魔神英雄伝ワタル外伝

【ましんえいゆうでんわたるがいでん】

ジャンル アクションロールプレイングゲーム
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 2Mbit+64kRAMROMカートリッジ
発売元 ハドソン
開発元 ウエストン
発売日 1990年3月23日
価格 6,800円(税抜)
判定 なし
ポイント 意外と多いアイテム
オートセーブ+途中リセット禁止
強すぎるドラゴンの炎
エンディング後強制的に最初から


概要

TVアニメ『魔神英雄伝ワタル』を題材としたアクションRPG。タイトル画面では1989とあるが、ROM生産が遅れたため1990年に発売された。
第1期である創界山編をベースとしているが、ストーリーはゲームオリジナルである。


ストーリー

第七界層へ向かう途中、ドアクダーの手によって別世界「中二界層」に飛ばされ離れ離れになったワタル一行。追っ手を振り切ろうとするが、この世界では力が半減してしまい囚われの身になってしまう。
龍神丸は近くにいた旅の少年に事情を説明し協力を求めた。一時的に龍神丸のパートナーになった少年は、途中で散り散りになったワタルの仲間達と出会い、彼らの魔神(マシン)を借りながらこの世界の平和とワタルを探す旅をする事となった。


特徴

  • タイトルこそ『魔神英雄伝ワタル外伝』だが、主人公はオリジナルキャラ(名前4文字でプレイヤーが入力)。
    • 肝心のワタルは主人公の目の前でブリキ大王に捕まってしまい、丁度居合わせた龍神丸とともに助けに行くというシナリオ。
    • ある店で買える武器に主人公の名前が付くという(例えば主人公の名前が「とらおう」なら「とらおうのけん」といった具合に)サービスもある。
    • 後にワタルと再会するのだが、呪いでビンの中に閉じ込められてしまい「ようまのこびん」という名のアイテムとなっている。
  • 通貨はクレジット。これで武器防具やアイテムを購入したり、宿屋に泊まったり、ワープショップも用意されている。
  • アイテムは所持数が決められているので上手くやりくりするのが大事になって来る。リセマラも出来ないので、能力アップは即座に使うと良い。
  • 当時としては珍しい横アクション+見下ろし型RPG。
    • マップ移動時は1画面1画面が独立してスクロールし、画面は一画面毎に切り替わる。ゼルダや聖剣のような仕様である。
    • 移動時のグラフィックは主人公で、戦闘時は選択中の魔神(マシン)を操って戦う事になる。
    • エンカウント制で戦闘に突入するとアクションパートに切り替わる。
    • アクションパートは龍神丸で戦う。Aでジャンプ、Bで武器による突きを繰り出して戦う。アイテムや魔法を使用する事も出来る。
    • 画面は1画面固定で敵を全滅させれば勝利。
      • 敵を全滅させると中央に宝箱が放物線で来る仕様で、経験値とクレジットが加算される。
    • 敗北したら所持金半額で宿屋に戻される仕様。
      • 本作には独特の仕様があるので、気軽にリセットボタンは使えないようになっているので注意。
    • 今作の開発はワンダーボーイ・モンスターワールドのほとんどを手掛けていたウエストンで、横スクロール戦闘時のキャラクターの挙動や反応、行動時の独特の効果音などが共通している。
  • 前述した魔法については、イベント等で魔道書を入手し、それを使用する事で覚えていく。
    • 魔法は戦闘時のみ・移動時のみ・戦闘時移動時両方で使える魔法が存在する。
    • 解説文と消費MPも表示されて分かり易い。
  • 自由度はあり、中盤では色々な場所から攻略する事も出来る。いきなり終盤前の雑魚敵とエンカウントしたりする事もできたりする。

