テイルズ オブ ザ ワールド ~サモナーズ リネージ~
【ているず おぶ ざ わーるど さもなーず りねーじ】
ジャンル
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ファンタジーシミュレーションRPG
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対応機種
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ゲームボーイアドバンス
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メディア
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64Mbit+カートリッジ
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発売元
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ナムコ
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開発元
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IMP (加賀テック大阪開発部)
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発売日
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2003年3月7日
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定価
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5,040円
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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メインデータ1個 ヒロイックモード: 進行データ一個、中断データ一個
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レーティング
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CERO:全年齢対象
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判定
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クソゲー
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ポイント
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ゲームバランスが歪、新規ユニット育てにくい 戦闘に大きな不備、回避不能 その他、全体的に詰めが甘い テイルズファンにとっての黒歴史 キングスシリーズのファンも涙目
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テイルズ オブ シリーズ
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概要
通称『サモリネ』。テイルズ オブシリーズ初のシミュレーションRPGであり、ストーリー的には『テイルズ オブ ファンタジア』の続編にあたる。
システム的にはナムコ『キングオブキングス』の流れをくむいわゆる「キングスシリーズ」の一派で、『ポケットキング』の続編がテイルズの後押しを経て発売された物。つまり、「悲劇の名作ポケットキングの実子が、同社の名作RPGシリーズに養子にいった」という出自である。
絵師は藤島康介、奥村大悟。今作オリジナルのキャラのキャラデザは全て奥村氏が担当している。
「この世に悪があるとすれば人間の心、手抜き商品を売るなんて絶対に許せない。」
遊んでみないとわからない、詰めの甘さがいろいろある。詳しくは内容にて。
システム
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今作独特のシステムとしてユニットの召喚があげられる。
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ステージ開始時、味方ユニットは主人公一人だけ。魔法陣や城といった拠点に入り、マナを消費して召喚することで初めて主人公以外の味方ユニットが現れ、召喚したユニット1~3体でチームを組み行動するという仕様になっている。
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上記の仕様のため出撃枠のようなものはなく、ある程度自由な部隊編成が可能だが、マナには限りがあり、自ターンはじめに供給されるマナもステージ開始時はそれほど多くない。召喚する味方ユニットをよく考えないと初期配置敵にただ蹂躙されるだけである。
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味方ユニットの種類を増やす方法は「その敵を主人公を含むチームが倒した上で、その敵に対応する指輪を使い契約を交わす」「クラスチェンジ」「シナリオでの自動習得」といった具合。
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契約の指輪の入手は、イベントや隠しアイテムでの固定入手を除けば完全ランダム。そのため本当に欲しいユニットと契約したいときに対応する指輪が手元に無いことも多い。
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また主人公で倒す必要があるいうのも実は非常に厄介、詳しくは後述。
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隠しアイテムも本当に何の印もなく、マップの一定地点を踏むと入手という形式なので知らないと手に入れにくい。
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味方ユニットは大きく分けて「ストーリーで得る仲間ユニット」と「ステージ内で召喚する魔物ユニット」に分かれており、レベルの引継ぎに差がある。
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ユニットの育成に関しては、ステージごとの引継ぎシステムを採用している。仲間ユニットは自動で次のステージに引継がれる一方、そのステージ内で召喚した魔物ユニットはそのステージのクリア時に次のステージに引き継ぐかどうかを選択する。
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引き継いだユニットはそのままのレベルで次ステージ以降も使え、引き継がなかったユニットは破棄扱いになる。そのためそのステージで育てたユニットを引き継いでいけば自軍戦力の増強になる。しかし…。
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なお新規で召喚する魔物ユニットはすべてレベル1からのスタートになる。
