンを押したままで自動で掘っていくが、深さに応じて時間がかかる。
-
穴を埋めるのも5段階。完全に埋めきった時点でエイリアンは消滅する。埋める時間は穴にエイリアンが居ても居なくても同じ。
-
穴はどの段階でも掘ったまま置いておくことができる。掘りきれていない穴の上をエイリアンが通過するとエイリアンは穴に落ちず、穴も消滅してしまう。検非違使は少しでも穴があると通る事が出来ない。
-
穴に落ちたエイリアンは一定時間放置すると這い上がってくる。這い上がった際に穴は埋められてしまう。
-
そのため埋めるのが間に合わないと思ったら、その先に穴を掘り再び埋めるというテクニックがある。
-
エイリアンが落ちた穴に別のエイリアンが接触すると一瞬で穴から這い上がり、穴は埋まってしまう。エイリアンは基本ランダムで動き回るが、埋まっているエイリアンを率先して助けようとする傾向にある。
-
安直に埋めに行くとピンチになったりと油断ならないが、別に穴をしかけておき引っ掛けて連続で埋めたりなども狙える。
-
同一面で一定時間以上経つと画面上にエイリアンが大量に増殖し、平安京がエイリアンで埋め尽くされ実質クリア不可能状態になる。そのため極端な待ちプレイが通用しない。
-
上記の特徴から、ある程度能動的に動かなければクリアは難しい。
-
一応クリア不可能ではない。ちなみに、フリーウェア版では埋めると同時にエイリアンが補充されるようになるので完全にクリア不可能。
-
穴に落ちたエイリアンは早く埋めるとそれだけスコアが高く得る事ができる。
-
エイリアンは最後の一体になると高速移動するようになる。
評価点
-
敵を罠にハメるという画期的な発想。
-
STGにせよACTにせよ、能動的なアクション性が主体であった当時のゲームにおいて、「罠を設置して相手を誘き寄せる」という受動的な待ちの要素を戦法として上手くゲームに組み込んだ。
-
ゲームバランス
-
安易に掘りまくると、エイリアンが引っかかっても埋めに行けないという事態に陥ってしまう。
またエイリアンの近くで掘ろうとしても、そのまま穴を踏み越えられてミスする危険性があるので、冷静かつ的確に状況を判断して動く必要がある。これらのバランスが絶妙。
問題点
-
制限時間が秘匿情報であり、制限時間が切れてペナルティ適用されるまでその存在が知らされない。
-
更にミスをしても制限時間がリセットされず、一度ペナルティ適用されるとゲームオーバーまでずっとペナルティ状態のままとなる。
-
突如として鳴る、時間切れを知らせる効果音はトラウマになっているプレイヤーもいるだろう。
-
海外版『Digger』(セガ・グレムリン)では制限時間とペナルティが視覚的にわかるようになっている(画面左端に柵で閉じ込められたエイリアンが表示されていて、時間切れで柵が開放されて中のエイリアンが全て放出される)。
総評
非常にシンプルなルールでありながら、穴を掘っておくという「待ち」の要素が重要な戦略性の高いゲームである。
一方で埋めに行く必要性や時間制限もあり、アクション性や能動性とのバランスも良い。
シンプルながらそれなりに奥が深い、80年代ならではの1作である。
移植・リメイク
-
SFC版『ニチブツアーケードクラシックス2 平安京エイリアン』(1995年12月15日発売)
-
本作には『ニュータイプモード平安京エイリアン』という特別モードもあり、強化アイテム取得や壁破壊などができ、原作よりゲーム性が多彩になったアレンジモードとなっている。
-
Steam版『平安京エイリアン』 (2017年10月13日発売 開発:マインドウェア)
-
原作であるアーケード版、「攻める」ゲーム性に変化させた「平安京エイリアン3671」、「3671」版の製作中に発生したバグを意図的に内容に取り込んだ「Glitch Encore Alien」、実在アイドルとコラボレーションした「アイドルバージョン」の4つが同梱されている。だが、アイドルバージョンはアップデートでの対応となっているため現時点では選択項目がグレイアウトされておりプレイ不可。
-
ファミコン版『NEO平安京エイリアン』 (2017年9月7日発売 開発:コロンバスサークル)
-
「レジェンド達によるリメイク」を売りに出しており、キャラグラフィックに「ドット絵の神様」こと小野“Mr.ドットマン”浩氏を始め、元ナムコの開発者を起用。またBGMにも、川田宏行氏、TECHNOuchi氏、増子津可燦氏、細江慎治氏、塩田信之氏、BUN氏、東海林弘憲氏、ヨナオケイシ氏といった錚々たるメンツをそろえている。また、PC版も同時収録されている。
-
2021年2月16日よりプリジェクトEGGにて配信開始。
余談
開発経緯
-
大学で開発されたゲームを紹介していた週刊朝日の人気コラム「デキゴトロジー」の編集部が電子工作サークル「東京大学理論化学グループ」を取材する事にしたが、グループがビデオゲーム開発に取り組んでいなかったため、急遽、アイデアだしの会議が行なわれた。
-
この時点では紙上にまとめられたアイデアが紙面に掲載されるのみであったが、サークルのメンバーがアイデアに基づいてプログラムを組みゲームの原型を完成させた後、記事を読んだナムコ、セガ、電気音響(現:村田製作所)の3社から商品化のオファーが入り、具体的な商品化案を持ち込んだ電気音響からリリースされる運びとなった。
-
初期構想では「マンションのリビングにゴキブリホイホイを仕掛け、はい回るゴキブリを退治する」というものだったが、自由度を適度に抑えるためにフィールドが碁盤目に変更され、更に「映画「エイリアン」のブームにあやかってエイリアンを敵として出したい」という意見が取り入れられた。
