E.T. The Extra-Terrestrial

【いーてぃー じ えくすとら てれすとりある】

ジャンル アドベンチャー

対応機種 ATARI2800
発売・開発元 ATARI
発売日 1983年
判定 クソゲー
ポイント 作業ゲー
E.T.に見えないE.T.
エリオットがE.T.と何故か融合
起動しない物も混じってる
アタリショックの引き金と言われる作品
しかし「失敗に終わった意欲作」と評価する声も
北米版クソゲーワースト1位 (→参照)


概要

10歳の少年エリオットと地球外生命体(Extra Terrestrial)との種族と星を超えた絆を描いた映画「E.T.」。
1982年にスティーブン・スピルバーグ氏が世に送り出し、映画史にその名を刻んだ名作映画をATARIが版権を取り直々にゲーム化。
しかしその出来はクソゲー史にその名を刻むあまりにお粗末なものとなってしまった。

特徴

  • E.T.を操作して、ゾーンというゲームステージの中に散らばった通信機の部品を3つ探し出し、通信機を直してE.T.が宇宙に帰れるようにすることが目標である。
    • ゾーンには無数の穴があり、通信機の部品は穴の中にあるので、穴に落ちて探す。
    • 部品がある穴はランダムで決まり、毎回場所が違う。
    • 科学者はETを連れ去ろうとする。FBI捜査官はE.T.の集めたアイテムを取り上げてしまう。
    • E.T.はライフがあり、ETが行動すると減る。全てなくなるとゲームオーバー。一部のゾーンでは、E.T.が特定のアイテムを所持している時に特殊行動を使用できるが、この特殊行動でもライフが減る。また、回復アイテムのReese's Piecesによって回復できる。
    • 回復アイテムのReese's Piecesを9つ集めると、友達のエリオットが装置の部品を1個、届けてくれる。

問題点

  • UFOのパーツを探すという作業ゲー。
    • そもそも部品を探して穴にもぐるという内容が非常に単調で、初見でプレイヤーの意欲を削ぐ。
    • 穴に落ちてしまうと、空中浮遊でのろのろと脱出しなければならない。さらに穴に出ても、穴の当たり判定が厳しく、すぐに落ちやすい。他のゲームで搭載されている敵ダメージ時の無敵状態のようなものがなく、穴から出たり入ったりを繰り返すハマりやすい状態になるため、非常にストレスが溜まる。
      • しかも穴がやたらと多い。上述のように部品の配置はランダム制であり、全ての穴を調べる必要がある。そのくせ行動しすぎて体力がゼロになるとゲームオーバーという仕様。
      • さらに敵は穴を平気で渡ってくる。
    • E.T.の体力が尽きると何故かエリオットが融合して復活。
  • グラフィック
    • そもそも原作では茶色のETが 緑色 である。とてもETとは思えない。
  • クリア条件
    • 苦労してパーツを集めた後は本来仲間の宇宙船を呼んでクリアとなるのだが、科学者やFBI捜査官がいない時でないと呼べない。
    • 宇宙船を呼んでも正確な位置と正確なタイミングで待っていないといけない。しかも時間制限がある。
    • さらにその間に科学者やFBI捜査官が出てくると宇宙船が来なくなる。
  • バグ
    • 宇宙船が来ないというバグに陥る事がある。
    • 更に酷いものになると、ゲームデータが破損して2度とプレイできなくなるというバグもあるらしい。
  • この内容の上、中には 起動しない という正に商品未満の代物まで紛れ込んでいた。
  • 当時は更新データの配信 ソフトの無償交換が絶対 と言えるほどの酷さにもかかわらず、その対応が全くされなかった。

