逆境無頼カイジ Death or Survival

【あるてぃめっとさばいばーかいじ ですおあさばいばる】

ジャンル 逆境生還アドベンチャー
対応機種 ニンテンドーDS
メディア 256MbitDSカード
発売元 コンパイルハート
アイディアファクトリー
開発元 コンパイルハート
悠紀エンタープライズ
発売日 2008年9月25日
定価 4,800円(税抜)
レーティング CERO:D(17歳以上対象)
判定 クソゲー
ポイント 2008年クソゲーオブザイヤー携帯機部門次点
ミニゲーム集、後はひたすら紙芝居
意味不明の原作改変
少年マガジンシリーズリンク*1
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ストーリー

主人公の伊藤開司(いとうかいじ)は以前後輩の連帯保証人になったのが元で、多額の借金を抱えてしまう。金融会社社長の遠藤から「うまくいけば借金をチャラにできる」と誘われたカイジは、債務帳消しを賭けギャンブル船「エスポワール」へと乗り込むのだった。


概要

  • 週刊ヤングマガジンで連載中の漫画『賭博黙示録カイジ』のアニメ版、『逆境無頼カイジ』を原作としたゲーム。読み方はアニメ版の副題に合わせ「アルティメットサバイバーカイジ」となっている。
  • 原作では「限定ジャンケン」や「Eカード」など一見運否天賦のようなゲームを買占めなどの駆け引きや巧妙な心理戦、人間の醜さやそれに抗おうとするカイジなどの描写によって深みのあるギャンブルに昇華させており人気を博した。アニメ版も原作の再現に努めており再現度は高い。それを元にしたゲーム版に原作ファンは期待を寄せたのだが…。
    • なお、カイジのゲーム化は今回が初めてではなく、2000年にプレイステーションで『賭博黙示録カイジ』が発売されている。

