超名作推理アドベンチャーDS レイモンド・チャンドラー原作 さらば愛しき女よ
【ちょうめいさくすいりあどべんちゃーでぃーえす れいもんど・ちゃんどらーげんさく さらばいとしきひとよ】
ジャンル
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超推理アドベンチャー
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対応機種
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ニンテンドーDS
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メディア
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DSカード
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発売元
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フリュー
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開発元
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エスポチーム インテリジェントデザイン (制作のみ?)
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発売日
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2009年5月28日
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定価
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5,040円(税込)
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象)
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判定
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クソゲー
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ポイント
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2009年クソゲーオブザイヤー携帯機部門次点
超名作の小説を端折っただけの超改悪 ゲームとして評価すべきかすら怪しい インターフェース面にも難あり
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概要
レイモンド・チャンドラー原作のハードボイルド小説『さらば愛しき女よ』のゲーム化作品。
チャンドラーはハードボイルド小説の大家であり、本作の主人公でもある「フィリップ・マーロウ」はハードボイルド小説で最も名の知られた探偵である。
『さらば愛しき女よ』はマーロウが登場する長編シリーズの2作目。
「タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない」「撃って良いのは撃たれる覚悟のある奴だけだ」等の名台詞は有名。
『コードギアス 反逆のルルーシュ』の主人公の決め台詞や、『仮面ライダーW』の主人公コンビの片割れの名前の元ネタである。
ゲーム内容
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基本はごく普通のビジュアルノベルで、合間に次の目的地を選択する「移動パート」と、部屋などを探索する「探索パート」が存在する。これらについては後述。
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織田裕二のモノマネなどで知られる芸人、山本高広を主人公・マーロウ役の声優として起用。話題性重視の起用にも思われるが、この手の起用にありがちな棒読みは一応避けられており、それほど違和感なく聞けるレベルではある。
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もっとも、あまり熱の入った演技をしなくてもいいキャラクターであるという理由も大きいだろうが。
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ボイス自体、各章の初めに数セリフ分ある独白に付いているだけで、分量で言えば全体の1~2%程度とごく僅か。他にボイス付きのセリフは他のキャラクターを含めて一切ない。
問題点
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クリア時間は1時間半~2時間程度。原作は約360ページなのでちゃんと読めば少なくとも2時間以上はかかるであろうことを考えると、明らかに短い。
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これは、ゲーム化するにあたって細かい部分、特にセリフ以外の情景描写などがかなり端折られていることが主因。
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原作をなぞっているだけなのでストーリーに分岐などは一切なく、2周目などの要素もない。
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「移動パート」と「探索パート」の存在意義が希薄。
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元が小説という一本道のストーリーであり、「移動パート」はその移動部分を選択式にしただけなので、ストーリー上次に行くことになる場所以外の場所を選択しても、どうでもいいような会話が二言三言交わされるだけでほとんど意味はない。
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場合によっては、ストーリーに無関係の場所に行くと本作オリジナルのミニイベントが起きる場合もあるにはあるが、数が少ない上に30秒程度で終わるようなくだらない内容のものがほとんど。
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最序盤で行くことになる「理髪店」など、一番最初も最初に行って以降は最後まで二度と行く必要のない場所なのだが、行き先のリストには最後まで無意味に残り続ける。
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「探索パート」も例えば『逆転裁判』シリーズのような面白さは全くなく、単に事件に関わる物品を探す要素を面倒臭くしただけで必要性の極めて薄い代物。調べられる場所もごく僅かで事件に全く関係ない場所はほとんど調べられず、そもそも「探索パート」の出現頻度もあまり高くない。
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要するに、単なる水増しの一言である。
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規制などの関係で、一部ストーリーが原作から改変されている。しかも改変しきれていないせいで、細かい矛盾が発生している箇所も散見される。
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「インディアンの大柄な用心棒」という設定のサブキャラクターがいるのだが、恐らく人種描写についての規制から普通の大柄な白人男性に変えられている。
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おかげで、なぜ「野蛮な臭いがする」などと描写されているのか、なぜ「すぐ来い。今すぐ来い。」「自動車ある。大きな自動車。」などと片言で喋っているのかさっぱり分からない。
