タイムクライシス

【たいむくらいしす】

ジャンル ガンシューティング
対応機種 アーケード(SYSTEM SUPER 22)
販売・開発元 ナムコ
稼動開始日 1996年
判定 良作
ポイント 革新的なペダルシステム
タイトル通りの厳しい制限時間
硬派なアクション映画風の演出
タイムクライシスシリーズ

概要

ナムコが1996年に稼動を開始したアーケード用3Dガンシューティングゲーム。
ナムコとしては、3DCGのガンシューティングは1994年稼働開始の『ギャラクシアン3 アタック・オブ・ザ・ゾルギア』以来約2年ぶりであった。
ストーリーは王道ながら、画期的な「フットペダル」により単なるガンシューの枠に収まらない好評価を受け、後のシリーズの土台となった他、
セガの『THE HOUSE OF THE DEAD』と共に「ガンシューティング」というジャンルの国内知名度を大きく上げた代名詞的作品でもある。


ストーリー

とある小国「セルシア共和国」大統領の娘、レイチェル・マクファーソンが首領「ワイルド・ドッグ」率いる犯罪組織に誘拐された。
首謀者はかつてマクファーソン一家が率いた革命で王政を滅ぼされたことに恨みを持つ旧王家の生き残り、シェルード・ガロ王子によるもの。
政府への復讐の為、凶悪犯罪に手を染めていたシェルードはワイルド・ドッグと同盟を結び、レイチェルを根城である旧王家の孤島の古城に幽閉。
彼らは大統領に対し、娘と引換に機密軍事ファイルを日没までに提供するよう要求、本件の公表や武力介入をするならば娘の命は無いと脅迫した。
そのような要求を飲むわけにはいかない大統領は、欧州連合(EU)の国際諜報機関「VSSE」にレイチェル救出を極秘裏に依頼。
これを受けたVSSEは、同機関最強の諜報員と称され、ワイルド・ドッグとは因縁を持つ男、リチャード・ミラーを単身古城に潜入させた…。


特徴

従来のガンシューティングゲームのシステムは「自動スクロールでゆっくり進む画面」「次々現れる敵に撃たれる前に撃つ」「リロードは画面外を撃つ」が主流だった。
これは銃撃戦をゲームに落とし込む上での都合なのだが、遮蔽物を挟み身を隠しながら相手と撃ち合うという現実の銃撃戦のリアリティには大きく欠けるものであった。

