そらのいろ、みずのいろ

【そらのいろみずのいろ】

ジャンル アドベンチャー


対応機種 Windows 98SE/Me/XP
発売・開発元 Ciel
発売日 2004年6月25日
定価 9,240円
レーティング アダルトゲーム
廉価版 スペシャルプライス版
2013年12月20日/3,800円
配信 2008年5月17日/3,024円
判定 なし
ポイント 長い
実はダブル主人公
絵柄は綺麗
Tony伝説?


概要

シャイニングシリーズ』等で著名な作家、Tony氏のデザインを採用した作品。
本作はゲーム以外でもアニメ、フィギュア等数々のメディアミックス化した作品群である。
そんな中、ゲームにも当然期待はされていたのだが…。

担当ライターは嘘屋佐々木酒人(うそや・ささき・きびと)。
CD-ROM版とDVD-ROM版が同時発売されている。

あらすじ

最所弌は古典の期末試験で赤点を取り補習を受けることになった。一緒に補習を受けるのは同じ水泳部の水島朝ひとり。
朝は言い寄ってきた男子生徒と一悶着起こして以来孤立していたが、弌はせっかくきっかけが出来たのだから仲良くしようと模索する。
一方弌の友人である海野十三は退屈を持て余しながらゆるゆると部の練習に励んでいたが、ある時プール外にある園芸部の畑を独りで世話していた空山菜摘芽に一目惚れしてしまう。

やがて4人は一緒になって夏休みを過ごすようになる。健全な男子2人と魅力的な女子2人であれば、話はどうしても色恋に向いていく。
果たして4人の夏はどういった顛末を辿るのであろうか。

主要登場人物

  • 最所 弌(さいしょ はじめ)
    • 主人公1。水泳部。短髪でやや女性的な容貌。一見するとおちゃらけた人間だが、あくまで処世術であり場の雰囲気を読む能力には長けている。
    • 「さいしょ」と「はじめ」が並ぶ変な名前は、母の姓が「三国(みくに)」であったことの名残。元々「三国 弌」だったのが親の結婚で最所となった。
    • 十三とのコンビは「殺し屋」と言われるが、これは山本英夫の漫画『殺し屋1』が由来。
  • 海野 十三(うんの じゅうぞう)
    • 主人公2。水泳部。鉄製黒斑眼鏡の刈り込み髪。真面目そうでいて好奇心が強く「面白い話」を探し求めており、弌に劣らず悪ふざけが好き。ふざける時もいたって真剣という風。
    • 作務衣を愛用する日本の書生風だが口癖が中国語の「先生」であったりと変わり者。
    • 殺し屋コンビの由来は言わずと知れたゴルゴ13。同名のSF作家も多少引っかかってる?*1
  • 水島 朝(みずしま あさ)
    • ヒロイン1。水泳部。ストレートロングヘアで巨乳。最初はツンと澄ましたようであるが実際は喜怒哀楽がはっきりした性格。生活能力は高いのだが、人付き合いで不器用な点が目立つ。
  • 空山 菜摘芽(そらやま なつめ)
    • ヒロイン2。輪っか型ツインテの貧乳(ロリとまでいかない)。いつもニコニコしているが弌から共感や感心を抱かれるように、誰も悪者を作らないための演技。それでいて我の強い面があり、ある目論みがあって水泳部のコミュニティに割り込む。

特徴

  • シナリオ概要
    • ゲーム期間は7月22日から8月31日まででゆうに41日間。それを1日たりとも省略せずに描写する。
    • 大きな軸としては、弌と朝の受けるハメになった補習、水泳部に菜摘芽をくわえての親睦キャンプ、学校でのヤラカシを返上するためのバイト、お盆及び夏祭り、カップル成立後の爛れた性生活…とそれほど多くはない。
      しかし、本作はこれに雑学、薀蓄、家庭の知恵、役に立つ古文の読み方、はたまた単なるバカ話で肉付けをしていった結果、極めて膨大なテキスト量と化した。
    • 特に料理描写は日々の弁当、キャンプ飯、焼肉大会に魚介クズの有効活用、と力が入りまくっている。実践すれば食生活が豊かになるかもしれない。
      • 補習の教材が、源氏物語でも軍記でもなければ大今水増(歴史物語)でもない、まして同じ随筆でも仏教観の強い方丈記ではなく俗な『徒然草』である…という点がふるった冗談である。
    • ネタ以外の部分では、登場人物たちのいささかアブノーマルな家族事情や人間関係の微妙な動き(特に外様の菜摘芽を朝が受け入れ、また子供の朝を3人が受け入れるまでの過程)が主で、大きな動きは本当にたまにしかやって来ない。バイト編が終わるとほぼ4人揃っての大騒ぎばかりになる。
  • 実はダブル主人公
    • 初プレイ時の主人公は弌で固定されているが、いずれかのヒロインをクリアした上で再び「NEWGAME」で始めると、今度は十三よりの視点でゲームが始まる。
    • またこれでどちらかをクリアした場合、今度は弌と十三の両方の視点をすり合わせた3周目がスタートする。
    • この結果、1周だけでも相当長いが事実上3周になっているため膨大極まりない。
  • 登場人物が少ない
    • 上に挙げた主人公とヒロインの他は補習を担当する教師の伊部(いんべ)くらい。彼らの親や特徴のありすぎるゲストもいるが立ちキャラすらない。
      • ちなみに主人公2人(及び伊部)にはちゃんと立ち絵あり。
    • ご丁寧に、水泳部は県大会敗退のためみんなやる気なくしてる、園芸部は長い夏休みに畑なんか世話してらんないので菜摘芽に押し付けてる、という「登場人物が少ない設定付け」すらされている。
+ ネタバレ注意