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魔物ユニットは死んだらいなくなる。仲間ユニットでも死んだらそのステージで得た経験値および装備していたアイテムを失う。
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それだけならば他のシミュレーションでもよくあることなのでたいしたことはないのだが、後述するゲームバランスのせいで大変なことに…。
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ユニットには種族とクラスがそれぞれ設定されている。種族は全部で15種類存在し、その中で細かくクラス分けされている。クラスはアイテムを与えたり、レベルを上げたりするなどして各クラスごとに決められているクラスにクラスチェンジが可能。しかしその条件は結構複雑でノーヒントなものが多い。
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ただ一部では種族を超えるクラスチェンジも可能で、やり方によってはファンタジアの登場人物、すず(♀)の種族を戦士♂にして性転換してみたり、主人公をゾンビにするといったネタもできる。
評価点
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メインとなるストーリーライン自体はテーマ性、メッセージ性が非常に大きいものである。
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『ファンタジア』における「敵が絶対悪ではない」という部分も踏襲されている。
問題点
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ゲームバランスがかなり歪。
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主人公やクレスなどの一部ユニットがやけに強く、彼らだけ鍛えればクリアはできる。
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その反面、弱いユニット(クラス)はとことん弱い。
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これに該当すると、ずっと育てていて主力だったはずのユニットでも途中から初期配置の敵に歯が立たなくなるうえ、レベルは敵より高いため倒してもロクに経験値が入らず成長もできないという事態も起こる。
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条件を満たせばクラスチェンジでより上位のクラスにすることも可能だが、レベル・能力値・耐性・スキルを引き継ぐ為ほぼ誤差レベルしかパワーアップしない事もよくある。レベルアップ時の成長や以降の習得スキルはクラスチェンジ先のものになるのだが…
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ユニットの召喚コストはクラスごとの基本値*レベル。当然、強力なクラスほどコストが重く下位クラスでレベルを上げてから上級クラスにすると召喚コストが激増し強さは据え置きという残念なことに。
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一方でクラスチェンジも使いこなせれば強力。高コストユニットは初期能力値・初期耐性・成長率に優れるので、高コストユニットを召喚しある程度レベルを上げたら低コストユニットにクラスチェンジさせると使い勝手がよくなる。
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オススメはウンディーネ。元が最上位のユニットであり、クラスチェンジ先のニンフが非常にローコスト&飛行持ち。また、アイテムがあるならクラスチェンジで反復横跳びさせると凄まじい勢いで全能力値が上がっていく。「愛のしるし」は終盤まで待たなければドロップしないが、もうひとつの必要アイテムが序盤から入手出来る「羽」であるのもポイントが高い。
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ゲーム中盤から終盤にかけて敵の能力がどんどんおかしくなってゆき、中途半端なユニットでは太刀打ちできなくなる。
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その上ルーチンもなかなかいやらしく、自分の力で倒せるであろうユニットを集中狙いしてくる。その上クリティカル率も結構高い。
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そのため新規ユニットを育てようとしてもレベル1の強さでは相手の初期配置の敵の一撃のもとに葬りさられるのが関の山。
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しかもこのゲーム、相手ユニットも経験値を得てレベルアップするため下手な味方ユニットを出せば敵に塩ならぬ経験値を送るだけである。
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敵もステージ中で新たな敵ユニットを召喚してくるので、それを利用すれば低レベルユニットも育成できるが…。
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相手が新規召喚する敵ユニットもすべてレベル1。新規召喚したユニットを育てるのには何の問題もないが、ある程度まで育ったユニットになるとレベル1ユニットから得られる経験値では足りない、初期配置の敵にはかなわない、といった事態に陥りやすい。
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ただ前述した通りユニットごとの格差がひどいため、1レベルのユニット同士が殴り合っても弱いほうが一方的に負けるという光景は日常茶飯事。
酷いときには三対一でも一の方が一方的に勝つということも。
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敵の増援がそういった仕様のため、
ステージ序盤の敵→初期配置の中~高レベル敵
ステージ中盤の敵→初期配置の中~高レベル敵の残存部隊&増援の低レベル敵
ステージ終盤の敵→増援の低レベル敵&高レベルのステージボスとその取り巻き
というかなりアンバランスな状態。
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また敵はマナと出撃枠のあまりがあればどんどん増援のレベル1ユニットを召喚するので、ただただうざったいだけ。
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ドロップアイテムは敵のクラスでのみ決定され、序盤からステータス永続アップアイテムをそこそこの確率でドロップする。特に移動力アップする羽はぶっ壊れ。レベル1の低コストユニットに移動力だけ上げて使い捨て足止め要員という外道戦法も出来るほど。