問題点

ゲーム性の問題点

  • 蓋を開けてみれば原作の面白さの醍醐味であった「心理戦」の要素は皆無。一応原作を知らない人の為、それぞれ簡単に原作とゲームの流れを説明。
    • 最初の「限定ジャンケン」はグー・チョキ・パーのカードを4枚ずつ持ち様々な相手と勝負をして星を奪い合い、最終的に制限時間終了までにカードを使い切り初期状態である星3つを維持すれば勝ちというもの。やる事はただのジャンケンでありながら、グーチョキパーのそれぞれを出せる回数が持っているカードの枚数までである事、カードの不正な破棄は禁止だがプレイヤー間の譲渡が黙認されていた事から、どのカードを出すかの心理戦、現金も絡めたカードの取引・買占めなどの戦略が横行した非常に深いゲームであった。
      • ゲーム版ではそれらの要素は一切なし。プレイヤーは制限時間が尽きるまでただひたすら勝負を繰り返すだけ。石田さんに2回話しかけると「瞬間の閃き」なる技を教えてもらえるのだが、以後は「勝負前にミニゲームが挿まれ、相手の出すカードを完璧に把握できるようになる」という超能力ゲーとなる。ミニゲームの内容は対戦相手によって違い「カードを3枚並べてシャッフルし、最初に矢印がついていたカードが相手の出すカード」とか「数枚~十数枚の裏返しのカードが一度或いは小分けに一瞬だけ表になり、最も数の多かったカード・或いは指定された場所にあるカードが相手の出すカード」など。もはや原作の熱い駆け引きは見る影もない。難易度も高いとは言えず、後半はそれなりに難しくなったり種切れのカードが出て選択の余地がなかったりするものの、最初の楽勝の時に星を稼いでおけばクリアは容易い。どだいジャンケンなので、最低でも確率は五分五分なのだ。原作のカイジの苦労は一体…。
    • 次に挑戦するのは「鉄骨渡り」。文字通り高層ホテルに渡された鉄骨を渡るだけのレースだが、カイジの心の揺れ動きや2本目の「転落=死」での人の追い詰められた様、石田さんの最期の勇気などは見る者の心を震わせた。
      • ゲームでは「タッチペンを動かして鉄骨からはみ出ないようにバランスをとり、ゴールまで辿り着く」という内容。元が元だけに原作無視というわけではないが、これまた単純なミニゲームの域でありわざわざDSでやるほどのものとは思えない。しかも2回戦あるのだが、2本目で失敗してやり直すとまた1本目からとなる。1本目は制限時間もあるのでそこそこ神経をつかう為、非常にだるい。
    • 3つ目のゲームは「Eカード」。1対1で皇帝側と奴隷側に分かれ、それぞれ4枚の市民カードと皇帝側は皇帝、奴隷側は奴隷カードを1枚ずつ持って戦う。それぞれカードを順番に1枚ずつ出し、強弱関係は「皇帝は市民に勝ち、市民は奴隷に勝ち、奴隷は皇帝に勝つ」の三すくみと、ジャンケンに似たゲーム。枚数の関係上皇帝側が圧倒的に有利だがその分奴隷側は見返りも大きい。カイジは原作で利根川と戦い、利根川のイカサマを見破り最後は策に嵌め見事勝利した。
      • ゲームではなぜか利根川だけでなく黒服、遠藤とも戦う事になる。黒服・遠藤戦はノーリスクの実質練習で、利根川との対決では耳に特殊な器具をつけて、針が鼓膜に届くまでの30ミリを賭けることになる。勝って得られるのはなぜか原作のように現金ではなくコイン*2で、皇帝側なら1ミリにつき1枚、奴隷側なら5枚手に入り、最終的に50枚以上獲得すれば勝利。原作では心理戦やイカサマも飛び交う修羅場だったが、本作では限定ジャンケンと同じくミニゲームによる完全予知で心理戦のしの字もない。スロットや早押し、迷路など限定ジャンケンよりも時間がかかるゲームばかりの為テンポは最悪。結局プレイヤーの取る作戦は「皇帝側の1~2戦目(遠藤戦まででコインを20枚以上集めていれば1戦目のみ)に限界まで賭けて超能力で勝利しノルマ達成、後は1ミリずつ賭けて最速負けを狙う」という、原作でやったら会長ブチ切れ間違いなしの興醒め戦法が一番効率がいいという事になってしまう。ちなみに負けると続きからを選んでも黒服戦から。勘弁してくれ…。
    • その後、勝負に負けた利根川は会長の怒りを買い、焼けた鉄板の上で土下座をさせられる事になる。原作の利根川は潔く誰の手も借りず自ら鉄板に額を付き、既定の10秒間を越える12秒間土下座をやり続けた。
      • ゲームではなぜか利根川の土下座する時間をカイジが操作する事に。DSを閉じるかAボタンを押し続けるかして10秒間測る。10秒未満でも、なぜか10秒を大幅に過ぎても(11秒くらい?)ゲームオーバー。これまた続きからを選んでも黒服戦から。時計などで測れば簡単なゲームとはいえ面倒。DSの開閉はまさか土下座時の腰でもイメージしているのだろうか。
    • 利根川は傀儡に過ぎず、真の敵は会長だと気付いたカイジは会長に勝負を申し込む。予め入念に勝つ為の準備をした「くじ引き」で勝てば1億、負ければ指を失う最後の勝負に挑んだカイジだが、イカサマを見抜かれ即興で単純かつ巧妙な仕掛けを打った会長に敗北するのだった。
      • 例によって勝負の肝であったカイジの事前の仕込みは一切なし。プレイヤーは制限時間内に重なった大量の外れくじをタッチペンでかき分けて当たりくじを見つけだし(本来は当然中を覗いてはいけないのだが、このゲームではそれもどこ吹く風である)引き当てるだけ。ミニゲームとしてすらつまらない。