以下、ネタバレ注意。

  • 恋愛系エロゲにおいて、真っ正面からスワッピング(カップル同士がパートナーを交換して行為に及ぶもの)を取り扱うという異色中の異色シナリオ。
    • しかも、どちらかと言えばスワッピングした方がトゥルーエンドに近く、それを避けたシナリオはいささかしこりの残る物となる。
      • 実は主人公はお互いの性格についていずれも無い物ねだりのような憧れを抱いており、それを真の友情に昇華させるための儀式的な面も見られる(もちろん女の子を都合よく利用するだけの物でもない)。
    • 正確に言えば必ずしもスワッピングとは言い切れず、ましてや寝取られでも寝取らせでもない。リビドー任せの乱交などでもない。
      たとえ傍目にはバカなカップル2組の乱交だったとしても、当事者にとってはどっちも本気で好きになった結果であり、「山分け」もしくは「半分こ」と呼んでいた。この展開では最終的に籍こそ入れるものの、実際は2世帯同居に見せかけた1世帯となり、家制度にケンカを売る結末となる。
      • とは言え、婚外子の弌と出来婚の産物だった朝とのカップルに、どっちの種か分からない子が授けられる(ただし誰も後ろ暗く思ってはいない)という皮肉と言えなくもないエンドがあったりするが。
    • なお、こんなことになっても4人のバカ騒ぎっぷりは同じである。ぶれないのは結構なことである。
  • 一方で刺激が強過ぎる。スワッピング(ちょっと違うが)ということは、弌もしくは十三が朝か菜摘芽とくっつけば、残った方もお互いにくっつくということになる。
    • 独占志向の強いユーザーにとってはその時点で既に「寝取られ」と認識されてしまう。
    • まして主人公が2人いることともう一組カップルが出来ること自体が販促の段階では伏せられていたのであり、言いようによっては完全に「騙し討ち」である。怒ったユーザーもいただろうし、実際嘘屋個人ページの掲示板はこの展開への批判(及び十三がもう一人の主人公だったという設定自体への不満)で荒れた経緯がある。
      • なお、嘘屋本人は「ライターで食ってる以上この手の言い訳をしない」と沈黙した。
  • ちなみにゲーム終盤に大山場があり、それを越えると中間ムービーが挿入される。そしてスワップ、いや山分けか否かの選択はまさにそのムービーの後になって迫られる。
    • 話そのものは中間ムービーでそこそこ綺麗に終わるよう作られており、見方によっては「ここで満足しておけ。この先を見て後悔しても責任取れない」という警告と取れる。