本作の革命的だった点は、これらの「ガンシューティングゲームのお約束」を大きく打ち破った点にある。

  • フットペダル操作による遮蔽動作とリロード
    • 本作の筐体にはガンホルダーの下に金属製のペダルが設けられており、プレイヤーは足でこのペダルを操作し、ゲーム内の主人公の体勢を変化させながら銃撃戦を行う。
      ペダルを踏むと、踏んでいる間だけ物陰から身を晒して攻撃でき、ペダルを離すと素早く物陰に隠れる。隠れている状態では敵の攻撃は一切当たらなくなり、銃弾もリロードされる。
    • 本作以前にもフットペダルやレバー、ハンドル等で移動や回避及び防御動作ができるガンシューティングが少数存在*1したが、どの作品でも使い方が少々難しく、攻撃を避けるという感覚を味わいづらかった。
  • テンポ良く進む「エリア」制と「アクションポイント」システム
    • 本作は従来の「ゲーム開始後はステージ切替まで延々と銃撃戦」ではなく、「エリア」に配置された「アクションポイント*2」(以下「ポイント」と表記)と呼ばれる細かな銃撃戦を繰り返す。
      • 1ステージは3つのエリアで構成され、全3ステージ・9エリア制。舞台が狭い古城である事を活かし、ゲーム序盤の背景に見えていた建物が後に舞台となる演出もある。
    • ポイントへの移動中は画面左下に「WAIT!」と表示され、プレイヤーは攻撃出来ず、敵の攻撃も当たらないが、ポイントへ到着すると映画の撮影宜しく「ACTION!」の掛け声で戦闘が始まる。
      このシステムにより、プレイヤーは終始神経を張り詰める事なくプレイ出来るようになり、逆に熟練者には如何に素早く各ポイントをクリアできるかという競争を加熱させる事にも成功した。
  • タイトル通り、非常に重要な意味を持った「時間」の概念
    • プレイヤーには最大60秒の制限時間が与えられるが、時間が無くなると残りライフ数に関係なく問答無用でゲームオーバーとなる。
      ポイントを1つクリアする度に制限時間が少し回復するが、ポイント間の移動中も時間は減っていく為、物陰に隠れてばかりもいられない。
      • 所々に必ず現れる黄兵を倒すと、ポイントクリア時に時間を更に回復できる*3が、彼等は画面の端にいたり、すぐ逃げてしまう。
    • 雑魚敵は何処を撃っても一発で倒せるが、急所の頭に近いほど画面から消滅する時間が早くなる。タイム短縮にはヘッドショットが必須となる。
      • 各ランキングもクリアタイムのみで決定される為、身の安全と迅速性、この相反する要素のジレンマに悩まされながらプレイする必要がある。
  • 戦闘服の色分けや武装の差により、視覚的に危険度を示している敵兵
    • 従来のガンシューティングでは、「外見は違うが性能は同じ敵が無造作に連続登場」というものが多かったが、本作では性能に特徴が付けられた敵兵達が、他の敵兵と連携しながら登場してくる。
    • 拳銃装備の一般兵だけでも「射撃下手な青兵」「青兵より命中率が高い茶服の『隊長』」「初弾でほぼ必ず命中弾を撃つ『赤兵』と白服の『親衛隊』」「倒すと時間ボーナスの黄兵」と5種類いる。
      他にもマシンガン兵は緑、バスーカ兵は茶、手榴弾・格闘兵は黄/緑…と、殆どが画面内で目立つ色合いになっている為、「どの敵が危険か・優先して倒すべきか」が分かりやすい。
      • 単なる拳銃よりもマシンガンや爆発物の方が当然命中率は高く、格闘攻撃は必中。隠れる分だけタイムロスも発生する為、既存要素の「敵に攻撃される前に倒す」も疎かになっていない。
    • このおかげで初心者でもすぐに「赤兵やボスの攻撃が来たら隠れる」「黄兵は時間ボーナスなので狙う」等、敵のパターンやゲーム全体のセオリーを理解しやすくなっている。
      この要素は以降のシリーズ作でも継承され、一般兵は作品によっては色が異なるものの、全作共通して命中率が高い敵兵は「赤」・ボーナス要素がある敵兵は「黄」を基調とした外見になっている。
  • 民間人や人質といった「撃ってはいけないもの」が基本的に無いのも特徴。戦略性の高さと引き換えに、ひたすら撃ちまくる爽快感を追及したのは英断といえる。
  • ガンコントローラーには『ガンバレット』と同じブローバック機構*4付の高精度品を採用。同作で公称されていた「誤差1ドット以内」の高い命中精度は、本作にもバッチリ活かされている。