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人種関連の話で言えば、物語のきっかけとなる「フロリアン」という店も黒人専用のナイトクラブなのだが、そういった描写は丸々カットされている。
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主人公・マーロウが、閉じ込められた上に麻薬を打たれて錯乱状態になるシーンがあるが、これについても恐らく薬物関連の規制から単に「睡眠薬をしこたま飲まされた」と変更されている。
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おまけに錯乱状態の描写は中途半端に残っており、煙に包まれている幻覚を見て「火事だ!」と叫ぶシーンもそのまま。原作でレストランのボーイが「ステーキはレアですか、ミディアムですか」と聞いてくる幻覚を見るシーンは、見張り番の男が「ステーキはミディアムかね?それともレアにするか?」となぜか唐突に聞いてくるように変わっている。
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原作中でマーロウは「アン・リアードン」という女性に出会って共に事件を追うようになるのだが、このゲームでは尺の都合なのか初めから二人はよく見知った仲だったように変えられている。
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原作の重要人物の1人として登場する「ジュールズ・アムサー」という冷酷な精神科医の男が、なぜかこのゲームでは「ジュリエット・アムサー」という女性に変更されている。本作の改変点の中でも、理由がよく分からない。
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なお、アムサーを殴りつけるシーンはそのままで、辻褄を合わせるために「女を殴るなんて愚かな人ね」というセリフが追加されている。
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「殴ってもいい女がいるとは初めて知った」という主人公のセリフもあるとはいえ、ハードボイルド小説の探偵に女性を殴らせるような改変の必要はあるのだろうか。
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他にも、皮肉や暴力といった要素が全体的に削られている。マーロウや重要人物のマロイなどの個性が大幅に抑えられているのはもちろん、そもそもハードボイルドに必須の要素を削っている時点で色々と台無しである。
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その他細かい変更点(主に内容の単純化のための省略・削除)は多いが、キリがないので割愛。
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テキスト中には選択肢が何度も登場するのだが、半分以上は少し前に聞いた情報をちゃんと把握できているかどうかの確認問題である。失敗しても「そんな訳ないだろ(要約)」とツッコミが入ってまた選ばされるだけであり、無意味なことこの上ない。
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中には「男に『話しかける』『顔を見せる』『無視する』」などの比較的重要な選択も存在するが、本来の原作のストーリーから外れた選択をしてもマーロウが「いや、今はそれどころではない」などと勝手にやめてしまうため、結局本来のストーリーを忠実になぞって行動するハメになる。選択肢の意味がまるでない。
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一応終盤のとある選択肢だけは、しくじると同じ章の最初に戻されるので、全く意味がない訳ではない。
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「応答を間違えると撃ち殺される」というのが1回あるだけなので、必要性が存在するのかというとはなはだ疑問ではあるが。
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インターフェースも良いとはいえず、当然のようにバックログ機能や既読スキップ機能は未搭載。
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タッチペンで若干読む速度は上げられるが、ボイス部分ではそれさえもできず、一切早送りもスキップもできない。
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セーブデータの説明欄には「現在読んでいる章」「セーブした(実時間の)日付」しか書かれておらず、どこでセーブしたのか大変分かりづらい。
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話者が変わる際にいちいち立ち絵やメッセージ欄が消えたり現れたりする上に、その速度が遅い(1回につき1秒程度)。地味ではあるが、待ち時間が非常に鬱陶しくテンポはかなり悪い。
評価点
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作中のイラストの出来は悪くなく、ハードボイルド小説の雰囲気をゲームで表現する落とし所はそれなりに掴んでいる。
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重要なシーンでは一枚絵があるし、名も無い脇役にもちゃんと立ち絵が用意されている。
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クリア後には人物紹介やミュージック・CGギャラリーを見ることができる。
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人物紹介はあまり手の込んだものではないが、名も無い脇役まで全員収録されている。
総評
シナリオは基本原作をなぞるだけ。ゲーム化部分は蛇足。
はっきり言って、このゲームを買うくらいなら原作の小説を買った方がはるかに安上がりだし、描写も細かく物語に入り込める。
スペシャルサンクスには「すべてのチャンドラーファン」とあるが、どう考えても(熱心なファンからちょっとしたファンまで含めて)チャンドラーファンが納得するとは思えない出来である。
余談
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ジャケットの売り文句は以下の通り。
推理ゲームをやりつくした人へ…
・世界および日本中の作家に影響を与えた推理小説を知っていますか?
・20世紀で最も有名なミステリー作家を知っていますか。
・世界で最も有名な探偵の名前を知っていますか?
・チャンドリアンという言葉を知っていますか?
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以上は、原典である小説においては正しい。細かいことを言えば「20世紀で最も~」には「クリスティは?」や「クイーンは?」という疑問が湧くし、「世界で最も有名な探偵~」は「シャーロック・ホームズ」であろうが、とにかくチャンドラーが最上級の有名作家であることは間違いない。
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しかし、これら原典にはふさわしい売り文句に担うレベルを本作がそのまま引き継いでいるかどうかを考えると、チャンドラーやそのファンを冒涜していると言われるのも仕方ない。
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なお、宣伝文句に「推理」「ミステリー」といった単語が頻出するが、本来ハードボイルドミステリは謎解きが主軸ではなく探偵役を中心とした人物描写に重点を置いた小説であり、強調するポイントがずれている感が強い。
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本作発売の前月に早川書房から村上春樹訳の新訳ハードカバーが発売されている(書名は『さよなら、愛しい人』に改題)。
偶然発売が被ったのか、本作が意図的に便乗して発売したのかは不明。
最終更新:2022年06月11日 21:09