問題点

  • シナリオが長過ぎる。話の内容そのものをどう感じるかはプレイヤー次第とは言え、客観的に見て長いことは事実である。
    • 短めの日を飛ばし読みしても10分以上はかかる。エロシーンのある日などは恐ろしく長尺で、下記のスキップをやっても分単位必要である。
      • 単純計算で、『20分(しっかり読むことを前提とした時間)×40日分×2(ルート分)』で 1600分 かかることになる。しかも、これに加えて乱交シーンは更に長いので遅読なプレイヤーは 2000分 ほど要することも。しかも内容が薄味ときたものだから、かなりの忍耐力が必要とされるのは間違いないだろう。
    • メリハリをつけるべき点はちゃんとつけているのだが、平坦な長さが邪魔をして山場に入る前に挫折しかねない。全てにおいて読み応えがあるならまだしも、お世辞にもそうは言えないのも厳しい所。
    • 劇中に「今年の夏休みはあっという間」というセリフがあるが、よほど彼らの夏休みが楽しく感じたとしても同意出来ないと思われる。それくらい長い。
    • 特徴で挙げたような「実は三章立て構造」も受け付けられないプレイヤーにとってはひたすらに苦痛である。
    • メリハリ自体は存在する。長いけど。
    • 長いという点が本作の評価を大きく下げたが、長すぎてプレイが苦痛という点は クリアが困難 であると同義なので、エロゲー界の「理不尽な高難易度ゲーム」に匹敵するといえよう。無心でスキップすればクリア自体は可能だが、それはそれでADVの存在意義を否定することになる。
  • 独り善がりなシナリオ構成。
    • 「長過ぎる」という点に比べれば賛の要素がある部分であるが、基本的に4人の内輪だけで終始する話が多数を占めている。たまに教師の伊部が絡むが、最初の補習以外は「基本的に見守り、大きい問題が起きそうならフォロー」という日陰の立場にあるため本当に出番が少ない。
    • バイトのような例外や祭りのようなハレの日もあるが、単なる他愛の無い談笑や夏休みあるあるネタ、普通に料理をして終了…という日も少なくない。
      • 特に十三サイドの初期は補習を受けていないのでネタすらなく、弌のいない退屈をプレイヤーも体験させられる。
      • 時々、主人公らのコンプレックスやヒロイン達の家庭の歪みを描写するのだが、それも2、3時間に一度、まさに思い出したようにという具合である。
    • この結果、彼らのネタが合わない人や登場人物を上回る薀蓄マニア・料理マスターにとっては、ひたすら寒いギャグとどうでもいい話の羅列に成り果てる。
  • システム上の不備。
    • 40日以上を1日ずつ描写する作品でありながら、セーブデータは10枠しかない。精読のためのバックアップを取るには数日ごとにまとめざるをえない。
    • 画面非表示の上でスキップする機能があるのだが、普通の高速読みより早い程度の早送りというのが実情。これもシーンごとにスキップするような融通は利かない。
      • 少なくともダウンロード販売版では普通の高速読みも用意されている。時間はかかるが話の上面をなぞりつつ早送りもするにはこっちの方がよい。
  • CGの流用が目立つ。
    • エロシーンのCGは男の首から上を意図的に隠した構図になっているものが多く、これをダブル主人公で使いまわししている。何故かと言うと主人公2人がそれぞれヒロイン2人を攻略対象に出来るからである。手抜きと言われれば実際手抜きではある。

評価点

  • 「少年少女の丈に合った話だけでシナリオをまとめた」とも解釈できる。
    • 分不相応に大きい問題に直面させたり、あからさまな敵役や悪役をもうけたりなどして強引にシナリオを彩ろうとしていない。
    • さすがに終盤ではかなり大きい危機に直面するが、伏線は十分に張られている。
  • Tony氏の実力も伴って、絵柄は非常に綺麗。
    • 上に挙げた通り、男の裸立ち絵までリキ入れて描き込むのはどうかという感じはするが。
  • 何だかんだでもヒロイン自体の人気はある。
  • スクウェア(現スクウェア・エニックス)所属時代にヒット作、『聖剣伝説2』『聖剣伝説3』『双界儀』を手がけていた菊田裕樹氏が作曲している。

総評

膨大な日常描写と上で格納された衝撃の展開とが合わさったシナリオ構成は、本作独自の色を出すことに成功している。
あまり派手さはないが「曲者」の一つに取り上げられるだろう。

ただし凄まじく長い上拒否反応を出しやすいシナリオであることは事実である。プレイしてみるというのであれば腹を括る必要がある。
それを乗り切りさえ・受け入れさえ出来れば、それなりに楽しめる一本である。

余談

  • ポイントの欄にあるTony伝説とは、Tony氏が原画を担当したエロゲー(あくまでもエロゲーのみ*2)は地雷率が高いという意味であり「不遇絵師」との評価もある。
    • 後年発売された『フォルト!』でも、妹ヒロイン・杉山澪が「実妹」として紹介されていながらも、個別ルート終盤において「実は従妹だった」というオチが存在し、「実妹スキー」なユーザーにとっては「絶対に許さないよ」級の地雷となった。
  • 縁があるのか菊田氏もTony氏と並んでセガの『シャイニングシリーズ』で音楽を手がけていることが多い。
  • 2006年6月23日に『Ciel Limited Collector’s Box ~Tony Illustration Games~』が発売。
    • Tony氏が原画を担当した5作を収録しており、本作も含まれている。
    • その後、単品でのダウンロード版や廉価版も発売された。
  • 後に発売された18禁のOVA版は単独主人公のハーレム物として大幅にアレンジすることで程よくまとまった話になっている。
    • 有名アニメーターの黒田和也氏が起用されており、いわゆるそっちの実用性も高いとの評判で、商業的にも成功を収めたようだ。
    • そのためアダルトアニメ界隈では『そらみず』といえば人気のヒット作として有名だったりする。
      • ただ、上巻を出した後に黒田氏が別の一般作品に取り掛かった事もあり、下巻の制作は難航を極めた上に制作会社のアダルト部門撤退なども重なった結果、2年後の2008年にようやく発売されるなど、ヒット作ではあったが問題のある作品ではあった。

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最終更新:2023年12月14日 21:10

*1 なお、同名のSF作家のほうの読み方は「うんの じゅうざ」。

*2 エロゲーでなければセガの『シャイニングシリーズ』等の人気シリーズがある。