ステージについて

+ ステージ情報
  • ステージ1
    • レイチェルがシェルードによって処刑される直前、爆発物を用いて孤島中腹部の潜水艦ドックに潜入し、彼らの気を逸らしたリチャード。
      レイチェルの処刑を阻止すべく、リチャードはワイルド・ドッグの兵士達と戦いながら、貨物用エスカレーターを経由して中庭の塔へと急ぐ。
      • 中ボスとしてエリア3にて武装ヘリが登場。20発ほど撃ちこむか、数十秒経過すると退却していく。
    • ステージ1らしく、敵を早く全滅させないとタイムロスする潜水艦沈没後のドア、撃つと敵を全滅できる背景物、避けなければらない障害物と基本要素が詰め込まれている。
    • ボスは全身金色で鉤爪を装備した忍者のような敵「MOZ」と、彼が率いる全身黒尽くめの部下「ムササビ」が登場。
  • ステージ2
    • 回転扉によってレイチェルを目前で見失ったリチャードは、彼女が遠くの時計塔へ連行された事を倒したMOZから聞き出し、鉄拳制裁。
      時計塔へと続く狭く暗い渡り廊下から落下するというトラブルがありつつも、リチャードは宝物展示室を抜け、時計塔の最上階を目指す。
    • エリア1の狭い渡り廊下・エリア2の宝物展示室&暗室と変わった状況下での近距離戦や赤兵の不意打ちが多くなり、難易度が急上昇している。
    • ボスは事件の首謀者シェルード・ガロ王子と、彼を守るワイルド・ドッグの精鋭部隊「親衛隊」が登場。
  • ステージ3
    • シェルードを倒したリチャードだったが、その隙にワイルド・ドッグによってレイチェルが捕らわれてしまう。
      雇い主を失ってもなお、レイチェルを使って一儲けを企むワイルド・ドッグは、リチャードをシャッターで時計塔に閉じ込め、自身は古城を脱出しようとする。
      閉じ込められたリチャードは窓から時計塔の壁面を伝って降下し、彼らを追いかけるが、敵に発見され、数階程の高さから飛び降りての戦闘を余儀なくされる。
      • 中ボスとしてエリア1にて4門の対空砲及び大砲、ステージ1の武装ヘリ、エリア3にて死んだと思われていたMOZとムササビが再登場する。
    • 時計塔前・武器密造工場・司令室&玉座と何れのエリアでも赤兵の不意打ちや大量に配置された親衛隊からの連携攻撃の連続で、回復時間も短めと非常に難易度が高い。
      夕日が輝く広場での最終決戦は、命中率の高いワイルド・ドッグの攻撃と、部下達の連携攻撃が合わさった、文字通りの激戦となる。
    • ボスはワイルド・ドッグと、MOZ・ムササビ・親衛隊を含んだ彼の部下達の生き残り。

評価点

  • ハード&ソフト両面の様々な演出による、映画並の臨場感
    • システム上どうしても「敵の隙を突いて飛び出し、正確な射撃で敵を撃破」⇒「敵の攻撃が当たる前に隠れ、弾を補充」という一連の流れが形成され、独特のテンポが作品全体を支配している。
      繰り広げられる銃撃戦はさながらアクション映画やスパイ映画のワンシーンのようで、ガンアクションが好きな人には病み付きになってしまう中毒性がある。
      • 物陰に隠れるという要素もただ敵の射撃を回避し、銃弾を補充するだけではない。突っ込んでくる自動車やクレーン、相手のナイフ投げや格闘攻撃を回避するために使うシーンもある。
    • 素早いプレイを要求される厳しい制限時間も、ストーリーで説明されている「シェルードらが突きつけた要求期限」を表現しており、まさにタイトルに相応しい要素となっている。
      • ゲーム中のリチャードもとにかく走り、ステージ2では屋内から屋外に出る度に時計塔を見上げ、ステージ背景の夕陽もゲームが進む毎に沈んでいくという細かな演出もある。
  • 「ひげ中村」こと中村和宏氏が1人で全担当した「サウンド」は何れも印象的。
    • ハリウッド映画のオーケストラ音楽を強く意識したBGMは何れもそのシーンに合わせた曲調で、現在でも十分視聴に堪える作り。
      • 特に各エリアのBGMは一見別々の曲に思えるが、実は1つの曲を分割しており、ステージ2と3のエリア3ではフル版の「作戦開始 2nd Theme from Time Crisis」が流れるという熱い演出もある。
        上記曲も含め、デモシーンの「With a Tension」・ワイルド・ドッグのテーマ「Theme of Wild Dog」・エリアクリア時の「作戦成功」・システム関連の効果音は続編でもアレンジされている。
      • 2015年の中村氏インタビューによると、『スピード』等の様々な映画サントラを参考とし、基板の同時発音数の12個制限と言う状況下で、不慣れなオーケストラ調での作曲は大変だったとの事。
      • 公式サントラも2つ発売された(AC版サントラと、続編『2』の曲を含めたアレンジサントラ兼ドラマCD)。
    • キャラクターボイスも、当時としては高いサンプリングレート*5を使用しクリアなボイスを実現。3人の声優も全員ネイティブの外国人を起用し、映画らしい雰囲気を見事に表現している*6
    • ちなみに一匹狼な主人公のリチャードは終始無口*7で、ゲーム中では顔の表情だけで感情を表現しているが、逆にプレイヤーがゲームに移入しやすくもなっている。
      • 銃の描写に関しても、銃声が「広い屋内」「狭い屋内」「屋外」でそれぞれ変わる、反響音や空薬莢が床に転がる音も入っている…と相当な拘りぶり。
        リチャードの銃の外見が筐体に付けられたコントローラーとほぼ同じである点も、プレイヤーがゲームに移入しやすいよう配慮されたものなのかもしれない。
  • 芸の細かさを感じさせる、非常に細かな演出
    • 敵のモーションやボイスが豊富に用意されており、撃たれた時のリアクションがどこに命中したかによって変わるのは勿論、特定ポイントではあえて敵を倒さない事で敵の同士討ちが見れたりもする。
    • 撃てる背景物も多く、テーブル上の小物を撃つと床に落ちる、開いたままのドアを撃つと閉められる、機械類を撃った際は被弾箇所から火花が出る等、リアクションも細かく用意されている。
  • 個性的なボス敵たち
    • いずれも印象的な面々で、ステージ1で鉄拳制裁された後もしぶとくリチャードを狙うMOZと、事件の主犯シェルード・ガロは銃ではなく、鉤爪や極めて命中率が高い投げナイフで攻撃してくる。
    • またワイルド・ドッグとの戦闘はステージ3後半のほぼ全域に渡る大立ち回りで、特に強烈なインパクトを与えた。彼は後のメイン作品にも「VSSEの宿敵」として登場し続ける事となる。