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レベル1の敵を新規召喚させ続けて乱獲したステータス永続アップアイテムを主人公に注ぎ込む事で容易に無双可能。稀に飛んでくる即死攻撃だけは怖いが。
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戦闘終了後に獲得経験値が表示されず、どれだけ育っているかの把握が面倒。
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さらに獲得経験値は組んでいるチームのレベル平均で算出され、一括で与えられる。そのため高レベルユニットと低レベルユニットと一緒に組ませて経験値を稼ぐということもできない。
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戦闘面でも多くの問題を抱える。
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ダメージの計算式が不透明で、攻撃力を上げてもダメージが通らない、防御力を上げても相手の攻撃が止まらないなんてことはザラ。
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敵から攻撃されたときは反撃一択。任意で行う回避や防御などというコマンドは存在しない。
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しかも反撃時には攻撃指定ユニットが選べない。
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そのため契約などのため残しておきたいユニットを反撃で倒してしまうということが多い。
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リーダーと地形の属性が合えば使うことのできる「スキル」というものがあるのだが、これも扱いが難しい。
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レベルアップにより習得するのだが、酷いユニットだと最後のスキル習得がLV29と非常に遅い。ちなみにレベルの上限は30で、1周目だとLV15前後から経験値が減り成長速度が格段に落ちる。
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味方の体力を回復させるスキルを習得するクラスが少ない。遠距離回復のスキルなら地形さえ合えば自由に使えるが、回復のスキルだと戦闘中に強制発動し回復の対象も選ぶことができない。
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そのため任意で味方の体力回復させたいなら自軍が占拠している拠点に置いとくくらいしか手段がない。
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属性を変化させる装備が若干少なめ、属性や装備できるクラスが偏り気味なのも使いづらさに拍車をかけている。主人公(と一部クラス)はイベントで入手できる指輪を使って多彩な属性変化が出来るが、貴重品なので装備した状態で死んで失ってしまうと……。
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ラスボスに至っては「再生」というスキルを持ち、倒した瞬間20%の確率で復活するという素敵仕様。HPが1の状態で復活するのが唯一の救い。
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回避しようとしても自分と同じ闇属性の拠点にひきこもって出てこないため回避できない。出てきたとしても周囲数マスも闇属性なのでよほど引きつけないと回避できないだろう。
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キャラクター、シナリオ面では…。
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ある仲間は複数のステージにまたがっておこる一連のイベントをすべてこなさないと敵に寝返ってしまう。しかもその理由も単純なもの。
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男装の女戦士という設定の味方キャラクターがおり、味方参入時は種族が戦士♂なのだが、男装であることを告白したあとは戦士♀に種族が変更される。そのため戦士♂時のクラスチェンジは無駄になり、2周目以降の要素であるクラス引継ぎもそのキャラだけ適用されない。
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また味方キャラと敵軍のキャラクターには因縁があるものが多いのだが、最終的にその部分は特に回収もされることもなく投げっぱなしになってしまう。
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他には
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ステージ内セーブが一度タイトル画面にもどる中断セーブのみ、ソフトリセットがないというプレーヤーをイライラさせる仕様。
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中断セーブというのは名前だけで何度ロードしてもデータは消えない仕様のため、救済措置としては助かる。
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終盤になるにつれ無駄に広いステージが多くなる。さらにそんなステージに限って壁で仕切られていることも多く、ステージクリア…いや敵との交戦までも非常に時間がかかる。
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2周目以降の引継ぎ要素はレベル、クラス、アイテムと充実しているのだが、2周目に突入すると同時に初期配置の敵のレベルが引き上げられる。どこまでも新規ユニットに優しくない仕様である。
総評
致命的なバグなどはないが、SLGとしてもRPGとしてもまんべんなく詰めが甘い。実父・実祖父から優れた遺伝子を、養父から名門のブランド名を受け継いだ作品ではあるが、その多方面に隙の無い出来の悪さは、単にガッカリと呼ぶのもあんまりなものであった。
一応、ストーリーやシステム等に光るものはあるため、もっと煮詰めればいいものができただろう、とも言われている。しかし実際は、キングスシリーズファンはその出来に納得せず「キングスの名をただ売り渡した」として反発され、またポケットキングの主人公のうわさやファンタジアキャラの色恋話・腐れ縁話などの内輪ネタに終始したためテイルズファンにもそっぽをむかれてしまった。
結果、どちらのファンからもほぼ黒歴史認定されている不憫な子である。
余談
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名前のお陰でそこそこ売れて、しかもクラスチェンジの方法や習得スキル、ステージごとの隠しアイテムやエンディング分岐など説明するものが多いにもかかわらず、なぜか攻略本は出ていない。会社が攻略本を作る事を放棄してしまったのだろうか?
最終更新:2021年06月26日 19:51