これに伴って、舞台設定とゲーム性に説得力を持たせるために、碁盤目のフィールドを「平安京」に、ゴキブリを「エイリアン」に置き変えた結果、「平安京に襲来したエイリアンを検非違使が退治する」という、B級映画のような世界観が出来上がった。
その他
-
開発段階ではシューティングにおけるボム的な役割の「べっこう飴ボタン」というものが搭載される予定であったが、当時の標準の業務用ゲーム機はレバー+3ボタンに対応していなかったため削除され、規定数のミスでゲームーオーバーという仕様に変更された。
-
これは開発当時「口裂け女の都市伝説」が流行っていたことから構想されたもので「口裂け女はべっこう飴をあげると喜んで立ち去る」という噂に基づいたものである。
-
最初に登場した本作のアーケード筐体が、現在も東京大学に保管されている。
-
ナムコのアーケードゲーム『源平討魔伝』の平面モードにおける迷路ステージで、本作のエイリアンをオマージュした敵キャラが登場する(こちらは主人公の攻撃で普通に倒せる)。
-
実は音楽担当の中潟憲雄氏の奥さんの身内が本作の開発に関わっていたといい、恐らくその縁からと思われる。
また、中潟氏はのちにGB版、さらにはPC版やFC版「NEO平安京エイリアン」の制作にも関わっている。
-
パソコンゲームからアーケードに移植された経緯を持つが、最初の発表は雑誌「I/O」(アイオー)である。
-
当時はアーケードゲームをLSIゲームで発売される事が主流で平安京エイリアンも学研から発売されている。
-
本作の影響
-
当時は、「スペースインベーダー」のようなシューティングや「ヘッドオン」などのドットイートタイプのゲームが多くを占める中、敵を穴に落として埋めていくという独特のゲーム性は非常に評価され、後のユニバーサル社『スペースパニック』に受け継がれた。
平安京エイリアン (GB)
【へいあんきょうえいりあん】
ジャンル
|
アクション
|
高解像度で見る
|
対応機種
|
ゲームボーイ
|
発売元
|
メルダック
|
開発元
|
ライブプランニング
|
発売日
|
1990年1月14日
|
定価
|
3,000円(税抜)
|
判定
|
良作
|
概要(GB)
『平安京エイリアン』のライセンスを得たメルダックが制作したゲームボーイリメイク版。
オリジナル版の『平安京エイリアン』を再現したOLDバージョンと、リメイクを施したNEWバージョンを同時収録している。
原作との相違点
基本システムはリメイク元の平安京エイリアンを継承している。以下に相違点を追記する。
-
GBの解像度に合わせ、フィールドが大幅に縮小され、横10マス縦9マスのマス式に変更となった。
-
障害物が追加された。
-
一定時間ごとに通れるようになる紋章。穴を掘る事が出来ない固い床。乗ると穴は掘れないがエイリアンは進入できず、一定時間で定位置に移動する船。
-
検非違使を発見すると接近してくる新種エイリアンが追加された。
-
効果音やBGMが追加され、グラフィックも新調された。
-
対戦モードが追加された。対戦中のBGMは互いのGBでそれぞれ別の矩形波が鳴り、さながらセッションするようになっている。
-
NEWモードは全12面。全てクリアするとエンディングに突入する。
-
面構成は4種類。それぞれ3つのステージに分かれており、敵の配置や種類・数が異なる。
-
穴の段階が3段階に変化。掘るにも埋めるにも手早く済むようになった。
評価点(GB)
-
フィールドの縮小や新要素の追加などを施しつつ、原作の面白さを損ねることなく保っている。
-
オリジナル版よりもゲームスピードが速くなっており、テンポがよくなっている。
-
和の風情を感じさせるかっこいいBGM
-
中潟氏がこれ以前に手掛けた「源平討魔伝」にも通じる純和風なBGMが多く、どれもがかっこいい。
-
上述の対戦モードにおけるステレオ演奏など、音楽面に力も入っている。
-
作曲は開発元のライブプランニング(現:KAZe)に所属していた中潟憲雄と大久保高嶺との共作。
-
彼らは同社シューティングゲーム『暴れん坊天狗』のBGMも手がけており、後に発売された暴れん坊天狗のサウンドトラックに本作の曲も収録されている。
賛否両論点(GB)
-
全12面とボリュームは少ない。
-
ただし、元がシンプルなシステムのゲームゆえに単調さもはらんでいるため、冗長さを失くすという点ではちょうどいい塩梅ともいえる。
問題点(GB)
-
コンテニュープレイが不可
-
ステージ数がすくないとはいえ、あともう少しでエンディングというところでゲームオーバーとなって最初からやり直すという事態になるのではさすがに酷である。
総評(GB)
ハードの解像度の都合でフィールドの広さが狭くなっている点は劣化点といえるが、それでいてゲームバランスに支障が出ないよう配慮するでも、オリジナルを過剰に尊重するでもなく、穴段階の短縮・様々なギミックを搭載しつつオリジナルの要素を色濃く継承した続編的なリメイクになっている。
ゲームスピードや難易度敵に、新たに平安京エイリアンを始める場合はこちらからプレイしてみるといいだろう。
余談(GB)
-
ソフトに貼られたシール(パッケージ)には穴に埋まったエイリアンが描かれているのだが、これがまた綿密で非常に気持ち悪い。
-
説明書の表紙や挿絵は、平安時代の絵巻物調の画風で書かれているのだが、鎧を着こみシャベルを担いで走る検非違使の絵面が実にシュール。
最終更新:2022年11月07日 06:52