問題点

難易度が全体的に高い

シリーズの続編と比べて本作は難易度が数段階も高く、ファンからも「シリーズで一番難しい」と評されていることも多い。以下にその所為を幾つか述べる。

  • 続編と比べて明らかに不親切なランダム要素
    • 本作では「命中しない敵弾」と「命中する敵弾」の外見上の差が弾道以外に一切無いため、どの弾が自分に当たるかの判別が非常に難しい。
      命中弾を撃つ確率が低いからといって青兵の射撃を舐めていると、思わぬダメージを受けてタイムロスという展開も多々ある。さらにライフ回復も(後述する唯一の方法だが狙ってできる手段ではないものを除いて)存在しないため、ランダム命中弾に泣かされてクリアを阻まれたプレイヤーも多い。
      • 当時からほぼ必ず挙げられた不満点だった為か、『2』で敵の射撃が命中攻撃だった場合は攻撃時に弾が赤く光るように変更。
        4』においては格闘攻撃を除くほぼ全ての命中攻撃が攻撃時に赤く光るように変更され、続編毎に判別が容易となっていく。
      • ただし本作の直接的な続編と言える『プロジェクトタイタン』では、命中弾の色が赤い程度に収まっている。
    • 一部ポイントでは敵兵の登場箇所や順番がランダム*8になるのだが、その一部は実力云々よりも博打的な要素が強く、タイムアタックにも極端に影響する。
      • その一部とは『「画面の左端・右端の何れか」「画面内の数箇所のうちの3箇所」から赤兵が登場する場面』と『ワイルド・ドッグ戦の第1ポイント』。
        何れも敵が登場直後に命中攻撃を確実に行うため、銃撃が僅かに遅れると被弾・回避すると敵も隠れてしまうと、実力問わず難度が非常に高い場面となっている。
        これはガンシューでは一般的な、敵の登場箇所に事前に狙いを定める「決め撃ち」対策であって一概には批判できないものの、少々やりすぎな印象は否めない。何よりライフもタイムも一度ロスするとリカバリーが利きにくい仕様も加わって、難易度上昇に拍車をかけてしまっている。
      • こちらも『2』ではステージ1で「一部の青兵がマシンガン・爆発物兵に変わることがある」「エリア2終盤が極僅かに変わることがある*9」程度に抑えられた。
        同作ではプレイヤー毎に異なる配置とルート分岐も導入され、好成績の為には精密射撃と連射を両立できる実力を持っているかが重要視されるようになった。
  • 敵の攻撃を回避できる反面、ライフの回復条件が「弾を40発連続でノーミスヒット」とかなり厳しい
    • 正直言ってとても狙ってできる手段ではなく、この回復の存在すら知らなかったプレイヤーも多い。
    • スコア制となった『2』以降のナンバリング作では、一切のライフ回復が廃止された代わりに、ノーミスヒットは高得点を狙う上で重要な要素となった。
    • 『プロジェクトタイタン』では「30発もしくは20発連続」に緩和された上で復活、新たに「一部背景物破壊」も追加されている。
  • プレイヤーの銃の性能が悪い
    • リチャードの銃は自動式拳銃*10であるにもかかわらず、装弾数が「6発」とリボルバー並に少ない。*11それに加えて自弾の当たり判定も以降のシリーズ作と比べると小さめ。一応本作の道中の敵は(約2組を除いて*12)一発で倒せる上にボスも必要な弾数は続編より明らかに少ないのだが....
      • 作中、遮蔽物から少し身をはみ出している敵や遠くにいる小さい敵を撃ち抜く場面が存在するので、それらの場面をスムーズに突破するにはそれなりの修練が必要となる。
    • 『プロジェクトタイタン』を除く『2』以降のナンバリング作では総弾数は9発に増加。自弾の当たり判定も大きくなったことで改善された。
  • タイトルに相応しい制限時間の厳しさ
    • 本作は制限時間が当時のアーケードの多くのレースゲームと同様に「全編通して共有」となっており、各ポイントごとに時間が一定時間分回復(エクステンド)するものの続編とは異なり完全に回復(リセット)されず、時間がかかればかかるほど後が苦しくなりやすい。
      ボーナスタイムが増える黄色兵の存在もあるが、倒した時点では追加されず*13、何より遠くや他の敵の猛攻中に出現することが多いことに加えて一瞬で姿を消すため、知っていても逃してしまう場合も珍しくない。
    • 更に本作はWAIT(移動時)中も制限時間が減り続ける理不尽な仕様で、後半になるにつれてその移動時間も長くなっていく傾向にある。
      • 特に語り種にされるのが3-3の「エレベーターでワイルドドッグを追って玉座の間へ向かう」シーン。他より明らかに移動時間が長く、その間も容赦なく制限時間が減っていくため最早嫌がらせ以外の何物でもない。
      • 続編以降はWAITが出ている最中は制限時間減少が停止する仕様に変更された。
    • そして先程までの要素に加えて特徴で触れた「時間切れ=即ゲームオーバー」の仕様により、難易度はシリーズ中でも高めとなっている。
      • ただし、アーケード版ではコンティニューした際はその場で続行する仕様なので、ノーコンティニューに拘らなければ連続コンティニューでのクリアは可能。