評価点

  • OP導入は力が入っており、等身大のワタルが剣をかざして龍神丸が登場、そして龍王丸の横顔と創界山のタイトルが見栄えが良い。
  • 本作では戦闘時に使用する魔神を選べるのだが、アニメでお馴染みの龍神丸、戦神丸、幻神丸、龍王丸に加え本作オリジナルである雷神丸を使う事が出来る。
    • 最初に使えるのは龍神丸のみで、戦神丸以降はストーリーを進める内に増えていく。
      • 各地ではシバラクやヒミコなど原作キャラも登場して、主人公にマシンを供給してくれる。
      • 最初龍神丸は本来の乗り手(ワタル)が不在のため力を出せなかったり(ワタルを助けると一気にパワーアップする)、ゲームオリジナルの雷神丸は魔法の効果ならば龍王丸以上といった感じで各魔神の個性付けになっている。
    • 敵側のマシンはオリジナルが多いものの、「ハングリオン」や「コンボス」、「サードガン」等原作のものも登場する。
      • しかも、波状に飛来、上空から急降下、飛び道具、ワープなど実に多彩な戦い方をして来る。
      • 戦闘前には「・・・が現れた」と出るので、名前が思い出せなくて困る事も無い。
  • 舞台も豊富なのが良い
    • 草原や雪原や海岸やジャングルや沼地や砂漠など実に多彩である。宿屋の近くにはワープショップも用意されており各地へのアクセスも容易になっている。
  • ほのぼのとしたテキストまわり
    • 原作も根底はシリアスだがギャグやユーモアが多めの温かみのある作風だった。それを再現してか今作のセリフや文章もゆるめで楽しげなものになっている。
      • たとえばHPやMPが満タンの時に回復魔法やアイテムを使うとシステムが「もったいなぁーい」という趣旨のツッコミをしつつちゃんと消費する。しかも全アイテムごとに台詞内容が別。煽られてるようだが実際に無駄な行為をしているし言葉のチョイスがユーモラスで楽しめる。
  • アイテムも個性がある
    • 回復アイテムは勿論、睡眠学習器など独特なものも。
    • 剣と盾は数値の上昇だけでなく、色々な効果を持つため個性がある。
      • 敵からしか入手出来ない強力な武器や盾が多く、アイテムコレクションも熱い。
  • BGMも質が良い
    • 通常フィールドや、雪原フィールドの曲など良質な曲が多い。
    • 通常戦闘曲も1曲のみではなくフィールド・ダンジョン・更に砂漠のフィールドと3通り用意されており、いずれも良く合っている。こういう取り組みをやっているのは後発の作品の『レナス 古代機械の記憶』『SONG MASTER』『エルナード』くらいで珍しい。ただし、ボス曲が1つもないのは残念。

賛否両論点

  • 本作独特のオートセーブ仕様
    • 宿屋での中断以外でリセットを押した場合、クレジット(所持金)とアイテムがロストするペナルティが付く。
      • 前述のレアアイテム収集中に誤って電源を切ってしまった場合、これらのレアアイテムも消失する場合がある。
    • しかも、後述するエンディングでは勝手に2周目にいってしまうなど、プレーヤー不利な要素ばかりで評判が悪い。
    • セーブデータは3つあるが、勿論コピーなんか出来ない。まあこれは3人で本作を使い回すのには良いと思われる。
  • アクションゲームではない
    • PCEはアクションゲームであったが、本作はあくまで1画面で龍神丸と敵達との戦いのみであり、ロックマンのようなアクションゲームではない。