賛否両論点

  • 実は説明書にワープ・アイテムサーチ等の特殊行動や記号・アイテムはちゃんと書かれており、それを読めば割と普通にプレイできる。その為「とっつきにくく、操作に癖があり、把握も困難だが面白い」という声もある。
    • しかし当時説明書を読まないとプレイが難しいゲームという物は殆ど無かった事、$50と高め(当時の平均は$25~$35位)であった事が災いし、ボロクソに叩かれる結果となってしまった。「ファミコンで例えるなら下知識無しに『ボコスカウォーズ』をプレイする様な物」とも。
      • 実際、日本でも「マイコン★ボックス」(月刊ファンロード別冊・1984年/ラポート発行)のATARI2800レビューでは「移動とアイテム集めでパターンをクリアしていくのはアタリ独特のもので、ストーリー性もあって、おもしろい」と結構好意的な評価をもらっている(もう一人のレビュアーは「途中でうんざりして放り出した」とコメントしているが……)。
      • ただ、中身がE.T.らしいかというと、これにはどうしても否定詞が付いてしまうのを避けられない。
  • 雑な背景等の低レベルなグラフィックである。ただし、ATARI2800のゲームとすれば許容できる範囲ではあるという声もある。

評価点

  • 起動画面のETの一枚絵は(ATARI2800という事を考慮すれば)中々の書き込み様。
  • 当時は無許可でキャラクターを使用することも珍しく無かった中、版権をちゃんと取得している(余談も参照)。
    • しかしやはり、それに時間をかけすぎてしまったのがマズかったと言わざるをえないだろう。

総評

先述してあるとおり、ゲームとしての出来は(バグを除けば)決して擁護不能と言うレベルではない。
「高い上に150万本も売れたが、その割に微妙だった」「出荷しすぎて売れ残った」「アタリショックの引き金を引いた(という説がある)」「売れ残って埋められた」……といった要素が、過剰に悪評価を招いている所がある(余談も参照)。
出来のみを論じて「最悪のクソゲー」かと言われると、微妙な所。

まぁ、だからと言ってクソゲーではないかと言うとそんな事は断じてないのだが…。


市場にもたらした影響

本作が発売する以前からアタリ社が発売していた名機「ATARI 2600」にアクティビジョンがサードパーティとして参加して以降、ブームを狙って続々とサードパーティが誕生。アタリ社もロイヤリティの為に次々とこれを認可、にわかにゲーム市場は活気付いていた。
しかし、参加した会社の中には個人事業から大企業まで、中には「ゲーム開発の実績がゼロどころか全くゲームとは無関係な会社」まであり、リリースされるゲームの中には低品質なゲームが少なくなかった。
そんな中で本作が、その知名度からくる期待とは裏腹に稀代のクソゲーだったことで多数のユーザーにショックを与えた。

当時は現代と違ってゲームをレビューする雑誌もなく、発売前情報も限られていたため、パッケージを見て購入を決めて実際に遊ぶまでどんなゲームかわからないことが普通だった。
その為、クソゲーを掴まされたユーザーは新製品を買い控えするようになり、在庫を抱えたショップは安売りをし、新製品を仕入れなくなり流通が停滞。
ブームに乗って参加したサードパーティは次々とゲーム業界から脱退、もしくは負債を抱えて倒産となりゲーム市場が崩壊した。詳細はこの動画を参照。
結果として1982~83年にかけ、『アタリショック』*1と呼ばれる家庭用ゲーム市場の崩壊がアメリカで発生し、ファミコンが「Nintendo Entertainment System (NES)」の名で海外に進出しシェアをほぼ独占するようになるまで、アメリカのゲーム業界は長い氷河期に包まれる事となった。
ただし、アタリショックをもってゲーム市場が崩壊したとするのは大げさな言い方という見方もあり、「アメリカの玩具市場の中で大ヒットしていたATARI2600のブームが沈静化しただけ」という方が当時の状況をより正確に表している。
現に、アタリショックはあくまでもATARI2600(さらにはアメリカ国内)に限った話であり、当時のPCゲームや、日本・欧州のTVゲームの売上に影響を与えていない。