総評

隠れながら撃つ臨場感、銃を撃つ度にガンコンがブローバックする爽快感、ハードな世界観で他のガンシューティングとは一線を画した、シリーズ化も納得の良作。
続編に比べれば1人プレイ専用で難易度やシステム的にも厳しい点が各所に見受けられるが、名作と言えるだけの練られた基本システムはこの第1作目から健在である。
稼働から20年以上が経過した現在ではシリーズ中でも特に稼働数が少ない為、シリーズやガンシューティングのファンならば見かけた際に是非プレイしてほしい。


余談

  • 「スパイ作品が題材で主人公は凄腕工作員」「遮蔽物を挟みながら多数の敵を倒していく」「制限時間が厳しい」点など、1986年に同社が発売した『ローリングサンダー』と酷似した部分が見受けられる。
    • これは主に海外で言われていたのだが、2018年のバンダイナムコのスタッフのツイートで、本シリーズも企画当初は『ローリングサンダー』シリーズとして作る案もあったことが明かされた。
  • アーケード版のテクスチャを良く見ると、基板からの直撮り動画かつ一時停止しなければわからないレベルに細かい小ネタが存在する。
    • 格闘兵が持っている鉄パイプの一部分には赤い字で何かが縦書きされているらしい事が分かるが、よくよく見ると「風林火山」と書かれている。
      また、バズーカ兵が発射する砲弾には、避けた状態で横切る瞬間を静止画で見ると「神」と書かれている。いずれも旧日本軍的でシュールである。
    • ステージ3-3の玉座に飾られた、ガロ王家と思われる男女の肖像画だが、顔面はよく見ると開発スタッフ(2名とも本作の脚本担当で男性)の顔。
      • 絵の背景を静止画で見ると女性には「ドン」、男性には「上」と書かれており、それぞれ「神藤辰也*14」「上博文」両氏がモデルと分かる。
        この内、神藤辰也氏は本作の後にスクウェア(スクウェア・エニックス)へ移籍、現在は『すばらしきこのせかい』シリーズ等を手掛けている。
        一方の上博文氏は薩川隆史氏と共にゲームデザインも担当。本作以降、薩川氏と共に『レイジングストーム』までのシリーズ作品に関わった。

