クレイジー・クライマー

【くれいじーくらいまー】

ジャンル アクション
対応機種 アーケード
発売元 日本物産
開発元 日物レジャーシステム、ジョルダン
稼働開始日 1980年
レーティング CERO:A(全年齢対象)
※バーチャルコンソール版より付加
配信 バーチャルコンソール
【Wii】2010年2月23日/800Wiiポイント(税5%込)
アーケードアーカイブス
【PS4】2014年5月15日/823円
【Switch】2018年2月9日/823円(税8%込)
判定 良作


概要

体一つで高層ビルの外壁を登る「クレイジークライマー」を操り、最上部を目指すアクションゲーム。最大の特徴はレバーを2本使う独特の操作系。
命綱無しに生身の人間が階の高さが人の背丈以下の高層ビルを登るという荒唐無稽の世界観、他に類を見ない操作体系、斬新なアイデアから高評価を得た。

システム

  • 入力デバイスはレバー2本。右レバーで主人公の右腕を、左レバーで主人公の左腕を操作し、ビルの窓サッシをつかんで登っていく。
    途中、妨害等で落下すると1ミスになり、残機を1つ失う。
    • 右レバーを上に上げると右腕を上げ、左レバーを上に上げると左腕を上げる。
    • 上の段のサッシを掴んでレバーを下げる(腕を下げる)と体が持ち上がる。これを繰り返せば主人公は1段づつ登っていくことが出来る。逆にサッシを掴んだ状態で腕を伸ばし下の段を掴んで上の手を下げれば一段だけ降りれる。
      • 二段連続で降りることはできない。これによって、地上に降りることが出来なくなっている(ステージ開始時に4段登っている)。
    • レバーを左右に入力すると腕を左右にずらすことができ、片手ずつ隣の部屋のサッシをたぐり寄せれば左右移動ができる。
    • 操作を誤って、両手がサッシから離れるとそれだけで落下してしまう。通常は片手がサッシから離れている状態でサッシを掴んでいる手を離すことはないのだが、登る操作が速すぎると手を滑らせることも。
  • 屋上まで登ればクリア。その際に、画面上部から飛来するヘリコプターを掴めばボーナス得点。
    • 一定時間ヘリコプターを掴めないでいると去ってしまい、ボーナス得点が得られない(クリアにはなる)。また、ボーナス得点が初期値の半分になる(時間経過や落下物への接触で減少する)と登頂失敗となる(次のステージには進める)。

様々な障害・妨害物

  • 窓サッシ
    • 窓は時間経過により開いたり閉じたりする。完全に閉じた状態の窓はつかむことが出来ず、両手とも窓を閉められると落下してしまう。
  • 落下物
    • 落下物は植木鉢・瓶・鉄骨・鉄アレイとさまざまなものがある。これらに接触した際、片腕が開いていると落下してしまう。
      両手ともサッシを掴んでいればセーフだが、この時体勢が崩れ片手を離してしまう。このため、体勢を立て直す間もなく連続ヒットすると落下してしまう。特に連続ヒットしやすい鉄骨や鉄アレイは危険。
      • ステージ最初の鉄骨や鉄アレイは耐えられる可能性がある(耐えられない可能性も高い)が、一定以上の階に到達すると振ってくる鉄骨や鉄アレイに接触すると問答無用で落下するようになる。*1
      • 植木鉢などを落とす人は閉じた窓と同じ扱いで、人が出ている窓は掴むことができない。掴んでいる状態の窓から人が出ることはない(出始めた後にその窓を掴もうとして手を滑らせることはある)。エリアによって、同時に出てくる人の最大数は決められている。
      • 落下物に接触するとボーナス得点が初期値の1%だけ減少する。連続ヒットするとその回数だけ減少する(連続ヒットの場合は大抵落下するが)。
  • 看板
    • 上階から落ちてくる巨大看板に接触すると条件問わず落下する。
    • 電飾看板から出ている剥き出しの電線に接触すると運次第で落下する。電飾看板自体は通過可能。
  • ゴリラ
    • 道中、巨大なゴリラが出現。定位置に陣取って横方向にパンチを繰り出すだけだが、殴られると運次第で落下する。
  • しらけコンドル
    • 鳥が出現し金の卵や糞を落としてくる。金の卵や糞は落下物と同じ扱いだが、鳥は一定階層に到達するまで画面上を周回する。
  • ビルはところどころ穴があいていたりくびれていたりするため、そういうところでは主人公が選べるルートが狭くなり、障害物回避が難しくなる。
  • たまに風船が飛んできて、掴まると主人公をある程度上昇させてくれる(これで到達する階層はあらかじめ決められている)。
  • 一度ミスすると、そのエリアの障害物は消える(窓サッシだけは開閉する)。鉄骨や鉄アレイ、看板の落下があるエリアでミスした場合、それらの落下もなくなる。このため、同じエリアで連続ミスするようなことは起こりにくくなっている。