余談

  • 米国で先行(1982年)発売された後の顛末
    • 大量の在庫を抱え込んでしまい、「売れ残りの処分に困ったAtariが、トラック十数台分に及ぶ大量のカートリッジをニューメキシコ州アラモゴードにある埋め立て地に埋めて廃棄した」という真偽不明の情報が報じられ都市伝説として語り継がれるほどであった。
    • 後にこの話を検証するプロジェクトが立ち上がり、2014年4月に埋め立てたとされる地点を発掘したところ実際にソフトが発見され、都市伝説は真実だったとして日本でもちょっとしたニュースとなった。→参考記事
      • 更に2014年12月15日、この発掘ソフトの1本が「史上最悪のゲーム」として米スミソニアン博物館に収蔵されることになった。
      • この件のドキュメンタリー映画である「ATARI GAME OVER」も制作され、海外では2014年11月にデジタル配信の形でリリースされた。翌2015年には日本語字幕付きのDVDソフトとして日本でも発売された。ちなみにDVDソフト化されたのは日本版のみという珍しい話である*2
      • 日本でも、ゴミ捨て場から発掘されたE.T.を購入した人がおり、(ごく一部で)話題になった。
    • 他のソフトにリサイクルされたという意見もある。破棄されたのは使い切れなかった分なのかもしれない。
      • 一部は日本国内向けにほぼそのままリサイクルされたらしい。
    • というのもこのゲームはクリスマスのキラータイトルを目論んでいたらしく、なんと500万本も作られていたのである(ATARI2600自体は全米で1000万台)。
      • 一応150万本売れたのだが、その結果は以上の通り。版権や諸々で大赤字だった。
      • なお、アタリ社からすればこれでも学習して抑えた方である。半年前に春休みのキラータイトルとして出した『パックマン』は1200万本作って500万本売れ残っている
  • アメリカでのこのソフトの評価は、歴代ソフトのワースト候補を決める際の常連となってしまっているほど。
    • SeanbabyはElectronic Gaming Monthly150号において歴代ゲームワースト20のワースト1位にしている。
    • FHM誌の代理編集人Michael Dolanも歴代ワーストゲームの1位にこのゲームを選んでいる。
    • PC Worldも、筆者Emru Townsendによる「質問した内の3人に1人はこのゲームをすぐに思い出していた。何故かを理解するのは難しくない」というコメントを添えて、歴代ワーストゲームのリストトップに『E.T.』を置いている。
    • X Playで唯一0点をつけられてしまった。
  • 版権などの契約で時間を食った結果、開発期間はわずか6週間(当時の平均の開発期間は5ヶ月~半年)しかなかった。
    • 本作のゲームデザインおよびプログラムを担当したハワード・スコット・ウォーショウ*3は2日間で大まかなアイデアをまとめたが、開発期間の少なさで殆どを削ってしまったのである。
    • ウォーショウは後に「私は6週間でこのゲームを作ったということに対してはいい仕事をしたと思う。ただし、ユーザーは開発の期間なんて気にはしない。クソゲーと呼ばれることに対しては悪く思ってはいない」と述べた。
      • しかしCMは広告詐欺としかいえない出来だった。評価はこれも後押ししているだろう。→参考動画
    • またウォーショウ氏は、逆にアタリ史上最高の売り上げを記録した『Yars' Revenge』も手掛けている。
      • 氏は2015年に行われた講演中、来場者に「『E.T.』は史上最悪のゲームと思うか?」と質問したところほぼ全員が手を挙げたのに対し、「なら実際にプレイしたことがある人はいるか?」と質問すると、今度は誰一人として手を挙げなかった。その結果を踏まえ、「良くも悪くも実際にプレイをせず風評のみでゲームを判断するのは正しいことではない」と発言している。
  • 日本でも噂は伝わっており、上記のカートリッジ発掘の際にインサイドの記事では「最悪のクソゲー」と呼ばれており、Yahoo!JAPANのトップニュースでも「史上最悪ゲーム 地中から発掘」と記載された。

動画

※貼り付けが拒否されている動画なのでリンクのみ。

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最終更新:2023年11月04日 22:27

*1 英語では「Video game crash of 1983」

*2 現在はAmazon PrimeなどのVODでも日本語字幕版を見ることができる

*3 現在はゲーム業界を離れ、サイコセラピストとして活動している。