タイムクライシス(PS版)

対応機種 プレイステーション

販売・開発元 ナムコ
発売日 1997年8月7日
価格 6,090円
備考 ガンコン対応
PS2『ガンバリコレクション プラス タイムクライシス』
にもガンコン2のみ対応で収録
判定 良作

概要(PS)

アーケード版稼働の1年後、『ガンバレット』と共にプレイステーションに移植。専用開発のガンコントローラ「ガンコン」も同時発売され、同梱版も発売された。

業務用を完全移植した「アーケード」モードに加え、完全新規の「スペシャル」モードが追加されている。


ストーリー(PS)

「スペシャル」モードの追加ストーリー

セルシア共和国の事件解決後、VSSEは同事件の主犯であった「ワイルド・ドッグ」に関する調査を行っていた。
そして、彼が率いる犯罪組織と武器取引を行っていた、素性不明の武器商人が率いる武装組織「カンタリス」の存在が浮かび上がった。
「同組織のアジトは郊外の湖畔にあるリゾートホテルに偽装した兵器開発工場で、同組織は新たな武器取引に向けた準備を行っている」
との情報を入手したVSSEは、武器取引阻止・カンタリス壊滅の為、リチャード・ミラーをカンタリスのアジトへ派遣したのだった…。


特徴・評価点(PS)

  • プレイヤーの結果次第で次のエリア・ストーリー・戦うボスが変わる、完全新規の「スペシャル」モードが追加された。
    • 以降、本シリーズの家庭用移植版では、ミニゲームモード「クライシスミッション」や、ストーリーの裏側を描く新規モード収録がお約束となった。
  • アーケード基板の半分以下の性能であるPSに合わせグラフィックの質やフレームレートが落ちたが、様々な工夫*15により、そこまで悪く見えない。How to playのデモンストレーションも完全再現である。
  • ガンコンはブローバック機構は無いものの*16基本造形や精度はアーケード版とほぼ同じで、小さなテレビでもプレイ可能。国内版では色はつや消し黒で、大分本格的な作りである*17
    • アーケード版でのペダル操作は、『リロードボタン』としてガンコン前方の両側面に付いた「A/Bボタン」が担当。その為、ガンコンプレイ時は両手持ち必須。
    • 一応、通常コントローラーでも操作可能だが、画面に小さな青い点が照準として表示されるだけで非常に見失いやすい。遊ぶならガンコン推奨。
      隠し機能として2P側に通常コントローラを繋げると、全てのボタンがリロードボタン扱いになる。これを足で踏むことでアーケード版に近い感覚でプレイできる。

問題点(PS)

  • システム面の大きな違いとして、ゲームオーバー時のコンティニューがアーケード版の「その場」から、「そのエリアの始めから」へと変更。
    • アーケード版ではゲームオーバーになっても、連続コンティニューをする「ゴリ押し」プレイができたが、PS版ではエリアの初めからやり直さなければならない。
      ボス戦も例外ではなく、ボスに負ければボス戦の始めから。特にステージが長い「スペシャル」モードでは苦痛になりやすい。
    • もっともこれはアーケードを家庭用に移植する場合にはよくある縛りで、いわゆるアーケードは「地獄の沙汰も金次第」仕様である。

総評(PS)

ガンコンにより、アーケードのガンシューティング作品を家庭でも遊べるようになったのは大きい。
新規ストーリー等の追加要素も嬉しいところ。


他の移植版

  • PS2『ガンバリコレクション プラス タイムクライシス』(2002年12月12日 3,990円、「ガンコン2」同梱版(7,329円)あり)
    • 『ガンバレット』シリーズ3作品との同時収録(+収録作及びナムコから過去に発売されたガンコン対応PSソフトの資料集であるギャラリーモードと、(数は少ないが)隠し要素の新規のミニゲーム)。
    • PS2専用ソフトおよびPS2専用周辺機器であるガンコン2対応となり、ロード時間が僅かに短縮された点以外はPS版のベタ移植である。
      • 一方で、初代PSのガンコンには非対応なので注意。その逆も然りで、元の初代PS版の本作及び初代PSで発売された全てのガンコン対応ソフトは、PS2本体で互換性を利用する形でプレイしても、ガンコン2には非対応なのでこちらにも注意。