評価点

  • その稀有な操作デバイスからくる体感的直感的な操作方法が非常に気持ちよい。
    • リズム良く左右のレバーを上へと入力するだけで登っていくというシンプルな操作方法なのでとっつき易く、障害物もたいてい(ここ重要)何かしら対処方法があるため、コツさえつかめば誰でも遊ぶことが出来る。
      • 「たいてい」というからには、そうでない場面にも遭遇する。鉄骨や看板が逃げ場のない場所で落下してくるなど。
    • レバーを2本使うゲームは非常に珍しい。本作および続編以外では、『リブルラブル』や『空手道』などそれぞれ独自の操作性を持ったごく少数のゲームに限られる。

問題点

  • 8面分のデータが入っていたが、バグで全4面ループになっている。面数表示も4面クリアで1面に戻る。移植版でもバグは解消されず、全4面ループのまま。
  • 4面では場合によって進行方向をすべて埋め尽くす即死看板が降ってくるなど、運ゲー化する場面がある。
  • ニチブツのみならずこの頃のゲーム業界ではよくある事だが、BGMが全て(おそらく)無断使用楽曲。
    • 子象の行進、ドラえもんのうた、ピンクパンサーのテーマ、しらけ鳥音頭など。これらは現在でも著作権保護期間内の楽曲である。
    • 移植版ではほぼ全てサウンドが変更されているため、無断使用の可能性は高い。ただし、しらけコンドル出現時のBGMとして使われる「しらけ鳥音頭」は移植版や後述の『クレイジー・クライマー2000』でJASRACから許諾を得て使用されている。

総評

他に類を見ない一品物のゲーム。単純操作で解りやすいことも相まって大ヒットを記録した。
看板や鉄骨が外壁スレスレを頻繁に落下する高層ビル、窓枠にしがみついている生身の人間に植木鉢を投げ落とすその住人など、まさにクレイジーな世界観で多くの人の記憶に残る一作となった。
本作とムーンクレスタのヒットを受けて、ニチブツはただのコピーメーカーから一人前のゲーム開発企業へと成長して行くのであった。


移植

本作はさまざまな機種に移植されているが、前述の通り、基本的に全てサウンドは変更されている(一部例外アリ)。
また、家庭用機でレバー2本による操作感覚を無理なく再現した移植は、PS版からとなる。*2