問題点

  • 一部アイテムの効果がわかりにくいものがある。
    • 例を挙げると賢さを上げる「てんはくさい」など。
    • 素早さを上げるアイテムは「サヤバス」。ある意味分かりやすいが…
    • シバラクからもらえる「戦神テレカ」を使うと戦神丸を使えるようになるのだが、現在と違い携帯電話やスマホが普及していない当時は原作でも戦神丸を呼び出すために公衆電話を探すことがよくあった。そのため「戦神テレカ」を電話の前で使うのだろうと予想したファンは存在しない電話を探し時間を無駄にする者もいた。
  • あるイベントで使用する「1000ゴールド」というクリアに必要不可欠なアイテムがあるが、それの入手方法が完全ノーヒント。
    • 中盤で販売しているあるアイテムを使用する事で入手が出来るが、低確率ではあるものの「ブーッ」というメッセージが表示されて何も起こらない、数クレジットが手に入るだけで消費される所謂「ハズレ」になる場合もあり入手に運が絡む。
      • さらに問題となるのはこれより前に「ひとりごとのオルゴール」というメッセージが表示されるだけのお遊びアイテムが市販されている事で、一つ目でハズレ演出が出た場合こちらもその類と勘違いされ見向きもされなくなる可能性もあり、こうなるとゲームクリアからは遠のいてしまう。
    • このゲームの通貨は(原作でも)クレジット。しかし1000ゴールド=1000クレジットだと思い、(無駄に)クレジット稼ぎをしたプレイヤーも多かった。
    • なお1000ゴールドは複数入手可能な上に売却可能だが二束三文の価値しか付かない。
  • ある魔道書のイベントで、特定の地点までストーリーを進めてしまうと二度とその魔道書の魔法を覚えられなくなってしまう。
    • 前述したオートセーブ仕様でやり直しがきかない、更に魔道書は売却処分不可なので、結果アイテム欄の容量を1枠圧迫してしまう。
  • 終盤のとある雑魚敵の出現パターンで「雑魚の初期配置がプレイヤーと重なっており、開幕いきなりダメージを受ける」というものが1パターンだけ存在する*1
    • 瀕死状態だと戦闘突入と同時にやられてしまう。これは流石に理不尽と言わざるを得ないだろう。
  • ゲームバランスが酷いという程ではないが、ボスの強さの強弱が激しい。
+ ボスの詳細
  • 序盤のボス「ブリキンナイト」
    • こちらの動きに反応して間合いを取ってくるので接近戦を挑みづらい。不用意に近づくと突きで大ダメージを喰らう。
    • 最序盤で入手する魔法「ファイヤー」を連発してゴリ押しする方法が一般的だが、MPが低いと倒しきれない事もある。
  • ピラミッドのボス「スフィンクス」
    • 飛び道具は持っているが、無意味にぴょんぴょん跳ねたりのっそり歩いてくるばかりなので楽に倒せる。最弱のボスとして名前が挙がる事も多い。寧ろこいつもよりもピラミッド内で通常エンカウントする「ツインカーメン+クレイジーギャザー×2」の方がよほど手強い。
    • 実は魔法「ファイヤーストーム」を2回使えば確殺可能。選択肢次第では2回戦うことになるが、これだけ弱い上に経験値もゴールドもそこそこ多いので戦った方が得だったりする。
  • 物語後半で戦う事になる「ドラゴン」
    • 本作最強の敵。「歩く→ジャンプ→炎を吐くor後退する」という単純なアルゴリズムを繰り返すだけなのだが、問題なのはここまで普通に到達するレベルだとこの炎でほぼ一撃死確定。こちらの魔法が一切通用しないのでハメる事が出来ないのも逆風。
    • その攻撃力たるやラスボスである「ネオゴーストン」のレーザーをも遥かに上回り、しかも攻撃範囲も画面半分程とかなり広い。
      • ワタルを預かっているだけに強力な敵が配置されるのは当然としても、あまりにも強すぎである。しかも事前情報は無しという初見殺し。
      • レベル上げも考えられるが時間がかかりすぎるのもあり、ここで断念したプレーヤーも多かった。
      • 幸い、こいつがいるダンジョンは雑魚敵が1~2撃で倒せるものばかりなので道中で消耗する心配は殆どない。
  • ドラゴンの後に戦う「ドンゴロ」
    • ドラゴンがこれだけ強いのだからこいつも相当な強さかと思えば攻撃方法は体当たりと武器による打撃のみ。攻撃力もドラゴンの炎の半分程度~それ未満で1、2発程度ならば普通に耐えられる。しかもある魔法でハメ殺しが可能。
    • ただ、ここに辿り着くまでは相当な長丁場なので、うっかりやられてしまうとまた面倒な道のりを辿る事になる。
  • 龍王丸入手後は魔神が龍王丸に固定され、他の魔神が選べなくなる。
    本作オリジナル魔神の雷神丸は「理力補正だけなら龍王丸を上回る」という特徴があるのだが、この仕様のせいで少々不遇。
    • 仮に他の魔神入手を後回しにしても登録されないため、結局は龍王丸で一択となってしまう。
  • ラスボス「ネオゴーストン」を倒してエンディングを迎えると、データがオートセーブされ強制的に最初からとなってしまう*2
    • データ選択画面にハートマークが追加され、敵の全能力値が5割増しした状態でゲームを始める事が出来るが、エンディング特典はそれだけなので最早誰得な仕様である。
    • なお、エンディングの後日談は序盤でのイベントの選択肢によって少し変わる。
  • 原作の武器、技は一切登場しない。同じく、虎王やザン三兄弟といった、原作のライバルキャラも登場しないのは寂しいところ。
    • 後者に関しては「原作の展開を壊さないための配慮」とも言えるが、ならドンゴロが出てくるのは何故……?

総評

原作要素も多く、ゲームバランスも基本的にはそこそこ良好ではあるものの、所々で粗が目立つ作品。
もう少し丁寧に作りこまれていたら「ハッキシ言っておもしろカッコイイゲーム」になり得ただけに、少々勿体無いと言える。


余談

  • アニメ放映中の1988年8月30日に、PCE版も発売されている。
  • 外箱とカセットラベルに映っているクラマとガッタイダーはゲームには出てこない。
    • これはPCエンジン版のイラストを流用したのが原因。
  • ゲームブック版も発売されている。
    • 主人公は勿論ワタルである。こちらもタイトル画像はPCEやFCの使い回しであるが、内容はゲームとはまた異なる。
    • こちらも壮大であり豊富な挿絵とともに本作とはまた違った魅力がある。何より、オートセーブに振り回されたり、ドラゴンで断念しなくて済むのが良い
    • ゲームオーバーの際はセリフなどにワタルらしさが出ている。
    • 現在のところ相場が2千円くらいに上がっているが、それでも元は取れると保証しよう。特にワタルのファンなら手に取って間違いない。
  • TVアニメの方は本作のおよそ丁度一年前に最終回を迎えている。
    • 本作発売当時は『魔神英雄伝ワタル2』が始まった頃である。
  • 1998年4月23日は『超魔神英雄伝ワタル ANOTHER STEP』が発売されている。こちらも「『ワタル』の外伝」という位置づけになっている。
+ タグ編集
  • タグ:
  • ARPG
  • ハドソン
  • ウエストン

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最終更新:2024年03月05日 23:30

*1 ラストダンジョンの「ジャクローチーフ×2+ブリキンサムライ×2」のパターンが該当

*2 シチュエーションを問わずセーブとロードが可能な『レトロフリーク』といった互換機に頼るならこの問題は解消されるが…