余談(PS)

ガンコンの対応モニター/テレビについての注意点

ガンコンならびにガンコン2はブラウン管テレビのみに対応。液晶テレビには非対応なので注意。なお、ガンコン3は両対応。

  • これは「走査線タイミング」という、ブラウン管の仕様を利用した方式を採用しているため。
    • ブラウン管に映る映像は、実は一斉に表示されているわけではない。マイクロ秒以下の速度で1ドットずつ画面全体を走るように描写されるが、我々の認識できるよりはるかに短いスパンでそれが変わるため、残像として「画面全体に絵がある」と錯覚するのである。
    • よってガンコンのトリガーを引いたとき画面全体を白く光らせると、前述の仕様のため「画面の端から1ドットずつ白くなってゆく*18」こととなる。
    • そしてガンコンの先には光センサーが備えられており、「引き金を引いたタイミング」と「センサーが白い光を検知したタイミング」の人間には認識できないごくわずかな時間差を計算することで、引き金を引いた瞬間ガンコンの照準がどこを狙っていたのかがわかるのだ。
  • 液晶テレビからは絵が画面全体へ同時に映し出される方式に変わったため、上記の方式は利用不可能。
    • ガンコン3以降では、赤外線を利用した方式で照準の向きを検知している。
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最終更新:2024年02月21日 21:14
添付ファイル

*1 タイトーの『スペースガン』『ガンバスター』や、今作と同じナムコの『ラッキー&ワイルド』など。

*2 『2』以降のゲーム中の説明では「攻撃ポイント」と呼称されている。

*3 この黄色兵は続編以降も得られる特典を毎回変えて続投し、『2』は高得点、『3』以降は黄兵はサブウェポンの弾薬を落とす兵士となっている。

*4 一発撃つ度にスライド内に仕込まれたバネにより実銃同様に後方にスライドが動き、プレイヤーに射撃時の振動を伝える。

*5 上記インタビューにて、中村氏が「従来は8kHzだったが、本作はストーリー性があって声を大事にしたかった為、開発チームを説得し12kHzにした」との事。結果は非常に好評だったようで、以後ナムコのゲームの音声は12kHz以上が標準となったとか。

*6 ただし海外では当時の日本製ゲームと同様に「酷い棒読み」と称されている。

*7 ドラマCDやとある作品(こちらは文章のみ)では普通の優しい口調で喋っている。

*8 厳密には幾つかのパターンが用意されているのだが、全ステージに必ず2回はこの要素がある為、事実上ランダムである。

*9 装甲車戦の直前、通常は「青兵3人が銃撃しながら近づいてくる」場面が、「赤兵1人と青兵2人が塀に隠れながら中距離から銃撃してくる」パターンになる場合がある。

*10 モデルとなったデザインは「コルト・ガバメント」の様で、PS版公式攻略本でも同銃と同じ45口径の拳銃と推測されている。

*11 尤も、本作の稼働当時は「ガンシューティングは1弾倉につき6発装填」という風潮が存在してはいた。

*12 ステージ1-3及び3-1で登場するヘリと、3-3で再登場するステージ1ボスだったMOZが該当。

*13 次のポイントへの移動時の回復タイムに加算される方式。

*14 スタッフロールでは「DON KANDO」表記で、「ドン」はニックネームと思われる。

*15 PS版公式攻略本によると、キャラクターモデルを距離により使い分けるLOD処理や、ポリゴンそのものに色をつけているらしい。

*16 本作のナムコ公式ガイドブックに掲載されている開発者インタビューによると、ブローバックは家庭用ガンコンにも取り入れたかったが、安全面の観点から断念したとのこと。

*17 海外版ではより玩具のような色になっているが、これは日本国外に於いては「銃の形をしたもの」は、本物の銃と間違えられたり、悪用される危険性が高い為、黒以外の派手な色に塗装する事が義務付けられている為である。

*18 正確には左上端からその段の右端へ、終わるとその一段下の左端から…と変わる。