  • FC版
    • 十字ボタンに被せて使う専用ミニレバーが2本付属しており、1P・2Pコントローラーの十字ボタンを駆使してビルを登っていく*3。道中に1画面アクションの部屋に入れる場所があり、そこでは1コンを普通に持って操作する。また、タイトル画面等にオリジナル曲が付いていた。
    • 2014年にプロジェクトEGGで配信されている。
  • SFC版(『ニチブツアーケードクラシックス』*4収録)
    • 十字ボタンが左手、ABXYボタンが右手。ひとつのコントローラーでそれなりにプレイできるようになった。
    • 何故か版権BGM以外もオリジナルと違う曲に作り替えられている。
  • PS版(『ニチブツアーケードクラシックス』*5収録)
    • 『クレイジークライマー'85』という特別バージョンも収録。
  • PS2版
    • 「オレたちゲーセン族シリーズ」として発売。正式に許諾が取られ曲がオリジナルと同じになっている。
  • WS版
    • 縦持ちでプレイ。縦長のディスプレイと左右それぞれ4方向のボタンになるのでワンダースワンとは相性がいいゲーム。
  • Wii版
    • 「バーチャルコンソールアーケード」としてDL配信された(現在はWiiショッピングチャンネル終了に伴い購入不可)。クラシックコントローラの他、リモコンとヌンチャクでも操作が出来る。
  • PS4/Switch版
    • 現在、ニチブツ作品の全権利を保有しているハムスターから「アーケードアーカイブスシリーズ」としてDL配信されている。
      ちなみにPS4での同シリーズ最初の配信作品が本作である。
    • BGMの差し替え等はWii版と同等。
  • その他にX68000版、Windows版、Android版等もある。
    • X68000版は先に発売された「リブルラブル」に同梱されていた専用パッドにも対応していた。

続編・関連作

  • クレイジー・クライマー2』(AC)
    • 基本システムはそのままに、グラフィックやサウンドは大幅進化。逆に言えばそつなくまとまった後継作。
    • X68000(『1』とのカップリング移植)の他アーケードアーカイブスでPS4とswitchに移植版が出ている。
  • 『クレイジークライマー'85』(PS)
    • 『ニチブツアーケードクラシックス』に初代とカップリングで収録。ゲームアーカイブスで配信されている。
  • 『ハイパークレイジークライマー』(PS)
    • グラフィック、サウンド、ギミックなどを進化させた作品。
      ステージが多く、ビルだけでなく塔や岩山をも登る。
  • 『クレイジー・クライマー2000』(PS)
    • 3D化した町並みをデュアルショック特有の左右対称のアナログスティックを駆使して登っていく。サウンドは異なるがオリジナル版も収録されている。
    • 元祖ニチブツビルはもちろん、2つの壁を行き来できるビルやグルグル回れる円筒形のビルも登場。入居者は主人公の邪魔をするよう指示されている、という設定がある。
  • 『クレイジークライマーWii』(Wii)
    • 2007年にアーケードゲームの見本市であるAOUショーに出展されたがお蔵入りになった『体感!クレイジークライマー』を移植したもの。
  • ファイヤートラップ(AC、PC)
    • 1986年にデータイーストから販売された本作のフォロワー的作品。クォータービュー視点で火災発生したビルの2側面をレスキュー隊員が登りながら消火活動を行い、屋上の女性を救助したらクリアという、ある意味本作以上にクレイジーな内容。難易度もクレイジー。
      • 2022年にプロジェクトEGGにて配信された。