演出・ストーリーの問題点

  • 原作つきのゲームなのに演出は貧弱の一言。ストーリーも訳が分からなくなっている部分があったり。
    • 普段の物語シーンは絵+セリフのみの紙芝居。しかもアニメのシーンの絵はパターンが少なく、ただの立ち絵で済ませている場面も多数。(実際冒頭の遠藤とカイジの会話はアニメの顔アップ場面4枚しか使われていない)
    • 鉄骨渡りではちゃんと転落絵があるのは太田と佐原くらいで、後は立ち絵+「うわあああああっ…」のようなセリフのみでいともあっけなく…次々に人は落ちて行った
    • 当然のようにボイスも皆無。0。効果音扱いでの1言2言すら喋らない。
  • 話をかなり端折っている為、意味不明の改変が多数。
    • ゲーム性とも相まって船井や安藤はただの敵扱い(一応船井は最初に話しかけた時のみ特別演出があるが)、石田さんがイカサマを持ちかけられた時にカイジが横槍を入れたりする。星を大量獲得したのに金どころか借金すらチャラにならない。話が違いすぎる。
      • 実際、原作では借金を増やしてこのギャンブルを終えているのだが、これは元々の借金とは別にギャンブル開始時に軍資金として借金をした結果。元々の借金はちゃんとチャラになっている。
    • 佐原は「あんた誰?」状態。原作でただ1人橋を渡り終えたカイジはチケット(原作では現金、本作では借金帳消しと引き換え)の無効を宣告され激昂するが、ゲームでは「ぐっ! それはそうだが…」とやたら大人しい。石田さんや佐原の無念はどこへ…。
      • そもそも無効となったのは「失格でいいから鉄骨に流れている電流を切ってくれ」と頼んだからであり、にもかかわらずすぐに切られずに死者が出てしまったこと、そして電流を切った後もそれを明かさないままゲームを続行させられたことでカイジは激昂したのである。そこが描かれないだけならともかく、変にカイジが納得しているシーンを差し込んだので、じゃんけんの件も合わせてスタッフがストーリーの流れを理解していないんじゃないかと疑いたくなる。
    • 前述の通り、焼き土下座は10秒以上であればいいはずなのに上限がある。上限なしではゲームとして成り立たないというのは分かるが、あからさまな水増しゲームに仕立てるぐらいだったら最初からいれなければいい。
      • 水増しだとしても、カイジがやった訳でもない罰ゲームをやらされるのはどうだろうか。ただでさえこのゲームの存在自体が罰ゲームなのに
    • 極めつけはくじ引き後。
      • くじ引きで敗北した場合、会長は指を取るでもなく(そもそもそんなやり取りすらない)帰ってしまい、食い下がろうとするカイジを遠藤が制止し「お前じゃまだ勝てねえんだよ…」「じゃあどうすればいい?」「もう一度船で鍛えるんだ」のようなやりとりの後、また限定ジャンケンへ逆戻りする事となる。
      • 勝利した場合でも特定の条件を満たしていない場合(?)、カイジの借金はチャラになり会長は「面白くない」と去ろうとする。そこでカイジは会長の名前を尋ねるのだが「お前ごときに名乗る必要はない」と一蹴されて終わり。後日、再び訪ねて来た遠藤の誘いにより、カイジはまたエスポワールへと赴くのであった。…馬鹿もーんっ…!どっちも同じじゃねえかっ…通るかっ…こんなもん…!
      • ちなみに、原作ではギャンブルのチャンスは二度しかなく、その次は地下労働行きで完済するまで幽閉される。
      • 結局どちらもまた限定ジャンケンからやり直しになってしまう。ちなみにまた船に乗ったという設定でも利根川は健在であり、石田さんは生きている。時間ループさせるな。
    • なお条件を満たして(?)勝利した場合、会長の名前もちゃんと名乗られ、その後スタッフロールも出て完となりループもしない。
  • オプションはBGM音量とSE音量という充実ぶり。どこかのゲームを彷彿とさせる。

評価点

  • 数少ないカイジのゲーム化作品である。
    • 人気作品でありながら題材の都合もあってかゲームにし辛いところを一応ゲームの体裁にしている。
      • 「鉄骨渡り」のようなゲームはタッチペンの直感的な操作にマッチしている。
    • なお「限定ジャンケン」は既にプレイステーションにてゲーム化がなされている。

総評

単なるミニゲーム集であり、その出来もまるでフラッシュゲームか携帯アプリでできそうなものばかり。アプリゲームの進化のめざましさを考えればアプリ以下と言えるかもしれない。もっとも、発売当時の無料フラッシュゲーム*3や携帯アプリでもこれより上出来なのは多かろうが…

面倒なミニゲームを頑張ってクリアしたらエンディングすらなくループという、達成感が全くないゲーム。フリーでミニゲームだけができるようになるモードもあるが、正直誰が得をするのか不明。

加えて賭博要素もほとんどなく、 原作は賭博漫画でもなんでもない『ちびまる子ちゃん おこづかい大作戦!』の方がよっぽど賭博している という珍現象が起きてしまっている。

ストーリーも省略部分があちこちにあり原作ファンとしては物足りなく、知らない人にはよくわからない出来。数々の名言も演出の貧弱さで凄味がない。

とてもじゃないがたとえ原作ファンでも、いくら安くなろうともお勧めできる代物ではない。フリーでもこれ以上の出来のゲームを探すのは難しくないだろう。


余談

  • 2017年に『カイジVR~絶望の鉄骨渡り~』がPS4で発売された。
    • タイトルから分かるように「鉄骨渡り」のみのゲーム化で、VRに対応している。
      • 同年12月にはSwitchで『カイジ~絶望の鉄骨渡り~ for Nintendo Switch』として発売。
  • カイジのコンシューマーゲーム3作品はいずれも、原作漫画の1期『賭博黙示録カイジ』を元にしている。
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最終更新:2023年07月18日 17:02

*1 正確には週刊ヤングマガジン。

*2 原作通りに、直接現金を賭けるギャンブルとして描くと問題があるのかも知れない。CERO判定が上がってしまうのかも。

*3 ただし、当時のフラッシュゲームはAdobe Flash Playerのサービス終了により、現在は出来ないものも多い。