余談

  • 現在の視点で見ると、高層ビルをよじ登るという非常に突拍子もないゲームに見えるが、当時は命綱無しで高層ビルをよじ登るパフォーマンスが世界的に流行しており、日本でもテレビで特番がよく組まれていた。そういった世相をゲーム化しただけであり、特段奇異なゲームとおもわれていなかった。もちろん妨害行為満載というゲーム的なアレンジはあるが。
  • 当時の出回りはそれなりに良かったのだが、本作のオリジナル基板の多くが『ドンキーコング』のコピーゲーム『クレイジー・コング』の改造基板として利用されてしまった上、そちらの出周りがよかったため、オリジナル基板の数が極めて少なく、遊べる機会も限られてしまっている。
    • クレイジー・クライマーの基板は現存数こそ少ないものの、非常に単純な構造をしているため、専門知識があればすぐに汎用アップライト筐体で稼動することが出来る。
      • ただし、レバーを二本使う関係上、(レバーやボタンを取り付ける)コントロールパネルは改造したものか、二人同時プレイ可能なコントロールパネルを用いなければならない。
      • オリジナル基板はセキュリティチップ用のバッテリーが切れて稼働不能になっている可能性が高い。交換もできない(交換しようとするとセキュリティデータが飛ぶ)。つまり、現状で稼働している基板はコピー基板の可能性が極めて高い。 もちろん、『クレイジー・コング』へと改造された基板はセキュリティチップがなくても動作する。
    • ネームエントリーで開発メーカーのアルファベット名を入力するとクレジットが2増えるというアーケードゲームにあるまじきとんでもない裏技が存在する。 当然、実店舗でこの裏技を試すのは厳禁。 海外版では対策としてフルネーム入力ができずイニシャル3文字のみの登録となっている。
      • ちなみにこの裏技について、現在ジョルダンの代表取締役社長を務めている佐藤俊和氏は後年のインタビューにて「これについては自分の指示で入れた。自己満足なんだけど、ずっとニチブツさんとやってるから名前をどこかに入れておきたかったし、やっぱり制作者の意地として名前を残しておきたかった。今だから言える話だけど、当然ニチブツさんにも絶対秘密だった。普通こんなのはROM解析でもしない限り気が付くはずもないんだけど。どこかで広まっちゃったんだろうね。」という旨を述べている。
  • バルーンを利用したバグが存在するが、 これを使うとゲーム自体が進行不能に陥るのでこちらも使用厳禁である。
  • 開発元の1つであるジョルダンは現在でこそ「乗換案内」*6や携帯コンテンツで知られる企業だが、元々は本作を含むアーケードゲームの受託開発*7から始まった企業でもある。
  • 当時それほどレバー等に対してメンテナンスを行う事が少なかった為か、内部的な物理設定で「4方向レバー」と「8方向レバー」の筐体があった。
    • 大した違いに無い様に思えるが、8方向レバー仕様では上りながらの斜め移動が可能な為に、特に移動箇所が細くなっている所での鉄骨避けが4方向レバーよりなめらかに出来る。*8
  • 2005年にTBSの特別番組「DOORS」で、体感型クレイジークライマーのアトラクションが制作された。
    • 大型スクリーンの前に設置されたハシゴがゲーム画面のスクロールに合わせて回転しており、そこを人間が実際に上っていくと言うアトラクション。画面内に落ちてくる落下物に当たる、背景のない吹き抜けに手をかける、スクロールから遅れて床に落ちる、でミスとなり3ミスでゲームオーバーとなるルール。
    • 放送前の前評判は非常に高く、ネットでもやってみたいと言う声が多かったが、実際に番組内でプレイすると……
      • 人間の体力に合わせているためスクロールの速度が遅い。その割りにゴールが遠い。
      • 2人同時プレイでどちらかが落下物にかすれば即ミス、しかも吹き抜けがあった場合は迂回した上で落下物を避けないといけない。
      • 落下物を回避するためには画面を見ながら実際に横移動する必要があるが、上を見ながらハシゴを上りながら素早く横に移動すると言う動きは肉体的にも精神的にも負担が大きい。
    • という難易度の高さで無理ゲーと化していた。まっとうにプレイできるのはフリークライミングの経験者くらいであろう、まさにリアルでクレイジーなクライマー専用アトラクションであった。

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最終更新:2023年10月14日 17:24

*1 19段までは耐えられるが20段からは落下する。

*2 PCではこれより先にX68000版で『リブルラブル』に同梱された専用コントローラーを使う仕様があった。

*3 コントローラーは縦並びにして使う

*4 1995年5月26日発売。

*5 1995年12月29日発売。

*6 公共交通機関を使って移動する最適経路を提供する情報サービス兼同名のソフトウェア。乗り換え情報サービスの先駆けであり、後にノウハウを活かして旅行業にも進出している。

*7 後にCS機のゲームソフトの受託開発も行っている

*8 逆に4方向レバー仕様だと不可能なので、詰む可能性がある。